シークレット
#15
駅ビルのレストランフロアにある、中華料理店。
高いらしい、と知ってるだけで、今まで入った事はなかった。今回が初めて。
「えー、ここ? 本当にいいの?」
「ここ初めてー」
みきちゃんと貴子ちゃんは、もうまさに大喜び、といった感じ。もちろん僕も嬉しい。
「ここでこの言葉を口にするのは、勇気がいるけど……」
カレラさんはこう言って、少し黙ってから、続けた。
「何でも好きなものを頼んでいいからね」
「おー」
「さすがにみんなは、お酒は禁止。私は成人だから頼むけどね」
「ツバメの巣のスープって食べてみたいな」
「じゃあ僕、フカヒレラーメン」
「アワビの煮付けって、おいしそうだよね?」
みんな、思い思いのものを頼む。
……カレラさんのこんな表情を見るのは、珍しい。
運ばれてきた料理をみんなでおいしそうに食べながら、いろいろと雑談。
とは言っても、さすがに、あまり女装の事とかは堂々とは話せないけど……。
「今度、本人の嗜好は無視してでも、全員に2〜3回ずつは頑張ってもらわないと、元が取れないかな」
会計を済ませたカレラさんは、かなり微妙な表情をしてたけど、僕達はあまり気にせず、今さっきまで食べていたすごくおいしい料理について、まだ話してた。
「今日の事は一応秘密で。ちなみに念を押しておくと、私にご飯おごられたってのも秘密だからね。まゆさんは絶対に、因果関係に気付くに違いないから」
「だね。何度かそれで反省文提出してるもんね」
貴子ちゃんが、茶化すように言った。カレラさんは別にそれを気にする様子はなく、何か考え事でもするかのように歩いてる。
「どうしたの?」
幹夫が聞いても、「いや、別に大した事じゃないというか、関係のない事」って、とりつくしまもない感じ。だから僕達もあまり突っ込まず、一緒に歩いてた。
「さて、私はこれで帰るけど、この後3人で続きでもしようものなら、私はまゆさんに自白という自爆テロをするので、そのつもりで。ちゃんと良い子で帰るように」
カレラさんはさっきまでいたホテルの駐車場に車を停めてたから、そこに着いて、一応解散。
自爆テロは怖いから、全員合意のもとに、続きはなし。
「時間的に中途半端だし、お茶くらいはいいんじゃないかな?」
幹夫のこの提案で、3人でファストフードに入る事になった。
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