題「出会い」
 その日、喫茶『KISUKE』では性質の悪いチンピラ共がやりたい放題していた。
禁煙席で煙草を吸ったり、女性客の尻を撫でたり、ウェイトレスにチョッカイを出して泣かしたりしては笑っていた。
お客さんは皆逃げ帰ってしまった。

そこの従業員である一護が我慢の限界に達し注意をした。
「あんたらいい加減にしろよ!他人に迷惑掛けるなって教わらなかったのか?小学生だって分かるぞ!」
泣いてしまったウェイトレスの(ウルル)を慰めながら注意するとチンピラ達は、
「なんだとぉ!それが客に対する態度か!」
「どんな教育してんだ?ここの店長はよぉ!」
と言いながら殴りかかってきた。だが一護は子供の頃に空手を習っている上、喧嘩で鍛えられていたのでやり返して外に放りだした。
それを逆恨みしたチンピラ共は組に帰ると幹部に事実を捻じ曲げて話した。
「恥を掻かされた」「泥を塗られた」と騒いでその幹部も重い腰を上げざるを行かなくなりその喫茶店に出向いた。

数日後。
「喫茶『KISUKE』か・・・。ここだな」
「みたいだね。ほら、あの子じゃない?オレンジ頭って」
「ああ・・・」

カランカラン!

扉に付けたベルが鳴り来客を告げる。
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ・・・」
挨拶をする一護と(ウルル)
一護を指差し、
「そこのオレンジ頭に話があんだがよ」
とスキンヘッドの男が口火を切った。
「何でしょう?」
口調は丁寧だが不機嫌そうだ。
「うちのモンに恥掻かせたそうだな」
唐突にそんな事を言われ、何の事か分からない一護は、
「はあ?何の話だよ。うちのモン?」
と首を傾げた。
「なんでもイチャモン付けて殴って追い出したって聞いたんだけど?」
と一緒に居たおかっぱ頭の右の眉と睫毛に変わった飾りを付けた綺麗な男が補足した。
「殴って・・・?あ、あー!あのチンピラかぁ!はいはい!思い出した。あーあー」
「認めんのか?」
「認めるも何も・・・、客と店に迷惑だったから注意したら殴りかかってきやがったから反撃しただけだぜ?十分正当防衛だと思うけどなぁ・・・」
「あん?迷惑だぁ?」
「・・・客の女の人の尻に触ったり、うちのウェイトレス泣かしたり、禁煙席での喫煙その他諸々だよ。注意したら逆切れしやがってよ」
(ウルル)の小さな頭を撫でながら話した。

聞いていた話とまるで違う・・・。

「で?あんたら何な訳?仕返しにでも来たのか?大層なことだな。そんなことしてる暇あるなら組員の教育に時間費やせよ」
呆れたように言う一護。
「んだと!このガキ!」
「ガキがどうした。チンピラなんざ図体がデケぇだけのガキだろうが!」
「一角・・・!」
「ちッ!」
「文句があるなら俺が聞く。店にも客にも迷惑掛けんじゃねえ。直接俺に来いよ」
「・・・おう」
真っ直ぐな目に射抜かれ、その場は引いた二人。


後日、チンピラには黙って調べると一護の言った通りで憤慨する一角。
「ふざけやがって!テメェらが堅気のモンに迷惑掛けたんじゃねえか!」
「全く美しく無い真似してくれたね」
と二人で喚いてる所に大柄な男が通りがかった。
「うるせえな、何騒いでやがる」
この男は更木組の組長・更木剣八。以前は本家の戦闘部隊の隊長をしていたが一つの組を任される程の信頼を得た。
そう言う経緯から部下もその当時の者が多く、組長ではなく隊長と呼ぶ者が多かった。
「あ!隊長!いえね、この間こんな事がありまして・・・」
と報告する一角。
「ふうん・・・」
一護に興味を持った剣八は一人でその喫茶店に出向いた。

着流し姿の剣八は良くも悪くも目立った。おまけに顔には左目を両断する古傷の跡。
コーヒーを頼むと店の中を見回す。だが一角の言っていた人物は見当たらない。
「誰かお探しですか・・・?」
とカウンターから声を掛けられた。
金髪の変な帽子を被った男が、笑いながらこちらを見ている。だがその目は笑ってなどいなかった。
「ちぃっとな・・・」
と話しているとカウンターの後ろの扉が開いた。
「ワリィ!浦原さん!遅れちまった。講義が長引いてよ」
と息を弾ませエプロンをあたふたと着けている一護。
「いいんスよ。学業が貴方の本分なんだから」
「だからって仕事に遅れたら給料に響くじゃねえか」
「ま!当然すねぇ」
「ちぇ!」
(あいつか・・・)
静かに一護を観察する剣八。その鮮やかな髪と目まぐるしく変わる表情。何より意志の強そうな目が気に入った。
「あ、お客さん居たんだ。すんません、騒がしくて」
「いや・・・」
「おや、コーヒーが無いっすねぇ・・・。黒崎さん淹れて下さいな」
「へーい」
一護が奥に引っ込むとコーヒーの良い香りが漂ってきた。さっき淹れてもらった時よりもふくよかな香りだと思った。
「お待たせしました。こちらお下げしますね」
と空のカップを下げた。
二人の子供が店に入って来た。男の子と女の子だ。
「あー!オレンジ頭。今日遅刻しただろ!」
「ジン太君・・・掃除終わってないよ・・・」
「うっせー!(ウルル)のくせにジン太様に逆らうんじゃねー!」
「こら、女の子に乱暴すんな。ワリィな。大人の事情ってやつだよ」
「んだそれ!許して欲しかったらおやつ作れよ!」
「ああ、これでいいか?」
と笑いながら差し出された物はオレンジタルトだった。
「家で作ってきたんだよ。ほら、(ウルル)もおやつにしろよ」
「いつもすいませんねぇ、うちの子達すっかり黒崎さんのお菓子が好きになっちゃって」
「テッサイさんには敵わねえよ。あんたも喰うんだろ?」
「ええ、ぜひ!」
「お客さんは?どうですか?」
「あ?」
いきなり話しかけられて少し驚いた。
「今日はまだ他のお客さん居ませんし・・・。甘い物が嫌いじゃなかったらどうぞ」
「あ、ああ・・・」
と差し出された菓子を食べる剣八。
甘すぎない、ちょうど良い味だった。
それからその喫茶店に通う剣八が居た。

「いらっしゃいませ!あ、剣八じゃん」
毎日の様に通い、常連となり一護と顔見知りとなった剣八。
「おう」
「いつものモーニングセットでいいのか?」
「ああ、頼む」
いつも座る席に座り、新聞を広げる剣八。
「お待たせしました」
「ん」
バサッ!と新聞を閉じた。
「なんか面白い記事でもあったか?」
「特にねえな。お前大学の方はどうなんだ?」
「頑張ってるよ。ちゃんと卒業しなきゃな」
笑って世間話をするくらいに仲が良くなり、平和な日が続いていた。

だが、何の行動も起こしてくれない上に不満を抱いたチンピラが行動を起こした。
本家に直訴したのだ。

更木組に泥を塗ったガキが居る。そんなガキを放っておいては本家にもキズが付くのではないか?と密告したのだ。
これを聞いた本家に命令を受け、剣八が動く事になってしまった。

数日後、チンピラと共に現れた剣八に驚く一護。
「あんた・・・、そいつらの・・・!」
「組長だ・・・。ワリィがよ、一護。うちまで出向いてくれるか・・・」
ここじゃ騒ぎになると言外に匂わせる。
一護を車に乗せて組まで連れていく剣八一行。

黒塗りベンツに乗せられた一護。車の中で二人は終始無言だった。
「着いたぞ、降りろ」
「・・・」
無言のまま車から降りる一護。
目の前には大きな門構えの純日本家屋があった。代紋には大きく『更木』と書かれていた。
それを見上げていると門が開かれた。
「お帰りなせえやし!隊長!」
と強面の連中が列をなし、礼をしている中を進んでいく剣八。
「何してる。早く来い」
「ああ・・・」
その中にいつかのチンピラの一人がニヤニヤと笑って立っていた。

屋敷の中に入り、客間に通され一人になった一護。
ぼんやりと部屋を眺めて考える。

この後どうされんだろうな・・・。殺されんのか?生きたままドラム缶で東京湾は勘弁してほしいぜ。
まあどうせ、俺が死んでも誰も困んねえけどさ・・・。

天涯孤独の自分を自嘲するかの様に口の端だけで笑う一護。

「剣ちゃん、帰ってるの?」
と障子が開いた。
そこに居たのは桃色の髪の小さな女の子だった。
「だあれ?」
「えと、俺は黒崎一護て言うんだけど・・・、君、ここの子?」
「うん!そうだよ!そっかぁー!剣ちゃんが言ってたいっちーだね!」
「へ?いっちー?」
「うん!いちごだからいっちー!」
えへへと明るく笑う女の子に毒気を抜かれた一護。
「ねえ、君の名前は?」
「あたし?あたしはね、やちるって言うの!」
「そっか、よろしく、やちるちゃん」
「やちるでいいよ!ねぇいっちー、一緒にご本読んで?」
と強請られるままに差し出された絵本を読んでやった。

ふと気付くとやちるは眠ってしまっていた。
「風邪引いちまうな」
と自分の上着を掛けてやった。
自分の膝で眠る子供を見て一護は死に別れた妹を思い出していた。
「あいつらもこんな感じだったなぁ・・・」
一護の家族は一護を残し全員が車の事故で他界した。全員が同じ日に・・・。
大学で授業を受けていた一護に知らせが来た時は信じられなかった。
朝は皆で笑っていたじゃないか!と・・・。
その後、一護は父の友人で後見人になってくれた四楓院夜一と浦原喜助により今の暮らしを立てている。

「ううん・・・」
「起きたのか?風邪引いちまうぞ?」
「ん〜、お腹空いたよ、いっち〜」
「て、俺に言われてもな」
「何か作って!」
「何かって・・・」
「なんでも良いよ!一緒に食べよ!ね!」
グイグイと腕を引っ張られ台所へと連れて行かれた。

「やちるは何が食いたいんだ?」
「えーとえーと!美味しいもの!」
「美味しいものねぇ」
勝手に冷蔵庫を開け、物色する一護。
「肉じゃがと味噌汁で良いかー?」
「うん!大好き!」
「んじゃ作るか」
シャツを腕まくりすると野菜などを切っていった。
「わぁ、良いにおーい!」
ジャガイモに味が染み込むまでに味噌汁を作り、ご飯を炊いた。
その様子を後ろから見ていた剣八。気付かれないようにその場を離れた。

「出来たぞー。味見するか?」
「うん!」
ジャガイモを小さく割ってやり、口に入れてやる。
「はふ!はふ!おいしい!いっちーすごーい!」
「そか、美味しいか」
やちるを撫でてやる一護。
「どこで食べるんだ?さっきの部屋か?」
「ううん!こっち!あ、お鍋持ってきてね!」
肉じゃがの入った鍋を持ってやちるの後を付いて行く一護。
「このお部屋!」
「ふうん。じゃ、後は味噌汁とご飯持ってくるか」
「あたしも手伝うー!」
「重い物は俺が持つから、食器とか持ってくれな?」
「はぁい!」
味噌汁を運び、お櫃に入れたご飯を持ってさっきの部屋へ行くと剣八が座っていた。
「・・・剣八」
「あ、いっちー!剣ちゃんも一緒に食べて良いよね!」
「別に・・・」
ふいっと目をそらす一護に何故かイラつく剣八。
ここに来てからの一護はいつもの一護ではなかった。
急にこんな所に連れて来られて当たり前かも知れないが、それが気に障る剣八が居た。
「これ全部いっちーが作ったんだよ!すごいでしょ!」
やちるが自慢げに料理を剣八に差し出す。
「そうか・・・」
と答えてやる剣八にご飯を渡しながら一護が、
「大したもんじゃねえよ。誰にだって作れるさ。やちるだって作れるぞ」
と言ってやる。
「ホントに!いつ?いつ作れる様になるの?」
「ちょっとずつ誰かに教えてもらって練習してたらすぐだよ」
さ、もう食べよう。と促した。
「いただきます」
一護が手を合わせると、やちるも真似をした。
「いただきまーす!」
ぱくっ!と肉じゃがを頬張るやちる。
「美味しーい!剣ちゃん、美味しいでしょ!」
「ああ、美味いな」
「サンキュ。妹に教えてもらったんだ」
と儚げに笑う一護。
「で、俺どうなる訳?東京湾?」
「なに?なんの話?」
「ここの組員殴ったらここに連れて来られたんだよ」
「ふぅーん。そんなの気にする事じゃないのに」
「さぁ、どっちにしろ俺に選択権なんか無いだろうしな」
ずず、と味噌汁を飲む一護。
「・・・明日、本家の人間が来てお前の話を聞くそうだ。悪い様にはしねえよ」
「そうなのか。ん?じゃあ俺は今日は・・・」
「泊まりに決まってんだろ。なんの為に連れて来たと思ってんだ」
「俺、明日も大学有るんだけど?」
「休む事になるだろうな」
「単位が・・・」
「気にすんな。こっちで何とかしてやる」
「なんとかって・・・。学校脅す気じゃねえだろうな」
キッと睨みつける一護。
「するか、そんな事」
飯、と茶碗を差し出される。
「なら良いけどよ」
ご飯を盛って返してやる。

食事が終わると風呂を勧められた。
「お風呂はこっちだよ」
とおかっぱの男に案内された。
「あんた、この間の」
「覚えててくれたんだ。僕は綾瀬川弓親って言うんだ。弓親で良いよ」
「あそ。一緒に居たやつは?」
「彼は斑目一角。今日は仕事で居ないよ」
「ふうん・・・」
着替えを渡され、風呂に入る。
広い風呂に浸かりながら明日の事を考えた。
「俺が考えても無意味だよな」
と風呂から上がり出された着替えに袖を通す。
「浴衣かよ」
適当に前を合わせ、帯で止めた。
裾を引きずりながら廊下を歩いていると剣八が通りがかった。
「・・・なんて格好してやがる。着方も知らねえのか」
「こんなもん、子供の頃に祭りで着たきりだよ」
膨れながらそっぽ向く一護。
「コッチに来い」
と部屋に呼ぶ。
「帯外せ。着付けてやる」
「え、ああ・・」
帯を外し、前を広げる一護。
「袖持って腕上げてろ」
「こうか?」
「ああ」
一護の浴衣の前を合わせ、帯を締めていく剣八。
さっさと動く手に見惚れてしまう。
「ほれ、終いだ。苦しくねえか?」
「あ、うん・・・」
「座れ」
と促されたのでその場に座る一護。
「明日の朝、本家の人間が何人か来る。そこでお前の話を聞く段取りだ。何があったか、正直に言えば良い。すぐに帰れる」
と大まかに説明された。
「ふうん。なぁ、あんたは俺が組員を殴ったからうちの店に来たのか?」
「ああ、どんなやつか見たくてな」
「じゃあ、この騒ぎが終わったら・・・、もう来ねえのか」
「なんだ・・・?」
「や・・。なんかさ、親父に近い歳の人だし、落ち着いてるしさ。お前と話すんの嫌いじゃなかったよ」
「親父?」
「いや、いい。明日早いんならもう寝るよ。おやすみ」
「おう」
宛がわれた部屋に行き、敷かれた蒲団で眠る一護。
「親代わり、か・・・」
一人呟く剣八が居た。

翌朝、朝食が済み、やちると遊んでいると剣八に呼ばれた。
「来たぞ。付いて来い」
連れていかれた部屋には黒い着物を着た数人の男が座っていた。

一番上座には長い髭の老人。白い長髪の男と髭の男。変な髪飾りの様なものを付けた若い男。
「お主が黒崎一護かの?」
「あ、はい。初めまして」
一応お辞儀しておく。
「うむ。固くなるでない。話を聞くだけじゃ」
「はい」
剣八も列に加わり、一護は用意された座布団に正座した。
「色々訊いて行くけど答えられる物だけで良いからね」
と白髪の男が柔和に笑う。
「はい」
「しかしいきなりこんな所に連れて来られて親御さんが心配してるだろう?すまないね」
「いえ、家族居ないんで・・・気にしないで下さい」
「あ・・・、そうなのかい。すまない」
「理由は訊いても?」
と隣りに居る長髪、髭の男が訊いた。
「全員、車の事故で・・・」
「そう。大変だったね」
「そうですね。やくざの抗争に巻き込まれただけですよ」
「え・・・」
「一護。本当か?」
「嘘付いて何になる。それにどこの世界でも家族の死に方を冗談にはしねえだろ?」
「どこの組だ?」
「どこだって良いだろう?そんな話をする為に連れて来たんじゃねえだろ」
「そうじゃな。では今回の事件の話を聞かせてくれるかの」
「事件って。ただうちの喫茶店で迷惑行為をしたチンピラに注意して殴りかかって来たから返り打ちにしただけですよ」
「迷惑行為とは?」
「女性客へのセクハラ。ウェイトレスへの嫌がらせ。禁煙席での喫煙などです」
「儂らが聞いた話と大分違うの」
「事実捻じ曲げて話すのが普通なんでしょう?」
「どういう事だ・・・」
今まで黙っていた男が口を開いた。
「俺の家族が事故に巻き込まれた時だってそうだった。こっちの前方不注意で片付けられて、それで終わりだった。妹を乗せてる時は安全運転しかしない親父が前方不注意なんかするわけねぇ」
ギリリと拳を強く握る一護。
「俺は家族の遺体を見る事も出来なかった。それぐらい、損傷が激しかったんだ・・・!」
「奴ら、見舞金だって金持って来たけど、俺は叩き返した。そんなモン貰ったって誰も帰って来やしねぇ!大体、謝りもしなかった・・・!」
「一護」
「一体、何処の組が・・・」
「お主らの系列じゃ!」
スパーン!と突然障子が開き、何者かが入って来た。
「誰だ」
「・・・夜一さん」
「夜一?あの四楓院家の!」
「よう頑張ったの、一護。もう帰れるからの」
と豊満な胸に一護の顔を埋める夜一。
「むー!んむーっ!」
「どういう事じゃ?」
「この資料に全部書いてある。護廷組系と虚圏組系の抗争が去年あったじゃろう。その抗争に巻き込まれたのじゃ」
「なら情報が我々にも回るはず・・・」
「じゃから、お互いの下の者が改竄したんじゃよ。可哀想に一護は天涯孤独になった上に何もかもを失くした。家も家族もな」
「もう良いよ・・・夜一さん。今更言ったって、誰も生き返らないんだから・・・それに今日はそんな話に来たんじゃないよ」
「この間の件じゃろう?ここに喜助の撮った防犯カメラのDVDがある。音声も映像もバッチリじゃ!」
弓親を呼び騒いでいたチンピラを呼ばせた。

「テメェら、なんで呼ばれたか分かるな」
「この間の件でしょう?やっと動いてくれたんすね!」
「・・・ここに証拠のDVDがあるからテメェらも見ろ」
「え・・・?」
「ちょ・・」
画面に映し出される自分達の姿に顔色を失くすチンピラ。
「イチャモンを付けられた、ねぇ」
「我々が聞いていた話と全く違うな」
「あんな小さな子を泣かせるなんて」
「さて・・・、どう釈明する気かの?これでは組に泥を塗ったのはお主らじゃのう」
「う、あ、あの・・・」
「もう良いです。こちらの対応も悪かったんでしょうから両成敗ってことで終わらせて下さい。俺は早く帰りたいです」
「そうじゃな。すまなんだのう。こ奴らには儂らがよう言い聞かせておく」
長い眉の下で鈍く光る眼。
「いえ、さようなら」
それだけ言うとさっさと出て行く一護。その後を追う剣八。
「おやぁ?」
「剣八のやつ、どうしたんだ?」
「謝罪か?」

門の前で一護を捕まえると話をする剣八。
「一護!」
「剣八・・・。夜一さん、先に行ってて」
「・・・車の中で待っておる」
と先に車に乗った。
「どうかしたのか」
「また行く」
「は?」
「お前の店だ。何度でも行ってやる。お前に会いにな」
「なんで・・・」
「親の代わりなんて言わせねえ。俺に会いたいって思う様になるまでな。お前に惚れた」
「な!なん!」
「覚悟しとけよ」
そう言うと踵を返し、帰って行く剣八。
「一護」
夜一に声を掛けられ我に返る一護。

車の中で、
「奴に何を言われたんじゃ?」
と訊かれた。
「べ!別に!何でもない!」
「・・・顔が赤いぞ一護」
「う、嘘だ!」

後日、約束(?)通り喫茶店に顔を出す剣八。やちるも一緒だった。






11/08/17作 169作目。3周年記念フリーです。お気に召した方どうぞ。
これ、続くのかしら?スイッチが入ったら書こう。ちょっとだけ思いついてるのは一護のアパートに突然現れる剣八。シチュは良く分からんのですけどね。
もう剣八に惚れてると思われる一護。チンピラはまぁアレですね。二度と一護の前には現れません。


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