題「ハロウィン!」 | |
「とりっきゅおあといーと!」 「トリック・オア・トリート!」 舌足らずな声で仮装した青陽とやちると各隊を回っている。 青陽はシーツで作ったお化けの仮装。目と口の所を黒いメッシュ生地で作った一護のお手製だ。 やちるは小さな魔女の格好で大きな黒い帽子を被っている。 荷物持ちに風死、ビデオ撮影に虎白が駆り出された。 更木宅。 「と言う訳で!子供だけじゃ心配なんでお前等にも付いてってもらう事にした。虎白はビデオ撮影、風死は荷物持ちな!」 「ちょっと待て!虎白は分かるがなんで俺が荷物持ちなんだよ!」 「俺なら分かるってなんだコラァ!」 「うるっせぇ!子煩悩が!」 「それはテメェもだろうが!」 「うるさい」 二人の後頭部を掴んでお互いの額にぶつけて黙らせる一護。 しゅうぅう〜と湯気を出しながらその場に倒れる二人。 「ぐだぐだ言うな!帰ってきたら飯だ。今日はハンバーグとシチューだからな。風死も食ってけよ」 「え?良いのか」 「ああ、大勢で食った方が美味いしな」 ニカッと笑う一護に、 「しょ、しょうがねえな!頼まれてやるよ!」 「安っすいな、お前・・・」 「お、そんな事言うなら、ケーキやんねえぞ?虎白」 「んな!」 「美味いぞ〜?俺の手作りケーキは〜?」 「きったねえぞ!」 「お前も一緒じゃねえか・・・」 と呆れている剣八。 「兄たん、一緒いこー?」 フリフリとシーツに包まれた手を振りながら青陽が誘う。 「わあったよ!」 手渡されたビデオの電池残量を確認しながら風死に、 「・・・八番隊には二人だけで行けよ・・・」 とぼそりと呟いた。 「・・・ああ」 そんな訳で一番隊から順の回って行く。 「とりっきゅおあといーと!」 「じいじ!お菓子くれなきゃいたずらだよー!」 「おお、おお、小鬼が来よったの」 総隊長からお菓子を貰うと大きな袋を持っている風死に駆け寄って行き、 「こんなに貰った!」 と見せて袋に入れた。 二番隊。 「とりっきゅおあといーと〜!」 ここでは大前田が油せんべいをやろうとしたが砕蜂に、 「そんな身体に悪そうな物を子供食わせるな!」 と怒られていた。そんな砕蜂が渡したお菓子は猫の形をクッキー蜂蜜味だった。 「ありがとー!蜂蜜のおねえちゃん!」 と満面の笑みで礼を言う青陽。 (か、可愛い!これで猫の仮装をしていれば・・・!) ジーッと撮影している虎白が、 「こいつが赤ん坊の時に猫の格好してる写真あるぞ。夜一さんがくれたやつだけどな」 と言うと、 「本当か!?」 と食い付いた。 「ああ、黒い猫だったぞ」 「おお・・・!さすが夜一様!抜群のセンスだ!」 「ふ、ふぅん・・・」 その後も三番隊で、四番隊では卯ノ花さんお手製のお菓子を貰った青陽とやちる。 六番隊では、恋次に鯛焼きを白哉からはワカメ大使の人形焼きの新作を貰った青陽が、 「うわぁ!うわぁ!びゃっくん、ありがとう!」 と抱き付いて喜んだ。 「おい、アレの何が嬉しいんだ?」 「俺が知るかよ。生まれた時から見てるからじゃねえの?」 青陽に高い高いをしてやっている白哉をビデオに納める。 七番隊では射場が大袈裟に驚いてくれ、狛村も、 「良く出来ているな」 と褒めてくれた。 八番隊の近くに来ると風死にビデオを渡し、自分は袋を持って外で待つ虎白。 「やぁ!よく来たね、青陽君!」 とにこやかに迎える京楽と七緒だが近づこうとしない青陽。 二人からお菓子を受け取ると早く帰りたがる青陽。 「どうしたんだい?今日はお兄ちゃんは来てないのかな」 と訊くと責める様な眼差しを向ける青陽。 「・・・おじさん、兄たんいじめてるひとでしょ・・・?兄たん来ないよ」 「え・・?」 「兄たんいつも泣いてるもん。おじさんきらい」 タタタッ!と走って出て行く青陽。 「どういう事です?隊長・・・?」 「いや・・・」 七緒の質問に何も言えない京楽だった。 「兄たん!」 「おう、早かったな。どうした?」 自分の袴にぎゅーっと抱き付く青陽とビデオを止めている風死に聞く。 「なんでもねえさ、次行こうぜ」 「あ?おお」 ビデオを虎白に返し、九番隊へ向かう四人。 「とりっきゅおあといーと〜!」 「おお、来たか。って何やってんだ、風死!」 「バイト?」 「日給は一護の飯だよな〜」 「うっせ!」 「なんつーか、お前も変わったよな」 と言いつつ手製のお菓子を青陽とやちるにあげる修兵。 十番隊では乱菊の乳に埋もれた青陽が泣きそうになり、虎白が引きはがした。 「てめえは何回泣かしゃあ気が済むんだ!」 「だぁって可愛いんだもの〜!」 溜息しか出ない冬獅朗から飴玉を貰い、次へ行く。 十一番隊は後回しにして十二番隊へ行く。 「なぁ〜んかあそこの菓子って怖くねえか?」 「ちょっとな・・・」 阿近辺りは大丈夫そうだが・・・。 十二番隊では阿近とネムからお菓子を貰った。 十三番隊では浮竹隊長から、 「アレもこれも」 と渡されそうになったが、さすがに持って帰れないと周りが止めた。 十一番隊。 「とりっきゅあおといーと〜!」 「いっちー!お菓子くれないといたずらしちゃうよ〜!」 「ははは!やっと来たな!ほら!」 バウムクーヘンをチョコでコーティングし、ホワイトチョコのチョコペンでハロウィンの絵を描いた物を出した。 「わあ〜!お母さんすっごーい!」 「虎白も風死もお疲れさん!これでお茶にしようぜ」 とおやつと相成った。実際風死は季節外れのサンタの様になっていた。 夕飯はかぼちゃのシチューにチーズハンバーグだった。 シチューにはかぼちゃ型に抜き取られた南瓜が入っていた。ハンバーグには上からチーズが掛けられ、海苔で顔が書かれていた。 「ほ〜ら、このハンバーグ今日の青陽そっくりだろ〜?」 「ほんとだ!」 とはしゃぎながらお腹いっぱい食べた青陽とやちる 虎白と風死も満足したようだ。 「まだケーキあんぞー」 「まだあんのかよ!」 「こっちは大人の味だぞ。コーヒー味だからな、青陽にゃ食わせらんねえし」 と四角く切り分けたケーキを配って行く。当の青陽は剣八の胡坐の中で舟を漕いでいる。 「これは修兵に持ってってやれよ、風死」 「あ、ああ、サンキュ」 夜も更けて、青陽も疲れたのかぐっすり寝ている。風死も帰って行き、虎白が青陽の部屋で寝る頃。 「おい、一護」 「んー?」 蒲団の用意をしている一護を抱き寄せ、耳元で、 「トリック・オア・トリート?」 と低音で囁いた。 「あ・・・!」 ピクン!と反応する一護が、 「お菓子をやって満足すんのか?うちの野獣はよ・・・?」 「ハッ!しねえな・・・」 「じゃあ・・・俺がお菓子になってやんよ」 「くく・・・!残さず食ってやるよ」 と夫婦のハロウィーンが更けて行った。 終 11/10/30作 ギリギリセーフ!今回エロは無し! 修兵さんは一護お手製のケーキを喜んで食べてました。あんま甘くないからね。 補足。 青陽の猫の格好は産着の事です。もこもこでピンクの肉球が付いてます。 蜂蜜のお姉ちゃん。砕蜂の「蜂」の字と雀蜂=ミツバチ=蜂蜜の連想で定着した模様。 青陽はワカメ大使大好きですよ。 |
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