「いや、ごめんなさい…そんなことない、って、みきちゃんの口癖で…。今みたいな質問すると、すぐ、そういう返事するんです」

「ふーん。じゃあ、あっきーも、みきちゃんが貴子ちゃんに思うのと同じこと、僕に思ってくれてるのかなあ…?」
「だから…。なんで人前でそういう事言うかな?」

 人前、と聞いて、貴史が何か言おうとした。…出てきた言葉は、まさに僕の予想通り、「二人で、隣の部屋にいますね」だった。

 僕はほとんど貴史に引きずられるように、隣の部屋に移動した。

「なんとなく、邪魔したら悪いような気がしたしー」

 なんて言いながら、貴史は結構、面白がってるみたい。しばらく二人で、亜紀さんと唯さんについて、勝手な事話してた。

 30分くらいたったかな。そろそろいいかなと思って、大部屋に戻ったら二人ともいなかった…。

「あれ、どうしたのかな?」
「どこいったんだろ?」

 どこに行ったかは、すぐにわかった。風呂の入り口に、二人分の服が脱いであったから。

「さっき、二人とも、入ってたよね?」
「うん」
「よっぽど綺麗好きなのかな」

 貴史は笑いながら、そう言った。たぶん僕と同じことを想像してるんだろうな…。これで今すぐ、出かけてるみんなが戻ってきたら、面白いのに。
 そんな事を考えてたら、本当にみんなが戻ってきた。

「あれ、あっきーと唯ちゃんは?」

 まゆさんの質問を聞いた貴史は、待ってましたとばかりに答える。

「二人でお風呂みたいですね。さっき入ったのに、何ででしょうね?」

「風呂に入らないといけないような事をしたんだね…」
「きっとそうだねー」
「みきちゃんと貴史くんは、詳しく見てないの?」

 外出組は、みんな本当に楽しそうに、勝手な想像をしたり、言ったり。そうしてるうちに、亜紀さんと唯さんがお風呂から出てきたみたい。

「さーて、いない間に何があったのか、詳細を…」
「いや、別になにも…」
「ちょっとHなことを」

 明さんの質問に、お茶を濁そうとする亜紀さんと、まともに答えた唯さん。亜紀さんは、唯さんを必死に黙らせようとしたけど、その前に、ユリさんと雅さんに取り押さえられた。

「二人で、ちょっと触りっことか、しただけですよー。でもなんだか、好きな人とやっと結ばれた、みたいな感じ? すごく嬉しいです」
「やめろってばーー」

 唯さんは照れながら、大発表。亜紀さんは真っ赤になってる。

「こないだから決めてたんです、合宿で、絶対こうしよう、って。明さんは知ってるよね、あのとき、僕があっきーに惚れ直したの」

 みんなが明さんの方を見る。明さんは困ったような顔をしながら言った。

「とりあえず、亜紀ちゃん、ずいぶん男らしいとこあるなとは…」

「仮にも女装クラブの子が、男らしくちゃだめじゃん」

 ユリさんがすかさず突っ込んだ。

「まあとりあえず。二人の件は、後でじっくりしっかり聞かせてもらうとして、そろそろ食事運んでくるはずだから、みんな服装を正しておいてね」

 運ばれてきた食事は、さすがに豪華なものがいっぱいだった。後で食器とか回収に来るはずだから、まだみんな着替えとかしてないけど、話はかなり盛り上がった。

「公認カップル2組目だねー」
「めでたいめでたい」

 話の内容のほとんどは、当然、亜紀さんと唯さんのこと。いいかげん亜紀さんも諦めたらしく、真っ赤にならなくなってた。

「で、まゆさん、きっとメールに書くんだ…」
「今回は、書かないかも」
「えー」
「このごろ不穏な動きをしてる反動分子を、刺激しかねないからね」

 しまいに反動分子になったのか…。なんて考えてたら、まゆさんはさらに続けた。

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