題「夏休みの1日」
 暑い夏の日。更木家の広い庭に水を撒いている二人の少年。
「ったく・・・なんで俺がやんなきゃなんだよ」
ぶつぶつ文句を言いながらも水をやる。
「文句言うな。メシ食うクセに」

 時間をさかのぼる事一時間ほど前。
「あれノイトラ久し振りじゃん。テスラも!」
ノイトラとテスラが訪ねて来た。既にイールもロイも居たが・・・。
「おっさんは?」
とノイトラが聞くと、
「残念!仕事だ。まぁ上がれよ!」
と招き入れた。

「あ!ノイトラだ!」
「ほう、こいつも来るのだな」
「俺は喧嘩しに来てんだよ、うっせえな」
「喧嘩すんなー。アイスティーでいっかー?」
「おう」
「ありがとうございます」
「淹れてる間に手洗いうがい、やって来い」
と他の子供同様追い立てる。

キッチンに顔を出す二人が席に着くと良く冷えたアイスティーを出してやった。
「外暑かったろ〜」
「まあな・・・。で、お前ら何やってんだよ?」
と他の3人を見て訊くノイトラ。
「何って、夏休みの課題。見て分かんない?」
ロイが言うと顔をしかめて、
「んなモン見りゃ分かんだよ!なんでここでやってんだって訊いてんだよ!」
「俺が言ったんだよ。どうせ最終日になって慌てるよりうちに来てちょっとずつやれってな」
「俺もう半分終わったもんねー!」
ねっ!一護!と言えば一護がロイの頭を撫でてやりながら、
「そうだな、えらいえらい」
と褒めてやった。
「苦手なヤツほったらかしじゃねえか」
とグリが言えば、
「お前もな」
と小突かれていた。
「もう一人は?」
「ウルは本買いに行ったよ。もすぐ帰るんじゃねえの」
と一護は洗濯物を取り込む為キッチンから出て行った。

「ん!良く乾いてる!あ、そうだ!」
居間に洗濯物を放り込むとキッチンの子供らに、
「なあ、誰か庭に水捲いてくんねえか?埃っぽくなってきた」
「あ〜、じゃあ俺やるわ」
とグリが席をたった。
「サンキュ。ん、今日はここまでな。ノイトラ、お前も水捲き手伝ってくれ」
「ああ?なんで俺が!」
「いつも人ん家の庭で暴れてんのは誰だ?難しいこっちゃねえだろ?」
と言われて渋々グリと庭の水捲きをするノイトラ。
「ああ、ちょっと待てよ。日差し強いだろ?コレ被っとけ」
と渡されたのは麦わら帽子。
「ん!似合うな、さすが俺の息子!」
と言われご機嫌な様子のグリ。どうにも一護に逆らえないノイトラも被りながら水捲きを始めた。

「イール、分かんないトコあるか?」
「いや、今のところ無いな」
「そか、じゃあ居間に行こうか。エアコン入れてないけどな」
「俺行くー!」
と庭が良く見える居間に移り、洗濯物を畳みながら庭の二人を眺めていた。

冒頭の小競り合いから水の掛け合いに発展している二人を、
「いいな〜、楽しそう!」
と落ち着きなく見ているのはロイ。
「あれで良いのか?」
とイールが訊いてくる。
「今日も暑いしな、楽しんでるんだろ。他人に迷惑かけなきゃいいよ」
と服を畳んでいく。
「うわ!」
「げっ!」
と叫び声が聞こえ、一護が、
「お前らまさか外に!?」
と庭を見ると買い物から帰って来たウルが水を滴らせていた。
「あ〜あ・・・、お帰りウル」
「ただいま帰りました。お母さん、これ、本とついでに買ったスイカです・・・」
と大きなスイカと本を差し出した。
「ああ。ありがと」
「後、財布と荷物、お願いします・・・」
と腕時計や財布を一護に渡すと、水道の横に行くと蛇口を閉め、水の入ったバケツを握り締めると振り返るなり二人に水をぶっかけた。
「何しやがる!」
「こちらのセリフだ・・・。カスが!」
「珍し・・・」
目の端に揺れる金髪に呆れながら、
「ロイ、行っといで」
と言うと跳ねる様に水かけ合戦に加わるロイ。
「風呂の用意でもしますかね」
「犬かあいつは・・・」
「服、どうするんでしょうか・・・」
「暑いし風もあるからすぐ乾くだろ?夏なんだし。面倒だな、お前ら今日はうちで飯食ってけよ」
と一護が言うと、
「え、そんな、いきなり来て」
「遠慮すんなよ、一応剣八に連絡入れとこっと」
と弓親の伝令神機に電話する。
「あ〜もしもし、弓親?剣八居るか?うん、居たら代わってくんね?」
しばし間の後。
「あ、剣八か?」
『おう、なんか用か?』
「うん、あのさあ、今日は庭で焼き肉しねえか?」
『なんだ急に?俺は構わねえがよ』
「今でけえ子供が6人居てな、水浸しなんだわ。でかいスイカもあるしさ。夏らしく花火もしたいし・・・剣八の好きなお酒もあるよ」
『なるほどな。ま、定時にゃ帰るからよ』
「うん、いっぱい肉買っとくからな。野菜も食えよ?」
『へいへい、・・・楽しみにしてるぜ』
と艶のある低い声で囁かれた。
「ん・・・!もう!じゃあな」
電話を切るとまだギャーギャーと騒いでいる庭の子供達に、
「お〜い、お前らもういいだろ!風呂入って来い。全員でな!」
「え〜!やだなぁ。ゆっくりしたい」
「うちの風呂はデケェから心配すんな。お前らなんか余裕だ、ほら風邪引く気か?」
と急かす。

風呂に入っている間に服は乾いていた。全員が着替えてから徐に、
「さて。これから皆で買い物に行く」
と告げた。
「はぁあ?」
「うっさいノイトラ!今日は庭でバーベキューな。花火もする!それを今から買いに行く!」
「おぉ〜!すごい!一護太っ腹!」
「ふっふ〜ん!来ないヤツは野菜だけ食う事になんぞ〜?」
「ぐ!きったねぇ!」
「な〜に言ってんだ。来たら好きなモン買えるんだぞ?」
魅力的な言葉にグリもノイトラも頷いた。

スーパー。
「さて、何買うかね」
「肉!」
「肉!」
笑いながら一護は、
「他は?」
「え〜と、刺身は?」
「食いたいなら良いぞ」
「わあい!」
「肉だけじゃなく野菜もちゃんと食う事!」
「はあ〜い」
「あ!花火!」
「いっぱい買えよ。やちるも居るからな」
「分かった」
「後は、ジュースとお茶だな!」
と買い物を済ませ、分担して荷物を持ち、家に帰った。

「あっつ〜!重かった〜ぁ!」
「こんぐらいで倒れんなよ」
「一護ってば毎日こんな事やってんの〜?」
「おう!後、掃除に炊事もな!主夫舐めんなよ?」
と食材をキッチンに持って行く。
「グリ、ウル、他にヤツと一緒に道具出して用意して」
「お〜う」
「はい、お母さん」
と返事をして物置きへ行く6人。
案の定喧嘩の様な声が聞こえて来た。
「よくやるよ。元気だなぁ」
と笑いながら夕飯の用意をしていく。

ご飯が炊ける匂いと焼き肉のタレの匂いが漂って来た頃には庭に鉄板が出されていた。
「おー!用意出来てんな!後は」
バケツに水を張り、氷と一緒にジュース、お茶、剣八の好きな銘柄の日本酒を冷やしておく。スイカも大きめのバケツに入れ、水道水で冷やす。

用意が済んだ所で剣八とやちるが帰ったきた。向こうで一風呂浴びて来たのか髪が下ろされていた。
「ただいま!いっちー!お腹空いたよ〜!」
「帰ったぞ」
「お帰り!剣八!やちる!後、もう焼くだけだよ、着替えて来い」
「はーい!」
「お母さん、後は?」
「あ〜、箸と皿出しといて」

焼き肉が始まると子供達は物すごい勢いで食べ出した。
それを笑顔で見ながら一護は剣八に冷酒を注ぐ。
「お疲れ様」
「おう」
くっ!と杯を呷ると、
「しっかしまあ、良く食うガキ共だな」
と口の端をあげて笑っている。
「お前は?腹減ってるだろ?」
と皿に入れた肉とご飯を勧める。
「お前が食えよ。夏バテしても知らねえぜ」
と一護を気遣う。
「ん、食べるよ」
ぱくぱくと食べて行く。
「一護ー!肉無くなったよ〜!スイカ食べよ〜!」
「ああ」
とスイカを切ってやる。
後は各々ジュースを飲んだりアイスを食べたり楽しんでいた。
「たまにはこういうのも良いな」
「ま、たまにならな」
と二人で話していると子供達が花火を始めた。キャー!とやちるの歓声が聞こえた。
「綺麗だな」
「火薬臭え」
「剣八らしい」

片付けが終わった頃にはもう時間も遅く、子供達は泊まっていく事になった。
ノイトラとテスラ、イールとロイはグリと客間で夜中まで騒いでいた。

寝室では一護が子供達の声を聞きながら、剣八に膝枕をしながら団扇で扇いでいた。

夏休みは始まったばかり。







10/08/05作 第145作です。お子様大集合の巻きでした。テスラとイールが大人しくなちゃった!
夫婦はラヴラヴです。


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