題「白のお散歩」
 白の散歩は大体一人である。
娘の夕月は朽木邸で遊んだり、たまに雨乾堂にも行っているようだ。やちるや幾望と遊んだりしている。
プラプラと歩きながら雑貨屋や新しい甘味処を見つけると、
(お、新しい店。今度一護と来ようかな)
などと考えている。

 さて、白は大体において金銭を持ち歩かない。興味が無いのもあるが、計算が面倒だ、解らん!と言って持ち歩かない。
それに対して妻に甘い京楽は、護廷の店で白が買い物や飲食をした場合、月極めで支払いをしている。あまりに金額が多いと怒られたりもするが・・・。
「腹減ったな。いつもの店行くか」
と行き付けの甘味処へ入るといつもの席に座って、店の親爺が来るのを待った。この店は言っては何だが客がそう多くない。
だからと言って味が悪いわけではない。むしろ美味い。その静かな店が白はお気に入りだ。白が気に入っている所は他にもあり、自分を【京楽隊長の妻】だとか【貴族】だからと言った色眼鏡で見たりしない所だ。
店の親爺が茶を出してくれたので、
「何か新作あるか?」
と訊いた。
「そうですねぇ。新米が入荷したんで、胡桃で作ったタレをかけたお団子なんてどうです?」
「ふぅ〜ん、美味そう。んじゃそれくれ」
「はいはい。ちょっと待って下さいね」
と奥に引っ込んでいった。
店には白の他にも数人の客が居た。各々楽しそうに会話をし、親爺自慢の菓子に舌鼓みを打っている。
その内何人かは白に気付き、
「あ、京楽隊長の・・・」
「本当だ、こんなお店にも来るんだ・・・」
とひそひそやっている。耳の良い白には丸聞こえだが、どうでもいい内容だったので流しておいた。

 そのうち、盆に新しいお茶と団子を乗せた親爺が戻ってきた。
「お待ちどう様」
「おう!美味そうな匂いだな!」
皿に乗った胡桃のタレの掛かった団子は真っ白でつやつやと光っていた。
「いただきます!」
お行儀よく手を合わせてから、大きな口でパクリ!と串に刺さった団子を頬張る白。
「〜〜!うっめえ!すげえ美味い!」
口に含んだ瞬間、鼻を抜ける香ばしい胡桃の香り。噛むごとに甘味を増し、米本来の香りが口中に広がり、飲み込むのがもったいないくらいだ。
「ん〜!このタレがまた美味ぇな。なんつーの?濃いけどしつこくねえっての?団子もうめえなぁ。いつもより甘いか?」
「良くお解りで。新米は古米より甘いんですよ。新米は今の時期だけですからねぇ」
「へぇ〜」
ずず、とお茶を啜り、
「これ土産に持って帰りてぇから、え〜と・・・」
指折り数えながら何やらぶつぶつ呟く白。
「一護と幾望だろ?あと剣八も食うのか?それとやちると・・・俺のとこは夕月と春水と俺と・・・」
それを優しい目で見守る親爺。
「えっと、四人分と三人分、分けて包んでくれっか?」
「はいはい。そんなに気に入って頂けて嬉しいですねぇ」
「美味いもんは好きだからな。それにこんなに美味かったら皆で食いてぇしな!」
ニカッ!と笑って2本目の団子を頬張る白。
「ありがとうございます。じゃあ少しお待ち下せぇ」
「うん」
もっきゅもっきゅと団子を頬張る白の顔があまりにも幸せそうでこちらまで幸せな気持ちになった。

 団子を食べ終わり、お茶を啜っていると団子の包みを持って親爺がやってきた。
「お待たせしやした」
「お!出来たか?」
包みを受け取ると温かく出来たてだと解って顔が綻んだ白。
「下にある少し大きい包みが四人分で、上のが三人分ですんで」
「分かった。んじゃ、また来るな!」
「はいはい。お待ちしてますよ」
そのまま店を出る白。次の行き先は一護と京楽の所だ。
「一護達、喜んでくれっかな?」
まだ温かい包みを大切に胸に抱えると護廷へと急いだ。

 十一番隊に着くとすぐに一護が出迎えてくれた。
「にぃに!夕月も来てるよ」
「ママ!」
丁度一護の所に遊びに来ていた夕月が白に気付いて足に抱きついてきた。
「うおっと!今日はここで遊んでたんか、夕月」
「はいです!ママ、何持ってるですか?」
白の持っている団子の包みに気付いて聞いてきた。
「ああこれか?俺のお気に入りの甘味処の新作の団子だ。ほい、一護。コレ土産だ」
「え!良いの?にぃに」
「おう。ウチの分もあるしな」
「わぁ!有難う!にぃに!ほら幾望、お礼は?」
「ありがとー!」
「おう。夕月、一緒に帰るか?」
「ハイです!じゃあまたね!」
「またね〜!」
「ねえママ。次はパパの所ですか?」
「良く分かったな!早く食わねえと団子が固くなっちまうからな。丁度おやつの時間だしな」
「わあい!楽しみです!」
夕月と手を繋ぎ、八番隊に行くとやはりと言おうか京楽が出迎えた。
「待ってたよ〜。お茶の用意は出来てるよ」
にこにこと二人を迎え入れた。

 お茶が出されて3人になるとこの団子を買った甘味処の話をした。
「でな、あんまり美味いから春水と夕月と一護達にも食わせたくって買ってきた!」
「そうなのかい。それは嬉しいなぁ」
「はいです!」
団子を口にした二人。
「これは・・・美味しいねぇ。白は美味しい物を見つける天才だねぇ」
「おいしいです!夕月もそのお店に行ってみたいです!」
「じゃあ今度3人で行こうぜ!あんまうるさくない店だし!居心地良いぞ!」
「そうだね、今度の非番の日にでも行こうか?」
「ほんとか!」
「ほんとですか!」
白と夕月が同時に詰め寄る。
「うんうん。行こうね。約束しよう」
と小指を差し出し、順番に指切りをした。

その後、店では白があんまり美味しそうに食べるので、この胡桃のタレの団子が飛ぶように売れたとか・・・。







13/10/28作 200作目です。白ちゃんの日常。大体こんな感じで、偶に雑貨屋でお買い物したり呉服屋で着物買ったり・・・。子供と京楽さんの着物ばっかですけどね。白ちゃんのは京楽さんが買ってくるし(脱がすのも)(笑)




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