題「新雪」
 ある冬の朝、白は寒さで目を覚ました。
「ん・・・寒・・・」
もぞもぞと蒲団に潜り込み隣で寝ている京楽の身体に擦り寄った。
「ん?」
フンフンと鼻を鳴らし、頭を蒲団から出していると、
「もう起きたのかい?早いね、白」
と京楽も目を覚ました。
「おう、おはよ春水。なぁ春水、雪の匂いがすんぞ」
「おはよう。雪の?ああ、どうり静かなはずだね」
障子を開けると廊下から痛いほどに冷えた空気が入ってきた。
「わあ、寒いよ白。君も冷えるといけないからお蒲団においで」
そんな京楽の声も無視して雨戸を開ける白。
「うわあ!真っ白だ!」
庭は深夜に降り積もったのだろう雪で辺り一面真っ白だった。
「う〜!寒い!」
「だから言ったでしょう?」
後ろから大きな身体に抱きしめられた白。
「ん・・・あったかい」
「もうそろそろ起きようか。ご飯の時間だしね」
「あ、うん」

 朝食を終えると初めて雪を見てはしゃいだ夕月が庭で走り回っている。
「すっ転ぶなよー」
「はぁい!ママ!」
半纏を着てきゃっきゃと雪の中で遊ぶ夕月。
縁側では京楽の胡坐の中に納められた白が夕月に声を掛けていた。
庭の雪は朝日を反射してキラキラと輝いていた。
「ふふ、まるで君の様だねぇ」
「俺の?」
きょとんと後ろを振り向きながら京楽の顔を見上げる白。
「うん。真っ白で誰の足跡もない君の心と良く似てる」
「そおかぁ?」
「その心に初めて足跡を付けたのは僕なんだよね」
んふふ、とにやける京楽。
「うっせ、ばーか」
照れたように前を向いて庭で遊ぶ夕月を見る白。
「君は僕の心に色を付けてくれた初めての人だよ。ありがとね」
「も・・黙れ・・・」
耳まで真っ赤になった白の顔を上にあげると触れるだけの口付けをした。
「ん・・・」
「ママとパパ仲良しです」
「!!」
「おや、夕月いつの間にそこに居たんだい?」
「今ですよ〜。ママもパパも一緒に遊ぶです!」
グイグイと京楽の手を引っ張る夕月の頭を撫でると、
「そうだね〜。雪だるまでも作ろうか」
「わあい!」
3人で雪だるまを作ると身体は芯まで冷えていた。
「寒いね。甘酒でも飲みに行こうか」
「美味いのかそれ?酒って夕月大丈夫かよ」
「甘くて美味しいよ。大丈夫だよ。アルコールは入ってないよ」
「ふうん?」

甘味処で甘酒を飲む3人。
「あ、美味い」
「甘くて美味しいです!」
「そう、良かった。生姜を入れても美味しいんだよ。身体もあったまるしね」
「へえ〜」
(後で一護にも教えてやろっと)
そんな事を考えながら二杯めの甘酒に生姜をひと摘まみ入れた白。
「うん、美味しい」
にこにこ笑う白の頭を撫でる京楽。その膝の上には夕月がちょこんと座っていた。

雪が積もったある冬の日。








13/01/28作 第194作目です。幸せな冬の一日でした。
半纏を着た夕ちゃんはきっとまんまるで可愛い事この上ないに違いない!




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