シークレット

#8

 会長のまゆさんが、退院したらしい。今回のクラブは、そのお祝いもかねて、ちょっとしたパーティーっぽくするみたい。

「気になってたんだけど、部長じゃなくて、会長なの?」
「私も気になってたー」

 サクラが言うと、ボタンも続けた。

「んー、言われてみればその通りだけど、気にしたことなかった。でも部長って、現役がなるもんじゃない?」

 カレラさんはそう言った後、少し考え込むような顔して…。

「となると、まゆさんや私らは、顧問? 部長となると、3年の唯ちゃんかな」
「えー、無理ですよ」
「別に部長といっても、仕事があるわけでもなし。決定」

 …というかんじで、部長職、即座に決定。


「私がいない間に拉致された子って、あなただよね?」

 まゆさんは、私の方を見ながら言った。

「はい、ユウですー」
「…拉致担当者に、手を出されなかった?」

 私がどう返事していいかわからず黙ってると、まゆさんは吹き出した。

「カレラさん、反省文とレポート提出。微に入り細にわたってね」
「はいはい」

 今日来てる中で、初めて会ったのは…。
 まずは、このまゆさん。なんとなく、V系バンドでもやってそうなイメージ。
 雅さんは副会長らしい…喋り方から仕草から、まるっきり、「おかま」な感じ。

 …あと、女の子が、一人いるんだけど?
 かっこうは男だけど、これは絶対に男のはずがない。言い切れる。

「新入会員は、皆、その子に何かしらの疑問を抱くのよね」

 まるで私の心を読んだかのように、雅さんが言った。

「想像通り、リアルまんこだけど、超特例ということで準会員なの」
「あいかわらず下品ね、この人は」
「下品のどこが悪いのよ。あなた人のこと言えて?」

 カレラさんと雅さんが、面白そうに言い合ってる中、その女の子が話しかけてきた。

「やっぱり、疑問に思う?」
「…うん」
「だよね。まあ、しょうがないんだけど」

「そうねー、アキラ、ユウちゃんに、一応説明しといたら?」
「うん」

 アキラって言うのか。アキラは私のほうを見直して、話しはじめた。

「…男の子に、なりたい」

 ぼそっと、それだけ言って、アキラは黙っちゃった。
 なるほどそういうことか、ってちょっと納得して、それで話は終わりかとも思ったけど、アキラは続けてきた。

「男の子になって、女の子になりたい男の子と、恋人になりたい…」

 なんて面倒な…。一瞬そう思って、笑いそうになっちゃったけど、どうも向こうは深刻らしいから、私は笑えなかった。

「そんなかんじ。ユウちゃんって言ったよね? 今度、ちょっとどう?」

 どうと言われても。
 私は助けを求めてまわりを見回したけど、みんな笑ってるだけ。
 みきちゃんや貴子ちゃんまで、面白そうに笑ってる。

「さすがは、ナンパも男らしいわね。グッときちゃうわ」
「雅さんは根っこが男だからパス」
「言ってくれるわね。これでも一時期は、まんこ欲しくて思い悩んでいたのよ。まったくアキラって名前には、ろくな奴いないわ」
「ええ、ろくな奴でなくて結構」

 何故かカレラさんが食いついた。カレラさんの本名、そうなんだろうか。

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