題「好きと云ふもの」
 食堂で飯を食ってる時に弓親が、
「ねえ、お互いのどこが好きなの?」
と聞いてきた。一護が少し考えてこう答えた。
「…顔?」
その答えに驚いたのは俺自身だ。自分の顔が恐ろしいことなど身に染みて知っているからだ。
「はぁ?」
思わず声が出た。
「へえ?どんなとこが好きなの?」
意地の悪い顔で質問を続ける弓親。
「うえ!?べ、別にもう良いだろ!」
顔を真っ赤にして飯を搔きこんで逃げるように食堂を出て行った。
「ちっ!逃げた」
「そら逃げるだろうよ。横に本人が居るのによ」
呆れた声で一角が茶を啜りながら言う。
「だから言わせたかったのさ」
「良い性格してんなぁ、お前」
「で?隊長は黒崎のどこが好きなんです?」
「うるせえ」
ニヤニヤ笑う弓親を小突いて食堂を出た。

 夜になり、褥の中で乱れる一護に訊いてやる。
「俺の顔が好きなんだって、なぁ?」
「あ、あ、はっ、ん、ん!っすき…ぃ!」
もうすでに快感で蕩けているからか、素直に答える。
「は…っ!どこ、が…!」
「あっ!ああ!鼻、の形、と!」
「ああ…!」
「んん!くちびる、とぉ!いあっ!いいっ!」
「それで…っ!」
「いっ、あっ!は、歯!」
「は?」
「あうぅ!う、う!あ、尖った、け、犬歯が!」
「ああ…っ」
「あ、あ、め、目のぉ!い、色とぉ!んあぁ!あっ!あっ!」
「…っ!」
「は、ぁっ!お、俺を見る時のっ、あっ、め、め、目がぁ、一番!好きぃっ!」
「っ!もういいっ!」
「ああっ!あっ!あーーっ!やぁっ!あ”っ!あ”っ!はぁっ!あっ!あ”--っ!」
聞き慣れない賛美に耐えられなくなり、大人げなく攻め立てる。
身も世もなく啼き叫ぶ一護の喉笛に噛みつく。
「あ”あ”っ!う”~~!」
そんな俺の首に腕を回し、抱き締めてくる。
「う!う!うう~!」
口を離し、血の滲むそこを舐めては吸う。
「あ、あ~…!」
感極まった一護は目を閉じて喘いでいる。その目が俺を見ていない事に機嫌が悪くなるのを自覚した。
「なんで目ぇ閉じてんだ。お前の好きな顔だろうが、ちゃんと見ろ」
言いながら一護の頬をぺちぺち叩けば、ゆっくりだが目を開けて俺を見た。
「ん、ふぅ、あ、ああ、あああ!」
目が合った瞬間、一護の胎内が俺を包みこんで締め上げた。
「ぐぅっ!て、めぇ!」
「ああっ!ああっ!やっ!やあぁあああっ!」
きゅう、きゅう、と締め付けながら痙攣する一護の身体。
「お、おい…!」
「うっ!うあああっ!あああっ!あーーーっ!」
更にきつく締め付けられ耐える間もなく中に出した。
「うっ!うあぁああ…!」
びくっ!びくっ!と跳ねる一護も達したようだが何も出ていない。
「はっ!メスイキかよ…!最高だなぁ、お前はよ」
目が合っただけで深く深く達した。ああ!ああ!なんと愛おしい存在か!
「誰にも、やらねぇ…」
手放せないと再確認し、無意識に流した一護の涙を舐めとり、頬に瞼にと口付けの雨を降らせていく。
気付けば意識を飛ばしていた一護の体を抱きかかえ、湯殿に向かった。


 目が覚めると片肘を着いた剣八が俺を見ていた。
「…あ、…かは!はっ!」
「啼かせ過ぎたか…」
そう呟いて枕元の水差しから水を口に含むと俺に口移しで与えた。
「ん!んく、んく、ん、はぁ…」
落ち着いた俺の髪を優しく撫でる剣八。
「ん…、なに、ど、した…?」
「なんでもねえよ…」
するすると指の間から流れる髪。地肌を撫でる指が心地良くてウトウトしてしまう。
ふと、剣八の顔を見ると、普段見たこともない優しい目で俺を見ているのに気付いた。
「あ…?なに?きげん、いい?」
「ああ…」
剣八に手を伸ばそうとしたけど、鉛のように重く動かせなかった。
「な、んで…?」
困惑していると、その手を取って俺の手の平に口付けした。
「ん…!」
「一護、好きだ」
「え…」
「お前は俺の顔が好きだろう?俺はお前自身が好きだ。強えとこも、ガキなとこも、声も、顔も体も、この目も好きだ」
「え、あの…」
「一護…一護…」
俺の名を呼びながら触れるだけのキスの雨を顔じゅうに降らせる。
「ん、ん、俺、も、好き、だ。あんたの全部、顔も声も体も、その目も、髪も、ぜんぶ、好き」
「ああ、知ってるよ…」
なんで?と思ったが瞼が重くて、もう限界だった。
「ん、剣、ぱち…ねむ、い…」
「ああ、ゆっくり寝ろよ。疲れただろ」
その声を最後に俺は眠りに落ちた。

 次に目が覚めた時、ありえないほど痛む腰に起き上がれず、加減ぐらいしろ!と怒鳴ってもどこか嬉しそうに俺の世話を焼く剣八にはこれ以上何も言えないのだった。





22/10/14作。212作目。
ツイッタで呟いて勢いのあるうちにと書き上げました。
ちなみに二人は正常位です。




文章倉庫へ戻る