シークレット
#12
カレラさんは、もう本気で獲物を狙うみたいな目で、私達を見てる…。
そして私達はといえば、まるで蛇ににらまれた蛙。
「別に、断っても何も不利にならないけどね。未遂なので罰しないという事で」
私と貴子ちゃんは、顔を見合わせた。
…顔を見合わせてるだけで、どっちも、何も言わない状態が続いた。
「そんなに悩まなくていいのに。いつもなら、貴子ちゃんは軽く流すのにね」
「ううん、ふと思ったんですけど」
「何を?」
「私、カレラさんの裸すら見たことない気がする」
「それはほとんどの子が、ないんじゃない?」
「…そうじゃなくて」
また意地悪く笑ってるカレラさん。貴子ちゃんは続けた。
「カレラさんとそういう事は、そういえば一度もした事ない気がする。ユウちゃんは、あるんだよね?」
「…ちょっとだけ」
「不公平だよね」
「何を言ってるんだか。貴子ちゃんは、みきちゃんが駄目って言うからできません、って何度も断ってくれてたじゃないの」
「それ、ずっと前でしょ。今ならみきちゃんOK出しそうな気がする」
「とりあえず貴子ちゃんは、乗り気だって事?」
そう言って、カレラさんは私を見る。貴子ちゃんも、私を見てる。
…でも私は嫌です、なんて言える状況じゃない。言うつもりもないけど。
「決まりかな。ユウちゃんも、まんざらでなさそうだし」
言い終わると、カレラさんは、広げた荷物をまたカバンにしまい直してる。
「二人も、とりあえず一度着替えて、帰る支度してね」
「なんで?」
「万が一にも、誰か来て中断されないように、場所変えようかと」
「…なるほど」
更衣室へ行こうとしたら、貴子ちゃんが言った。
「ちょっと、ここまで話が進んでおいて、なんなんですけど」
「今更やめるとか言ったら、怒るよ?」
「せっかくだから、みきちゃんも呼びたいなって」
「来るかな?」
「聞いてみます」
貴子ちゃんは携帯を出して、電話しはじめたけど、私はとりあえず着替える事にした。
いつもなら、女の子の姿から元に戻る時は、特に何も感じないか、何となく名残惜しい。
でも、今回は妙にドキドキする…。
僕が更衣室から出ると、貴子ちゃんは、入れ替わりに更衣室に入っていった。
カレラさんは、嬉しいのか、残念なのか、微妙な顔してるけど…どうしたんだろう?
「業務連絡。非常に不本意ながら、明日に延期」
「え…?」
「みきちゃんも参加したいけど、今日はどうしても駄目なんだって。そういう事」
なるほど。ちょっと残念だけど。
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