題「子猫・番外編」
 今日、一護はやちるに連れられて、朽木邸の秘密基地で遊んでいた。
ここならお菓子もあるし、楽しいよと誘われて来たが、やはり猫。すぐ飽きた。何より剣八が見当たらないのが気に入らない。
メンバーに黙って外に出る。
外に出て、庭の景色にしばし見とれていた。
池があるのに気付いて覗き込む。大きな黄金色の鯉が泳ぎ回っていて、興味を惹かれた。

 池の傍でチョコンと座り、尻尾を大きく揺らしていると声を掛けられた。
「黒崎か・・・」
ん?と振り向くと白哉が後ろに立っていた。
「にゃあ」
と一言挨拶すると、また池の鯉に夢中になった。
揺れる尻尾で白哉の足がはたかれる。どちらも気にする事なく、しばらく一緒に池を眺めていた。
そのうち、一護が身を乗り出した。
「む、待て黒崎。お主まさか・・・」
そのまさか、鯉を取ろうと構えていた。すい〜と近づいた鯉に狙いを定めて、水を切るが失敗。そのまま池に落ちてしまった。
ドッポーン!!と景気の良い音をさせて見事に落ちた。
「うにゃああ!」
ぷはっ!と池から這い上がると、身震いして身体の水を切る。
はあ、と白哉が溜息をついて、剣八宛てに地獄蝶を飛ばした。
「今すぐ十一番隊に使いを出す故、待っていろ」
「にゃあ・・・」
しゅんと耳を寝かせて返事する一護。
「しかし、お主どこから参ったのだ?」
「にゃ!」
一護は屋敷を指差した。正確には屋敷の壁を。
あやつらの影響か・・・。また一つ溜息をついた。
「良いか、黒崎。今度からは門からやって参れ。それから池の鯉は食えん。見るに留めておけ。良いな?」
「にゃあ」
「良し。丁度迎えも来たようだ、これをやるから今日はもう帰るが良い」
小さな金平糖の包みを一護の手に乗せてやると一護の唇がゆっくり弧を描き、見たことの無い笑みで返される。
白哉は少し驚いたが表面には出さなかった。
「若、更木隊長がお見えです」
「うむ、通せ」
「邪魔すんぜ。何やってんだ、てめえは。おら、風邪ひく前に帰るぞ」
「にゃあ」
「あん?ああ、おい朽木、こいつがなんか貰ったらしいな、礼いってるぜ」
「つまらん物だ、気にするな」
「そうかよ、まあいい。邪魔したな」
「にゃー」
一護が挨拶して二人は帰った。
しかし見事な落ちっぷりだったと、一人笑う白哉。

 帰り道、一護が盛大なくしゃみをした。
「寒いのか?早く風呂入んぞ」
担いで瞬歩を使って隊舎まで帰り、すぐ二人で風呂に入った。
「ったく、お前は目を離すと何するか分んねえな」
「みゅう・・」
「ああ、もういい。ほれこっち来い」
湯船の中で引き寄せられ、頭をすり付け甘える。顎を持ち上げられ、
口付けられる。
「ん・・・、ふうん」
鼻に掛った声をもらす一護に、
「くくっ、風呂から上がったら、可愛がってやるよ一護・・・」
「にゃあう・・・」
剣八の首に抱きつき、尻尾を揺らす一護は、恥じらいつつも嬉しそうだった。

 しばらく、朽木邸では、池の傍でチョコンと座る一護が見受けられたとさ。 








15/06/16 今は閉鎖された『剣一同盟』様でアップさせて頂いた作品です。多分08年ごろの作品です。フォルダから発掘したので加筆修正をしてあげてみました。




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