題「別離」おまけ
 護廷から一護が姿を消してすぐ、女性死神協会の理事長・卯ノ花隊長の命でメンバーが集められた。
議題は・・・。
『山本総隊長と狛村隊長への報復』
である。

「さて、何か良い案はありますか?」
「無理矢理お見合いをさせられる気持ちを味わってもらうと言うのは?」
「総隊長は和食党ですよね。今日から一日の食事を全部洋食にするとかは?」
と候補があがり、それを実行することにした。

食事の方は護廷全体で洋食フェアをやるという名目で各隊に協力してもらう。
見合いは、夜一にも手伝ってもらい、菊水会のメンバーに連絡を取ってもらった。

菊水会とは、現役を退いた元死神、そして女性死神協会だった方達である。

会長さんに『性格に問題ありそうな女性』を選出してもらった上で
「相手は人の恋路を邪魔しておいて見合いをさせるような男じゃ、皆様方にはその性根を叩きなおしていただきたい!」
夜一と卯ノ花隊長が出向き、菊水会の会長に説明とお願いをする。
「現・理事長と四楓院家の当主からのお願い。聞かぬ訳にはいきますまい」
快諾する会長。
選ばれた女性陣には、
「手段は選ばぬ、見合いと言うものを嫌がらせてらるのだ!」
「望まぬ見合いをさせられる者の気持ちを思い知らせてやるが良い!」
「徹底的に嫌がられて参れ!」
と発破をかけ、見合いに臨ませる。
その日より始まった山本総隊長の見合いの日々。

「総隊長。お見合いが入っておりますが・・・」
と副官の雀部が言えば、何の事か分からずに聞き返す。
「見合い?誰にじゃ」
「その、ご自身にです・・・」
と話していると、コンコンと扉をノックされた。
「どうぞ」
入ってきたのは卯ノ花隊長と菊水会の理事長だった。
「これは、菊水会の・・・。お元気そうで何より。してご用件は?」
と訊ねれば、
「ご機嫌麗しゅう。山本殿。貴方ももう歳なのですから身を固めては如何かと思いましてね。お見合いを持って来ましたの」
と見合い写真を持ちだした。
「いや、儂は・・・」
と断ろうとする山本に卯ノ花隊長が、
「あら、いけませんわ総隊長殿。他の隊長にお見合いをお勧めになるのなら、先ずはご自身が御受けになりませんと示しが付きません事よ?」
にっこりと笑ってはいるが、背後に真っ黒いモノが立ち上っている。
そう言われればぐうの音も出ない。仕方なしに出向いてみれば、そこでも洋食が出され辟易した。
勿論相手は断られるのを前提に来ているので、やりたい放題し放題。疲れ果てて見合いを済ませ帰れば次の日には相手の女性から断りの返事が来ていた。
「なんなんじゃ、いったい・・・」
これが毎日続けられた。

翌日。
朝食から、パン、シチュー、ハンバーグとこってりした物が出され、うんざりしているともう一膳同じものが用意された。
「まさか、コレも食えと言うのでは無かろうな!」
とそこへ卯ノ花隊長がやってきた。
「おはようございます。最近食が進まないとお聞きしましたのでやって参りました。御一人では味気無いでしょう」
と対面に座って一緒に食事をする。
「む、うむ・・・」
総隊長の食べる速度に合わせて食べる卯ノ花隊長。総隊長が箸を止めれば卯ノ花隊長も止める。
「どうかなさいましたか?」
「い、いや・・・」
(分かっとるくせに!)
内心泣きそうになりながらも食事を終えた。
「これからは私がご一緒致します。御一人で食べるよりたくさん食べれますでしょう?」
暗に残す事は許さないと示された。
「この、洋食はいつまで続くんじゃ?」
と訊いてみた。
「そうですわね・・・。最低でも一護が無事に戻って来るまで・・・、ですかしら」
黒いオーラが跳ね上がったのを感じて身の危険を察知した。
「・・・そうか」
仕方が無いので、大人しく出された物を食べる山本総隊長であった。
一週間、お見合い攻撃、洋食攻撃が続き、
「もう嫌じゃぁああぁああっ!」
と叫び声が聞こえても責めは続けられた。

一方の狛村隊長は・・・?
七番隊に四番隊の隊士がやってきてこう言った。
「卯ノ花隊長より伝令です。『五郎の健康診断をするので、連れて来て下さい』との事です。御忙しいのでしたら私が変わって御連れしますが?」
「いや、儂が連れていこう。今からか?」
「出来れば、お早い方がよろしいかと」
「では今から参ろう」
立ち上がると庭に居る五郎のリードを持って四番隊へ出向いた狛村隊長。
四番隊に着くと卯ノ花隊長が直々に出迎えた。
「ようこそおいで下さいました。確かにお預かり致しました。済み次第、ご連絡いたします」
「うむ。ではな五郎。すぐ迎えに来る」
と大きな手で五郎の頭を撫でてやると隊舎へと帰って行った。
「さ、始めましょうか」
「はい」
健康診断は至って真面目に行われた。
2日経っても3日経っても連絡が無いので、見に行くと五郎は四番隊の隊士達と元気に遊んでいた。
「あ、狛村隊長」
「うむ、連絡が無いのでな。どうしているかと思うてな」
久し振りに狛村に会えた五郎は千切れんばかりに尻尾を振って喜んだ。
「申し訳ありません。まだ検査の結果や他の診断も残っておりますので・・・」
「いつ終わるのか分からんのか?」
「ええ、まぁ。内臓の方も色々診ていますから」
「何か問題でもあったのか!」
「いいえ!あってからでは遅い、と卯ノ花隊長が仰られて・・・。犬、と言うか動物の内臓は小さいですからね。知らずに負担が掛かっている場合もありますので」
「そうか、そうであるな。いや、邪魔をした」
そう言って四番隊を後にする狛村の背に五郎の鳴き声が聞こえた。
(すまぬ五郎。お前の為なのだ)
と心で言い聞かせ、ハッと気づく。
剣八の為と言われ、別れを持ちかけられた一護の気持ちに・・・。
「儂は、なんと言う・・・!」
何故あの時、庇ってやらなんだのか・・・!
あの時の一護の哀しそうな目を思い出し、後悔する狛村隊長。
そして、一護が見つかったと剣八から聞かされた卯ノ花が狛村に五郎を引き取りに来るよう連絡を入れた。
「お待たせ致しました。診断の結果から言いますと、問題はありませんでした。内臓の方も、血液検査の結果も良好です」
「そうか。礼を言う」
「いいえ。大切なご家族ですもの。心配でしょう?健康に長生きしてほしいものですからね」
と言われ、
「卯ノ花・・・、その、すまなかった。あの時、傍に居ながら一護を止める事ができな・・・」
「よろしいのですよ・・・。貴方にとって総隊長は絶対なのでしょう?でも、これで大切な存在が居なくなる気持ちはお分かりになられたでしょう?どうか、更木隊長ややちるちゃんのお気持ちも汲んであげて下さい」
「ああ、そうだな・・・」
一週間ぶりに狛村隊長と帰れる五郎は喜んで、道々じゃれ付きながら帰路に着いたのだった。

そして、一護が見つかり護廷へと運び込まれた。

後日談。
一護が帰って来てから剣八とやちるは一護の傍から離れなかった。
朝、目が覚めるとがっちりと剣八の腕の中に抱き締められている。
朝食の前に剣八の髪を梳いているとタタタタッと足音が聞こえてくる。
「おっはよー!剣ちゃん、いっちー!」
「おう」
「おはようございます、やちる様」
膝立ちで剣八の髪を梳く一護の横に座っていたがやがて、
「ねーねー!あたしも!あたしの髪もやって!ね〜、いっちー!」
ぐいぐいと腕を引っ張って身体を揺らして来る。
「あ、あの、おやめくださ!」
「やちる!」
「むぅ〜!夜も朝も一人占めだなんて剣ちゃんばっかりズルイ!」
ぷくっと頬を膨らませて拗ねるやちる。
「しょうがねえな。一護、後は自分でやるからやちるのやってやれ」
「はい。やちる様、どうぞこちらへ」
「わーい!」
一護の膝に座ると身を任せるやちる。
さく、さく、と子供特有の柔らかい髪を櫛で梳いていく。
さく、すぅ。さく、すぅ。と絡まりを取ると、手に椿油を擦り付けやちるの髪に付けていく。
「コレは朽木様から頂いたんですよ。とても良い物だと仰っていました」
「ふ〜ん」
柘植の櫛で更に整え、
「さ、終わりましたよ」
「え〜、もう?もっとやって〜」
と抱き付いてくる。
「ですがもうすぐ朝食の用意をしないと・・・。やちる様は玉子焼き要りませんか?」
「・・・いる」
「ね?さ、着替えて下さいな。俺は台所に居ますからね」
「うん!玉子焼き甘くしてね!」
「はい」
「俺は大根おろしな」
「はい」
朝食を食べ、仕事に行く時、一緒に出掛けるのに剣八は一護に『いってらっしゃいのキス』をさせる。

昼間は膝に乗せ、隊首席で書類仕事をする剣八。
どこに行くにも一護の袴を掴んで付いていくやちる。
昼間はやちると共に居る事が多かった。おやつを作るもの一緒。昼寝の時は一護の膝。夕飯の買い物にも付いていく。
「副隊長、一護君にべったりだね」
「ああ、隊長もな」
誰にも会わせたくは無いのだろうが、目を離すのも嫌なのだろう。常に剣八かやちるが傍に居る。
お昼の縁側で一護に抱かれて、ゆぅらゆぅらと揺らされてウトウトしているやちるが居た。
「おう、ここに居たのか」
「剣八様」
ドカッと一護の横に腰を下ろす剣八。
「気持ち良さそうに寝やがって」
「え?」
「なんでもねえよ。俺も寝るぜ、こっち来い」
「え、あの」
間誤付いてる間にやちると共に抱きこまれ、川の字になる3人。
やちるは一護の腕を、一護は剣八の腕を枕にして仲良く昼寝と相成った。
「なんだか照れてしまいます・・・」
「寝ちまえ・・・」
大きな手で一護の顔を撫でる剣八。

目が覚めると3時のおやつ時だった。今日のおやつはドーナッツだ。
焦げ茶色に揚がったドーナッツに砂糖を塗してある。中身は玉子色でとても美味しそうだ。
剣八と自分の分を取り置いて、残った分をビニール袋に入れてくれと言われたので入れて持たせてやる。
「食べ過ぎては駄目ですよ?」
「うん!分かってるー!いってきまーす!」
と元気よく遊びに出掛けた。
「剣八様、おやつに致しましょう」
「おお」
ドーナッツと牛乳を用意して縁側で食べる二人。
「美味いな」
「お口に合って嬉しいです」
ほのぼのとした光景だった。
やちるは副隊長達に一護の手作りドーナッツを自慢して回っていた。
「美味しそうでしょー!いっちーが作ってくれたんだから!」
女性メンバーや一護を庇ってくれた副隊長達にはお裾分けをしていた。

夜は剣八と一緒だ。
一緒に風呂に入り、手を引いて寝室に向かう。
口付けし、優しく押し倒す。
「ん・・・、ふ、ん、ん」
「は・・、一護、一護・・・」
剣八はまるで確かめる様に一護に触れてくる。これは現実で夢ではないのだと、全身隈なく撫でさする。
「ん、あ、あ・・・剣八さま・・・」
「一護・・・!」
もどかしそうに身を捩る一護の身体を丁寧に愛撫していく。
「は・・・っ!あ!」
耳朶を舐め、甘噛みしてはじゅぷじゅぷと音を立て耳穴を犯した。
「やぁ!あ!あ!ひん!」
空いた手で胸の小粒を捏ねていく。クリクリと摘まんでは指の腹で押し潰した。
「ああっん!」
そのうち首筋に吸い付き、跡を残してはそこを舐めていき、鎖骨をカシカシと甘噛みしては愛撫を続けていった。
胸に達し、小粒の片方を口に含むと熱い舌で転がしては吸い上げた。
「ああっ!あ!あ!やぁあ!」
下肢に手を触れるとそこはもう勃ちがって震えていた。
「もう、とろとろだな・・・」
そう言うとぱくりと口に含んでしまった。
「あ!ああ!」
ちゅ!と先端を吸われ、丁寧に舐められた。裏筋を舐め上げては先端に舌を捻じ込んだ。溢れる蜜は幹を伝って蕾を濡らしていく。
「あふ!あっ!あっ!ンンッ!」
トクンッ!と剣八の口内で達してしまった一護。吐き出された白濁を一滴残らず飲み下し、吸い取った。
「ッはあ!は!はあ!はあ!」
達した余韻に浸る一護の身体を反転させると、ヒクヒクと息づく蕾に舌を這わせた。
「ああっ!や、やああ!」
「逃げるな・・・」
身を捩って逃げを打つ一護の前をキュッと握り込み、舌を蠢かせる。
「あ、ああ・・・!ぃや!あ!」
くちくちと皺の一本一本を丁寧に舐めては、にゅくにゅくと中まで舌を入れていく。
「ふ、ふああ!やっ!イク!」
「まだ駄目だ」
と根元を押さえてしまう剣八。
「ああっ!うう!」
限界まで伸ばした舌を抜き差ししては、会陰や陰嚢を舐めしゃぶった。
「やあああっ!あ!あ!もう!もう!」
一護は(かぶり)を振って限界だと告げた。

ぷちゅ、と音をさせ、舌を離すと熱く滾っている自身を既に蕩けている一護の蕾に擦り付けた。
「あ、ああ・・・!」
「行くぞ・・・」
「ああ・・・、きて、ください、剣八様・・・」
ぐぷぷぷ、とゆっくり中に納めていく剣八。
「ん、んああぁ・・・!」
後少しで全部収まると言う所で一護の腰を掴み直し、ズンッ!と奥まで貫いた。
「あああっ!」
目の前が真っ白になった。
「なんだよ、入れただけだぞ?」
そう言いながら一護の背中に口付け、赤い跡を付けていく。
「え?」
一護は貫かれた瞬間に達して白濁を撒き散らしていた。
「あ、いやぁ・・・」
思わず目を瞑り、下を向いた。
後ろから貫かれて下を向く一護の耳元で囁く剣八。
「なぁ一護、見てみろ」
「?」
穏やかなその声に、薄目を開け、後ろの剣八を振り返る。
「違ぇよ、前だ、前」
「前・・・、あ・・ひ!」
そこには姿見があり、後ろから剣八が自分に覆いかぶさっているのが見えた。
「ヤ!やだ・・・!」
思わず固く目を瞑り俯いてしまった一護の顎を掴むと姿見に向ける。
「目ぇ逸らすんじゃねえ。ちゃんと見ろ」
「ッ!あ、あ、あ・・・!」
剣八に抱かれている自分の姿を見て後孔をギチギチと締め付ける一護。
「ッ!そんな締め付けんなよ、動けねえじゃねえか」
「だ・・・って!」
弛めようとしても言う事を聞かず締め付けてしまい、胎内にある剣八自身を根元から先端までみっしりと一分の隙もなく包みこみ、浮き出た血管も脈動も、形も熱さも、その全てを感知してしまう。
「うあ!あっ!あっあっ!」
脈動を感じる度、下腹部はうねり、その存在を思い知る。
「ちゃんと見て言え、お前を抱いてんのは誰だ?」
涙の膜が貼り、滲んだ視界の先にある姿見の中の剣八を見ながら、
「あ、あ、け、剣八、様です・・・」
と答えた。
「お前に欲情してんのは?」
「剣、八、様です・・・!」
堪らず目をキツく閉じると涙が一粒零れ、奥を突かれた。
「あうっ!」
「目ぇ閉じんなよ。そのまま鏡を見てろ。目ぇ逸らしたら仕置きだ・・・」
「え、あ、あーーっ!」
ギチギチと締め付ける一護の内壁に逆らい、抜いては奥を貫いた。
「こら、ちゃんと!見てん!のかっ?」
「あっ!あっ!いっ!やっ!あっ!ああっ!」
ぎちゅ、ぐちゅ!ぐちゅ!と湿った音と共に肌を打つ乾いた音が部屋に響く。
「あ、ああ!剣八様!剣八様!」
鏡の中の剣八は、自分を抱いている。余裕など感じられないその表情に一護の下腹部がずくんと疼いた。
「あ!あ!あ!も、イく!イッて、しまいます・・・!」
「イけ・・・!我慢すんな、イッちまえよ・・・!」
「うあ!あっ!あーーっ!!」
びゅくびゅくと吐精する一護の胎内に剣八も熱を注いでいく。
「く・・っ!」
「う・・・!熱、い・・・!」

腕に力が入らず蒲団に突っ伏した一護の二の腕を掴むと、後ろに引いてその身体を起こした。
「ひ、ひあっ!うああ・・あーーっ!!」
そのまま胡坐を掻いた足の中へと納めた。自重で更に奥に入り込んだ剣八の熱に震えていると、膝裏に手を入れられ閉じれなくされた。
「ん、あ、あ・・・あ?いや・・・」
目の前の鏡に映る自分は、抱きかかえられ、後ろは剣八を根元まで飲み込んでいる。
「や!やです!剣八様!こ!こんな!あ、ああ!」
ぐつり、と音を立て、中を擦られる。のの字を書く様に腰を動かされ、前立腺を絶えず刺激される。
「やぁ!ああ!んああっ!だ!だめ!だめ!」
剣八の肩口に頭を擦り付け、首を反らせると首筋に噛みつかれた。
「あ、ああっ!」
そのまま縦に歯を滑らせ、耳の軟骨を食んでいく。
「ふぁああ!あ!ああ!も!だめ!です!またイって、ああっ!」
「好きなだけイケよ、俺もお前の中に全部注ぎ込んでやる・・・!」
もうお互い鏡の存在など消えていた。
「あっ!ああっ!ん!んふ!」
一護の乳首を摘まみながら口付ける。舌先を軽く噛まれ、吸い付かれ、その快感が下肢へと響く。
生理的な涙を流しながら、剣八の首に腕を回し、もっとと口付けを強請る。
「ん!ふ!ふあ!あ、あーーっ!」
もう色も薄くなり、勢いも無くなった吐精と共に達した一護。
ひくっ!ひくっ!と痙攣している身体を反転させ、対面座位で抱き合う。
「ん!んあ!」
「く、一護、一護、一護・・・!」
「あ、あう・・・、けん、ぱち、さま・・・」
くたくたと力の抜けてしまった一護の身体を揺さぶり、最奥へと熱の塊を注いでいく。
「くうっ!」
「んああっ!」
一護の身体を抱きしめながら達した剣八。
「一護・・・」
一護に口付けようとして気づいた。
「・・・気絶してやがる・・・」
全身に剣八の所有印を残して一護は意識を手放していた。
「しょうがねえな・・・」
と呟きながら名残惜しそうに一護の中から出ていくと、風呂に入れてやり新しい蒲団で一緒に眠った。

翌朝。
「ん・・・、あ、おはようございます・・・剣八様」
「おう。・・・動けるか?」
と訊きながら髪を梳いてやる。
「あ、多分、大丈夫だと・・・」
身体を起こすと腰に鈍痛が走った。
「〜〜!」
「無理すんじゃねえ」
「はい、でも平気です」
と言いながら朝食の用意をし、3人で食べた。

昼ごろ、仕事で片付けた書類を一番隊に持って行く一護とやちる。
「書類をお持ちしました」
と山本総隊長に書類を渡すと、その顔色の悪さに気付いた。
「あの・・・御身体の調子でも御悪いのですか?」
「んむ?いやまぁ、胃の調子が悪くての」
と胃の上を擦る。
「まぁ、そうなのですか。差し出がましいようですが俺で良ければ何かお作り致しますが・・・」
「そうじゃのぉ・・・。すまんが頼めるか?」
「はい。ではやちる様、お手伝いして下さいますか?」
「いいよ〜!」
と給湯室を借りる一護。

ふわり、と鼻を掠めるのは食欲をそそる出汁の良い匂いだ。
「お待たせ致しました」
と出されたのは小さな土鍋に入った雑炊だった。
「消化に良い物と思いまして」
茶碗に入れられたそれは、ささみと鰹だしのシンプルな雑炊だった。
「すまんのぅ、ありがたく頂こう」
と食べていると卯ノ花隊長がやって来た。
「あら、一護とやちるちゃんではないですか。ここで何を?」
と訊いてみた。その視線は総隊長の手元にある。
「あ、はい。山本総隊長様の胃の調子が良くないそうなので、簡単ですがあり合わせの物で雑炊を作りました」
「まぁ、一護は優しいのですね」
「いえ、そんな。卯ノ花様こそ・・」
そんな話をしていると一護の伝令神機が鳴った。
「失礼します。もしもし、あ、はい。今一番隊です。はい、総隊長様と一緒ですが?え、はい、分かりました。お待ちしています」
「だあれ?」
とやちるが聞いてきた。それに一護が答えようとした時、扉が開いた。
「一護」
「剣八様」
にっこりと心底嬉しそうに笑う一護。
「帰ってくんのが遅い」
「申し訳ありません。では失礼致します、総隊長様、卯ノ花様」
礼をして3人で帰って行く。
「ねーねー、今日のお弁当なーにー?」
「今日は海老フライが入っておりますよ。もちろん唐揚げも」
「やったぁ!」
そんな会話が聞こえて来た。

その日を境に総隊長への嫌がらせは終わりを告げた。

暫くは一護の姿が見えないと伝令神機を使って探す剣八が見られた。
雨乾堂でお茶を飲んでいても、女性メンバーと甘味処に居ても掛かって来てはすぐに迎えに来る剣八。
「あんたって愛されてるわねぇ、一護」
と乱菊に言われて真っ赤に頬を染める一護だった。





11/11/26作 時間がかかっちゃいました〜!暫くは独占欲の赴くがままに一護を縛ると思うんですよね〜。
山じいへの嫌がらせはこれが精いっぱいです。皆さんの脳内補正でもっと泣かせたって下さい(笑)
11/27加筆しました。

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