題「冬のデート」 | |
今日は剣八とやちるとで現世で遊ぶ約束をしてた日だ。 待ち合わせの場所に行くと二人はもう着いていた。 「おっせえぞ!」 「いっちー!こっちだよー!」 「よォ!遅くねえよ。5分前だっつの」 「剣ちゃん、1時間前から待ってたよー」 「やちる!余計な事言うんじゃねえ!」 1時間も前から待っててくれたことが嬉しくて顔が綻ぶ一護。 「でも道に迷わず来れたんだろ?すげえじゃん」 「ふん」 「えへへ〜」 心なしかどや顔の二人。 「どこに行く?」 「さあな。俺らはこっちの娯楽なんて知らねえぞ」 「いっちーはどこに行きたいの?」 「え〜と」 スマホを取り出し話していると柄の悪い声が聞こえた。 「おい、そこの能天気な頭してんの黒崎じゃねえのか」 「あ”あ”?」 俺が反応する前に剣八とやちるが振り向いた。 「ひいっ!」 「てめえら…あっ、やべ」 剣八に睨まれて動けない不良を他所にその場を離れる。 「ほら!早く行くぞ!」 「……」 グイグイ腕を引っ張って歩く。 「も〜!なんなのあいつら!」 プンプンと怒るやちるを宥めながら歩いてると剣八の手が腰に回ってきた。 「剣八?」 「…」 不機嫌な顔で無言のままグイッと引き寄せられる。 「あ!剣ちゃんずるい!あたしも!」 と小さな手を伸ばしてくるやちると手を繋げばぎゅっと握ってきた。 「寒ぃな。あったかいもん飲むか」 とカフェのチェーン店に入る。 「何飲む?」 「知るか」 「じゃあ俺が選ぶぞ」 「ああ」 俺がカフェオレ、やちるがキャラメルマキアート、剣八にはカフェラテにした。 「悪かねえ匂いだな」 「そうか。俺のも飲んでみるか?」 「ん」 「ほい」 「美味し〜!いっちのはぁ?」 「ん?飲んでみるか?」 「うん!じゃああたしのもあげるね!」 「ありがとな」 と3人交換したりした。ふと、隣の剣八の顔を見れば口元に泡が…。 「んっふ!」 「あん?」 「剣ちゃんにおヒゲが生えた!」 「はあ?」 「口元に泡が付いてんだよ」 と言えばハンカチで口を拭った。 キャッキャッとはしゃぐやちるの顔にも付いてたので拭かれてた。 どこに行こうかと検索する。 映画、プラネタリウム、動物園、水族館…。 なんか、映画館とプラネタリウムはヤバい気がする。暗いから寝るかもだし、なんかされそう…。 動物園はちょっと寒いかな?じゃあ水族館かな? 「水族館と動物園どっちがいい?」 「なにそれ何があるのー?」 「水族館が魚とか見るとこで、動物園が…まあライオンとか猿とか熊とか、名前の通り動物がいるとこだよ」 「強ぇやついんのか?」 「何で戦う前提なんだよ馬鹿!見て楽しむんだよ!」 「つまんねえな」 「任務じゃねえんだからいいの!」 なんか動物園だと暴れそうだから水族館にした。 薄暗く、水槽からの青い光で満たされた館内。大きな水槽の前でのやちるの第一声は、 「こんなにいっぱいのお魚食べきれないね!」 だった。 「だなぁ」 「食うな。愛でろ!」 「ええ〜?だってあのいっぱいいるお魚、食堂でよく出るよぉ?」 とイワシを指さす。 「ここでは海の中にいる魚の様子とか見るの!ほら!サメもいるぞ」 「わあ!おっきい!剣ちゃんとどっちが大きいかな!」 「ジンベイザメならサメの方かな」 「ふうん?」 と上の方をそのジンベイザメが悠々と泳いでいった。 「ほら、あれがジンベイザメだ」 「おっきい!」 「…まぁ、一太刀ってとこか」 「何が!?」 水族館の後、食事をして近くに小さな遊園地があると聞いたので行ってみる。 寂びれた遊園地には大きな観覧車があった。 「あれに乗る!」 というやちるに従いそれに乗り込んだ。 古い観覧車がキィキィと鳴きながら登っていく。はしゃいだやちるが足をパタパタさせながら窓の外を眺めている。 (かわいいな)と微笑ましくなる。冬特有の重い曇り空が近づいてくる。 隣にいる男からはいつもと違う匂いがする。なんの匂いだろう?香水みたいだ。 「なぁ、あんた今日なにか付けてるのか?」 「あ?」 「なんかいつもと違う匂いがすんだけど、香水か?」 「俺がそんなもんつけるかよ。弓親が髭剃った後に塗れって寄こしたやつだろ」 「ふぅん…」 「なんだ、気に入らねえのか?」 「ああ、違う違う。俺も欲しいなって思って」 「お前はヒゲねえだろうが」 「ん…だってそれあったらこっちに居てもさ、なんかあんたが近くにいるみたいだし…」 そんなことを言った後、猛烈に恥ずかしくなった。 「あ、ナシナシ!今のなし!」 「ばぁか」 くっくっと笑いながら剣八が口付けてきた。視界の端でははしゃぐやちるの後ろ頭と青みがかった鉛色の空が見えた。 観覧車が地上に戻り、遊園地を後にする。 「今日は何時頃にあっちに帰るんだ?」 「…今日は泊まりだ」 「ホテルに泊まるんだよ〜!」 「え、珍しいな」 「なんならどんな部屋か見てみるか?」 「良いのか!見たい見たい!」 連れてこられたところは最上階のスウィートルームだった。 「あたしはあっちの部屋だから!また明日ね、いっちー!」 隣じゃなくそのまた隣の部屋の前へ。 「へ?明日って。やちる一人部屋なのか?一人で大丈夫か?ちゃんと寝れるか?」 と心配する一護。 「大丈夫だよぉ!」 「お前より年上だろうが」 と呆れる剣八。 「でもなぁ」 「なんだお前、あいつに聞かれてぇのか?」 「はぁ?」 「あいつなりに気ぃ使ってんだよ」 「あっ!バカ!」 部屋に入れば初めて見るスウィートからの夜景にはしゃぐ一護を後ろから抱きすくめて耳元で囁く剣八。 「ガキみてえにはしゃいでんなよ…」 「あ…!」 耳朶に唇を這わせて一護を見るとずっと窓を見ている。 (なんだ?)と窓を見るとそこに映った剣八をずっと見ていた一護と目が合った。 「っ!」 「可愛い奴」 窓に映った一護と目を合わせながらイタズラ(意味深)を続ける剣八。 窓に映った剣八がカッコよくて見惚れてたら目が合った。そのまま体をまさぐられ、恥ずかしくて目を瞑ったら口付けられた。 それはすぐに深いものになり、そのままベッドに押し倒された。 いつもよりすごく興奮したのを覚えてる。 知らない部屋と天井。嗅ぎ慣れない匂いがする剣八が見慣れない洋服を着て俺を見下ろしていた。 「ああ…!」 いつもより性急な動きに、ああ、剣八も興奮してるんだと思うと体の奥が甘く疼いた。 いつもより興奮して感じやすくなっているのか、何度もイかされ、気付けば正常位で抱き合っていた。 「あ、ああ、ん!剣、ぱちぃ…!」 不意に剣八が身体を起こし対面座位になった。 「あっ!ふ、深いぃ…ッ!」 急に奥まで突かれて身悶えていると俺を抱え、立ち上がった剣八。 「あっ!ああっ!なぁっ!きゅ、急に!」 「ちゃんと抱き着いてねえと落ちるぜ?」 「あっ!ああっ!奥!ひっ!ひぃっ!ああっ!」 ベッドから下りる時の衝撃で最奥を突かれ声を上げ、果てる一護。 「お…ご…っ!〜〜っ!あ…!あ…」 ぎゅうぅう!と抱き着く一護を抱え、歩き出す剣八。 「あっ!やぁっ!う、動く、なぁっ!」 一歩歩く度にずん!ずん!と最奥を突かれ、視界に火花が散る。 「うっ!あっ!おっ!奥っ!ひっ!ふかっ!いっ!」 剣八の広い背中に爪を立て、しがみ付く一護。 窓の横の壁に背中が当たる。 「ひ!冷たっ!」 気が付けば、剣八と繋がったまま窓辺まで抱えられてた。 「ひん!な、なに!あんん!」 「は…!こっからの眺めが、気に入ったんだ、ろ!」 「ああっ!ば、ばかぁ!」 「ほれ、ちゃんと見ろよ?」 「あ!あ!み、見え、な!剣八しか!見え、ない!あ!あう!ふ、ふかいぃ!奥、だめぇ!あっあーーっ!」 ぐぽんっ!ごりっ! 「お”…っ!〜〜〜〜っ!」 最奥の奥の奥まで貫かれ、ぎりぃっ!と背中に爪を立てた。微かに息を飲む気配がした。 そのまま窓の横の壁に押し付けられ好き放題揺さぶられた。 ギシギシ、ガタガタと耳障りな音が響いたが叩きこまれる快感に何も聞こえなくなった。 背中に柔らかい衝撃を感じて、気付けばベッドに押し倒されていた。 「ふあ、あ、あ…!」 ベッドの縁で押し倒された俺の両足を肩に乗せ、覆いかぶさる剣八。 「う、ああ、あああ!」 「ふッ!ふーーッ!」 重い、剣八の重さだ…。背に回していた手はもう力が入らず、ベッドの上に投げ出されている。 「あ…っ、う…っ、ふぅっ、んっ、ぐっ、あ…」 投げ出されていた手を剣八が繋いでくれた。指を絡ませ、ぎゅうっと掴んでくれた。 「ああ…!」 ベッドに縫い付けられた手、胎内の奥深くまで飲み込んだ剣八自身の熱さ、脈動、荒い息遣い、微かに香る汗、余裕を欠いた表情全てに追いつめられる一護。 「う、うう、んぐっ!んあっ、あっあっあっ!ひっ、あっ、あ〜〜〜っ!」 「ぐうっ!う…!」 腹の奥で弾けた熱にさらに感じる一護。 「ああ…っ…!」 身体が軽くなる。剣八が俺の上から身を起こしたようだ。そこで俺の意識は途絶えた。 ぴちょん…! 「う…」 「…起きたか?」 目が覚めると後ろから剣八に抱えられ、湯船に浸かっていた。 「うあ…?」 かすれた声が漏れた。 「啼かせ過ぎたか」 と優しく喉を撫でる剣八。 「このまま寝ちまえ…」 手で目隠しをされた俺は急激な眠気に襲われ、そのまま身を任せた。 翌日、昼過ぎにようやく目が覚め、起き上がれた。 剣八は俺の身支度を全てやってくれていたようで、俺は綺麗なバスローブを身にまとっていた。 「起きたか?」 「ん…おはよ…」 「もう昼だな。…飯は食えそうか?」 「ん、腹減った」 そのままホテルのラウンジで食事した後、3人でホテルを出た。 電車に乗って帰る3人。色気駄々洩れの一護を守るように扉横のスペースを陣取る剣八。 やちるが剣八の肩に乗るから、 「おいで、やちる」 と抱っこする一護。 「足が当たって怪我させちまう」 「はぁい」 やちるを抱っこする一護を両腕で囲う剣八。 「ふふ…」 「あん?」 やちるを抱っこして笑う一護。 「やっぱあんたカッコいいなって思ってよ」 「!・・・ふん!」 声を潜めたやちるが一護の耳元で、 「剣ちゃんの耳…」 と囁いた。見ればそこは赤く染まっていた。 後日、一護の家の洗面所には見慣れないアフターシェーブローションが一つ増えた。 一度、勝手に親父に使われたので自室に持って帰った。 「隊長、なんだかご機嫌ですね」 「別に」 「そうですか?そんな事より!僕が選んだアフターシェーブローション使ってくれてるんですね!気に入ってくれました?」 「ああ、まあな」 「ふふふ」 「いっちーとお揃いだもんねー」 「は?」 「知らん」 「剣ちゃん照れてるー」 23/01/17作。213作目です。 ピクシブに上げている小ネタにエロを加筆しました。ちょこっと最後も加筆。 |
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