題「雛祭り」
 家族揃って夕飯を食べている時に京楽が白に、
「ねぇ白、雛祭りって知ってる?」
と聞いた。
「んあ?ひなまつり?何かの祭りか?」
夕飯の鰆の柚庵焼きと蕪の和風あんかけに舌鼓を打っていた白が聞き返す。
「うん、三月三日は雛祭りって言って女の子のお祭りなんだよ」
「女の子の・・・、じゃあ朝月と夕月の祭りだな」
と横に居る夕月の頭を撫でて言った。にっこりと嬉しそうに笑う夕月。
「そうだねぇ。それでね、明日なんだけど義姉さんが皆で雛祭りを祝おうって言ってるんだけど・・・、どう?」
僕も非番だし、とお伺いを立てる京楽。
「姉様が?久し振りだな。良いぞ、俺も会いたいし」
「そう。義姉さんも喜ぶよ」
と京楽も嬉しそうに笑った。

三月三日。
京楽本家へ家族全員で出掛けた。
「こんちわー。姉様、元気か?」
「お久し振りですわね、白さん。皆さんもお元気でしたか?朝月ちゃんも夕月ちゃんもウル君も大きくなって」
と嬉しげに目を細めて迎え入れ、客間へと案内した。
そこには立派な雛飾りが飾られており、白や子供達は歓声を上げた。
「デケェな、人形もいっぱいあるぞ!」
「わあ〜!きれ〜い!」
「ママ!お人形さんのお着物綺麗です!にぃちゃ、近くで見たいです!」
ウルも近くで見てみると人形の着物もそうだが、装飾品なども精巧に作られており思わず唸っていた。
「どうした?ウル」
「いえ、この飾りの品々が素晴らしくて・・・」
そこに飾られている雛飾りの酒器や茶道具、楽器などを指差して言った。
「あ、ホントだ。ちっせえのに本物みてえだな!」
きゃあきゃあはしゃいでいると、
「さあさ、お人形さんは後でも逃げませんわ。もうすぐお昼でお腹の方がお空きでしょう?」
と運び込まれたのは、豪華な散らし寿司や蛤の潮汁、菜の花の和え物、旬の山菜のゼンマイやたらの芽、若竹の天ぷらなどが所狭しと並べられていた。
「さあ、みんなで一緒に食べましょう」
「「「は〜い!」」」
と元気よく返事するのは、白、朝月、夕月。大人しく座るウルキオラと京楽。

それぞれの皿に盛られる散らし寿司。
鮪や鯛、サーモン、イクラ、海老、イカが盛られ、その上に錦糸卵と刻み海苔が乗せられた。
「うまそ〜!春水達と食べた海鮮丼みたいだ!」
顔を綻ばせる白。
「さ!召し上がれ。わたくし腕によりを掛けましたのよ?」
「え!姉様が作ったのかこれ!すげえすげえ!姉様すげえな!」
「うふふ!可愛い妹の為ですもの。何だって作りますわよ」
「ありがと姉様!頂きます!」
パン!と手を合わせ食べていく白。それに続き子供達と春水も食べる。
「美味い!姉様、これ美味いよ!」
もりもりと散らし寿司を頬張る白。その横で夕月もリスの様に頬張っている。
「この椀の貝、美味いな!なんだコレ?」
「それは蛤と言う貝ですわ、この後で遊ぶ貝合わせの貝がこれなんですのよ」
「これで遊ぶのか?」
と身を食べ終わった後の貝殻を箸で持ち上げる。
「材料が同じ貝殻なんですよ。きっと気に入って頂けますわ」
「ふうん・・・」
「白、おべんと付けてるよ」
「ん」
ひょいと口の端の飯粒を取ると自分の口に入れる京楽。
「サンキュ」
「おかわりは?いるかい?」
「んー、もういい。美味しかった!」
「良かった、白さんのお口にあって嬉しいわ」
「姉様の出してくれるモンはみんな美味いぞ?」
ずず・・・、とお茶をすする白。
「まあ!まあ!本当に嬉しいこと!次は貝合わせで遊びましょう。カルタ取りも楽しいですわよ」
と童女に帰ったかのようにウキウキとはしゃぐ兄嫁を初めて見た京楽。
「どうやって遊ぶんだ?」
と貝が入った桶を眺めている白。
「この中に入っている貝に描かれた絵を合わせるんですよ」
と数個の貝を白に渡してやる。金箔が貼られた貝の内側には美しい風景などが描かれていた。
「似たような絵もあるけど・・・?」
「うふふ!この蛤と言う貝は同じ貝でなければ合わないんですの」
「何でだ?」
「あのね白、貝のココ見てごらん」
「うん?」
「溝みたいなのがあるでしょう?」
「コレか?」
指で触る白。
「そう。これが一つ一つの貝で違うんだよ。試して御覧」
「うん」
と試しに一つの貝を外して合わせてみる。
カポッと合わさる。
「はまった!」
「じゃ、今度は違うヤツとね」
「ん。あれ?」
形は似ているのに全然はまらない。
「ん〜!なんでだ?」
「同じ貝じゃないからね」
「ふ〜ん」
「同じ貝しか合わないから良い結婚相手に恵まれますようにって嫁入り道具にもなってたんだよ」
「へえ〜」
「朝月や夕月にも用意しなくちゃねぇ」
「そうだな」
と返事をしながらも貝に描かれている絵に見惚れている白。

「さ、遊びましょう」
と桶の中の貝を全て裏返しにして並べていき、貝合わせを楽しむ白達。
「コレと〜、これ!あれ〜?違う〜」
と朝月。
「次俺な〜。コレとこれ!」
「お見事!白」
白が選んだ貝はちゃんと合わさった。
「えっへっへ〜!」
と嬉しそうに笑っている。
「夕月も!」
「おう!どれにするんだ?」
「えっと、えっと、コレとこれ!」
「お!似てるぞ。と、あ〜違うな」
「あぅ〜」
カルタ取りでもようやく平仮名を覚えた白が活躍した。
「犬も歩けば〜・・・」
「みっけ!おらぁ!よっしゃ、取ったぁ!」
子供の様にはしゃぐ白を見て連れて来て良かったと京楽は心の中で義姉に感謝した。
「白ってば」
「かか様ったら・・・」
誰よりも札を取ってご機嫌な白が目線だけで京楽に、
「褒めて!褒めて!」
って言っている。苦笑しながら白の頭を撫でてやる。
「うんうん。いっぱい取れたねぇ。エライエライ」
出ていないはずの尻尾がパタパタ揺れて、耳もピコピコと動いているのが手に取るように分かった。
兄嫁が、
「さあ、運動してお腹に余裕も出たかしら?雛あられと菱餅、苺のパフェもありますわよ」
とおやつを出した。
「おお〜!これも雛祭りのお菓子か?!」
「あられとお餅はそうだね。食べられるかい?」
「おう!」
あられも菱餅もパフェも残さず食べた白。
「姉様!お菓子も美味かった!雛祭りって良いな!」
「喜んで頂いてわたくしも嬉しいですわ。また遊びに来てくださいね?いつでも歓迎致しますから」
と優しく微笑む兄嫁。
「そうだな。今日はおじいちゃんが居ねえから今度は居ると時に来るよ」
「あら優しいのですね。妬けてしまいますわ」
と言いながらころころと鈴が鳴るように笑う兄嫁。
楽しいひと時を過ごし、家へと帰る。童心に帰れて楽しかったのは白も同じだった。

後日、兄嫁から白への贈り物として真新しい貝合わせの貝が一式届けられた。
「かか様、遊ぼ!」
「おう!」
それを使って遊ぶ白と朝月と夕月が居た。







11/03/08作 第163作目。遅れましたが雛祭りです。一護の所も騒がしく祝っている事でしょう。
グリとノイの散らし寿司の取り合いとか。着飾った十六夜は狛むーの所でしょうね。
もうそろそろ兄嫁の名前も考えないといけないかしら?
兄嫁は白を本当の妹(←)の様に可愛がっています。白も姉様(あねさま)と呼んで慕ってます。
義兄の事は兄嫁に「わたくしの事は姉と呼んで下さいまし。夫の事はおじいちゃんと」と言われたのでそのまま定着。
義兄も満更でも無い感じ。この夫婦も仲良いですよ。


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