シークレット

#3


 あれから、一週間くらいたって、メールが届いた。
 差出人、件名、本文…全部教えてもらった通り、添付ファイルつき。

 ちょっと自信なかったけど、調べたとおりに添付ファイルを複合化すると、どうも成功したみたいで、テキストファイルが出来上がった。

  解読成功おめでとう。
  こないだ話した集まりの情報、送っておくね。

  今週の土曜日、夕方頃からスタート。
  別に直前でもいいけど、参加の可否は早めに連絡してね。
  あの駅まで、車で迎えにいってあげるつもりだから。
  返事は電話でもいいし、これにそのまま返信でもOK。
  暗号化はしないでもいいから。よろしく。

  なお、読み終わったら、メールもこのファイルも削除して、ゴミ箱もきっちり空にしておいてね。
  「決して、残さないこと」 これ重要なお約束。
  ではでは。

 僕は、参加したい、って返事を書いて、メールとファイルを削除した。


 次の日の夜、僕の携帯が鳴った。
 発信者名「Carrera」…僕はすぐに出た。

「こんばんは、今大丈夫?」
「部屋だから大丈夫です」
「OK。土曜だけど、4時頃に、こないだと同じ駅前まで出てこれる?」
「わかりました」
「それだけなんだけど。楽しみにしてるね」
「…こうやって、直接電話とかしてくれても、大丈夫なのに」
「うん、そうだろうけど、やっぱこういうのって、気分じゃない? 暗号文とか、見たら消せとか、結構秘密っぽくて、ドキドキしない?」
「…たしかに」
「それに今回は、ユウちゃんに専用メール書いたけど、普段はBCCとかでテンプレ一斉送信みたいなかんじだしね」
「うん」
「じゃ、再確認。土曜4時頃で」


 土曜まで、楽しみなような、でも少し心配なような、なんともいえない日を過ごした。
 一体どんなことするんだろう、どんな人が来るんだろう、って。
 で、約束の土曜日。

 僕は時間より少し早く、待ち合わせの目印にした、駅前の時計の前に着いたけど、
 もう、そばに、見覚えのある車があった。


「早かったねー、我慢できなかったのかな?」

 もう移動中の車の中で、カレラさんは、いつもみたいに、何となくHな言い方する。面白いからいいんだけど。

「まあ、今回人数少ないけど、最初だからそのほうがいいかな。あと…やや残念なお知らせ」
「?」
「こないだ私としたようなこと、あれ一応禁止だから。その場所ではね」
「……」
「成り行き上とか、ノリと勢い次第ではある程度許容するけど、その場合は、集会後のメールでレポートされるのが慣例」
「レポートですか」
「うん。その件については、賄賂も何も通じないので、よろしく」

 少し安心したような、でも少し残念なような。
 やっぱり自分がよくわからない。

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