題「誕生日」〜真夜中に咲く大輪の花の様に〜
真夜中に咲く大輪の花の様に



「今日も暑いねぇ〜」
 仕事をサボって瀞霊廷を散歩していた京楽が、呉服屋から出てきた剣八を見つけた。
「おや、剣八さん。珍しいところで会ったねぇ」
「京楽じゃねぇか。またサボりか?」
「人聞きが悪いねぇ。ちょっと休憩してるだけだよ?」
「その割にゃあ、七緒が探してたがな」
「あら〜・・・七緒ちゃんには内緒にしてよ。で?剣八さんは何してたのさ?」
「ああ?もうすぐ一護の誕生日だからな。なんか贈ろうと思ってよ」
「一護君の・・・」
「あ?おめぇ、まさか忘れてるんじゃ無ぇだろうな?・・・おめぇの嫁も一緒だろうが」
「あはは。忘れるわけ無いでしょー!」
「ふん、だと良いがな。じゃあな」
 剣八はそう言うとさっさとその場を去って行った。

「白の、誕生日・・・・ねぇ」
 白が生まれてきた、生まれてきてくれた特別な日。祝わない訳が無い。
「さて、何を贈ろうか・・・」
 それから数日、京楽は白への贈り物を考えながら瀞霊廷内を歩き回っていた。何件も店を回っているがコレといったものが無い。しかし誕生日前日、ふと、あるものが目に入った。
「これなら白も喜んでくれるかな?」
 京楽はそれを買うと白の待つ屋敷へと帰っていった。

「春水、おかえり。・・・なんだ?それ?」
 京楽が持ち帰ったものに気がついた白。
「ん?ちょっとね。後で教えるよ。ところで白。明日は何の日か覚えてる?」
「明日?・・・・なんかあったか?」
「分からなければ良いよ。後で分かるから」
「ふぅん。メシにすんぞ。手ぇ洗って来い」
「はいは〜い」
 京楽は買ってきたものを寝室に置くと食卓へと急いだ。

 夕食を済ませ、寝室の入った2人。しかし白が落ち着かない。
「なぁ・・・あれ何だ?なんかキモイんだけど」
 白が指差したのは京楽が買ってきたもの。鉢植えだから何かの植物なのだろうが、生憎白はそれを見た事は無かった。 
「ああ、あれね。月下美人ていう花だよ」
「月下・・・美人?どこが?」
 ワカメか昆布を植えたようなものから、細い胡瓜のような赤っぽいものがいくつかぶら下っている。先のほうはなんだか棘っぽい。どう見てもキモイとしか言い様が無い。コレの何処が美人なんだろう、と白は?マークを飛ばすしかなかった。
「この花はね、真夜中に一晩だけ咲くんだよ。今夜咲きそうだから買ってきたんだ。白にどうしても見せたくてね」
「このキモイのを?」
「まだ蕾だからね。咲いたら白もきっと気に入るよ」
「ほんとか〜?」
 白は疑いの目で京楽を見た。あのキモイ植物から自分が気に入るような花が咲くとは信じていないようだった。



 2人が寝室に入ってかなりの時間が経った頃、部屋の中を甘い香りが漂い始めた。
「春水、春水。なんか良い匂いがする」
「ああ、蕾が膨らみ始めたんだね。花が咲くにつれてもっと芳香が強くなるよ」
「へぇ〜。・・・・・あっ!赤いのが上に向いてる!棘っぽいのも大きくなってきた!」
 白が蕾を見ると、先程まで下を向いていた蕾が少しだが上を向いていた。蕾も少しづつ大きくなってきていた。
「これ、咲くのか?何時咲くんだ?」
「ん〜。もう少しかかるんじゃないかな?」
 白は蕾を見て京楽に聞いた。さっきまで「キモイ」と言っていたのが嘘のようだ。
甘い香りと目に見える変化に興味津々のようだ。まるで珍しいものを見つけた子供のようだ。
 少しづつ頭を擡げ、膨らんでいく蕾を食い入るように見つめ目も離さない白を、京楽は抱きしめ愛撫を続ける。
「そんなに真剣に見ちゃって・・・・妬けちゃうね」
「ん・・・・だって・・・」
「でも、今夜しか見れないからね。今夜だからこそ白に見てもらいたいしね」
「春水?」
「ほら、良く見ててごらん。蕾が膨らんでいくよ」
「ほんとだ」
 蕾が上を向き膨らむにつれ芳香も強くなっていた。そして日付が変る頃、膨らんだ蕾の先が、ぴっ!と弾ける様に開いた。
「あ!咲いた!」
「ほんとだねぇ」
 開いた蕾はやがて真っ白な大輪の花を咲かせた。他の蕾も次々と花を咲かせていった。



「すげぇ・・・・綺麗だ・・・」
 むせ返るほどの芳香の中、白はうっとりと咲き誇る大輪の白い花に見とれた。
「まるで白の様だね」
「え?」
 思わず京楽を見返した白の頬を包むように京楽の手が白を捉えた。白を見つめる京楽の目は慈愛に満ちていた。
「白は・・・父親を殺されて、家族と離れてずっと一人で生きてきた。それは長い長い夜を彷徨っていたのと同じだと思うんだ。だけど白は、その夜の闇にもどんな色にも染まらず、この花のように真っ白で・・・・その姿や芳香で人を魅了するこの花のように、君も人を惹きつけるんだ」 
「春水・・」
「そんな白が僕を選んでくれて、僕を愛してくれて・・・・僕は幸せなんだよ?愛しているよ、白」
「お、俺だって!俺だって春水を愛してる!」
「嬉しいねぇ」
 どちらからとも無く貪るような口付けを交わした。




「なぁ、春水」
「なぁに?白」
「なんで・・・・この花を見るのが今夜なんだ?」
「なんのこと?」
「言ってたじゃねーか。今夜だからこそ見せたいって」
「ああ、言ったねぇ〜。もう日付が変ってるからね。今日は白の誕生日でしょ?」
「え?・・・あっ!」
「誕生日のプレゼントだよ。誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう」
「春水・・・」
「白の誕生日に、白によく似たこの花を見せたくなってね。ちょうど今夜咲きそうなのが売ってたからね」
「でも・・この花、朝には萎むんだろ?」
「うん、そうだね。だから花言葉は『儚い夢』とか『儚い人生』とかなんだけど」
「けど?他にもあんのか?」
「『強い意志』・・・白にぴったりでしょ?」
「う・・・」
「他には『ただ一度の恋』、『真実の時』。僕達にぴったりでしょ?」
「・・・・ばか・・・」
 照れて京楽の胸に顔を埋めた白を優しく抱きしめる京楽。



 翌朝、子供達からプレゼントを貰った白。子供達からのプレゼントに喜ぶ白とそれが嬉しい子供達。
「かか様。とと様からは貰ったの?」
「ん〜。夜中に花見せてもらった。朝には萎んでたけど」
「かか様だけずるーい」
「ママ、ずるいですー」
「仕方ないだろ、咲くのは真夜中だったんだから」
「いいなぁ〜。私も見たかったわ」
「見たかったです」
「そう言われてもなぁ・・・」
「無理を言うな。母上が困っている」
とウルが朝月と夕月を窘める。
 白が途方に暮れていると京楽がやってきた。
「とと様!かか様のお花、私達も見たいわ」
「見たいです」
「ふふ〜。そう言うと思ってね。・・・ほら」
 京楽は子供達の前に大きな瓶を置いた。瓶の中には透明な液体の中で大きな真っ白な花が咲いていた。昨晩の月下美人だ。
「わぁ!綺麗!」
「きれいです!」
「春水、これ・・・」
「萎んだ花をお酒に漬けてみたんだ。香りの良い芳醇なお酒になるって聞いたからね〜」
「そうなんだ」
「あの花も手入れがよければ秋にもう一度咲くらしいからね。今度は皆で見ようか」
「わぁ!楽しみだわ!」


 
 最初「キモイ」と称された月下美人は、今では白や子供達に大切に育てられている。
 


おまけ
月下美人が咲いた部屋では、満月の光に浮かぶ白い花と噎せ返る様な芳香の中、白は京楽の胸に顔を埋めたままだ。
「白・・・」
優しく囁くと大きな手で白の顔を上向かせ、親指の腹で唇を撫でた。武骨なその指に舌を絡ませる白。
その仕草にゾクゾクした京楽が、ちゅ、と口付けた。
「ん、春水」
ちゅ、ちゅ、と繰り返し、深く口付けた。
「ん、ふ・・・あ・・・」
とさっ!と蒲団の上に押し倒されると首筋にチリッとした痛みを感じた。
「あ・・!」
跡が付いた。跡を付けられたのだと理解するとそこがジンジンと疼いているようだ。
「んん!やぁ・・・」
「白、白・・・」
形の良い鎖骨に歯形を残し、寝巻きの袷を乱していく。
「ん・・・」
月明かりに浮かぶ白の身体の(まばゆ)さに目が眩む。
「ああ・・・白、なんて綺麗なんだ・・・」
「んぁ!春水!」
その胸の小粒を片方口に含み、もう片方を指で押し潰す。
「あ、あ、ん、や!そこばっか・・・!」
「ん?他も触っていいの?どこ?」
するすると脇腹を撫でてはそこを掠めていく。
「ひ、ん!いじ、わる、すんな!」
涙目でグイッ!と京楽の髪を引っ張る白。
「あいたた!ごめんごめん、白があんまり可愛いからね」
きゅ、とそこを握り込んだ。
「ひゃあ、ん!」
こぷり、と透明な体液を零す白。

「あ、ああ、しゅん、春水・・・!もう、きて・・・」
充分に解された白の蕾に自身の雄を宛がう京楽。
「・・・ん、あ・・・」
その熱を感じると背筋にゾクゾクとしたものが走った白。
「行くよ・・・」
「ん・・・」
ぐぷぷ・・・、と京楽を飲み込んでいく白。
「あ、ああぁああん!春水!」
蒲団の上で仰け反る白は月の陰影だけで十分京楽を煽った。
「く・・・!ごめん白、手加減、出来ないかも・・・」
「え?あ!ああ!しゅん!すいぃ!あっ!ああん!」
「白!白!」
「ん!んん!」
白の中を突きあげながら深く、貪る様に口付けた。
「ッん、はぁ!春水!あう!も、もう!」
「『もうイく』?良いよ、一緒にイこう・・・!」
「ひぅ!あ、あ・・・膨らんだぁ!っあ!あーっ!」
「っくう!」
二人同時に達した。
「ふくっ!あ、熱いぃ・・・!」
ヒク付く胎内で復活する京楽。
「ひぁ・・・、またおっきく・・・!」
「まだ、終わんないみたい。ごめんね?」
と情けない顔で笑う京楽。
「あ、あ、あ、あほ・・・!」
「うん」
この夜も白が意識を飛ばすまで続けられた。

朝は子供達の声で起こされた白だった。

「お誕生日おめでとう!かか様!」






アトガキ

白ちゃんの誕生日です!
甘甘です!甘いだけですwwww
月下美人、夜に凛と咲く大輪の花は見ものです
まさに夜の女王
月下美人酒はあれですよ
来年の白ちゃんの誕生日に飲まれるんですよ、きっと

寝室舞台なのにエロが無いという罠
私にエロは無理ですた・・・!

             by妖 (H23.714)


あとがき。
妖様より頂いた、白ちゃんのハピバ文章に金魚がエロを加筆したものです。(ご本人様の許可は頂いております)
ほのぼの甘〜い文章だったのに!つい書いてしまいました!
素敵な文章をありがとうございます!妖様!

11/07/17作 第173作目。



きつねのおうちへ戻る