題「夢の通い路」
 霊力を無くした一護の枕元に佇む剣八。
「一護・・・」
と名前を呼びながら髪を撫でるがその手は何も触れる事無く一護の身体をすり抜ける。
故に寝ている一護は何も感じ無い。

一護は寝言で剣八の名前を呼んだ。
その顔と唇に煽られ口付けるが何も感じなかった。
吐息がかかる擽ったさも、柔らかい唇の感触も、一護の温かさも・・・。
「・・・ちっ!」
舌打ちを一つ残してそこから消えた剣八。
 
 朝、目覚ましのアラームが鳴る前に目が覚めた一護。むくりと上半身を起き上がらせると、
「グッモーニン!いッちッぐぉー!!」
とハイテンションな父親が飛び込んで来たので、そのまま窓を開いて外に落とす。
全く朝っぱらから煩い。階下で何やら怒鳴っている父親を無視しながら周りを見ても何も見えない。
命ある物以外、何も見えない。

これが普通の人間の見る世界。今まで夢にまで見た世界だ。
寂しくはない、哀しくはない。これが普通なのだ。

藍染を倒す為に最後の月牙天衝―「無月」を使った一護は霊力を失った。
もう一護の目には幽霊は見えない。勿論虚の姿も、死神の姿も―。

級友は言う。
「寂しくは無いのか」と。
一護は応える。
「寂しくねえよ。ずっと夢見ていた世界だ」と。

たった一つの誤算はあいつの存在だけ・・・。

噛み付くような口付けも、蕩けるような口付けも全てあの男が齎したもの・・・。

低く掠れた声が耳元で自分の名を呼ぶ。
それは昼日中(ひるひなか)には絶対に出さない艶を含んで一護を誘う。

いつもは刀の柄を握る手の平と指先が褥では一護の身体を這いまわり、身体の奥へと這入り込み、思いもよらない快感を生み出していく。

『一護・・・』

「ん、あ・・・ぁ、ん、あ・・・!」

『もうこんなじゃねえか、堪え性のねえ奴だ・・・』
ククク、と至極楽しそうに喉の奥で笑う剣八。

「うあ!あっ!」

起きて初めて夢を見ていた事に気付いた。
まだ心臓が早鐘を打っている。

「くそ・・・!」
一護は形を変えた自身に気付いて舌打ちした。
「責任取りやがれ・・・ばかやろう・・・」

もう会うことの出来ない()の男に悪態を付いた。
疼く身体を持て余し、寂寥感に苛まれる心を抱きかかえ、流せない涙は寝ている間に枕を濡らす。

昼間は普通に過ごす事が出来ても、夜になり一人部屋で居ると遣り切れない感情が襲ってくる。
己の無力感。
今まで当たり前の様に会っては肌を合わせていた男への思慕の感情。
「会いてぇなぁ・・・」
と思わずポロリと呟いた途端に抑え切れなくなった。
携帯で剣八の伝令神機の番号を呼びだす。その名前に、数字に胸の奥が切なくなる。
受話器に耳を当て、祈るような気持ちで発信ボタンを押した。

プルルル

と呼び出し音が聞こえ慌てて通信を切った。
折り返しすぐ携帯の着メロが鳴り響いた。着信には『剣八』と出ていた。
「も、もしもし・・・?」
「――――――」
ノイズも何も聞こえない。
もしも―。もしもの期待を込めて、
「剣八か・・・?」
と震える声で訊いた。
「――――――」
「聞こえない・・・。なんにも聞こえねぇよ、お前の声が聞こえねぇよ・・・・・・・・っあいたいよ・・・・・・っ!」

プツンッ!ツ、ツー、ツー、ツー・・・・

通信の切れた携帯の音を一護はいつまでも聞いていた。

 翌日、いつものように学校に行き、級友と遊んで家に帰って来た。
制服から部屋着に着替え、ベッドに腰掛ける。
携帯の着信履歴を開く。
そこには昨日の日付けで『剣八』からの着信が残っていた。
「夢じゃ、ねえんだ・・・」
まだ繋がっていると、嬉しくもあったが同時にひどく切なくなった。
この繋がりは一方的で、一護には相手の声を聞く事が出来ないのだ。
「剣八・・・」
名前を呟いた途端、遣る瀬無さに唇が慄いた。

 夜になりベッドに腰掛け、窓ガラスに額を預けながら遠くの空を見る。
「会いたいなぁ・・・」
と呟くと自嘲的な笑みを浮かべ、蒲団の中に潜って目を閉じた。
睡魔はすぐに訪れ、深い眠りに就いた一護。
寝入っている一護の、窓の閉じられている部屋に一陣の風が起こった。
ふわりと一護の髪が揺れた。
「ん・・・」
擽ったそうに寝返りを打つ一護。
『一護・・・』

そこには浦原特製の薬を飲んだ剣八が居た。

霊力の全てを失った一護には姿も声も聞こえないけれど、触覚だけは伝える事が出来る薬。
半信半疑で手を伸ばし、頬をなぞり首筋をなぞっていく。
「ん、んん・・・」
一護が反応した。パジャマ代わりのシャツに手を差し入れ胸の小粒に触れてみる。
「ふあ・・・!や、剣、ぱち・・・」
『!』
夢現であろうと肌を合わせているのは己だけであるようだ。
『一護・・・!』
その事に歓喜し、シャツを捲りあげ赤く色づいた小粒の片方を口に含んだ。
「ふ、あ・・・」
ぬるつく舌で舐めまわし、舌先で転がしては甘噛みした。
「ふぅ、ん!やぁ、あ・・・」
快感が下肢へと伝わるのか膝を擦り合わせながら腰を揺らしている。
そのスウェットに手を掛け、下着ごと剥ぎ取った。
一護の中心は既に蜜を溢れさせており、早く触ってくれと言わんばかりにぷるぷると震えている。
「あ、あふ・・・」
そこに長い指を絡ませ、ゆるく扱いてやる。
「ふあ!あ!あ!や!なに?!」
その刺激に目を覚ました一護。自分の格好を見て混乱する。

何故自分は半裸なのだ!この身を襲う感覚はなんだ!

クチッと先端に爪先を食いこませるとビクンッ!と吐精した。
「ひっ!んああ!あ、な、なに?なに?」
ふるふると震えながらも達した余韻に身を任せていると見えない何かが唇を塞いだ。
「ん!んー!んー!ふ!んー!」
触れるだけの口付けが暫く続き、ぬるりとした熱い舌が入って来た。
「ッ!んー!」
歯を食いしばり、侵入を拒んでいるとぬるぬると歯列を丹念になぞり、歯と歯茎の境を擽って行く。
「ん、ふ、ふあ!あっ!」
余りに長く続くものだから息苦しくなり、息を吸おうとした瞬間にするりと這入り込んで一護の舌を絡め取った。

強引で、こちらの呼気を奪うかの様な口付けには覚えがあった。
舌を絡めては、敏感な上顎をザラリと舐めては互いの唾液を啜りあう。ぷちゅ、と音と共に一旦離れる唇。
吸われ過ぎて赤く濡れている下唇を甘噛みしては舐めていく。
「ん、ふ、ふあ・・・ん」
敏感になった唇の端を何か引っ掛かる感触が走った。
「あ・・・」
何か思い出しそうになった所で鎖骨にチリリ!とした痛みを感じた。
「あぅっ!」

『一護、一護・・・』
名前を繰り返し呼びながら剣八は、胸への愛撫を繰り返す。
ちゅ、ちゅ、と軽く吸い付いては跡を残す程きつく吸い付くのを繰り返し、ぷくりと膨らんだ両の乳首へも唇を這わせた。
「ひう!や!そこは・・・!」
チロチロと舐めてはカリッと噛み、もう片方を指で摘まんで捏ねていく。
「あ、ああ!」
びくびく!と反応を返す一護。その乳首に唇を這わせた。
「あっ!」
やはり敏感なそこにも引っ掛かる様な感触を覚えた一護はもしやこれは夢で、剣八が自分を抱いているのでは?と思った。
だが、どんなに目を凝らしてもそこには影ひとつ無く、見慣れた自分の部屋の天井があるだけだ。

 どれだけ自分が一護の名を呼ぼうと一護の口から己の名前が出て来ない事に焦れてきた剣八。
こちらの声は聞こえていないのだから仕方が無いが、聞きたかった。
『一護、俺を呼べよ・・・。いつもみてぇに!なぁ、一護・・・!』
どれほど懇願しようがその声も届いていなくて・・・。
剣八は萎えている一護の中心を口に頬張った。次の瞬間、生温かい感触が自身の局部を覆ったのに驚いた一護が声を上げた。
「ひゃあ!あ!あ!あん!」
あっと言う間に硬度を取り戻したそこに舌を這わせ、くちゅくちゅと先端に舌を捻じ込み、ジュウッと吸い上げた。
「うあん!」
括れた部分を丹念に舐め、裏筋を舐め上げては陰嚢を口に含んで舐めしゃぶった。
「ひう!あっ!あ!やあぁ!」
自分の股間に顔を埋めているであろう者に手を伸ばし、押し退けようとするが動かなかった。
「あ!あ!も、もう!」
『イきそうか?一護・・・』
一旦口を離し問い掛けるも息だけしか掛からない。ヒクヒクとひく付く蕾に舌を這わせる剣八。
「はあっあ!や!だめ!そこは!」
丁寧に皺の一本一本を数えるかのように舐めては奥まで舌を捻じ込んだ。
「んやぁああ!」
ちゅぷ!ちゅぷ!と抜き差しを繰り返し、指を入れていく。
「あ!痛・・・!」
その声に動きを止めた剣八。
『痛ぇ?一本で?つーことは、あれから誰にも、触らせてねえのか』
剣八はそう呟くと舐めて濡らしながら、ゆっくりと指を埋めていった。
「あ、あう・・・、ひっ!ああっ!そこはっ!」
『ここか・・・変わってねえ』
ぐちゅ!と3本に増えた指で触れたしこりを押し上げる。
「ひぃっ!あああっ!ダメ!そこだめ!ああっ!ああっ!んああぁあーーっ!」
びゅくびゅくと達した一護。
「あ・・・、は、はあ、はあ・・・」
達した余韻に浸るその表情は扇情的で剣八はもう抑えが効かなかった。
『一護・・・!』
シーツを固く握りしめる手を自分の首に回すと足を持ち上げ、未だひく付くそこに熱く滾る自身を宛がい、一気に挿入した。
「あ!あああッ!」
挿入の衝撃に思わずその背に爪を立てた一護。
『クッ!思いっきり引っ掻きやがって・・・!』
とどこか嬉しそうに言うや抽挿を開始した。

 未だギチギチと締め付けるそこをゆっくり浅く抜き差しし、前立腺を突いては快感に啼かせた。
「あっ!あっ!ひん!」
慣れてくると、ズルルと際まで抜き、最奥まで突くのを繰り返した。
『一護、一護、一護・・・』
閉じられる事が無いその口の端から流れる涎を舐め取り、頬に掠める口付けをした。
「・・・剣八・・・?」
『ッ!!』
恐る恐ると言った風に問い掛ける一護に思わず動きが止まった剣八。
剣八の首に回していた手を顔に持って行き、ぺたぺたと触っていく。

こけた頬。
左の指先に触れるのは眼帯だろうか。
そして、右の指先に神経を集中してなぞって行く。額から続く傷跡を・・・。
額、眼窩、頬骨の上、そして・・・、唇をも両断するその傷跡。

ふるふると一護の指先が震えているのに気付いた剣八。
『おい?』
ふと一護の顔を見ると目にいっぱいの涙を溜めていた。
「・・・けんぱち・・・、剣八、剣八、剣八!剣八ぃ!」
ぽろぽろと涙を流しながら剣八の名を繰り返し呼び、口付けて来た。だがやはり見えていない為、若干ずれて、端の傷跡の部分に当たった。
「ん!ふ!あ!けん!んん!」
剣八はそんな一護の後頭部を掴むと深く口付けた。一護も剣八の後頭部に、髪に手を絡ませ口付けを深めていく。
「ん、ん、ふぁん!ん、ん」
くちゅ、と離れると、
「う、動いて・・・、もっと、もっと剣八で満たして、感じさせてくれ!」
『一護!』
そのまま、一護の蕾が天を向くほど身体を折り曲げ、最奥へと自身を捻じ込んでいった。
「あう!ああ!奥!奥まで来てる!剣八!剣八!好き・・・!好きだ!ああっ!」
一護は剣八を離すまいと両手両足で剣八に抱きついた。
『はっ!動けねぇだろうがよ!』
そう言うと一護の腕を取り、身体を起こして胡坐の中に納めた。
「ふ!ふああ!ふ、深ぁい!」
その衝撃に慣れるまで止まってやり、その耳元で、
『愛してるぜ、一護』
と囁いた。吐息だけの告白は、それでもきちんと一護に伝わった。
「ッ!け、剣八・・・!ホント・・・んむ!」
口付けながら一護を下から突き上げた。
「んふぅ!ンッ!ンッ!ぁ、剣八・・・!も!イク!」
そう言うと一護は剣八の腹に吐精した。その締め付けで剣八も一護の最奥へと熱を注ぎ込んだ。
『くうぅ!』
「んああ!熱い!」
長いそれは数回に分けて出され、一滴残らず出すためにゆるく抜き差しを繰り返した。
「ん、あ・・・もっとちょうだい・・・?」
『てめっ!』
その言葉にグンッと大きさを取り戻した剣八。
その後、一護の意識が飛ぶまで続けられた。

 気絶した一護の身体の処理を終え、服を着せてやると部屋の扉に貼った礼を剥がした。
この礼のお陰で一護の声も、ベッドの軋みも外に漏れずに済んだ。
眠る一護の唇に触れるだけの口付けを落とし、自分の世界へと帰って行った剣八。

 翌朝起きた一護は昨夜の事を思い出したが、いつものように服を着ている事に、
「夢・・・か?」
と呟いて身体を起こした。
「!痛ッ!」
ありえない程の腰の痛みに思わずそのまま蒲団に倒れ込んでしまった一護。
「ココがこんだけイテェって事は、昨日のは、夢じゃない・・・?」
途端に顔に血が集まるのが分かった。
「嘘だろ・・・・」
俄かには信じっれなかったが着替える時、シャツを脱いだ自分の身体に残る鬱血痕の多さに驚いた。
「あのアホ!体育の授業どうすんだ!」
太股にも残った痕に溜息を吐き、
「サボるしかねえな」
と呟いた。






12/02/21作 嶺さんへ。お誕生日おめでとうございます!ギリギリになってしまいましたが、どうかお受け取り下さいませ。
物足りなかったら、他の体位も追加致します。キャッ!
お持ち帰りは嶺さんだけです。




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