題「やちるの誕生日」 | |
2月12日は、やちるの誕生日。 前もって聞いていたお願い事を一つと皆が考えたプレゼント。ケーキ、御馳走・・・。 やちるは、明日が楽しみだった。 いっちーはちゃんとお願いを叶えてくれる。御馳走楽しみだな!あ〜あ、お仕事お休みなら良かったのにな! そう思いながら眠った。 やちるの誕生日当日の朝、一護は起きるとネムから貰った女体化の薬を飲み、女性化した。 「ふう、やっぱ慣れねえなぁ・・・」 「何がだ?」 「うおッ!剣八起きたのかよ」 「まぁな、で、なんだ?その身体は」 「やちるのお願いだよ」 と説明しながら、この身体の為に乱菊達が用意した下着や服を着ていった。 「んしょっと・・・、変じゃねえか?」 「似合ってんよ」 ふんわりした素材のセーターとロングスカート。髪は伸び、肩の下辺りまでの長さになっていた。 「今回は髪も伸びたんだなぁ」 と何処か他人事のように呟いた一護。 朝、やちるがいつものように一番乗りでキッチンに行くと一護が朝ご飯を作っていた。 「おっはよー!いっちー!今日の朝ご飯なあに?」 「おはよう、やちる。今朝は焼き鮭と玉葱と卵の味噌汁だよ」 といつもより高めの声が返って来た。よくよく見ると一護の身体が小さく、細くなっていた。何より髪が長い。 「いっちー・・・?」 「ん?なんだ」 「身体、どうしたの?」 くるりと振り向くと一護の胸は豊かに膨らんでいた。ちょっと照れたように言った。 「やちるのお願い事だったろ?今日はお母さんになってって」 『いっちーはいっちーなの。でも誕生日だけはお母さんって呼んでもいい?』 「言ったけど・・、身体」 「嫌だったか?女の人の身体の方が良いと思ったんだけど。ネムさんからのプレゼントでもあるんだ。お礼言わなきゃな」 「うん!あと、嫌じゃない!凄く嬉しい!ありがと!いっちー!」 抱きついて全身で喜びを表すやちるにホッとした一護。 「今日は仕事だろ?だから朝からの方が良いと思ってさ。パーティーは夜だから、早めに終わると良いな」 「うん!あたしみんな起こしてくる!」 「おー、頼むな」 キッチンを飛び出し、剣八を起こし、兄二人を叩き起こした。 「んだよ〜・・・、お前誕生日だからってはしゃぎ過ぎだ・・・」 大きな欠伸をしながらグリが言う。 「良いから!早くキッチンに来てね!いっちーが凄いの!」 「はあ?」 グリがキッチンに行くとウルが固まっていた。 「何やってんだ?お前」 「・・・あれは・・・。俺は夢でも見ている、のか?」 「はん?」 とキッチンを覗きこむと女性の身体になった一護が真っ白なエプロンを着け、朝食の用意をしていた。 剣八とやちるは既にいつもの席に座っている。 「ん?何突っ立ってんだ?早く座れよ。メシ食え」 「は、はい」 「おう・・・」 ぎこちなく席に座る二人。 出されたトーストに目玉焼き、コーヒー、サラダにスープを食べながら一護を見る。 か、可愛い! 可憐だ・・・。 などと思っていた。 「ああそうだ、お前ら今日休みだろ?後で買い物に付き合ってくれな?」 「「はい!!」」 そんな息子を見ながらくくっ!と喉で笑う剣八。 「一護、今日は定時だ。他の奴らは来ねえからな」 「分かった。気を付けてな。行ってらっしゃい!」 と二人を送り出した。 「さてと!今日はやちるのリクエストでこんな身体だからあんま力でねえんだよ。荷物持ち、期待してるぜ?」 「はい!」 「おう!」 そんな息子にくすくす笑いながら一緒に買い物に行く。 「え〜と、今日はちらし寿司な。菜の花入れたヤツってはしゃいでたからな〜」 と野菜売り場で菜の花を買い、ちらし寿司の素を買う。 「後は吸いモノか?ハマグリだとひな祭りと被るしなぁ」 「なんでもいいんじゃね?アサリとか、玉吸いとかよ」 「ああ、玉吸いかぁ、良いなそれ!」 卵と三つ葉を買った。 「後はから揚げと、天ぷらにしよう!」 買い物が終わり一護がウルに、 「ああ、そうだ!ウル、この間の古書店ってこの近くか?」 「ええ、まあ」 「ちょっと連れてってくれ」 「はい」 荷物を抱えて案内するウル。 「ここです、お母さん」 「へえ・・・、こんなとこあんの知らなかったな」 と3人で入った。 「いらっしゃい。おや、また来てくれたね、僕」 「こんにちは」 「どうも。あのすいません、児童書ってどこにありますか?」 「えーと、題名とか分かるかい?」 「あ、はい。『チムラビットの冒険』と「チムラビットの友達』だったと思うんですけど・・・」 「ああ、それならこれだね」 とすぐ出してくれた。 「良かった!あって」 「贈り物かい?」 「娘にちょっと・・・」 「そうかい」 と言うと可愛い包装紙で丁寧に包んでくれた。 「ありがとう」 「いやいや、こっちこそ。またどうぞ」 「はい、じゃあ」 と言って帰る。 「良かったぁ。古い本だからどっこにも置いてなくてよ」 「お役に立てて嬉しいです」 嬉しそうな一護を見るウルの顔は優しげだった。 その後ケーキとお頭付きの鯛を買って帰った3人。 早速料理に取り掛かる一護。 炊きたてのご飯に散らしずしの素を入れ混ぜる。 「おーい、グリ手伝って」 「何すんだ?」 「飯混ぜるから、団扇で扇いでくれ」 「おう」 全体が混ざったら、色よく茹で、刻んだ菜の花を軽く混ぜて完成! 「ふう!出来た。サンキューな!」 「お、おう」 次は鯛を焼いて、吸い物を作っていった。 「さて!これで後は帰ってくるのを待つだけだな!」 とエプロンを外すと伸びをした。 夕方二人が帰って来た。 「たっだいまー!いっちー、じゃなくってお母さん!」 「お帰り、やちる」 「おう、帰ったぞ」 「お帰り、剣八おとーさん」 「お前な・・・」 「早く着替えて来いよ〜」 「はあい!」 二人が居間に行くと既に料理は準備されていた。 「誕生日おめでとう!やちる!」 「ありがとう!お母さん!」 「これな、プレゼントだ。俺が子供の頃大好きだった本なんだ」 と古書店で買った本を渡す一護。 「わぁ!嬉しいな!」 「おめでとう、やちる」 とプレゼントを差し出したウル。 「ありがとう!ウル兄!」 「おめでとう、やちる、これ」 とグリもプレゼントを渡した。 「ありがとう!グリ兄!」 「ほらよ、欲しがってたやつだ」 「ありがとう!剣ちゃん!開けても良い?」 「良いぞ」 ウルのプレゼントはピンクのウサギのぬいぐるみとオレンジの猫のぬいぐるみだった。 「わあ〜、可愛い!グリ兄のは?」 金平糖とカラフルなヘアピンのセットだった。 「わあ!金平糖だ!ヘアピンも可愛い!」 剣八のは、 「わ!エプロンだ!ありがとう!剣ちゃん!」 「一護と料理がしてぇって欲しがってただろ」 「うん!嬉しい!」 「はいはい、次はご飯な。いっぱい食べろよ」 「はあい!お母さん!」 最初に赤飯を食べてから、ちらし寿司を盛っていった。 お頭付きの鯛をやちるが食べ、みんなも食事を始めていった。 食事が終わり、片付けも済むとやちるが、 「お母さん、一緒にお風呂入ろ〜」 と言ってきたので、 「ああ、いいぞ」 と風呂へ行った二人。 「ほら、髪洗ってやるからこっち来い」 「はあい!」 やちるの髪と背中を洗ってやり、自分の髪と身体を洗うと二人で湯船に浸かった。 「ふう、気持ちいい・・・」 「お母さん、ありがとうね」 「なんだよ、今日はやちるの誕生日なのに」 「今日は一緒に寝てもいい?」 「もちろん!」 「えへへ!やったぁ!あ、でも剣ちゃんが寂しがるから、0時過ぎたら剣ちゃんのトコに行ってもいいよ」 「何いってんだ、だったら3人で寝たらいいじゃねえか」 「いいの!?」 「遠慮すんなよ」 と約束し、風呂からあがるとやちるの身体と髪を拭いてやり、自分も着替えた一護。 「ほら、髪乾かすぞ」 とドライヤーで乾かしてやり、伸びた自分の髪も乾かした。 「綺麗だねぇ」 「うん?ありがと」 寝巻きに着替えて寝室へ行くと剣八が、 「なんだ一緒に寝んのか」 「ああ、良いだろ?」 「構わねえよ」 と3人で川の字でねむった。 「ふふ、喜んでくれて良かった・・・」 と眠るやちるの髪を梳きながら呟くと剣八が一護の髪を梳き、 「お前も満更でもなかっただろ」 「うん、明日には元の身体だけど、満足してくれて良かった・・・」 「そうだな・・・お前も寝ろよ」 「剣八もな、おやすみ」 と眠った一護。 そんな二人を見ながら剣八も眠りに落ちた。 終 10/04/17作 135作目です。2月から書いてて今日書き終りました・・・。 |
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