題「美味しく召しませ」
 やちるから自分の帰りを待つ一護の様子を聞いた剣八は、二度寝している一護が起きるのを待って昼飯に誘った。

始終優しい顔で居る剣八に何だか嬉しくなる一護。
食後のお茶を啜りながら他愛もない話の途中で何かを思い出した一護。
「あ、言い忘れてたけどさ」
「うん?」
「俺昨日から冬休みなんだわ」
「ほぉ」
「だから結構長くこっちに居られるんだぜ」
「へぇ、じゃあ今日から泊んのか?」
「剣八さえ良いんならな」
「泊ってけよ」
「お、おう!」
そうして食事を終え、剣八は午後の仕事へ戻った。

その日から仕事が終わると自室へと直帰する剣八の姿が見られた。弓親達は、
「おやおや、仲睦まじいねぇ」
などと生温かい目で見守っていた。

「帰ったぞ」
「お帰り、最近帰ってくんの早いんだな」
にこにこと自分を出迎える一護にニヤける顔を必死で引き締める剣八。
いそいそと夕飯の用意をし一緒に食べ、風呂も一緒に入る。
そんなこんなで新婚の様な生活を過ごす剣八と一護だった。

昼休みに隊舎に顔を出し稽古をした後、弓親と甘味処へと繰り出した一護。
「最近はどう?」
「ん?何が?」
白玉善哉を食べながら話を振られる。
「最近一緒に暮らしてるんでしょ?どうなのさ、一人で待ってるんでしょ?」
「あぁ、いや最近は早く帰って来てくれるんだよな」
とお椀の中の善哉を箸でグルグルかき混ぜながら話す一護。
「と、時々遅い日もあるけど、そん時はちゃんと言っといてくれるしよ」
「へえ」
「俺の作った飯とか文句言わないで食ってくれっから、それは嬉しいかな・・・!」
自分で振っといて何だが善哉の甘さが濃くなった気がした弓親。塩昆布を口に含む。
「それに何かやたら優しいって言うか・・・!」
「ふう〜ん・・・」
だんだん胸焼けがして来た弓親。一護が善哉を食べ終わり、お茶を飲んで一息吐くと、
「なんだか新婚さんみたいだねぇ」
と言った。
「んあ?」
「だから新婚。蜜月状態じゃないか、幸せそうで羨ましいよ」
「え?あ!な!何言って!新婚!新婚って!」
「良いから良いから、早く旦那様のご飯の用意しないと陽が暮れちゃうよ?」
「うう〜」
真っ赤になる一護を急きたて店を後にする二人。

夕飯の用意をしながら、
(新婚って!そんなん・・・、気にしてねえし!)
ザクザク!と野菜を切っていく一護。
大した失敗もせず夕飯の用意を終え剣八の帰りを待つ一護。
「帰ったぞ」
「お!お帰り!剣八」
「ああ、なんだ?顔赤いぞ、風邪でも引いたか?」
「ひ、引いてない!さっきまで鍋作ってたから!」
「今日は鍋か、良いな」
「酒もあるからな。早く着替えろよ」
「なんだ?手伝ってくれねえのか?」
「う・・・」
剣八の部屋で着替えを手伝う一護。
受け取った斬魄刀を刀架に置き、羽織を衣紋掛に掛けた。
出しておいた着物に着替え、居間に戻って夕飯を食べる。その間中一護はちらちら剣八を見てはモジモジしていた。
(なんだぁ?確か今日は弓親とどっか行ってたな。何か言われたか?)
「剣八、明日も仕事か?」
「いいや、非番だ」
「へえ、良かったな。書類仕事から解放か?」
「うるせえよ」
と笑いながら一護が用意していた熱燗を呷る。

夕飯の後に一緒に風呂に入り、寝室に帰る。
いつものように愛し合い、満足して眠った二人だった。

翌日、非番である剣八が一護を甘味処へ誘った。
「じゃあ、いつもの店に行こうか」
「どこでもいいさ。お前が食うんだしな」
と行きつけの店に行き、新作の甘味に舌鼓を打つ一護。
頬杖を付いてひどく優しい目で一護を見ている剣八。
ふと一護と目が合った。何だかすごく照れくさくて目を逸らしてしまった。
甘味を食べ終わり、ふわふわした気持ちのまま隊舎へ帰る。

隊舎に着き、二人で部屋に帰る。
その途中の廊下で立ち止まり、ちょっと俯き加減で頬を染めながら、クイ!クイ!と剣八の着流しの袖を引っ張る一護。
「あん?どうした、一護」
「・・・の」
「あ?」
「あの・・・剣八・・・」
「あぁ」
「・・・シよ・・・?」
「・・・(今なんつった?こいつ)」
一護を凝視する剣八。その視線に耐えきれなくなった一護。
「な、なんでもな・・・!うぉ!」
「部屋行くぞ・・・」
「ん・・・」

寝室の布団の上に押し倒される一護。
「一護・・・」
いつもより優しい触れるだけのキスの雨が降り注ぐ。
「ん、ん・・・剣八・・・」
一護は自分から口を開き、剣八の舌を誘う。その誘いに乗り深い口付けをする剣八。
「ん、んふ、ぁん・・・ふ、ふぅ、ん」
熱く長い舌が一護の口の中の性感帯を擽っていく。
「ひ、ひう・・・!」
ビクッ!ビクッ!と震える一護の身体。
「なんだ・・・?口吸いだけで達っちまったか?」
「だって・・・!」
言い募ろうとした一護のこめかみにキスしながら着物の帯を解いていく。
「あ、や・・・」
濡れそぼった下帯も素早く外し、一護を裸にすると自分も素早く裸になった。

「一護、一護・・・」
名前を呼びながら首筋に顔を埋め、吸い付いては赤い跡を付けた。
チリリッとした痛みが繰り返され、鎖骨にまで降りてくるとカリカリと甘く噛まれた。
「あ、あうん・・・」
胸の小粒を舌で転がし、ぷちゅ、と口に含み、もう片方を指で摘まんだ。
「あ!ああ!ンッ!んん!」
カリッと歯を立て、赤くなったそれに舌を這わせる。
「くくっ!赤くなって苺みたいになったな・・・食べ頃か?」
「ばか・・・!」
一護の顔も負けず劣らず赤く染まっていた。
「なんだ?熟れた苺みたいだな、んん?」
そう言いながら赤く染まった頬を舐めた。
「ンッ!」
「一護・・・」
剣八の大きな手が身体中を撫でさすっていく。
「ん・・・気持ちいい・・・」
さらさらと髪を撫で、丸い肩や背中、胸から腹へと撫でていく。
いつもは性急なのに今日はゆっくりと施される愛撫に次第に過敏になっていく一護。
「ふ、ふあ、あ、ああ、や、変だ・・・、あぁ、ん・・・」
戸惑う一護に啄ばむ様な口付けを繰り返し、再び硬度を取り戻した一護の中心を口に含んだ。
先端を舌で擽り、括れに軽く歯を立て吸いあげると呆気なく達した。
「んあ!あ!ああ!や!あ!あ!イ、イク!」
剣八は出された精を零すことなく飲み下した。
「ん、んあぁ・・・、はぁ・・・」
吐精後の余韻に浸る間もなく蕾への愛撫が始まった。
熱い舌がそこを舐めていく。
「あぁ・・・!あ!あ!やん!ん、んん!は!」
くにゅくにゅと舌を出し入れして唾液を送っていく。くちゅくちゅと濡れた音が響き、解れてくると指が入って来た。
「はぁう!ンッ!んっ!け、剣八・・・!」
「ああ・・・」
中指で中を掻きまわし敏感な所を攻めていく。前立腺の周りを優しく揉んでいく。

「あっ!ぁっ!いや!あう!あん!ぁ!ああッ!」
指で中を掻き回しながら剣八は一護の足の指を口に含んだ。
足の親指を一護の中心と同じ様に舐めしゃぶり、指股に舌を這わせると一護の嬌声が上がった。
「ああ!やっ!指、舐めな・・で!おかしく、なるから!」
「は・・・!良いだろう?全身が性感帯になったみてぇに感じるだろ」
ぐちゅ、と3本に増やされた指で軽く奥を突くと、びくん!と跳ねる身体。
「あ!あ!や、も・・・!」
もうすぐイク、という所で指を抜き、滾る自身を宛がった。
「あ、あ・・・」
ぐぷ・・・、とゆっくり押し進めていく。一番太い所が入るとずぶずぶと最後まで飲みこんでいく。
「ん、んああぁあ・・・!あ、は!は!んん!いっぱい・・・、奥まで剣八が・・・」
「は・・・」
全てを納めると一護の身体を抱きしめて動かない剣八。
(剣八、いつもと違う・・・。けど気持ち良い・・・)
「あ、ああ、剣八、ん!」
一護の髪を撫でながら顔中にキスをしながら身体も撫でさすっていく。
「あ、あ、気持ち、いい、あ、あ?いや、なに?あ、ああ!っ〜〜!」
ビクッ!ビクッ!と身体を震わせ一護が達した。
「あ、あ、な、・・で、んあ!」
自分の胎内にある剣八の脈動がいつもよりハッキリ伝わってくる。形も血管の数も分かりそうだ。

ドックンッ!ドックンッ!ドクッ!ドックンッ!

「う、うあ!ああ!ああ!ダメ!ダメェ!んああぁあっ」
「一護・・・ッ?」
「んあ!いや!イク・・・!またイク!なんで!ああ!ああ!」
きゅう!きゅう!と締め付ける一護の中に剣八も熱を放つ。
「く・・・!」
「ひぃああ!」
中に叩きつけられる熱にも感じてイってしまった一護。
「一護・・・!」
緩く奥をつつく剣八。
「ひあッ!」
それだけで剣八の背に爪を立てる一護。
「あ、熱い、ん・・・」
ふるふる震える手で自分の下腹部に触れる一護。
(あ、あ、入ってる、この中に・・・!)
その手を掴むと握り込む剣八。
「け、剣八?ん!」
「一護・・・」
ちゅ、ちゅ、と繋いだ手と、指一本一本に口付けし、口に含み指の股まで舐め、甘噛みをする。
「ひん!あ、あん!剣、八!は、離さないで・・・、このまま・・!離れたくない・・・!」
「ああ、俺も離したくねえよ・・・!」
と言うとずるるとギリギリまで抜くと奥まで一気に貫いた。
「ッあーーッ!あっ!あっ!ひッ!ンぁっ!んふッ!ふっ!」
あまりの快感に剣八の肩に噛みついた一護。肌が破け、血の味が一護の口に広がった。
「はっ!お返しだ、一護」
剣八が一護の首に噛みついて所有印を残す。
「あうっ!ああ、剣八、もっと、もっと・・・!」
ぐしゅぐしゅと音を響かせ快感に飲まれていく一護。
「ん!くっ!ううっ!」
がりり、と背中に爪後を残していく。
「は・・・、今日はえらく感じてんなぁ?どうした?」
一護の指を舐めながら爪の間の血を吸い取っていく。
「ふ、あ!わ、分かんない、分かんなぁい!あ!あ!あーーっ!」
ぴゅくぴゅくと薄くなった精を吐き出すと意識を手放した一護。
「く!」
剣八もその中に注ぎ込んだ。
「は・・・!歯形から爪後まで付けやがって・・・」
何処か満足そうに呟くと、一護の身体を清める為に風呂へ連れて行った。

翌朝。
「腰が痛えよ・・・」
掠れた声でぼそりと呟いた。
「そりゃ悪かったな。朝飯どうする」
「まだ食えねえよ。誰かさんが遠慮もなしに突っ込んでくれたからな」
「ふん、気持ちよかったろうが」
「な!な!」
「今日はゆっくり寝てな、一護」
「お、おう・・・」
くしゃりと一護の髪を撫でる剣八。
食事の用意から何から甲斐甲斐しく世話を焼く剣八に驚く隊士達。
一護の食事を済ませると髪を梳いたりと甘やかしていた。そんな剣八の寝室からは見えないハートが溢れていた。
弓親が、
「さて!誰も行かないと思うけど一応は釘刺しとこうか」
と誰も近付かないように気を利かせていた。

「おっと、隊首会の時間だ」
「遅刻すんなよ?」
「ああ、行ってくる」
「行ってらっしゃい、剣八」
いつもより鷹揚と隊首会の部屋に入ると他の隊長から見られている。
「・・・んだよ」
と若干イラ付きながら睨みをきかせると京楽隊長が、
「剣八さん今日は機嫌が良いみたいだけど、どうしたんだい?」
と聞いてきたので、一護の可愛い行動などを惚気ていると総隊長から雷が落ちた。
「てめえらが聞いて来たからだろうが」
フンッ!と鼻を鳴らしす剣八。
「話は終わったんだろ?俺は帰るぜ」
と自分を隊舎へと帰る剣八。その後の隊長達は・・・?
「胸やけが・・・」
「今日仕事出来るかなぁ・・・」
「卯ノ花隊長、胃薬ないですか・・・?」
「あ〜あ・・・!今日は休憩のお茶菓子要らないねぇ・・・」
と言う声が聞こえて来た。

隊舎に着いた剣八は寝室に帰ると一護を膝に抱きあげた。
「な、なんだ!いきなり!」
「うるせぇ、今日はこうしてろ」
胡坐の中に後ろから抱き込んで一護の旋毛に顎を置くとじっとしている剣八。
「剣八・・・?」
「うん?」
「なんかあったのか?」
「いいや、何もねえよ」
「そっか・・・」
「ああ・・・」
右手で剣八の羽織を握りしめ、安心したように剣八に身を預ける一護が居た。

冬休みが終わるまで剣八の寝室からは甘い空気と見えないハートが飛び交っていた。






11/03/17作 「うたた寝」の続きでした!新婚さんの空気が出てますでしょうか?
冬休みの課題は一応持ってきてますよ。



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