題「花盛り」
 初めてアイツに逢ったのは四番隊での治療の時―。
顔色が悪くて、こっちを見もしねえくせに泣きそうな顔してやがったな。
血が怖いのかと聞けば怖いのは血じゃなく、出血多量で俺が死ぬかも知れねえのが怖いと言いやがった。
この俺に説教して言うに事かいて、
「どうかご自愛を」
と来やがった。笑っちまう。俺は『剣八』なのによ・・・。

 二度目に逢ったのは十一番隊舎にアイツが来た時―。
十一番隊専属の看護師としてやって来た。
大人しそうな顔してんのに、うちの荒くれモンの治療を一手に引き受けて、治療を受けなかったり四番隊を馬鹿にした奴らを叩き伏せて行きやがった。
一番最初にやちるの奴が懐いて、他の奴らも一目置く様になった。

おかしな奴で、普通知ってるだろうって事を知らなくて何にだってキラキラと目を光らせて興味を持った。
『雨』を知らなかったアイツは雨が降ってる庭でやちると一緒に水たまりで遊んでやがった。
次の日にゃ熱出して倒れてたけどな。

一緒に居る時間が多くなって気付いた。アイツが笑わないと言う事に・・・。
他の表情は何とか出てるのに、『笑顔』。それ一つだけが無かった。


 そんな頃だ、アイツが突然女の体になったのは・・・。
どうやら松本に貰った飴が原因だそうだが、その日の晩からアイツと一緒の生活が始まった。

卯ノ花曰く、
「貴方と一緒の方が安全だから」
だと。
言ってくれるぜ。
翌日の晩飯からアイツの手料理だった。ハンバーグとかいうヤツだったな、確か。
見た事も食った事も無い、あったけえ飯がその日から出て来た。

 朝も一護に起こされて始まる。
居間に行けば卓袱台に用意された朝飯。特別豪華って訳じゃねえ。それ食って柄にも無く思っちまった。
ああ、昨日のも夢じゃねえんだな・・・。ってな。
一護との同居が続いて、アイツが居るのが当たり前になった頃、アイツの体は元の男に戻った。
元々の部屋に帰る一護。残された俺達は何やら訳の分からねえ感情が渦巻いて落ち着かなかった。

元の生活に戻っただけのなのに、家ん中がやけに静かに、広く感じた。
やちるの奴は目に見えて落ち込んでたな。飯食っても、
「食べた気がしない・・・」
なんて大凡今まで聞いた事ねえコト言ってやがったが俺も同感だった。
たった一人、アイツが居ねえってだけでよ。


 今じゃアイツも俺の伴侶になって一緒に暮らしてるがそれまでに色々あった。
俺らを邪魔する奴の妨害やら、じいさんのおせっかいやらでアイツ、一護を失いそうになった。
あんな思いだけは二度とご免だ。

 そんな事をぼんやりと考えていると、
「隊長、お茶です」
と弓親に声を掛けられた。
「おう・・・」
ことり、と置かれた湯呑の茶を啜っていると一つ溜息を吐かれた。
「はぁ・・・。まったく一護君が非番だからっていつも以上に上の空で仕事しないでくださいよ」
「ああ?」
ツイツイと指差された先は今まで押印していた書類で・・・。
「・・・・」
「寂しいのは分かりますけど、お昼になったら来てくれるじゃないですか」
「うっせぇ・・・」
書類に押された判子は天地が逆だったり朱が付いていなかったり・・・。
「・・・」
グイッと湯呑を呷り茶を飲み干すとガタン!と椅子から立ち上がった剣八。
「どちらへ?」
「散歩だ」
「ごゆっくり」
「けッ!」
のしのしと隊首室から出ていく剣八。

 そういや今日は朝から庭いじりやってたな・・・。
外をぶらぶら歩いていると桜並木まで来ていた。
「もう満開も過ぎたな・・・」
そよ風にさえその白い花弁を散らせる桜を見上げていると前方に傘を差して佇んでいる者が居た。
(雨でもねえのに傘差して突っ立ってやがる・・・。女か?いや、着物の感じからして男だな)
その人物に近付いて行くと向こうもこちらに気付いた。
「あ、剣八様」
「一護?」
飴色の番傘を差した一護がこちらを見て微笑んでいる。
白い桜の花弁が舞う中に佇む一護。その時強い風が吹き、花弁を散らす。
「あ・・・」
白い空間で微笑む一護はまるで桜の精のようで・・・。
「な、何やってんだ?雨でもねえのに傘なんか差して」
「これですか?桜の花弁がまるで雪の様でしたので・・・。見ているうちに俺も埋もれてしまうと思って・・・」
にこり、と笑って言う一護。
「ああ・・・。桜吹雪っつーぐらいだからな」
「そうなのですか?どうりで・・・」
一護の隣りで同じ様に桜を見上げる剣八。
「雪の様に美しいですがとても柔らかであたたかくて・・・、まるで朽木様のようですね」
「あん?」
「冷たいと誤解されがちですがとてもお優しい方ですので・・・。似ていませんか?」
伸ばした手の平に舞い落ちる花弁がふわりと乗った。
「ふーん・・・。俺はなんに似てる?」
「え?」
「だからよ、朽木の野郎がこの花なんだったら俺は何に似てる?花か?獣か?」
「・・・・・。剣八様は剣八様です。何に似ていると言われても俺には思い付きません」
小首を傾げ思案した後そう言った一護。
「でも・・・」
「でも?」
「剣八様の優しさはお月さまのようです」
「月・・・?」
「暗く、寂しい夜道でもお月さまは優しく綺麗な光で道を照らして下さいます。雲に覆われてもまた姿を見せて安心させて下さいます。それに、それに・・・ん」
なおも言い募ろうとする一護を抱き寄せ口付ける剣八。
一護の手から放された傘がコロコロと風に吹かれて転がっていく。
「ん・・・ふ、んん・・・剣、八様」
「そんな必死にならなくても分かったよ・・・」
ちゅ、ちゅ、と頬や額に口付けていく剣八。
「そういやぁお前、今日は朝から庭で花いじってたな。なんか咲いたのか?」
「あ・・・、はい、そのアザレアが・・・」
「ああ、咲いたのか」
「はい」
「帰るぞ」
「え?」
「咲いたんだろうが。見に帰るぞ」
「はい!」
ぱぁっ!とそれこそ花が咲いた様な笑顔で喜ぶ一護。今こいつにこの顔をさせてるのは俺なんだな。

 家に着いて二人で庭に行く。そこには鉢植えのアザレアが咲き誇っていた。
「結構咲いてんじゃねえか」
「はい。このところ暖かい日が続いたので一気に・・・」
話しながら一護は咲ききった花殻を間引いていく。
しゃがむ一護の項や首筋に目を奪われ、
(そういやぁ・・・、コイツの開発って俺がやったんだよな・・・)
漠然とそんな事を考えている剣八。

口付けも、性感帯の開発も、なにもかも・・・。
褥の中で淫らに喘ぐ一護を思い出し、ずくん!と体が疼くのを自覚した剣八。

「一護・・・」
「はい、なんですか?剣八様」
「風呂入るぞ・・・」
「え、え!?」
こんな昼間から!?と狼狽している一護を他所に伝令神機でどこかに連絡している剣八。

 脱衣所に着いて一護の着物を剥いでいき、さっさと湯を浴びる剣八。
「あの、あの、どうされたのですか?」
と上目遣いに見上げてくる一護の身体をざっと拭き、襦袢だけを巻いて寝室へと担いでいく。
寝室には何故か蒲団が敷いてあった。
(弓親か・・・)
変に敏いヤツの事だ。俺が散歩に行くと言った時点でこうなると予測していたのだろう。
「あ・・・どうして?」
「気にすんな」
トサッと蒲団に押し倒された一護に覆いかぶさり、優しく口付ける。
「ん・・・」
角度を変え次第に深くなっていく口付けに溺れていく一護。
「ん、ん、ぁ、ふ、んん!」
剣八の長く熱い舌が一護の舌に絡んでは敏感な上顎をぞろりと舐めあげる。
「ふ、ふぅう!」
くちゅ、くちゅ、と濡れた音が部屋に響く。
「一護・・・」
「あ、あ、剣八様ぁ・・・」
くたりと力の抜けた一護を口付けから解放してやる。ぷつりと二人を繋ぐ銀糸が切れた。

 頬を染め、目を潤ませ、は、は、と息を荒げる一護の耳に吸い付き、舐めまわしていく。
「やぁッん!それ、やぁ!」
ちゅ、ちゅ、と吸いながら耳穴に舌を差し入れて、歯を立てた。
「うあんっ!」
耳から項へ、そして首筋に吸い付く。
「ああ、あ!」
きゅう!と強めに吸えば紅い花が咲いていく。
「ここも、随分感じる様になったよな」
と胸の小粒を摘まむと過敏なほど跳ねる一護の身体。
「ああ!あ、う」
「くく・・・」
もう片方を口に含み舌で転がしては吸い上げた。
「あっあっあっ!そっなキツく!あっ、あぁ!」
ちゅうちゅうとまるで赤子の様に吸い付く剣八の頭を掻き抱く一護。

 ちゅう、ちゅく、ちゅぱ!とそこを責めながらもう片方の手で胸から腹を愛撫していく。
昼間の明るい部屋で白い肢体が快感を逃がそうと身を捩るのを見つめる剣八。
「ふ!ふあ!やあっん!んん!」
ちゅる、と乳首から離れると手を持ち上げてきた。
「・・・?」
「一護・・・」
ちゅ、と手の甲にキスをするとしなやかな人差し指を口に含んだ。
「あ!何を・・・?ひゃあ!」
ぬるぬると動く舌は指の腹を舐めては甘噛みし、指の股まで舐めていく。
「ん、あ、あぁ、変な、感じ・・・!」
ぬるり、と手首の内側を舐めては吸い付き、どんどん上へと上っていく。

 剣八は一護の二の腕まで舌を這わせると腋の下を舐め始めた。
「ひっ!ヤッ!やあぁ!そ、そんな所!だめです!ああっ!」
今までそんな所を舐められた事が無かったのに・・・!
いやいやと頭を振って訴えても熱い舌はそこを往復した。
ぢゅう!と吸えば、
「ひゃあん!」
と甘い声で啼く一護。
「ここは、初めてだったな」
ちゅう!と二の腕の内側を吸い、跡を付ける。ヒク!ヒク!と震える一護は、
「や、だめぇ・・・」
と弱々しく懇願した。
「だめっつってもお前のココはぐしょぐしょだけどな」
まだ触れても居ない一護の中心からは止めどなく蜜が溢れていた。
「やッ!そんな!ああ!」
する・・・、と撫でてやるとビクビクと反応する一護。
「まぁまだ楽しめよ・・・」
ぺろりと指に付いた蜜を舐め取ると足首を掴んで、今度は足の親指を口に含んだ。
「ヤッ!だめです!だめ・・・!あああ!」
一護の制止も聞かず剣八の愛撫は続いて行く。

「あ…あ…あ……」
「一護、一護、一護・・・」
四つん這いにされた一護の背中から、円みを帯びた双丘にちゅ、ちゅ、と愛撫が到達した。
白い双丘をぺろぺろと舐めては軽く歯を立て吸い付いた。
「ん!んん!あ!」
やがてヒクつく蕾に口付けられ、丹念に舐められた。
「ふあ、あ!あ!や!入れないで…!」
皺の一本一本を数えるかの様に執拗に舐められ、唾液を送り込む様にぬるぬると舌を入れられ舐められる。
ちゅくちゅく、ちゅぷちゅぷと言う音と共に滴る唾液がガクガクと震える一護の内腿を伝い、パタパタと先んじた液が蒲団にシミを作る。
(そろそろか…)
ツプリと指を入れた瞬間、
「ひっ!あっ!ああッ!あっ!んーー!」
きゅうう!と指を締め付けたかと思うと一護は吐精してしまった。
「あ…?まだ一本だぞ・・・?」
はぁはぁと達した余韻より羞恥の方が勝った一護。
「あ…だって、これ、は…」
顔を真っ赤にして泣きそうな顔でずりずりと上に逃げようとする一護を捕まえて、
「これは?…何だよ、一護。そんなに気持ち良かったか?」
「ち!違っ!ああっ!」
「なんだよ、違うのかよ。じゃあもっと気持ち良くしねえとな?」
ぐちゅぐちゅと指を増やして解していく。
「ああっ!あっ!あっあっあっ!」
達したばかりで敏感な一護の中心は瞬く間に勃ちあがった。

 ぐちゅぐちゅと焦らす様に中を掻きまわす剣八。それに耐えられず、
「も!いや、です!き、て!剣八様!いじわる、しないで…!」
ぽろりと涙を零して自分を求める一護。
「一護…ッ!」
剣八は一護の身体を仰向けにさせると熱く滾った自身で一気に奥まで貫いた。
「んあああっ!あ、あ、あつい…」
ビクッビクッ!と白濁を吐き出した一護。余韻に浸る間も無く奥を突かれる。
「ああっ!イヤッ!俺、イッたばかり…!んああ!」
「は…!すげ…!いつもより熱くてとろとろなのにキュウキュウに締め付けてくんぜ」
「んん!剣八様ぁ…!」
「一護、好きだ、好きだ・・・」
「ふ!ふぁあ!俺!も、好きぃ・・・!また!イク!イってしまい、ます!剣八様!」
「好きなだけ達け…!…一護」
「は…い!」
「愛してる…」
「ッ!!」
低く、甘く囁いた剣八の言葉に一護の身体は芯から蕩けて、胎内に入っている剣八を包みこんだ。
「う、お…!」
「や、溶けちゃう!ど、しよ!おれ、とけちゃう!」
泣きじゃくりながら剣八の首に抱きつく一護に口付け、強く舌を吸いながら剣八も一護の最奥へと熱を吐き出した。


 ふ、と目が覚めた一護。
「え…と?」
自分の声が掠れているのに気付き、身体を起こそうとしたが腕が持ち上がらない。
「な、んで?」
スラッと障子が開き、剣八が入って来た。
「起きたか?」
「あ、の…」
「ああ、大丈夫だ。やり過ぎたな、ワリィ」
「…あ!」
先程の行為を思い出し、顔を真っ赤にして蒲団の中に潜り込んだ一護。
「こら、喉渇いてんだろ」
と蒲団を剥ぐと口移しで水を飲ませた。
「ん、んく…」
「風呂にゃぁ入れたが、大丈夫か?一護」
胡坐の中に一護を納め、髪を梳きつつ頬を撫でてやる。気持ち良さそうに目を閉じて剣八に身を預ける一護。
「ん…あの、剣八様…」
「ん?」
「今日は、急に、どうされたのですか・・・?」
「どう、っつってもな…。お前今日非番で居なかったから仕事中もお前の事ばっか考えて仕事になんねえからよ、散歩に出たら道でお前に会って、こう…色々とよ…」
「色々…」
一護は良く分からないと言う顔をした。
「まあ、急にでもねえけどよ。お前が欲しくなったんだよ。丁度花も盛りだろ?」
「はあ…?」
「くく…アザレアも満開ならお前も満開だな」
と一護の身体に咲かせた紅い花に触れていく。
「あ…!」
「お前も花盛りだな」
「こ!これは!剣八様が!」
「おう。お前に花咲かせられんのは俺だけだからな。それに…」
「それに?」
「俺に花咲かせられんのもお前だけだ」
と着物を肌蹴るとそこにはくっきりと紅い歯形があった。
「あ!もう!剣八様!」
くっくっと喉で笑うと、
「さあてと、やちるのヤツを宥めんのが一苦労だな…」
と呟いた。昼から一護を独占しているのだ。
「え?あ!お弁当!」
「もう晩飯だな」
「あ、何も作っていません・・・」
「気にすんな。今日は出前でいいだろ」
「うう〜」

 この後帰って来たやちるに笑顔でとび蹴りを食らった剣八。
翌日のおやつ(剣八の分)をやると言うと渋々納得したやちる。
明日のお弁当はやちるの好物を沢山入れようと思った一護だった。






12/05/19作 剣八の愛情でどんどん花開く一護を書きたかったんですが・・・。撃沈!
剣八が伝令神機で連絡してるのはやちる本人か弓親ですね〜。また特別給金が増えるね!

05/20 加筆修正しました。



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