シークレット

#6

 別に気にすることもないのかもしれないけど、学校にいると、なんとなく気になる…。
 金曜日の休み時間、とうとう幹夫のクラスに行って、声かけちゃった。

「明日、久々に遊ばない?」

 探りを入れてみた。多分断るんじゃないかな?

「あ…ごめん、週末は大体用事あるんだ。知ってるよね?」
「そっか…そういうことだったんだ」
「?」
「いや、言い間違い。そういえば、そうだったね」

 危ない危ない。
 幹夫って、いつも週末は付き合い悪いから…塾でも行ってると思ってたんだけど。
 たった今気がついた。そういうことだったんだ、って。

「じゃあ、今度でいいや。また」
「いや、なんか特別用事あるんだったら、あけるけど?」
「大丈夫」
「変なの…」

 変で結構。人のこと、変呼ばわりできるのかな…?
 僕は幹夫が女装してる姿を想像して、なんとなく表情がゆるんだのは気付かれないように、大急ぎで自分の教室に戻った。


 その夜、貴子ちゃんが、電話かけてきた。
 最近、いつもそう。昼はメールいっぱいよこして、夜は電話してくる。
 別に迷惑じゃないんだけど、メールはともかく、電話代大丈夫なのかな、って思う。

「あいつ、明日は、来るんだよね?」
「うん、絶対来るように言ってる」
「そっか…」
「なんで?」
「いや、楽しみ」
「だよねー」

 後はゲーム買っただとか、どんな服欲しいだとか、たあいのない会話。
 で、適当に電話終了。楽しみだね、ってお互い言いながら…。


 そして、待望の? 土曜日。
 貴子ちゃんと駅前で待ち合わせて、部室についたら、誰もいなかった。

「ちょっと、カレラさんに協力してもらってる」
「何を?」
「今日は、部室は使えないって、連絡まわしてもらってる。関係者以外は、ね…」
「…そこまでするかい」
「するの」

 貴子ちゃんは心底楽しそうに、笑ってる。

 部室に入って、まずは着替え。特に何事もなく、着替え終了。
 二人とも、僕と幹夫の学校の、女子の制服。

「…で、カレラさんは?」
「気を使ってるのかどうか知らないけど、今日は部室だけあけて、出かけてるみたい。まゆさんのお見舞いにでも行ってるんじゃないかな?」
「まゆさん?」
「ああ、会長というかリーダーというか…。交通事故にあっちゃって入院してるの。もうだいぶ良くなったらしいけどね」
「どんな人なんだろう?」

 私が言うと、貴子ちゃんは少し考え込んだみたい。

「うーん、実はよくわかんない。リーダーとしては、いい人かな。プライベートの事は、全然言わない人だから」
「ふーん…」

 貴子ちゃんは携帯を取り出して、電話をかけはじめた。
「今、どこ?」「うん、わかった」「待ってるねー」…みきちゃんと電話かな。

「多分、後5分くらいで、みきちゃん来ると思う。ドアのとこで見てるから、私が合図したら、そこの部屋に隠れててね」
「うん」

 貴子ちゃんが指差したのは、更衣室じゃないほうの扉。
 私は念のために、ドアがあくかとか、中に隠れられるか、確認してみた。大丈夫みたい…。

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