題「お散歩日和」
 日差しも暖かくなり、風も柔らかく色々な花の香りを乗せて吹いている。
「春だなぁ」
と一人で散歩しているのは白。つい先ほどまで白哉の所で夕月とウルと一緒にお菓子を食べていた。
一頻り話をし、夕月達と遊んでお菓子を食べると、ウルは鍛錬の為に十一番隊へ夕月と一緒に行った。
朝月は出掛けるから、と一緒に家を出たが別行動をしている。
隠してはいるが誰かと会っているのだろう。十六夜やメンバー達ならば自分に言うはずだ。相手は男か・・・。
「多分、あいつだな・・・」
と呟いた。朝月はアクセサリーの類をあまり持っていない。父である京楽からホワイトデーのお返しに薔薇のペンダントを貰ったくらいだ。
「今度、何か買ってやるかな」
腹ごなしの散歩は気付けば川沿いの桜並木にまで足を運んでいた。
「すげえな。白哉んちの桜も綺麗だったけど、ここのも綺麗だな〜」
とそよそよと吹く風に散る花びらを見ながら呟いた。木の上では小鳥が花の蜜を吸うために桜の花をくるくる回しながら吸っている。
「はは、可愛いな」
と柔らかく目を細めた。
「そういやぁ、初めて春水とデートした時も桜が満開だったな」
現世だったけど、と思い出す。
「あいつ最近忙しそうだったな・・・」
白はその場にしゃがみ込むと小鳥が落とした桜の花を拾い始めた。なるべく綺麗な、花びらがちゃんと残っている物を選んでは拾った。
「このくらいで良いか」
手の熱で萎れないように着物の袖で包んだ。
立ち上がり、京楽の居る八番隊へ行こうと歩き始めた矢先、前の方を朝月が歩いているのを見つけた。声を掛けようと口を開いた瞬間、その横を朔が一緒に歩いているのを見つけた。
幸せそうに笑いあう二人を見て、ああやっぱりデートだったなと思うと同時に微笑ましく思え眺めていると、
「し〜ろ!一人でお散歩?」
と例によって後ろから京楽が抱きついてきた。
「うお!だから急に後ろから抱きつくの止めろつってんだろ!」
「ごめ〜ん。あれ?何持ってるの?白」
と白の着物の袖を指さした。
「あ?ああ、桜の花だよ。お前仕事のサボり過ぎで七緒のコト怒らせて仕事場に縛られてたろ?花見も出来ねえんじゃねえかと思ってよ」
と袖を広げて見せる。
「ありがとう。綺麗だね」
そんな話をしているうちに、朝月の事を思い出した白。
(なんか、付き合ってるの隠してるっぽいよな〜。それにコイツも親馬鹿だからな。やべえか?)
「な、なあ!春水!もう仕事に戻った方が良いんじゃねえのか?」
と朝月達とは反対方向へ歩いていく白。
「ん?まあね〜」
「ほら!七緒が怒っちまうぞ?一緒に帰ろうぜ?」
と何処か焦っている様な、何かを気にしている様な白を訝しがる京楽。
「どうしたの?白ってば。僕と一緒に歩くの嫌かい?それとも誰か居るの?」
と朝月達が居る方を見ようとしたので、
「しゅ!春水!だって!」
ぐい!と顔をこちらに向けると触れるだけのキスをした。
「し、しろ・・・?」
「だって・・、その、最近は、ずっと仕事ばっかじゃねえか。だから、一緒にこの桜、風呂に浮かべて一緒に入りてえなとか、思って・・・うおっ!」
最後まで言わないうちに姫抱きにされ、京楽を見上げる白。
「白?こんな昼間からそんな事言っちゃダメだよ。我慢できないじゃないか・・・!」
「いや、ちょ!わあ!」
瞬歩で屋敷まで白を連れ帰ると早速風呂の用意をし出した。
「おい、仕事大丈夫なのかよ?」
「お仕事より白の方が大事だもん。それにこんな状態じゃ戻れないよ・・・?」
と抱き締め、己の昂りを押し付ける。
「ば!バカ!この・・・!」
「ふふ、さ、その桜を貸して?洗ってからお湯に浮かべよう」
「ん・・」
白は観念したように袖の桜を京楽に渡した。

着替えを用意してきた京楽が白と一緒に風呂に入る。
「やぁ、風流だねぇ」
と白を抱きかかえ、上機嫌で湯に浸かっている。
桜の花が浮いた湯船は空の色を映し、白い湯気と相まって幻想的で美しかった。
ちゃぷ、と湯を掬う白の手を取ると、手の平の花弁を唇で取り除いた。
「あ・・・」
後ろを振り返ると花弁を唇に挟んだまま、欲を孕んだ顔で笑っていた。
「しゅ、春水」
「ん・・・?」
その笑みに雄の匂いを感じてドキドキした白が口付けをせがんだ。
「ん、んふ・・・、ん、ん、しゅん、すい・・・」
不自然な格好で京楽の後頭部に腕を回す白を見兼ねて正面から抱きすくめる。
「こっちの方が、楽でしょう・・・?」
「ん、もっと・・・」

ぱしゃん!
「あ!あ、あ、あ!しゅん!すい!んああ!」
「あぁ綺麗だ、白。さっき外で君を見た時!まるで桜の精かと思ったよ・・・!」
「ん!ん!なん、で?」
湯船の中で揺さぶられる白が聞き返す。
「だって、あんなに優しい顔で、桜吹雪の中に立ってるんだもの!」
「ば、か!あん!」
「桜も似合うけど、この赤い華が一番似合うね・・・」
と背中に付けた赤い跡に吸い付く。
「ふぅっん!や!も、熱い・・・!」
「もう、イク?僕も限界・・・!」
と白の最奥に熱の塊を注ぎ込んだ。
「ああ!んあぁあ!あ・・・!」
「白・・・、夜にまた、ね?」
「あほぅ・・・」
湯船から出て白の体や髪を丁寧に乾かして午後の仕事へと帰った京楽。
余りにサッパリした顔をしているのでナニをして来たのか察した七緒が早めに帰してくれた。

翌日。
「・・・なぁ、朝月?」
「なあに?かか様」
「明日一緒に買い物行かねえか」
「わ!良いわよ!楽しみ!どこに行くの?」
「まぁ良いからよ」
翌日出かける二人。行きついたのは京楽が連れて行ってくれた呉服屋だった。
「ここ」
「わぁ〜・・・すごい」
「おい、入んぞ?」
「あ、は〜い!」
ずんずんとアクセサリー売り場へと向かう白。
「さてと・・・、どれが似合うか・・・」
「かか様?」
「お前も年頃なんだからよ。『良い人』に会うのになんか付けろよ」
「にゃ!何言ってるの!そんな!」
顔を真っ赤にする朝月。
「良〜って!ふん・・・、お前はやっぱローズピンクか・・・」
小さな薔薇の花が付いた飾り櫛と髪ゴムを朝月に宛がい、見比べる。
「どっちが良い?」
「こっちの櫛が綺麗・・・」
「んじゃ、これな」
と勘定に向かう。
「ホレ。お前のだ。次はお前の小遣いで買うかしろ。相手が買うって言うだろうがな」
ニッと笑って朝月を撫でた。
「あ、ありがと・・・かか様」
「ん!まぁ、あいつなら大丈夫だろ」
「・・・!し、知ってたの!?」
「んん?まあな。あいつの話するお前の顔とか、匂いとかな〜。春水は気づいてねえけど」
「まだ言わないでね?じ、自分で言うから・・・!」
「ああ・・・。頑張れよ」
「うん!」
翌日、その櫛を付けて遊びに行く朝月が居た。
「今日は可愛い櫛を付けてたねぇ」
「ああ、昨日買ってやった」
「そう。君は青い薔薇であの子はピンクの薔薇かぁ。この子は何色の薔薇が似合うかなぁ?」
とウルと遊んでいる夕月を撫でる。
「黄色い系?」
「俺は・・・、縁が濃いピンクで中心がオレンジの薔薇が似合うと思います」
「そんなんあんのか?」
「あ〜、あるねぇ。あの薔薇も綺麗だねぇ。今度色んな色の薔薇の花束を買ってこようか」
「おお!俺、薔薇の匂い好きだぞ!」
「パパメイヤンは香りが強いけどね。一緒に見に行こうか?」
「おう!」






11/04/03作 166作目です!8万打!ありがとうございます!
8万打お礼のフリー小説ですのでお気に召した方、どうぞお持ち帰りください。
白は「アイスバーグ」、春水は「熱情」、朝月は「ダイアナ」、夕月は「栄光」、ウルは「緑光」、と言う薔薇のイメージです。


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