シークレット

#4

「ちゃんと、来てくれたんだね」

 僕を見つけて、貴子ちゃんは、嬉しそうだった。
 もちろん今男モードだけど、本名で呼ばれたくないんだって。

 約束したのは、部室の最寄り駅。
 お互いが住んでる場所の、大体中間あたりだし、そこそこ開けてる。

「どこ行こう? お茶? ゲーム?」

 貴子ちゃん、かなりはしゃいでるように見える。本当に嬉しそうに。
 少し話した後、ちょっとお腹すいてるし、ファストフード行くことにした。


「あら」

 駅前を一緒に歩いてたら、何となく聞き覚えのある声が、後ろからした。
 振り向いてみると、カレラさんがいた…。

「なるほど、全くもって、想像通り」

 カレラさんは、いつも、何となく意地悪そうな顔で笑うけど、今回のは、今までで一番すごいかもしれない。
 一体、どんな恐ろしい事でも企んでるんだろう、そんなかんじ。

 結構焦ってる僕とは反対に、貴子ちゃんは全然気にしてないみたい。
 それどころか、なんか余裕っぽい表情。

「なんとなくピンときて、先につまみ食いしといて、良かったかな?」

 カレラさんが言うと、ようやく、貴子ちゃんも、驚いたみたい。
 「そうだったの?」なんて、僕に聞いてくる。
 僕がうなずくと、貴子ちゃんは、あーあ、とため息をついた。

「嫌な予感してたんだー、なんとなくだけど」
「ま、ほんとに味見程度だし。入会前の健康診断ってとこ。続きは任せるから」

 それだけ言って、カレラさんは、すぐいなくなった。


「あー、味見して、おいしかったか、聞くの忘れちゃった」

 店に着いてしばらくして、貴子ちゃんは、いきなりとんでもない事を。
 単にそれだけ聞いたら、なんでもない言葉だけど…。
 意味するところがわかるから、僕はつい、周りを見回した。

「まあいいかな、後で、自分でも食べてみれば、いいんだもんね…。
 ところで、食べ終わったら、カラオケ行かない?」
「うん」

 貴子ちゃんは、明らかに速いペースで、自分が頼んだものをたいらげた。
 それで僕のほうを見て黙ってるもんだから、ついプレッシャーで、僕もペースアップ。

 急いで食べたからしゃっくり出ちゃったけど、歩いてるうちに治った。

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