題「巡り合う輪廻」

何度も何度も出逢っては何度も何度も恋をして何度も何度も置いて行かれる。それでも何度も何度も探して見つけだす。

あいつと初めて出会ったのは卯ノ花と戦った後。怪我をして気絶していた俺を介抱していたのがあいつだ。
目が覚めた時、俺より少し年上のあいつが傍に居た。すぐに殺そうとしたが体が思うように動かなかった。
「起きたのか。大丈夫か?お前すげえ怪我で血が凄かったんだぞ。しばらくは寝てろよ」
「誰だ、てめえ」
「俺は一護。血の海で気絶してたお前を見つけてここまで運んだんだ」
「頼んでねえだろ」
「まあな。俺が勝手にしたことだよ。動けるようになるまでは此処に居ろよ」
そんなあいつとの奇妙な生活が始まったがすぐに終わりが来た。
周りに居るのは獣に近いモノばかりの場所で弱った獲物はすぐに見つけられる。
襲われた俺を庇ってあいつは死んだ。その時の俺は何も感じなかった。馬鹿な奴が死んだのだと、そう思ったのだ。
死んだあいつを見て、訳の分からない感情が生まれた。どこも刺されてもいないのに、どこも切られてもいないのに、痛い。
痛い、苦しい、痛い…。なんだこれは。
俺はあいつを殺した奴らを一人残らず切り刻んだ。動くものが無くなるまで…。
それからずっと俺は一人で過ごした。今まで通りに。

あの日から何年経ったのか分からないが、俺はまたあいつと出会った。
忘れない。あの髪の色、目の色を、あの存在を…。
あいつは俺を知らないと言った。なのにあいつは俺のそばを離れなかった。俺も離れなかった。
今は俺の方が年上になった。
そして、また死んだ。それを何度も繰り返した。どうやら俺はあいつと必ず出会うようになっているようだ。
そのうち、お互いが特別な存在になった。獣が番うように俺たちも番うようになった。
死なせないようにするのにあいつは死んでいく。俺だけを残して、すり抜ける。何度も、何度も…。

俺たちは何度も出会って、その度に番うようになった。

やちるを拾った頃にも出会った。
「あんたの子か?」
と聞かれて俺は、
「違う。草鹿で拾った」
と答えた。
やちるはあいつにすぐ懐いた。あいつもやちるを可愛がっていた。なのに…、虚に襲われたやちるを庇ってあいつはまた死んだ。

何度も出逢って、姿はいつも同じ、橙色の髪に茶色の目をしていた。
一方的な「初めまして」に慣れた頃、女のあいつと出逢った。それは初めての事なのに、俺はすぐにあいつだと理解した。
子供も出来たが目を離した隙に腹の子もろとも殺された。やちるが泣いていた。俺は泣いたのか思い出せない

それから俺達は死神になって出逢う頻度が減った。もうあいつの事を知っているのは俺とやちるだけだ。

そして、また出逢った。今度は現世で生きている状態だった。やっぱりあいつは俺を覚えていないがどうでもいい。
俺は歓喜した。今度のあいつは今までにない強い霊圧で俺と対等に戦った!今度は、今度こそは死なないだろう。死なせはしない。

今生でもやはり俺たちは番いになった。男同士なのにと気後れするあいつを半ば強引に組み敷いた。
「俺はお前が良い。お前だけが欲しい。もう二度と離さない」
今まで告げたことのない想いを告げて漸く手に入れた。

こいつは俺を思い出さない。それでも必ず俺と出会い、恋をする。
ある日、ふとした瞬間に「あんた、そんな髪型だったか?」と聞いてきた。
少しは魂とやらに俺の存在が刻まれているようで、柄にもなく舞い上がってその日は加減を忘れて抱き潰してしまった。
現世と尸魂界を隔てているが、こいつは俺に会いに来る。今までより長い時間を共に過ごせそうだ。






22/09/28作 210作目
ツイッタで呟いていたものです。
流魂街で死んだら転生できるのか?と思いましたがそのまま書きました。




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