題「いい夫婦」
 朝、3人揃って朝食を囲んでいる時、ふと気付いた。
「剣八様、どうぞ」
と差し出されたご飯の盛られた自分の茶碗。
「おう、ありがとよ」
受け取る際に一護の指に触れた。
(うん?)
新婚当初は柔らかく、すべすべした指先だったのに、今では家事で水仕事が増えた事でガサガサに荒れていた。
今までも手を繋いだ時や閨の時などにも気付いていたが、寒くなってきたからか酷くなっているようだ。
(どうにかしねえといけねぇな)
と考えながら食事を続ける剣八だった。

 朝食も済み、3人で出勤する。隊舎に着けばそれぞれが別行動だ。
一護は書類仕事と隊士の治療。やちるは剣八と一緒に隊首会に行っている。
「では本日の隊首会はこれにて終了じゃ」
と総隊長の号令でお開きとなった隊首会。帰って行く隊長達の中で剣八は卯ノ花を呼びとめた。
「おい、卯ノ花。ちょっと良いか」
「なんです?更木隊長」
「一護の事でちっと話があるからよ、そっちの隊に行っても良いか?」
「一護の?ええ、構いませんわ」

 四番隊に着くと卯ノ花隊長に話を促される。
「で、一護がどうされました?具合でも悪いのですか?」
「いや、具合つーかよぉ。アイツの手がな」
鼻の頭を掻きながら話していく剣八。
「手?」
「ああ、水仕事やらなんやらでガサガサになっちまってるからよ、何か良い薬ねえかと思ってよ」
それを聞いた卯ノ花隊長が驚いた顔をした。
「んだよ・・・」
「いいえ。一護は良い旦那様を持ったと思っていた所ですわ」
「けっ!詰まんねえ事言ってんじゃねえぞ。で、あるのか、ねえのか?」
「少しお待ちを・・・」
と後ろにあった薬棚の中から丸い缶を取り出した。
「なんだこりゃ?」
「荒れた手指によく効く薬草とオイルを配合したハンドクリームですわ。染みる事もありませんし、良く擦り込んで塗る様に言ってあげて下さいな」
「ふうん・・・ありがとよ」
代金を払い、十一番隊に帰って行く剣八の後ろ姿を見ながら、
「あの人をあそこまで変えてしまうなんて・・・、よほど一護の事が大切なのですね」
微笑みながら呟いた卯ノ花隊長。

 隊舎に戻り一護を探すが執務室にはおらず、道場に行くと他の隊士の治療の為に待機している一護が居た。
丁度良いので隊士達に稽古を付けていく。
「何やら今日の剣八様は機嫌が良いようですねぇ」
と一角の治療をしながら言うと、
「そうかぁ?」
と首を傾げられた。まぁ夫婦が言ってるんだからそうなのだろうと納得する事にした一角。
就業を知らせる鐘が響き、剣八達3人が帰途に着く。
「今日は何にしましょうか?」
「何が良いかな〜?」
「大分寒くなってきたからなぁ」
「では鍋焼きうどんはどうでしょう?」
「美味しそう!あたし〜、お餅も入れたい!」
「良いんじゃねえか」
と献立も決まり、買い物に行く。
白菜やネギ、エビ、その他野菜を買い込んでいると、横から伸びて荷物を持ってくれる手があった。
「剣八様」
「重いモンばっかだな。まだ何かあんのか?」
「え、いいえ。もう終わりです」
「じゃ、帰るぞ」
「はい」
家に着いてお帰りなさいのキスをし、台所で夕飯の支度を始める一護。
先にエビの天ぷらを揚げ、野菜を切っていく。
「一護、鍋はこれで良いのか?」
「え!あ、はいそれです」
いつの間に居たのか、着替えた剣八が台所で用意を手伝ってくれていた。
「剣八様、お仕事でお疲れなのに・・・」
「お前も仕事してんだろうがよ。たまにするくれぇどってことねえよ」
「ありがとうございます」
土鍋3つに鍋焼きうどんが完成し、居間に運んで行く剣八。後片付けをする一護。

 3人そろった所で、
「いっただっきまーす!」
「頂きます」
と食べて行く。ずるずる、はふはふ、と食べていく。
「おいしー!あ、玉子だぁ!」
「エビ美味えな」
「あったまりますね」
と汁も残さずたいらげた。
やちるが元気よくごちそう様を言い、食後の一服を済ませると各々風呂に入った。

 一護も洗い物を片付けると風呂に入り、寝室へ向かう。部屋に入ると蒲団の上に剣八が胡坐を掻いて座っていた。
「本当に寒くなってきましたね。やちる様に湯たんぽを出しておいた方が良いでしょうか?」
「そうだな。一護、こっち来い」
「はい」
近付くと腕を引かれ、剣八の胡坐の中に抱きこまれた。
「あ、あの・・・?」
後ろから抱きすくめられた形で剣八の顔を窺おうにも動く事も出来なかった。
「手、出せ」
「え?」
突然の事で戸惑っていると片手を掴まれた。
「荒れて来てんな」
「そう、でしょうか?」
「ああ、これから寒くなって来たらもっと酷くなるからよ、コレ使え」
「これは?」
「今日、卯ノ花に貰ったクリームだ。ほれ・・・」
缶の蓋を開け、クリームを指先に取ると一護の手の甲に塗ると両手の親指で擦り込む様に塗り込んでやった。
「良い香り・・・」
花の香りが立ち上り、リラックスしていく一護。指先までたっぷりクリームを塗り込んでやる。
「ほら、そっちの手も出せ」
「でも・・・」
遠慮しているうちに手を取られ、同じ様に塗り込まれていく。
「毎日水仕事してんだ。これくらいさせろ」
「剣八様・・・!」
背中に感じる剣八の体温に身を任せながら、ふと目に入ったクリームの缶。そこの書かれている注意事項を読んでみる。
「蜜ろうとシアバターと薬草・・・。あ、唇の荒れにも使えるのですね」
「へえ・・・」
「あ・・・」
「そりゃ良い事聞いたな」
にやりと笑い、クリームを薬指で掬い取ると一護の唇に塗り広げた。
「ん、む・・・」
「こんなもんか?」
缶の蓋を閉めると枕元に置き、一護を押し倒しながら口付けた。
「ん!ん、ん、ふ・・・、あ、剣八様に、付いてしまいましたね・・・」
する、と剣八の唇を撫でる一護。
「丁度良いだろ・・・?」
「はい・・・」
首筋や鎖骨を吸い、胸の小粒に吸い付くと跳ねる一護の身体。
「あう、ん!」
剣八の唇に残ったクリームでしっとりと艶やかに色付き、立ち上がる乳首に歯を立てていく。
「あ!ああ!」
剣八が一護の中心を握り込んだ。
「あう!」
「もうこんなか・・・」
立ち上がり、蜜を零すそこからはぐちゅぐちゅと淫らな音が聞こえて来た。
「あ、あ、今日、は、なんだか・・・!ああ!」
剣八の手に残っていたクリームでいつもよりスムーズに動く手筒に追い詰められていく一護。
「一護・・・」
ぱくりとその猛りを口に含むと、先走りで濡れた指で蕾を解していく。
「ひああ!あ!ああ!けん!ぱち、さま!あっあっあっ!んーっ!」
剣八の口内に吐精した一護。その精を零す事無く飲み干していく剣八。ぺろりと口端を舐め、
「いくぞ」
と蕩けた蕾に熱杭を擦り付ける。
「ん、んあ・・・きて、あ、ああ!」
熱杭が一護の胎内を満たしていく。
「ああ・・・、剣八、様ぁ・・・」
「一護・・・」
部屋には花の香りが満ち溢れ、いつもより濃密な情事となった夜だった。

 翌朝、いつものように3人でご飯を食べ、出勤する。
そして昼休みになると縁側で一護の手にクリームを塗り込む剣八の姿が良く見られる様になった。






13/11/22作 良い夫婦の日に寄せて。間にあった!この後ちゅーでクリームを唇に付ける二人も居ます。



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