題「節分の日」
 仕事が終わり、夕飯の買い物に出掛けた一護。
冷たい風が吹いては髪を嬲っていく。
「うう〜、今日も寒いですね・・・」
今日の夕食は何にしようか?と考えながら市場を歩いているといつも剣八の酒を買っている酒屋の親爺に呼び止められた。
「おう!そこ行く可愛子ちゃんは更木の旦那の恋女房じゃねえか!買いもんか?」
「ええ、今日の夕飯のおかずを」
「そうかい、こんな寒い日にゃ粕汁が良いと思うねぇ。身体の芯からあったまるからよ」
「かすじる、ですか?どう言ったお料理でしょう?」
「この酒粕で作った汁もんさ、いつもご贔屓にしてくれてっから、ホラ!持ってきな!」
ポンッ!と投げて寄越されたのは袋に入った酒粕だった。
「まぁ、よろしいんですか?」
「おうよ!お得意さんだからな!旦那にあったかいモン食わせてやんな!」
「はい!」
一護は親爺に作り方と材料を聞いて、他の店で残りの食材を買って帰った。

「たっだいま〜!いっちーお腹減ったよ〜!今日の晩ご飯な〜に〜?」
と台所に飛び込んで来たやちる。
「お帰りなさいませ、今日は粕汁と豚の角煮ですよ」
「わぁ!美味しそう!早く食べたぁい!」
「その前に」
「はーい!手洗いうがいしてきます!」
「おう、美味そうな匂いだな」
「お帰りなさいませ、剣八様」
ちゅ、とその頬に口付けると、
「今日は粕汁と言う物を作ってみました。美味しく出来てると良いのですけれど・・・」
「お前の作るもんは全部美味い。お、角煮か」
「はい、それは昨日から仕込んであったんです」
「早く喰いてぇな」
味の染みた豚肉と飴色に染まった大根と煮卵が食欲をそそる。
「すぐ用意しますので着替えてお待ちください」
「ああ」

剣八が着替えて居間に行くとそこは火鉢で暖められていた。卓袱台の上には豚の角煮が並べられていた。
「あ、剣ちゃん!おっそーい!」
「いつもと一緒だろーが」
「お待たせしました〜」
と大きな鍋に入った粕汁とお櫃を持って一護が姿を現した。
ご飯と粕汁をよそい、お茶を淹れた。3人で手を合わせると食べ始めた。
「ん〜〜!この粕汁おいし〜い!」
「ああ、美味いな」
「良かったです!初めて作ったので失敗したらと思うと・・・」
「豚も美味しいよ!とろっとろ〜!」
「ん。一護、辛子くれ」
「はい」
和気藹藹と食事が進んでいく。
「あ、ね〜ね〜いっちー、明日って節分なんだよ、知ってた?」
と大きな目をキラキラさせてやちるが訪ねる。
「いいえ、存じません。何かの日なのですか?」
「うん!皆でね、豆まきしてね!巻きずし食べて〜、鰯食べて、それの頭を飾るの!」
「えっと、豆を撒いて、お寿司を食べて鰯を食べて、その鰯の頭を飾るのですか?」
「うんそう!」
そう聞かされても一護の頭の上には?マークが乱立している。
「そんな説明じゃ分かんねーだろ」
「ぶう!じゃあ剣ちゃん言ってみてよ!」
「ああ?鬼に豆ぶつけて追い出して鰯食って柊の枝に頭ぶっ刺して玄関に飾るんだろ、鬼が来ねえ様に。そんで恵方っつー縁起の良い方に向いて巻きずし食うんだろ」
「はぁ〜剣八様は博識でいらっしゃる・・・」
(おにってなんだろう?)
「ま、明日は巻きずし食うって話だな。麦飯と鰯と豆腐のすまし汁とな」
「分かりました。やちる様、太巻きの中身は何がよろしいですか?」
一護がやちるの頬に付いたご飯を取ってやりながら訊いた。
「えっとねー、えっとねー!高野豆腐とー、干瓢とー干しシイタケとーピンクの甘いの!」
「でんぶですね。剣八様は?」
「あー、それのでんぶ抜いた奴に三つ葉入れてうなぎ」
「あ!あたしも鰻ー!」
「はいはい。では俺もそれにしますね」

翌日、一護は節分の事を調べた。
「なるほど・・・、元は宮中の追儺式だったんですね」
鰯の事も恵方巻きの事も調べて、買い物行った。
「えっと、海苔と三つ葉と鰻と桜でんぶと・・・」
必要な物を買いそろえ、準備していく一護。

その頃の剣八は隊首会が終わった頃だった。
「剣八さん!今日は節分だねぇ〜。ねぇやっぱ恵方巻き食べるの?」
「あ?普通食うだろうがよ」
何言ってんだ?とばかりに眉を寄せる。
「良いなぁ〜、僕もご一緒しちゃおっかな!一護君の恵方巻き食べる姿見たぁいな〜」
「はあ?」
「・・・え、もしかして知らないの?」
「何がだよ」
「恵方巻きの起こりって遊廓で遊女のアレなお顔を見るために始まったんだよ?」
「あれな顔〜?」
「あれだよ、あれ!ご奉仕してる時の!」
流石に声を潜めて耳打ちしてくる京楽の頭目掛けてゲンコツを振りおろすと、
「ぜってー来るな!」
と怒鳴って自隊に帰っていった剣八だった。
「いたぁ〜!意外と初心なとこあんじゃないのさ」
「・・・お前が擦れてるだけだろう?」
後ろから浮竹が突っ込んだ。
「あらま、辛辣だね、浮竹。なに、今日は元気なんだね」
「ああ、昨日草鹿がな、お裾分けに粕汁を持ってきてくれたんだ。いや、美味しかったんだよ」
それのお陰かなと笑う。
「へえ〜、一護君の?」
「だろうね、殆んど剣八が食べてしまったとぼやいていたよ」
「良く残ってたね」
「一護君にお願いしてたんだってさ。お菓子のお礼って言ってたよ」
「ふうん、羨ましいことで」
にこにこと笑う浮竹とコブを擦る京楽が居た。

定時に家に帰ると、鰯の焼ける良い匂いが漂っていた。
「たっだいま〜!お腹減った〜!」
「帰ったぞ」
「お帰りなさいませ!すぐにお食べになりますか?」
「うん!豆まきは後にする!お腹ぺこぺこ〜!」
居間に行くと既に巻きずしは用意されていた。
「・・・・・」
「あの、剣八様?」
吸い物が入った鍋を持った一護が困ったように声を掛けた。剣八は居間の入り口に立ったままだった。
「ああ、ワリィ・・・」
「お加減でも・・・?」
「何でもねえよ、食うぞ」
「はい」
先に鰯と麦飯、豆腐の吸い物を食べてから恵方巻きに手を伸ばす。
「えっと、今年の恵方は、北北東でしたっけ?剣八様」
「あ、知らねえ、どっちでもいいんじゃねえのか」
「早く食べようよ〜」
「そうですか?一応恵方は剣八様の居る方向ですね。やちる様、恵方巻きは食べ終わるまで口を離してはいけないんだそうですよ」
「え〜、じゃ喋れないね〜」
「ええ、食べ終わるまでは喋っては駄目だそうです」
頑張りましょう、と一護が言うと、
「うん!がんばるー!」
と大きな口を開けて丸被りしていくやちる。
「ん、あむ・・・」
と一護も食べ始める。剣八の方を向いて・・・。

(う、お・・・)
「んく、んく・・・」
と恵方巻きを食べる一護。それは矢張りあの行為を剣八に思い出させた。
まだ2回程しかないが一護からの奉仕。
一度目は思い出すのも嫌な一護が出ていく前夜。二度目は・・・、と考えて自分の分の恵方巻きを齧っていく。
(くそっ!今夜は3回目だ!覚えてろ!)
と理不尽な事を考えながらも食べ終えた剣八。
やちるも一護も食べ終えるとお茶を飲んで一服した。
「あ〜!美味しかった!次は豆まきね!剣ちゃん、鬼ね!」
「あ?」
「では俺は片付けて来ますね」
と洗いものを片付ける一護。
「なんで俺が、一角呼んで来い」
「剣ちゃんさっき変な顔してたからね〜。すけべな鬼を退治だもん!」
「んな!」
一護が台所で食器を洗っていると居間の方から、
「鬼は〜外〜!」
と楽しそうな声が響いていた。
「おや、楽しそうですね。明日は掃除が大変そうだ」

一護が居間に戻ると、
「福は〜内!」
パラパラと豆がぶつけられた。
「わ!驚いた!福に当たりました」
にこっと笑う一護。
「いっちーは福の神〜!」
きゃっきゃっとはしゃぐやちるを捕まえている剣八の髪に豆がたくさん付いていた。
「まぁ、剣八様ったら、では俺も」
二人に向かい、
「福は〜内!」
と豆を放った。
「さ、もうお開きにしましょう。やちる様、お風呂に入ってくださいな」
「は〜い!」
剣八の腕から逃げるとお風呂に走っていったやちる。
「これは掃除のし甲斐がありますね」
「ああ・・・」
明日では朝食に間に合わないと今の内に豆を箒で外に掃き出す一護。剣八も髪に付いた豆を払い落す。
「ったく、はしゃぎやがって・・・」
「俺も楽しかったですよ?」

剣八も風呂に入り、最後に入った一護が寝室に入ると蒲団の上で胡坐を掻いている剣八が居た。
「まだお休みになられないんですか?」
と一護がその隣りに座ると、
「夫婦の時間はこれからだろうがよ」
と押し倒され口付けられた。
「ん・・・」
ちゅ、と唇を離すと首筋に吸い付きながら脱がせていく。
「あ・・・」
ちゅ、ちゅ、と軽く吸われ、気まぐれにチリリときつく吸われては跡を残された。
「あう、ん・・・」
鎖骨を甘く噛み、胸板に吸い付き、色付く小粒を口に含む。
「ああ・・・!」
熱くぬるつく舌に舐められ転がされる。もう片方を指で摘まんで捏ねる。
「ふあっん!ああ!剣八様・・・!」
カリリ、と歯を立てると跳ねる一護の身体。
「んあっ!」
噛んだ後を慰撫するかの様に丹念に舐める。
「ん、んん・・・」
知らずに揺れる一護の腰に目をやると其処はもう自己を主張している。
蜜を零す其処をやんわり握り込むと、素早く口に含んだ。
「は・・・!ああ!けんぱち!さまぁ!」
溢れる蜜を舐め取り、裏筋から舐め上げていく。
「あ!ああ!ん!んん!」
括れの所を軽く噛み、ちゅうっ!と吸い上げると剣八の口内に吐精した一護。
「んああっ!はっ!はあ!はあ!うっ!」
ちゅっ!と一滴残さず吸い取ると顔を上げた剣八。
「一護・・・」
さら・・・、と髪を梳くと、
「あ・・・!」
びくん!と過敏に反応する一護。薄らと涙を滲ませた目を開く一護に剣八が、
「次はお前がやってみろ」
と一護の身体を起こしてやった。
「ん・・・、あ、なにを・・・?」
「今お前がやられた事だ・・・」
「あ・・・はい・・・」
頬を染め、胡坐を掻いて座る剣八の中心に顔を近付ける一護。そこは既に熱く滾っている。
そ・・・っ、と根元に手を添え、先端に口付ける一護。
「ん・・・」
ちゅ、と吸うと先端から舐め始めた。ペロペロと溢れる蜜を舐め取り、口へと含む。
「ん、んむ、んふぅ・・・」
くちゅ、くちゅ、と淫らな音をさせながら奉仕する一護。柔らかくざらついた舌が敏感な先端を舐めると上から、
「う!く・・・」
と押し殺した声が聞こえて来た。ふ、と一護は上を見ると常にない苦しげな顔をした剣八と目が合った。
(あ・・・!)
その瞬間、身体の奥が疼いた。より一層奉仕に熱が籠る一護。
「ん、ん、んん・・・!」
括れた所に舌を這わせ、鈴口に舌の裏を這わせた。
「くっ!お前!どこで覚えた・・・!」
思わず一護の後頭部を掴んで喉奥まで咥えさせてしまった。
「んっふう!んぐ!ん!んん〜!」
次の瞬間、一護の喉奥に熱い飛沫が弾けた。
「ぷはっ!あ、はあ!はあ!」
「わりぃ・・・」
「ん・・・、けんぱちさま・・・」
白濁した体液で汚れたそこを舐めて清める一護。
ひたり、ひたりと舐められる度に雄々しく隆起する剣八の中心を舐め上げる一護。

大きく、滾る程に歓喜しては熱を込めて舐める一護。
「ん、ん・・・、ああ・・・、剣八さまぁ・・・」
その顔は剣八の精に塗れており、酷く淫猥だった。
「くっ!この・・・!」
一護の髪を鷲掴むと荒々しく口付けた。
「んっ!んん!」
その唇にむしゃぶりつくと己の残滓を残らず舐め取り、一護の舌を絡め取った。
「ん、ん、あ!ふあ!」
まだ顔に残っていた精を指で拭うとそれを一護の蕾に塗り込めた。
「あ、ああ!」
ひくん!といつもより感じてしまい居た堪れない一護。
「何だ、いつもより柔らけぇな・・・。お前舐めながら感じてたのか・・・?」
「し、知りません!」
「嘘付けよ。もうこんなじゃねえか」
ぐつりと奥を突くと指に絡み付く内壁は奥へと誘う様に蠢いた。
「ああん!」
「くく!本当にお前は可愛いな・・・」
ぷちゅ!と解していた指を抜くと滾る自身をそこへと擦り付けた。
「あ!や!剣八様ぁ・・・!」
涙の膜が張った目で剣八を見上げると一護は両手を伸ばし抱きついて、
「いじわるをしないでくださいまし・・・、きて・・・」
と剣八の耳元で囁いた。
「ッ!」
その声を聞いた剣八はドクン!と自身に血が集まったのを感じた。
「いくぞ・・・」
と言うや最奥まで一気に貫いた。
「ッあーーっ!あ・・・、あ、あ、あ・・・、はぁ!はぁ!んああ・・・」
「クッ!締め過ぎだ・・・!」
剣八と己の腹に白濁を撒き散らした一護の膝裏に手を入れ、膝が肩に着くほど折り曲げると本格的に抽挿を開始した。
「あっ!ああっ!いやッ!んああっ!あうっ!あうっ!ひ!ひゃあああっ!」
達したばかりで敏感な一護の前立腺を抉る剣八。
「ああ!やぁ!も!もう!イッちゃ!イっちゃう!また!イってしまい!んああっあーーっ!!」
「くう!」
どくどくと剣八もその最奥へと熱を注ぎ込む。
「あ・・・熱い・・・」
「まだ終わんねえぞ・・」
「あ・・・」
正常位に変えられ、ぐちゅぐちゅと出された精が溢れるほど揺さぶられる一護。
「ん!んあ!ああ!いい!気持ちい!けんぱちさまぁ・・・!あ、あ、はん!」
より深く繋がりたいのか、両足を剣八の腰に巻き付ける一護。
「一護・・・!」
「剣八・・・んん」
口付けられ、剣八の後頭部を抱え自分から舌を絡めていく一護。
「ん!ん!もっと・・・ああ・・・剣八様!あん!もっときて・・・!」
その淫らな我儘を断る理由などある筈もなく、お互いを貪ったのだった。

翌朝、腰痛で起きれない一護とは反して至極ご機嫌で仕事に行く剣八が居た。






12/02/16作 ものっそ遅れた節分です。多分やってますね(笑)
恵方巻きの発祥は大阪の遊廓で遊女のアレなお顔を見たい成金がやったのが始まりという一説から。

12/02/20に加筆修正。一護はお休みを頂きました。皆すぐに事情を察してくれます(笑)


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