#2 トレーニング

 悠樹は全然恥じるそぶりもなく、服を脱いでパジャマに着替えた。まあ、自分の裸を見て喜ぶ奴がいるなんて、思ってないだろうけど。

「悠樹くんは、もう寝ちゃうの?」
「ちょっと、眠くなっちゃった…」
「まだ11時過ぎなのに…ふふ、やっぱり、まだ子供だね」

 悠樹は、俺の言葉に少しカチンときたようだ。
 …思ったとおりにね。
 少しふてくされてる悠樹に、俺は、次の一手をしかける。

「ごめんね、悪かったよ」
「……」
「じゃあ俺、悠樹くんのこと、大人として扱ってあげるから」

 俺は、この過程が、たまらなく好きなんだ。
 徐々に相手の気持ちを操作して、自分の望む方向へもっていく…。そりゃあ、この場合は、過程より結果の方が好きなんだけどね。

「うーん…なんだか、俺もちょっと眠くなってきた…。まずいな。こんなことじゃあ、悠樹くんの事、子供扱いできないね」
「…あはは」

 悠樹は、機嫌を直してくれたらしい。これも思ったとおり。

「でも、気持ちは大人でも、体はどうなんだろう」
「え…」
「悠樹くん、朝礼の時、どのへんに並んでる?」
「真ん中くらいだよ」
「そうなんだ…別に、小さいわけじゃないんだね」
「小さくないもん」

 だんだん、事態は進展していく…。

「もう習ったかな? 大人になっていくと、体に変化が出るって」
「うん…ちょっとだけ」
「でもあんなの、あまり気にする事ないよ…」

 ここで、ちょっと大きく攻め込んでみる。深刻そうにせず、冗談や遊びめかした口ぶりで…

「悠樹くんの体が大人かどうか、調べてみたいな」
「えー」
「やっぱり、恥ずかしいかな?」
「……」

 悠樹は、困惑してるみたいだけど…俺は、その表情の中に、少しだけ好奇心が潜んでいるのを見逃さなかった。
 俺は、このへんで確信した。悠樹は、突っぱねるような拒否は、しない子だって。
 ある意味、そういう拒絶反応を示す子の方が、楽は楽だけど。実力行使の方が好きだし…。

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