題「惚気る」
 先程からの夫婦の会話。
「春水、乱菊から飲みに誘われたんだけど行って良いよな」
にこにこと笑いながら訊いて来た。
「駄目」
「なんでだ?」
まさか反対されるとは思わなかった白が理由を聞いた。
「だって僕今日残業で行けないんもん。ボクが居ないとこでお酒飲んじゃ駄目」
「だって乱菊達だぞ!皆知り合いじゃんか!」
「駄目なものはだ〜め!・・・男も居るんでしょ?絶対だめ!」
「ええ〜!な〜な〜、行〜き〜た〜い〜!酒飲まないから〜!」
「そんなに行きたいの?」
京楽の羽織を掴んでぐいぐいと引っ張りながらお強請りする白に、困ったような顔で聞いてくる京楽。
「うん!あいつ等と夜に食いに行くの初めてなんだ!」
「もぉ〜しょうがないなぁ。そんなに言うなら行っても良いけど・・・」
「ホントか!?」
「約束してね?絶対お酒を飲まない事!いい?」
「分かった!飲まない!約束な!」
とうとう根負けして条件付きで行く事を許した京楽と指切りをする白。

 約束の時間になり、迎えに来た乱菊にその旨を伝えると、
「愛されてるわねぇ〜」
とニヤニヤされた。
そのまま予約していた店に行くとほとんどいつものメンバーが集まっていた。
「何だ、俺が最後か?」
「そうなっちゃったわね。さあさ、早く始めましょ!」
と飲み会が始まった。

 最初のうちは男性陣の腹拵えから始まり、どんどん酒も追加されていった。
「なんだ?白は飲まねえのか?」
と恋次に聞かれ、
「春水に飲んだら駄目だって言われたから飲まん。あ、唐揚げ!」
「ふーん。・・ああ、今日は京楽隊長居ねえもんな・・・」
と呟くと周りも納得していた。
「なあ、そういやあ一護は来てねえんだな」
と気付いた白が訊くと、
「あぁ、あの子ね。一応誘ったんだけど」
『剣八と二人で飲むのが好きだからゴメンね』
「って言われちゃってねー。あそこも万年新婚よね〜」
「ふう〜ん」
と返事をしながら手元にあったオレンジジュースを飲んだ白。
「あ、美味い」
くぴくぴと飲んでいく白。
メニューからジュースと思しき者を注文していく白。
「あら?白ってば一杯飲んでるわね。何飲んでるの?」
「ん〜?ジュースじぇねえの?美味いぞ?」
いつもよりニコニコ笑っている白に違和感を覚えた乱菊が、
「・・・ちょっと味見させてもらってもいいかしら?」
と飲みかけのジュースを飲んでみるとそれはカクテルだった。
「ちょ!白!これお酒じゃない!」
「え〜、嘘だぁ。ジュースだって!甘いし、果物の味してんぞ〜?」
「あ〜あ〜、酔ってるわね」
ニコニコ、へらへら笑ってる白に悪戯を思い付いた乱菊が、前から聞いてみたかった事を聞いてみた。
「ね〜え、白。京楽隊長好きー?」
と聞いてみると無邪気な笑顔で、
「すきー!」
と返って来た。
「どんな所がー?」
「んー?優しいとこだろー?あとちょっと怖いトコも好きだし、匂いも好きー」
にこにこと笑いながら指折り数えていく白。
「怖い?京楽隊長怖い時あるの?」
「んー、たまになー、すっげえ真剣な目でずっと見てる時あんだ。いつもはすっげえ優しいのにな。でも俺、その目も好きー」
と素直に答えていく白。
「そう」
「髪も好きだし、髭も好きだし全部好き!あ!後なぁ後なぁ、俺に家族くれたことー!」
「!!」
「すっげえ嬉しい」
本当に幸せそうに笑う白に、その場に居た者は赤くなったり目頭を押さえたりしていた。

 急いで仕事を片付け、駆けつけた京楽が個室の外で全部聞いていた。自分の顔が熱を持ち、真っ赤になってるのが分かる。こんな顔では確実にからかわれるので入るに入れない。
(参ったねえ・・・)
カタン・・・、と物音を聞いた七緒が扉を開けると其処には京楽が立っていたので少し驚いた声で名を呼んだ。
「京楽隊長?」
「・・・やあ」
「春水?」
その会話を耳聡く聞いた白が席を立とうとしたが、酔っているのでよろけた。
ガチャン!とテーブルの上のコップを倒してしまった。
「きゃあ!白!大丈夫!?」
と言う中の騒ぎに慌てて中に入る京楽。
「白!?」
そこで見た物は、自分を見つけて極上の笑みを満面に浮かべている白の姿だった。
「春水」
両手を差しのべて待っている白。
何故だか目頭が熱くなって涙が溢れた京楽。
「春水、どうした?なんで泣いてる?どっか痛いのか?腹か、頭か?」
心配する白を抱き締めると優しく頭を撫でられた。
「大丈夫大丈夫、俺が撫でてやるから・・・。いいこ、いいこ・・・」
「白・・・僕のこと好き?」
「好きー。春水は?おれのこと、しゅき?」
「勿論、大好きだよ」
「くふふ!おれも春水らいしゅきー!」
きゅうう!と抱き付いてくる白。そんな白を抱きあげて瞬歩で屋敷に帰る京楽。
「あ〜らら。もうちょっと見てたかったわね〜」
と乱菊が言っていたが、
「俺らにはキツいもんがありますよ」
と一人身の男達がぼやいていた。

 屋敷に着いた京楽は白に抱きついて離れなかった。
「白は他にどこが好き?」
「ん〜?ほかに?おっきい手と指と〜、腕〜」
自分を抱き締める力強い腕に頬を擦り寄せる白。
「白、白、僕も君の全部が好きだよ!目も耳も、綺麗な鼻も、すんなり伸びた腕も、足も、全部、全部・・・」
ちゅ、ちゅ、とキスの雨を降らせ、
「この可愛い唇も大好きだよ」
と啄ばむ様なキスを繰り返し、深く口付けていく。
「ん、ふ、ぅん・・ん、ん・・・」
「白?」
気付くと可愛い寝息を立てて眠っている白。
「しょうがないなぁ。明日は手加減してあげないからね」
あどけない寝顔にちゅ、とキスを一つ落とすと兄の所へ夕月を迎えに行った京楽だった。



13/08/19作 198作目です。夕ちゃんは姉様の所に遊びに行ってます。
次の日の晩の白ちゃんの身が大変ですね。
本当は京楽さんが迎えに来た時点で耳も尻尾も出てて家に帰ったらエッチに雪崩れ込む感じだったんですけどね。
力尽きました。読みたいって方がいらっしゃいましたら加筆します。



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