題「夏祭り」小さな初恋〜朔編〜 | |
夏休みになり、子供達が帰って来た。 皆一様に元気で剣八も一護も安心した。 そして今日は夏祭りである。 この日の為に新調した子供たちの浴衣を出して見せる。 「これが十六夜のでしょ、これが朔と幾望ので、これとこれがグリとノイのね」 十六夜の浴衣は深い青地に赤と白い花が描かれた物に白い帯。 朔と幾望は黒地に白い井桁絣に赤い帯。お揃いだ。 グリは波で、ノイは亀甲模様だ。 「わあ!綺麗な柄ね。コレなんてお花?」 「ブーゲンビレアって言うんだって」 「ブーゲンビレア・・・」 と呟いて何か考えているようだ。 「夕飯が終わってから行こうね」 と一護が言い、子供達は初めての夏祭りに想いを馳せた。 夕飯を食べ終わり、皆が浴衣に着替える。 「わあ!皆似合うよ!カッコいいね!」 「かか様も浴衣似合ってるわ!」 「向日葵、綺麗ですね」 「海での水着も向日葵だったわよね〜」 「えへへ!ありがと!あ、お祭りのお小遣い渡しとくね」 と子供達にお小遣いを渡す一護。 「これ使っていいのか?」 とグリが聞いてくる。 「うん、好きに使っていいよ」 「やった!ありがとな!一護」 「いえー!」 「ありがとう、かか様」 「大事に使お」 「また金魚すくい出来る?」 「夏だから秋より多いんじゃないかな?」 と話していれば着替えた剣八が出て来た。 「とと様おっそーい!」 「悪かったな。ホレ行くぞ」 と神社に向かった。 神社の入り口では京楽一家が待っていた。 「一護!」 「にぃに!」 そこには彼岸花の浴衣を着た白と、藍色の浴衣に黒の帯を締めた京楽、水色に白百合の浴衣に黄色い帯の朝月と白地に花火の浴衣にピンク色の兵児帯の夕月と熨斗目の浴衣を着たウルが居た。 「お待たせ!朝月達も元気?」 「おう、皆元気だぜ、早く行こうぜ」 と急かす白。 神社に入ると色んな露店がたくさん並んでいた。子供達は言わずもがな、白までがはしゃいでいた。 「去年のお祭りは遊べなかったもんねぇ」 と京楽が白の頭を撫でる。 「そう言えばそうだね。じゃあにぃには京楽さんとデートだね!」 「デートって言うな!」 「まぁまぁ。子供達も好きにしておいで。ただし!知らない人には付いて行かない事!喧嘩しない事!分かったね」 「はーい!」 元気良く返事をして各自行きたい所へと走って行く。 「元気で良いねぇ」 「春水、俺金魚すくいやりたい!」 「はいはい、夕月、ウルおいで」 「はいです!」 「はい」 と金魚すくいの露店に向かう白達。 「じゃあ俺達も回ろっか」 「そうだな」 と剣八達も巡って行く。 その頃の十六夜達。 「わあ〜!きれーい!」 「ほんと!」 女の子二人が足を止めたのは、ガラスで出来たアクセサリーや宝石の模造品が売っている露店だった。 「素敵ね〜」 「あ、指輪もある!」 「にぃちゃ、ビー玉あった!」 「そうだねぇ」 キラキラと輝く贋物の宝石達。その中で朔が3人にバレない様にひとつの物を買った。 「毎度」 小さな紙袋に入れられたそれを大事そうに袖に仕舞う。 「ベビーカステラ!」 と幾望が指を指す。 「食べたいの?じゃあお姉ちゃんと一緒に買いに行こ!」 「うん!」 「じゃあ僕たち狛犬の所で待ってるね」 「分かったー!」 「行こう、あーちゃん」 「うん」 狛犬の傍の石段の所で二人を待つ朔と朝月。 暑いのか団扇で風を起こす朝月に朔が、 「あ、あの!あーちゃん!」 「なぁに?」 「えっと!あの!」 「?」 なんだろうと待っていると袖から何かを出して朝月に差し出した。 「これ、朝月にあげる」 「あ、ありがとう。開けても良いの?」 「うん」 カサカサと袋を開けると中から出て来たのはおもちゃの指輪で、ローズピンクのダイヤの模造品が填められていた。 「これって・・・」 「今は、こんなオモチャしかあげられないけど、大人になったらきっと本物をあげる。だから、僕と付き合ってください」 真剣な顔で告白された。 「・・・綺麗な指輪ね」 朝月は貰った指輪を朔の手に乗せた。 「あ・・・」 断られたと思った朔に朝月が、 「朔が填めてくれる?」 と左手を差し出した。 「うん・・・」 白く柔らかい手を取り、その薬指に指輪を填めた。 その手を見ながら、 「喜んで。こちらこそよろしくね、朔」 と言う返事が帰って来た。 そして二人で頬を染めている所へ十六夜と幾望が帰って来た。 「遅くなってごめーん!飲み物も買ってたの!」 「う、ううん!大丈夫!ね!」 「うん!」 何やらモジモジとしている二人を見て首を傾げるが、朝月の薬指に光る物を見て理解した十六夜。 「頑張ってね、朔にぃ」 と小声で囁いた十六夜。 耳まで真っ赤になった朔が居た。 終 11/09/10作 第172作目です。めでたくくっ付きました!朔と朝月のカップルです!彼らはゆっくり愛を育むタイプです。 学院に戻ってもゆったりしてるんでしょうね。十六夜はそんな二人を応援してます。 |
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