放課後女装クラブ(仮)


      #13  合宿・3


 突然、目がさめた。目がさめたというより、貴史に起こされた。
 布団は2枚しいてあったのに、いつのまにか、貴史は僕のそばに来てたみたい。

「ごめんね、寝てたのに」

 貴史は僕の耳元で、小声で言った。

「いいけど…どうしたの?」
「目がさめちゃった。お風呂入りたいんだけど、一緒に行かない?」

 僕は、まだ眠いから、少し考えたけど、結局一緒に入ることにした。


「何回見ても広いよね、このお風呂」
「うん、そうだね」

 まだ外は真っ暗。来るとき通った大部屋では、みんなまだ寝てた。
 だから二人とも小声でしゃべってる。

 簡単に体を洗って、湯船に一緒に入った。
 お湯が流れる音が思ったより大きかったから、つい、誰か起きちゃって、
 脱衣所あたりで聞き耳を立ててないか、確認しにいっちゃった。


「お酒飲んで寝ちゃうと、変な時間にいきなり起きるよね」
「そこまで飲まないからわからない」
「なんか、そっけないなー」
「そんなことないよ…」
「あ、また言った」

 昨日と同じように、貴史は、僕の横にぴったりくっついてきて、
 僕に体重を預けるように、寄りかかってきた。

 今回は、予告も何もなく、貴史は僕のあそこに手を伸ばしてきた。

「やっぱり、くっついたら、こうなってる。なんとなく嬉しいな」
「……」

 僕が何か言う前に、貴史は手をどかして、僕から離れる。

「だめだよね。お風呂ではしないって、みんなとの約束だもんね」

 そう言うと、貴史は、僕のそばから離れた。
 一瞬、またいじけちゃったかもと思ったけど、そうじゃないみたい。

「お風呂では…ね」

 貴史は言うと、湯船から上がって、脱衣所に戻っていった。僕も追いかける。
 体をふいて、部屋に戻るまで、どっちも何も言わなかった。


「みきちゃんは、そのままでも、着替えてもいいよ」

 どうしようかな…って少し考えたけど、そういえば僕は合宿にきてから、
 女の子に化けてない。せっかくだから、着替えることにした。

 まだちょっと暑い。エアコンは入ってるんだけど、お風呂上がったばかりだしね。
 だから、二人とも上半身裸で、ちょっと話をしてた。

「ほら、これ見て」

 貴史は、カバンの中から、いままで見覚えのないワンピースを取り出した。
 あまり詳しいわけじゃないけど結構高そうな、水色の可愛いワンピース。

「これは…?」
「明さんに買ってもらった」

 僕は、貴史の口から明さんの名前が出ると、ついつい警戒しちゃう。
 そんな僕に気付いたのか、貴史が続ける。

「見返りに何もしてないよ」
「なら、いいけど…」
「この服ね、みきちゃん相手に勝負かけるときに着ろ、って言われた」
「勝負って…」
「結構前に買ってもらったんだけど、今日まで着ないでいたんだよ」

 ここでいったん話は終わって、二人とも、着替え開始。
 申し合わせたわけじゃないんだけど、どっちも、相手の着替えを見ない。

 僕は、いつもと本当に変わりばえしない、女子高の制服…。
 変わりばえしないけど、これが一番気に入ってるから。


「ほら、見て見て」

 着替え終わったみたい。僕は、声が聞こえたほうに向き直った。

「どうかな…」
「可愛いじゃん」
「どっちが? 服が? 私が?」
「両方」

 貴子は、嬉しそうに笑うと、布団の上に座った。私も横に座る。

 すぐ近くにいるんだけど、なかなか、手を伸ばせない。
 それは貴子も同じみたいで、無言のまま、少し時間が流れた。

「みきちゃん、奥手だよね」
「今、私も女の子だもん」
「ふーん」

 貴子は、私のスカートの中に、いきなり手を入れてきた。
 僕が、びっくりして手をどかそうとしたら、貴子は言った。

「女の子なのに、こんなの付いてるの?」

 貴子はすごく意地悪そうな顔で言って、さらに続ける。

「ううん…お互い様だけどね」

 そして、いきなり意地悪そうな顔をやめて、吹き出した。

「???」
「やっぱだめ。こういうキャラ、できないや。ほら、部室にあるような本。
 ああいうの見てると、だいたい、意地悪な事言ってたりするよね」
「ああ…なるほどね」
「やっぱり私、どっちかというと、言われるほうが好きなのかも。
 でも、みきちゃんがああいうキャラしても、笑っちゃいそう」

 そう言うと、貴子は、まるで私を押し倒しそうなほど、密着してきた。
 いや、押し倒された。

「やっぱり、まずいんじゃないかなあ…誰かのぞいてたらどうしよう」
「私は別にいいけど」
「えー…」
「恥ずかしいけど、相手、みきちゃんだから」

 少し照れたような顔をしながら、貴子は言って、私には何も言わせないとばかりに、
 すぐに私の唇をふさいできた。

 私の上におおいかぶさったまま、貴子は私のスカートの中に手を入れてきた。
 そしてそのまま、下着を脱がそうとしてくる。
 私は、脱がせやすいように、腰を浮かせて…。そうしたらすぐ、下着は膝くらいまでおろされた。

「私のも脱がせてね」

 耳元でそう言われて、私は貴子の下半身に手をやる。
 私が脱がされたときと同じように、貴子も協力的だったから、すぐ脱げた。

 貴子は私の上半身を少し持ち上げて、ぎゅーっと抱きしめてから、そのまま横に引っ張るように、
 体勢を逆転させようとしてきた。私はその動きに従った。

 ふすまの向こうで誰かが聞き耳を立ててるんじゃないかって、ずっと気になってたんだけど…。
 もう、覚悟を決めた。

 今、さっきとは逆で、貴子の上に私がおおいかぶさった形になってる。
 私は貴子にキスしてから、だんだん、下半身のほうに移動していく。
 やっぱり私よりだいぶ大きいなあ…。「女の子」なのに。
 僕はちょっとだけ意地悪な気持ちになって、いきなり、乱暴にかぶりつくように、貴子のを口に入れた。

「やぁ…」

 貴子の押し殺した声は、ものすごく、僕を興奮させる。
 そう、僕を、興奮させちゃう。自分が私だってこと、忘れることがある。

 こんな事してるのに、最初のときほど、嫌なかんじはしない。
 そりゃ少しは抵抗なくはないけど、貴子のあそこから出てる、なにかを、普通になめられる。
 なんでなのか、その理由はわかるから、貴子に伝えよう。

「大好きだよ」

 私は顔を上げてそれだけ言って、続きをはじめた。

「ねえ、私にも…」

 貴子はそう言って、私のスカートに手を伸ばして、引っ張る。
 …最初にしたときみたいに、二人とも横向きに転がって、目の前に相手のがある体勢。
 私は全然遠慮なく、むしろ乱暴に貴子のをなめてたから、同じようにやり返された。

 どうするんだろう、口だけでするのが正しいのかな、手も使っていいのかな。
 口に出して聞くと、なんだか冷めちゃいそうで、好きなようにしよう…。
 私が手を使い始めたら、貴子も手を使い出した。同じこと考えてたのかもしれない。

 二人とも何も言わないで、ずいぶん長い時間、そうやって頑張って?たと思う。

「危ないからそろそろ顔離したほうが…」

 危ないってなんだろう。自分で言っておいて、私はおかしくなった。
 でも貴子はそれが聞こえてないのか、それともわざとなのか、私のを、さっきまでより激しく刺激してくる。

「出ちゃうよ…?」

 私がいくら言っても、貴子は顔を離さず、私のを口に入れたままでいる。
 むりやり引きはがそうか、それとも、このまま、出しちゃっていいのかな…。
 考えるまでもないし、考える余裕もない。頭の中が真っ白になりそう。

 私はできるだけ我慢したつもりだったけど、限界だった。
 限界だと思ったときには、もう手遅れだった…。

 貴子は少しむせたみたいだけど、私が何か言う前に、大丈夫、って言ってきた。
 文字通り、口の中に何か入ってるような言い方で。
 私はまだ頭の中が真っ白くなったままだけど、ひたすら、貴子のを…。
 少しして、貴子は腰を引こうとしたけど、逃がさない。
 ちゃんとお返ししてあげるんだ。

 …私も、貴子にしたのと同じこと、口の中に、された。

 そこでまた、どうしよう、と思う事態が。この口の中のもの、どうしよう。
 …・。
 悩んでると、貴子がティッシュの箱を差し出してきた。よかった…。

 私と貴子は、座ったままの状態で、思い切り抱き合う。
 さすがにキスはしなかったけど…。

 しばらく抱き合ったあと、貴子が言った。

「またお風呂入ってこよう」
「うん」


 二人とも女物を脱いで、部屋を出ようとして、気付いた。
 もう、窓の外は薄明るいことに。

 そして部屋を出て気付いた。

 広間で、4人の方が、すでに起きていて、煙草ふかしてたり、お茶を飲んでいることに。


「お疲れ様〜お風呂どうぞ」

 まゆさんが、満面の笑顔で言った。
 その場で固まってる私たちに向かって、同じく笑顔のユリさんが言う。

「とりあえず、まゆさんの命令により、のぞきは禁止されたから…。
 でも、思いっきり、声とか音、漏れてたよ。気をつけたほうがいいね」
「は、はい……」

 僕と貴史は、まるで逃げるように風呂場に向かう。本当に逃げたいくらいだけど。


「やっぱり、聞かれてたんだね…」
「だね…・」
「いいけどね。みきちゃんが相手だから。みきちゃんは?」
「うん」
「また、そっけなくなったー」

 貴史は笑ってるけど、僕にはそんな余裕はない。まったくない。

 そして風呂の帰り、案の定、僕と貴史は呼び止められて、
 さんざん冷やかされたり、尋問を受けたりして、朝食まで解放されなかった…。



<つづく>


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