「ドロップス」 | |
昔々、泣き虫の神様が零したもの。甘いの、酸っぱいの、色んな色の―。 今日も乱菊から新しい歌を教えてもらった白。 「ドロップスって空から降ってくんのか?」 と真面目な顔で聞かれた乱菊は少しいたずらを思い付き、こう言った。 「そぉよぉー!スゴイでしょー?でもそのドロップスは普通にお店じゃ売ってないの。分かる?」 いたずらな笑みを向けると首を傾げてこちらを向く白。 「珍しいんか?」 「だって神様の涙なのよー?」 「そっか、そうだな」 食ってみてぇなー。と呟いて家に帰っていった。 家で夕月と一緒に歌を歌う。 「子供~が舐めます♪チュルンチュルン♪」 「おっとな~がなめます♪チュルンチュルン♪」 「夕月、上手いぞー」 と頭を撫でてやる。 「うきゅう!ママ!そのドロップス食べたいです!」 「ママも食いてぇな。でもお店じゃ売ってないんだってよ」 「そうなんですか」 ショボーンと耳を倒す夕月。 「明日、飴買ってきてやるから」 「ハイです!」 春水が帰って来て、ご飯を食べ、一緒に風呂に入る。湯船に浸かりながら、 「フンフンフンフン♪フッフッフッフン♪」 と鼻歌を歌っていると、 「懐かしい歌だね。教えてもらったの?」 「おう、今日な」 自分の腕の中でフンフン♪と歌う白の髪を撫でながら一緒に歌う。 翌日、散歩の途中で乱菊に呼びとめられた。 「し~ろ!丁度良かったわ!コッチ来なさい」 「んあ?乱菊じゃねえか、なんだ?」 「良いものあげるから、こっちいらっしゃい」 「?」 首を傾げつつ傍に行くと何やら紙袋を渡された。 手に持った感触はジャラッとした感じだった。 「なんだこれ?」 と袋の口を開けてみると中には色とりどりの飴が入っていた。 「昨日言ってたドロップスよ。手に入れるの苦労したんだからぁ~!」 「え!マジか!これ神さまの涙なのか?全部?」 キラキラと透き通る飴を一つ摘まんで中を覗き込む。 「綺麗だな・・・」 その飴に負けないくらいキラキラと目を輝かせる白。 「気に入った?」 「貰っていいんか?すげえ珍しいんだろ?」 「良いの良いの!あんた食べたがってたでしょ?夕ちゃんと一緒に食べなさいよ」 「お、おう!あんがとな!乱菊!」 興奮しているのか頬を赤く染め、帰っていく白。 その後ろ姿を見送りながら呟く乱菊。 「可愛いわぁ~!一護も可愛いけど白も可愛いから困るのよね~」 この後白は一護と卯ノ花さんに飴を分け、残った分を持って帰った。 「卯ノ花さん!居るか?」 「あらあら、白君。どうしたんです?楽しそうですね」 「うん!さっき乱菊に良い物貰ったんだ!お裾分けしにきた!」 「良い物ですか。何でしょうね?」 「すげえ良い物なんだ。後で一護のとこにも行くけど、一護と卯ノ花さんだけ特別に分けてやるな!」 「まぁ嬉しい!一体何かしら?」 破顔して話に乗ってくれる卯ノ花隊長。 「これ!」 ジャラッと差し出したのは先程の飴。 「飴、ですか?」 「おう!これな!神様の涙なんだって!すげえだろ?!」 「神様の、ですか?」 「うん!泣き虫の神様がさ、朝焼け見ても夕焼け見ても泣いて、嬉しくても哀しくても泣いてさ、それがこのドロップスになったんだって!乱菊が言ってた!」 にこにこと説明する白に口元がゆるむ卯ノ花隊長。 「まぁ、ではとても珍しいのでは?どこで売っていたのかしら?」 「知らね!でも店じゃ売ってねえって言ってたのに何で乱菊は持ってたんかな?」 「本当に謎ですわねぇ。でもそんなに大事な飴を私が貰っても良いのかしら?」 右手を頬に当て首を傾げる卯ノ花隊長。 「良いよ!卯ノ花さんだし!特別だ!手ぇ出して!」 両手を差し出すとジャラジャラと飴を出していく。 「綺麗ですわね。これは朝焼け色かしら?」 「じゃあこれはお月さんかな?」 と白と楽しむ卯ノ花隊長。白が帰って行った後、一つ口に入れると、 「ふふ、朝焼けは美味しいのですね。後で乱菊さんに話を聞かなければね」 と仕事に戻っていった。 「一護!居るかぁ~!」 「なぁに?にぃに」 「おう!居たか、あのな、良いモンやる!」 「良いモノ?なあに?」 と首を傾げる一護にさっきと同じ説明をした。 「神様の!すっごいね~!こんなに泣くなんてほんとに泣き虫なんだねぇ」 「だよな。きっと甘いのが嬉しい時ので酸っぱいのが悲しい時なんだぜ」 「そうだね!乱菊さんってすごいねえ」 「だよなぁ。誰にもらったんだろうな?」 「不思議だねぇ?」 二人揃って首を傾げる。 「ま、良いじゃねえか。ほれ、手ぇ出せよ」 「うん!嬉しい、ありがとう!にぃに!」 「おう!」 ジャラジャラと分ける。 「ふわぁ、綺麗。どんな味なのかなぁ?」 「食ってみるまで分かんねえな。俺は春水が帰って来るまで待ってる。そんで夕月と春水と一緒に食べる」 「じゃ俺も剣八と幾望と一緒に食ーべよ!」 にっこりと笑う白と一護。 「じゃあ帰るな。またな一護!」 「うん!バイバイ!気を付けて帰ってね~!」 と見送る一護。後ろから、 「おう、白のヤツ来てたのか」 と剣八に声を掛けられた。 「剣八!お帰り!うん!あのね、にぃにが神様の涙くれた!」 「はぁん?んだそりゃ」 「え~と、泣き虫の神様の涙が飴になったんだって!乱菊さんに貰ったって言ってた」 手を差し出す一護。 「綺麗でしょ?」 「神様の涙ねぇ。それ嘘だぞ」 「ええ!だってにぃに言ってたよ?」 「松本に担がれてんだろうよ。しかし意外だな。信じたんだなぁ」 ひょい!と一つ摘まんで一護の口に入れてやる。 「ん・・・、嘘って分かったらにぃに怒るかな?」 コロコロと飴を転がしながら心配する一護。 「さあな、そう言う商品名の飴でも売れば良いんじゃねえか?どうせ卯ノ花のとこにも行くだろうから、明日にでも小言もらうんじゃねえか?」 「そっかぁ」 「ほれ、幾望呼んでやれよ。ちゃんと神様の涙って言ってやれよ?」 「うん。幾望はどんな顔するかな?」 と幾望を呼んだ。 「なーに?かか様!とと様!」 「うん。さっきね、白にぃにが来てね。コレくれたんだ」 「白にぃ来てたの!なあに?あめ?」 「これすごい飴なんだよ?神様の涙なんだって!」 「神様の?なんであめになったの?」 「きっと空から降って来るうちに飴になったんだよ。一緒に食べよ?きっと美味しいよ」 「うん!食べるー!」 団欒を楽しんだ一護達だった。 「ただーいま!」 「おかえりなさいです!パパ!」 駈け寄る夕月を抱きあげ、 「おかえり」 と言う白の頬にキスをした。 「ただいま。何か良い事あった?」 「なんで分かるんだ?!」 「顔に書いてある」 チョン!とホッぺをつつく。 「あのな!今日な!乱菊がな!良いモンくれたんだ!」 「へえ~。良かったね。なに貰ったの?」 「あれ!神様の涙!」 「へ?」 嬉しそうに話す白は続ける。 「珍しいから店に売ってないんだって!なのにくれたんだぜ!」 「ホントですか!ママ!」 「おう!一護と卯ノ花さんにもやったから少なくなっちまったけどな。まだあるぞ」 「わあい!早く食べたいです!」 「おう!ほれ!春水!早く来い!」 「うん」 居間に着くと随分少なくなった飴がお膳の上に鎮座していた。 「色はな!たくさんあるんだ!味は甘いのか酸っぱいのか分かんねえけど」 どれが良い?と夕月に聞く。 「んと、んと!赤いの!」 「ん、ほい」 あーん、と口を開ける夕月に食べさせる。 「あ~ん!甘いです!」 ホッぺを両手で押さえて喜んでいる。 「白は?何色がいい?」 「んーと、みどり!」 「はい、あーん」 「あ~ん、甘い!」 「良かったねぇ、じゃ僕は黄色」 「ほれ」 「あ~ん!すっぱい!」 「あはは!やっぱ酸っぱいのもあるんだな!」 と喜ぶ白。 (冗談って言えないよねぇ) と心で呟く春水だった。 翌日、乱菊の悪戯は卯ノ花隊長に知れる事となり、呼び出しをくらっていた。 何も知らない白に出鱈目を教えないようにと釘を刺され、暫くは白達のお気に入りになったドロップを買い出しに行く事になった。 後日。 「びゃっくん居るですか~?」 白と一緒に白哉の屋敷に遊びに来た夕月に少し残っていた『神様の涙』を貰う白哉。 「ほう、なかなかに哲学的な名前だな」 「そうか?乱菊のヤツ、最初嘘教えやがったんだぜ?」 ぷくっと頬を膨らます白。 「悪気があった訳ではあるまい。お主を喜ばせたかったのだろう。現にお主は喜んだのであろう?」 「う~。そりゃ嬉しかったけどよ。一護と卯ノ花さんに嘘吐いちまったし・・・」 「一護はどうか知らぬが、卯ノ花はちゃんと分かってくれた上で乗って来たのであろう」 と言うとふっと笑った。 「何だよ」 「いいや?まるで母親の様だと思ってな・・・」 「?卯ノ花さんがか?俺はそう思ってけどさ。そうかなぁ?」 「うむ。白の事も一護の事も大事に思っているからな」 「そっか、なんか、あれだな。照れるな」 と嬉しそうに頭を掻く白が居た。 おまけ 白哉が経営する菓子屋で『神様の涙』と言う飴が売り出された。売り上げは好調でたまに白も自分で買いに行く。 「あ、白いのがある・・・」 ひょい!と口に放り込む白。 「え、ちょっと白!それ薄荷味!」 ボン!と耳と尻尾が出た。尻尾はぶわわわ!と膨らんで、白は涙目になっていた。 「しゅんひゅい~!にゃんだこれ!いたい!かりゃい!」 ピーピー泣く白にキスして口の中の飴を貰う京楽。 「口の中がスースーする・・・」 あったかいお茶を飲んで一息吐く白が居た。 「薄荷味はちょっときつかったみたいだね。夕月も気を付けないとね」 「これ神様が怒った時の涙か?」 「そうかも知れないねぇ」 「神様怖えな・・・」 ぽつりと呟く白に微笑む京楽が居た。 終 11/12/15作 第183作目。日記に書いた物に加筆したものです。今回エロは無し!リハビリです。 薄荷味って子供の頃、存在する意味が分からんかった。皆さんはどうですかね? |
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