題「恋する人形」30
 救護詰所に運び込まれた一護は、出血多量で瀕死の状態だった。
輸血をし、容体が安定した頃に増血剤と栄養点滴を受けながら昏々と眠り続ける一護。
顔色は戻りつつあるが、やはりまだ白かった。

三日目。
「早く目ぇ覚ましやがれ・・・この馬鹿・・・」
朝から見舞いに来ていた剣八。もう日は沈んでいる。剣八はまだ起きない一護の頬を撫で、頭を軽く(はた)いた。
「ん・・・」
僅かに身じろぎし、薄く目が開いた。が、すぐに閉じられた。
「起きろ!いつまで寝てやがる!」
大声で起こすと、パチパチ!と瞬きをした。そして剣八の姿を認めると、
「う、んん・・・更木、さま・・・?」
いつもの様に呼んだ。
「呼び方違うぞ。名前」
「・・・・・・。あ、剣、八様」
「おう」
大きな手が一護の頭を撫で、髪をくしゃくしゃにする。
「くすぐったいです」
そう言う一護の顔には笑顔が乗っている。
「お前、もうずっと笑えるんだな」
「え?笑って、ますか?俺は」
と自分の顔を触る。
「なんだ、自分じゃ分かんねえのか?ちゃんと笑ってたぜ」
「嬉しいです・・・」

そこへマントを着た男が窓から現れた。
「おやぁ?両想いになったんですねぇ、おめでとう」
「なんだ?てめえは?」
一護を抱き寄せ睨みつける剣八。
「ウ、ウラハラーン・・・。魔法使い・・・!」
「こいつがか・・・!」
「あ、あの、俺の顔・・・」
「ああ、言ってなかったスね。想いが実ると呪いは解けるんス!君はこれからも人間だし、笑いたい時に笑えるッすよ!お幸せにね」
「あ、ありがとう・・・、ありがとうございます・・・!」
ふと不穏な気配を外から感じたウラハラーン。
「じゃ!アタシはこれで。もう会う事もないでしょう。さようなら」
クイッ!と帽子を目深に被ると窓枠に飛び乗った。
「さようなら・・・」
一護が別れの挨拶をすると夜の闇に溶けるように消えてしまった。

窓の外を見ている一護の横から声を掛ける剣八。
「・・・一護・・・」
「何ですか?剣八様」
振り向くと両手で顔を包みこまれ、見つめられる。
「目・・・閉じろ・・・」
「? はい・・・」
素直に目を閉じる一護。自分の唇に柔らかいものが触れた。目を開くと、
「こら、口付けの時は目ぇ開けんじゃねぇよ」
少し唇を離して囁くと、また口付けた。
「ん・・・んん、ふ、は、ん・・・」
啄ばむ様な口付けを繰り返し、一護の唇が弛んでくると、歯列をなぞり、歯肉を舌で撫であげる。
「ん、ふ!ん、ん・・・」
息継ぎの為に開いた口内に舌を差し入れた剣八。
「んん!」
熱く長い剣八の舌が、自分の口内へと入ってくる。怖くて逃げる舌を追いかけ絡め取り、上顎や喉奥の薄い粘膜を嬲り味わう。
「ん!んん!ふっ!んんぅ・・・!」
他に縋る物が無くて剣八の広い背中に腕を回す一護。そんな一護を抱きしめる剣八。
息継ぎをさせる為、少し離れると一護の荒い息が頬を掠めた。

「ぷは・・・、あ、はぁ、はぁ、あ・・・」
ふるふると震える舌に甘く噛みつき、啜りあげる。腕の中の一護がくたりとしているのに気付いた剣八が漸く解放した。
「ワリィ・・・」
「っはッ!はぁ!はぁ!は、あ・・・、剣八様は・・、俺を殺す気ですか・・・!」
呼吸を整えながら一護がそんな事を言った。
「何馬鹿な事言ってんだ・・・」
腕の中の一護の眼を見る。
「だ、だって・・・こんな!心臓が壊れてしまいます!どうしてこんなに鼓動が激しくてうるさいのですか?」
剣八の顔を上目遣いで見上げる一護。
「好きな奴とこうしたら誰だってなる。ほれ・・・」
と一護の手を自分の胸に当てる。

ドッ!ドッ!ドッ!ド!

いつもより早い剣八の心臓の音。

「好き・・・?剣八様も?本当に俺が好き?」
きゅ、と剣八の着物を掴んで訊くと、
「ああ、一護。俺はお前に惚れてる・・・」
一護の髪を掻きあげ、額に口付けた。
「〜〜!や、やっぱり剣八様は俺の心臓を壊す気です!こ!こんな!こんな・・・」
「こんな?なんだよ?」
顔を真っ赤にさせ言い募る一護を促す。
「だって!こんなに幸せで・・・!幸せ過ぎます!こんな!貴方が俺を・・・!俺は貴方の怪我の治療が出来ればそれで良かった!貴方の声が聴きたかった!貴方の名前を呼んで言葉を交わせればそれで良かった!貴方の目の留まる事が出来た!それだけで良かったのに!こんなこんな!過ぎた幸せ、それだけで俺は死んでしまいそうなくらい・・・!」
ぽろぽろと真珠の様な涙を零す一護の涙を拭ってやりながら、
「馬鹿野郎・・・、これからだろうが。お前はこれから俺と一緒に居るんだろう?今から何言ってんだ、身が持たねえぞ」
と言ってやった。
「そんな・・・!これ以上どんな幸せがあるのですか?俺はそれを知りません」
「なら俺が一個ずつ教えてやるよ、安心しな」
ちゅ、と触れるだけの口付けをして剣八は帰って行った。
暫くポーッとしている一護が居た。

コンコンコン、とドアをノックされ我に返った一護。
「ど、どうぞ!」
「更木隊長はお帰りになった様ですね」
「卯ノ花様!」
「あら、顔が赤いですわね?熱かしら」
「ち!違います!」
首を横に振る一護。
「何か、良い事でもありましたか?」
と優しく問い掛ける。
「え?あ、あの、その、ざ、・・剣八様も、俺を好いてくれていると・・・仰って下さいました」
恥じらいながら告げる一護に、
「良かったですわね」
「はい!これからは色んな幸せを教えて下さるそうです!」
「そうですか・・・。ああ、一護。明日の朝に検査をして異常がなければ退院出来ますわよ」
と教えてくれた。

翌朝、検査を終え異常も見られなかったので無事に退院した一護。診察室から出ると剣八が迎えに来ていた。
「剣八様!」
「おう、終わったか。どうだった?」
「あ、はい。どこにも異常は無いので明日からでも復帰出来るそうです」
「そうか」
「あ、立ち話もなんですから、部屋でお茶でも・・・?」
「・・・ああ」
一護の部屋へと行き、お茶を出される。
「色々とご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「別に・・・。それより早く退院出来て良かったな。こっちも助かったぜ、やちるの奴がうるさくて仕方がねぇ」
「草鹿様はお元気ですか?」
「ん?ああ・・・他の奴もな」
「良かった・・・」
ふんわりと笑う一護を見て抱き寄せる剣八。
「わ!剣八様、どう・・・」
その先は剣八の唇で遮られ言葉にならなかった。

「ん、ふ、剣、んん」
「一護、一護・・・」
一護を抱き上げるとベッドへ運び、押し倒した。
「・・・あ!や!」
「・・・心配すんな。最後まではしねぇからよ。一護・・・」
「はい」
「あの時は悪かった。お前の気持ちも意思も考えちゃいなかった。酔ってたなんざ言い訳にもならねえ。すまん」
ベッドの上で拳を付き、頭を下げる剣八。
「頭をお上げ下さい!剣八様!俺だって・・・」
「一護?」
「俺は汚いです。貴方はそうやって謝罪して下さったのに・・・。剣八様、俺はあの事に優越感を感じてしまったんです・・・」
「優越、感?」
「だって、あんな、嵐の様な、その・・・。あんな風にするのは俺だけなんだと、思って・・・。遊女の方にも、女性にも、他の方々にもしない。俺だけなんだって・・・!」
「馬鹿野郎・・・。あんなもんはただの嫉妬だ。大体、他の女なんざ普通にやってるだけだ。優しくもしてねえ。これから優しくしてやる。お前だけの特別なやつでな」
そう言って口付けた。
「ん・・、あ、特別・・・ん、俺も、貴方が特別です・・・ん!」
「一護・・・!」
ちゅ、ちゅ、とキスの雨を降らせ、愛撫を施していく。髪を撫で、耳を摩り、舐め、甘噛みしていく。
「ん!あ!」
「一護・・・、一護・・・」
首筋に顔を埋められ、チリッ!とした痛みを感じた。そこに舌を這わせる剣八。
「ひゃ・・・、あ、あ、や、ん!変な、感じ・・・」
するすると着物を袷を開いていき、露わになった胸にはまだ傷跡が残っていた。
「一護・・・」
そこに口付けると丹念に舐める。
「は!あ!あ、あ」
胸の小粒にも指で愛撫する。押し潰したり、摘まんだりを繰り返すと赤く色付き勃ちあがる。
「いや、いや・・・!し、痺れる・・・!」
「一護・・・!」
その粒を口に含んで舌で転がし、吸い上げる。
「ひあっ!あ、あ、お、お腹、変・・・」
ん?と剣八がそちらに目をやるとゆるゆると頭を擡げている中心があった。下帯を取り、そこをやんわりと握り込んだ。
「ひぃッん!」
ビクビクッ!と跳ねる一護の身体。
「一護、好きだ・・・」
「ッ!」
「反応してくれて嬉しいぜ・・・」
「あ・・・ど、して・・・」
どうしてこんな風になるのか分からず混乱する一護。
「変じゃねえから気にすんな」
「だって・・・!俺だけ、こんな・・・」
「あほ・・・」
自分の着物の前を肌蹴て押しつける。
「あ・・・っ!」
そこには布越しでも分かるぐらい熱く、固くなっていた。
「剣八様、も?」
「ああ、好きなやつと肌を合わせりゃこうなる・・・」
「ん・・・」
自身の下帯も外すと一護のそれに擦り付けた。
「あ、熱い・・・」
「最後まではしねえからよ・・・」
「あ、あ、あ!」
くちゅくちゅと淫らな音が響く。
「あっ!いやです!ちょ!ちょっと、あ!ああ!お待ちくださ!」
「ああ?」
「お、お手洗い・・・」
「なに?」
「その、お手洗いに行かせて、下さ!ああ!」
クチッ!と先端を親指の腹で捏ねれば、透明な液が溢れた。
「・・・あ〜・・・、お前、コレも初めて、か?」
コクコクと首を縦に振るしか出来ない一護。
「小便じゃねえよ、大丈夫だから出しちまえ」
擦り上げる力と速度を上げた。強すぎる快楽に生理的な涙を流す一護。
「そんなッ!あっ!あっ!駄目です!このままでは粗相をしてしまいます!イヤッ!イヤッ!あ、ああっ!出る・・・!ん!んああ!」
首を左右に打ち振り、限界まで背を撓らせ、ぴゅくぴゅく!と吐精した一護。滑りが良くなり剣八の手の動きが早まる。
「あ!あ!も!もう!出ませッ!」
「クッ!」
剣八と一緒に二度目の吐精を終えた一護。

くったりと力の抜けた一護の身体の始末をする剣八。
はぁ、はぁ、と息の荒い、ほとんど裸の一護。その腹には二人分の白濁が水溜まりの様になっていた。
「(く・・・!目に毒だ・・・!)」
しどけないその姿を極力目にしないように体を拭ってやるが過敏になっている一護からは甘い声が漏れた。
「あ、あの・・・・よろしいのですか・・・?」
「何が?」
「あ、その、『最後まで』と言う事はまだ先が、あるのですよね?」
「ああ・・・、まだいい。色々準備が要るし、お前も本調子じゃねえだろ。それにまだ怖いんじゃねえのか?」
さらり、と髪を撫でてやる。
「無理はすんじゃねえよ。追々で良い」
「すみません・・・」
「謝んな。そのうち・・・な」
「はい・・・」
その日はずっと傍に居た二人。

翌日、出勤するとやちるから、
「いっちー!笑える様になったんだよね!じゃあいつかの約束!あたしのこと名前で呼ぶって!」
「はい、覚えておりますよ。やちる様」
「まだ『様』って付いてるよ?」
「これはもうクセになっているのでお許しください」
「ん〜。うん!いいよ!だってお名前で呼んでくれるんだもん!」
全身で喜ぶやちるを見て微笑む一護。
その笑顔にその場に居た全員が見惚れた。
「いっちー、きれーい・・・」
「はい?」
きょとんと首を傾げる一護。

剣八の心労が増えそうだ。






11/07/13作 完結です!な、長かった!当初はこんなに長くなる予定では無かったんですが、にょたとか他のネタを思いついて書いてるうちにこんな長さに・・・。コレの半分くらいの長さの予定でした。
補足。
やちるは一護が名前でなく名字を呼ぶのに「名前で呼んで」と言ったんですが「俺の様なモノが・・」と言われても強請ったら「では俺が笑えるようになったら」と約束したんです。
これから剣ちゃんの心労は増えます。一護の周りに男女問わず人が集まるだろうから(笑)
ちょっと加筆修正。

ドール・ハウスへ戻る