題「馴れ初め番外編〜無自覚な恋〜」 | |
2月に入ってカレンダーの14日の所に印が描き入れられた。赤いペンで三重の花丸・・・。 そのカレンダーの前で白がこれでもかと首を傾げている。 (これ描いたの春水だよな?・・・なんだ、これ?) もう首は90度に傾く勢いである。 「ママ、お首が痛くなるですよ?」 「お?おお・・・」 コキン!と音を立て首を真っすぐに戻す。 (何かあったっけか?『せつぶん』とやらはもうやったしなぁ・・・) と2月3日にあった豆まきと恵方巻きを食べたことを思い出した白。 (アレ面白かったな・・・) 「鬼は〜!外〜!」 と鬼役に扮した京楽に手加減なしで豆をぶつけた後は歳の数だけ豆を食べた(少ないと文句言った)後に恵方に向かって巻きずしを食べた。 何もかも初めてで楽しかった。寿司を食べている間、何故か京楽がこっちを見ながらニヤニヤしていたので後で理由を訊いた白。もちろん鉄拳制裁を受けた京楽。 子供達も楽しんでお腹がいっぱいになったらすぐに眠ってしまった。 夜になり、寝室では・・・。 「僕の福の神は白だねぇ」 と押し倒しながら言う京楽に、 「じゃあお前は鬼なのか?」 「ん?ふふふ・・・、ココは鬼より強いと思ってるよ?」 と育った熱の杭を押し当てる。 「あ・・・ん、じゃあ俺が退治してやるよ。せいぜい気持ち良くしてくれよ?」 と挑発すれば待ってました!と言わんばかりにいつもより貪られた白。 そんな節分の日の事を思い出しながら考える白。 「何かの日だっけか?あ、何か書いてあるな・・・」 聖バレンタインデー。と印刷されていた。 「あ・・・」 (思っくそ忘れてたな・・・) 「一護ンとこ行くか・・・」 白はウルを呼んだ。 「俺は今から一護の所に行く。お前はどうする?一緒に行くか?夕月と留守番してるか?」 「・・・少し鍛錬もしたいのでご一緒します」 「ん。朝月も行ってると思うから合流すりゃいいか」 十一番隊。 「一護、居るかー?」 「あ、にぃに。どうしたの?」 「あ〜。あのよ、もうすぐバレンタインだろ?」 「うん、そうだね」 「今年は春水に何かやりてえなと思ってよ」 「それなら今から一緒に行かない?乱菊さん達とお菓子食べに行ってそこで相談しようと思ってたんだ〜!」 「そうだな・・・」 「十六夜も朝月も来るから夕月も一緒においでよ」 「行くですー!」 小さな手の平を広げてバンザイしながらはしゃぐ夕月。 行きつけの甘味処に行くと既に女性メンバーが来ていて座敷に上がっていた。 「遅かったわね〜、一護。あら!白も来たのね!夕ちゃんこんにちは〜!」 「こんにちはです!」 「どうしたのよ?珍しいじゃない」 「ん〜・・・」 「もうすぐバレンタインだからにぃにも参加するんだけど、良い?」 「当たり前よ!大歓迎よ!」 人数分のあんみつを頼み、食べながら今年の流行のチョコにするか、やっぱり本命には手作りにするかと話し合った。 「・・・チョコって作れんのか?」 「そうよ。ま!溶かして型に入れるだけって言うのが一番簡単よね」 「ふう〜ん」 「他にはチョコケーキとか、生チョコとか、焼きチョコも美味しいわよね〜」 「十六夜は今年も狛村隊長にあげるの?」 「うん!今年はね、フォンダンショコラに挑戦したいの!乱菊さん作り方教えてね!」 「良いわよ〜!去年はカップケーキだったわね」 「う、うん!」 ポッ!と頬を染める十六夜。 「朝月も作るのかしら?」 「うん!挑戦したい!」 「じゃ、あんた達はフォンダンショコラで決定ね。一護は?」 「ん〜。今年は子供が増えたから子供達と隊士達に焼きチョコと剣八にはお酒の効いた生チョコとか良いかなぁって」 「ああ、良いわね。ラム酒漬けのレーズン入れたら良いんじゃないかしら」 さらさらとメモに書いていく乱菊。 「白はどうする?チョコ味のクッキーにする?」 「・・・俺に作れんのかよ?」 「簡単よ!あんたクッキー焼いた事あるじゃない!アレの応用よ!数も多く作れるし、四番隊に配っても良いんじゃない?心配しなくてもちゃんと教えてあげるわよ!」 バチン!とウィンクを決めながら言うと白は安心した様だった。 各々が作るチョコが決まった後はお喋り大会になった。乱菊が、 「そういえば狐と人間の間に子供が生まれるってあんまり聞かないわね」 と口火を切った。 「当たり前だ。100年に1回あるかないかだぞ?」 「へ〜・・・そうなんだ」 「狐が人間の子を孕むにはかなり霊力が強くねーとな。まして産むとなればそれ相当の霊力がいるんだよ。異種族の子を産むんだ。狐同士の子を生むのとは訳が違う」 あんみつを頬張りながら説明する白。 「じゃぁ、2人とも相当霊力が強いんだ?」 「元々、俺たちの一族は霊力が強い。その中でも俺たちは特に強いんだよ。まぁ、子供産むには相手の霊力も強くないと無理だけどな」 「霊力が強いと人間とも子供が出来るの?」 「いんや?それだけじゃ出来ねーよ」 「他になにかあるの?」 「互いが、唯一無二の絶対的存在だと認め合った上で、月の加護を受けなきゃ出来ねーよ」 「そうなんですか」 「だから100年に1回あるかないかなんですね」 「・・・それでも俺たちが子供を産むってコト事態ありえねーんだけどな・・・」 「あら、どうして?」 「よく考えてみろ、俺たちは雄だぞ?いくら霊力が強くたって雄が子を産むなんてありえる訳ねーだろ」 「狐だからじゃないの?」 「アホか!!狐でもありえねーよっ!それじゃ雄と雌がいる意味ねーーだろうがっ!」 「それもそうよねぇ・・・」 あんみつを味わい、目を輝かせた乱菊が、 「ねえ!じゃぁ、白はいつ京楽隊長を好きになったの?」 「・・・・・え?」 「一護が更木隊長を好きになったのは分かるとして、・・・白はいつ京楽隊長を好きになったの?」 「それ、聞きたいですね!」 「ねーねー、いつなの?」 「え?・・・あ、と・・・・」 「し〜ろ!正直に言いなさい」 「・・・え・・・と、あ、朝月を、流産しかけた・・・・あと?」 「え?」 「ええ〜〜!?」 「・・・ええ〜って・・・何だよ」 「ちょ・・・」 「・・白さん?」 「・・・なんだよ・・」 「さっき『互いが唯一無二の絶対的存在だと認めないとダメ』って言ってませんでした?」 「・・・・言った・・・」 「じゃぁさ、子供できたのっていつ?」 「・・・う・・・」 「し〜ろ〜ちゃ〜ん?」 「さっさと白状しなさいっ」 「・・た、たぶん・・・」 「多分?」 みんなワクワクと目が輝いている。 「は・・・初めて、あ・・会った日・・に・・」 もじもじと俯いて消え入りそうな声で言った。 「えええ〜〜っ!!!!!」 「それって一目惚れですか!?」 「しかも自覚無し!?」 「・・・っ、し、知らねーよ!」 顔を真っ赤にして若干涙目の白。 「(しろちゃん、かわいい!)」 「(白さん、純情です!!)」 「(白さんらしいですね)」 「(自覚無しって、初心と言うか無垢と言うか・・)」 「(つか京楽隊長、白に何言ったの!?何したのっ!?)」 「〜〜〜〜〜〜〜っっ!も!良いだろ!」 そんな母の姿を見た朝月が、 「は〜〜・・・、なんて言うか、かか様らしいって言うか・・・。かか様だわ、うん」 と頷いてお茶を啜っている。もむもむと白玉を頬張っている夕月が爆弾を落とした。 「ママはパパが大好きなのですか?ずぅっと前から?」 「はう!」 夕月の発言で耐えられなくなった白は耳と尻尾が出てしまい、テーブルに頭から突っ伏してしまった。 「にぃに・・・」 隣の一護が背中を撫でると、イヤイヤをするように頭と尻尾を振って何事か言っている様だった。 「あら・・・、ちょっと弄り過ぎちゃったかしら?」 「白さん、大丈夫ですか?」 「うぅ〜〜・・・」 唸りながら顔を上げた白は、ペタンと寝た耳と薔薇色に染まった頬と潤んだ瞳でいつも以上に綺麗になっていた。 「今日はもう復活出来そうもないわね。じゃあ13日にラッピングの材料を買いに行くからお昼休みに一護の所で待ち合わせしましょ!」 とその日は解散と相成った。 ふわふわとした足取りで家に帰り着くと部屋に籠ってしまった白。 「母上はどうなされたのだ?」 と首を傾げるウルに朝月が説明した。 「何でもないわよ。ちょっとした新発見と言うか、再確認があっただけよ。とと様が帰ってくれば治るでしょ」 チョコのラッピングはどうしようかと思案に暮れる朝月だった。 「ただいま〜」 「お帰りなさい、とと様」 「お帰りなさい!パパ!」 「お帰りなさいませ」 「ただ〜いま!あれ?白は?」 「かか様なら部屋に居るわよ」 「おや?もう寝てるの?具合でも悪いのかな?」 「違うわ。ま、早く顔見せてあげてよ」 「うん。分かったよ」 と寝室に入る京楽。 「白・・・?」 声を掛けられるとビクン!と反応する白。 「どうしたの?具合悪いのかな?」 「・・・違う」 「そう。じゃあお顔見せてよ、白」 さら・・・、と髪を撫でると、 「やぅ!」 と突っぱねる白。 「白?」 「あ・・・」 白の顔を覗きこむと、未だ上気した頬と潤んだ瞳に思わず欲情しかけた京楽。 「し、白・・・?!」 おまけにふるふると震えている。 「どうしたの?そんなに可愛い顔してると食べちゃうよ?」 とやんわりと抱き締める。 「だ・・・って、急に恥ずかしくなった・・・」 「何が?」 「わ、わかんね・・・!」 「熱っぽいね。今日はゆっくり寝た方が良いかもね」 「そうする・・・」 と意外にも大人しく蒲団に潜った白。 着替えて居間に行くと、 「あら、やっぱり復活出来なかったのね、かか様」 「うん?どういう事だい?」 「改めてとと様が好きだって再確認しちゃってオーバーヒートしちゃったのよ」 肩を竦めて溜め息交じりに教える。 「おやまぁ」 それを聞いて締まりのない顔になったのは言うまでもない。 その日は流石に何も出来なくて横で添い寝するに留めた京楽だった。 13日。 「じゃあラッピングの材料の買い出しに行くわよ〜!」 「はぁ〜い!」 雑貨屋に行くと色鮮やかな包装紙やリボンなど色々手にとってキャイキャイはしゃぐ女の子組。 「これが良いかなぁ〜?」 「十六夜は赤いリボンが良くない?この金で縁取りしてるヤツ!」 「綺麗!じゃあ包装紙はこの深紅が良いかしら?」 「良いじゃない!あたしは〜、青にしようかな?」 「朝月はやっぱりピンクじゃない?こっちに綺麗なローズピンクがあったわ!」 「ホント!じゃあリボンは細い金色のこれで!」 「素敵!」 「夕月も誰かにあげるのかしら?」 「え〜と、にぃちゃとびゃっくんにあげるです!パパにも!」 「あらそうなの!でも朽木隊長甘い物好きじゃないから苦い方が良いわね」 「にがいチョコですか?」 「そうよ〜。それに夕月にはちょっと危ないからお店で売ってるチョコの方が良いわね」 「そうなのですか?じゃあコレと・・・、にがいチョコはどれですか?」 「ビターチョコはこれね。カカオの粒が入ってるヤツ結構美味しかったわね」 ウルに小さなハート型のミルクチョコが詰まったビンを、白哉には綺麗な缶に入ったビターチョコを選び、京楽には、 『パパ大好き』 と書かれたチョコをそれぞれ包装してもらった夕月。 「えへへ!」 嬉しそうに笑っている。 「みんな!ちゃんと選んだ?さっさと会計してチョコ作り始めるわよ〜!」 「はあ〜い!」 一護は紫の和紙で出来た袋と小袋のセットを買った。白は可愛い箱とリボンを選んだ。 その後はチョコ作りを始めるために十番隊の台所を占拠した女性陣。 「じゃあ早速始めるわよ〜!」 因みに冬獅朗は諦めて今日一日出掛けている。 「まずは一護と白から!」 「お、おう!」 「はい!」 「先に同じ焼き物のクッキーと焼きチョコ作っちゃいましょ!」 先に白のクッキーを作る。 「そうそう、そうやってココアと混ぜて・・・」 「こうか・・・?」 「そ!混ざったら、この搾り袋に入れて」 モッタリした生地を袋に詰めていく。 「で、このシートに搾り出すのよ。ハートにね!」 「ん・・・」 慣れない手つきで生地を搾っていく白。天板いっぱいにハートが出来た。そこに、 「このかざりのアラザンと、ナッツ類を飾って」 ピスタチオやアーモンド飾り、アラザンを振っていく。 「じゃ焼いていくわよ〜」 チ〜ン! 「焼けたか?」 「良い感じじゃない。これに溶かしたチョコをこうチャチャッと掛けて・・・」 「こうか?」 「そうそう!これで出来上がりよ!」 「わぁ!綺麗!かか様すごーい!」 「はい、残った生地も焼いていって」 「お、おう!」 「はい、次一護ね」 「うん!」 先に焼きチョコを作っていき、本命の生チョコを作っていく。 「これにラム酒漬けの刻んだレーズンを入れて・・・」 「うん」 「後は固まったヤツを切って出来上がりよ!」 先に焼けたチョコを小袋に詰める一護。 次に娘達がフォンダンショコラを作っていく。 「にぃに、どう?」 「おう。春水の分は詰めた。後は卯ノ花さんトコだ」 「わ。たくさんあるね!」 「マユリンとこの分もあるしな〜」 「あぁ、涅さんと仲良いよね、にぃに」 「おもろいんだよ、あいつ」 「にぃにらしいね」 「「出来たーー!!」」 と娘の声が響いた。 「冷めたらそれに粉砂糖でお化粧して完成よ!」 計4個のショコラが焼き上がっていた。 「これはとと様の〜!」 「ね〜!」 と丁寧にラッピングしていく。 後はクッキーを焼いてチョコを浸した物を作って兄弟の分とした。 「さ!本番は明日よ!みんな頑張ってね!」 「はあ〜い!」 バレンタイン当日。 隊首室でソワソワしている京楽が居た。 「隊長・・・」 「ん?なあに、七緒ちゃん」 「鬱陶しいんですが」 「酷いなぁ、もう」 苦笑しつつも早く仕事が終わる事を考えていた京楽。 そして終業。 「終わった〜!じゃあ僕帰るからね!」 「ハイハイ、お疲れ様です」 呆れてひらひらと手を振る七緒。 瞬歩で家に帰る京楽。 「ただいま!!」 「おかえりですー!パパ!」 「お帰り!とと様! 「お帰りなさいませ」 子供達はみんなご機嫌である。 「「せーの!ハッピーバレンタイン!とと様!」」 朝月、夕月がそれぞれ綺麗にラッピングしたチョコを渡した。 「わあ!嬉しいなぁ!ありがとうね!二人とも!」 ホクホク顔で居間に行くと白が居ない。 「あれ?かか様は?」 「お部屋で待ってるわ」 「そう。じゃあ行ってくるね」 「はあ〜い」 寝室。 「し〜ろ!ただいま!」 「お帰り、春水」 もじもじと後ろに何か隠している。 「しゅ!春水!これ!」 「わあ、可愛いねぇ!」 ピンクのストライプの箱に白地に金のリボンが巻かれた箱を差し出す白。 「開けても良いかい?」 「・・・ん」 しゅるり、とリボンを解き、蓋を開ける。 「うわあ!美味しそうなクッキーだ」 カサと一つ取ると口に放り込んだ。 「ん!おいっしいねぇ!」 「ほ!ホントか!」 「うん!と〜っても!白の愛がたっぷり入ってるからすっごくすっごく美味しいよ」 ちゅっとこめかみにキスした京楽。 「ん・・・!」 「白・・・、とっても嬉しいよ・・・」 「うん・・・」 「ああ、まだ夜が更けるまで時間があるね。朝月と夕月にもチョコを貰ったんだ。ご飯の後で食べよう」 「ああ、そうだな」 今夜も甘くなりそうな白と京楽だった。 終 11/02/09作 第159作目です。エッチ無しでした。 娘たちと一護のバレンタインは別のお話で・・・。 |
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