題「子猫、子供になる」虫歯になっちゃった編
 今日は一番隊に遊びに来た一護。
「んみゃ〜う」
扉からひょこっと顔を覗かせる一護。
「おお、一護か、遊びに来てくれたのか?」
「みゃあ!」
とててて!と傍に行くと一護を膝に乗せる重國。
「んみ?」
「良い良い、折角一護が来てくれたんじゃからのう」
にこにこと好々爺よろしく笑う総隊長を複雑に見る副官が居た。
「みい〜」
そのうち長い髭で遊び出す一護。じゃれついては引っ張って遊んだ。
「こりゃ一護、そんなに引っ張ったら抜けてしまうわい」
「んみゅう〜」
次は眉毛を引っ張りだす一護。
「いたたたた、悪い子じゃのう」
眉毛を救い出す様子をハラハラしながら見守る雀部。
「いみゃ〜」
遊び足りないように文句を言う一護。
「今日は更木が任務でおらんからのう、一護や、儂と甘味処にでも行くか?」
「みゃあ!」
満面の笑みで返事をして膝からぴょん!と下りると重國の腕をぐいぐいと引っ張った。
「分かった分かった、すぐ行こうなぁ」
まるで初孫を可愛がる祖父の様だった。

甘味処「久里屋」に来た一護と重國は珍しい組み合わせにちょっと目立っていた。
「一護は何にが食べたいのかの?」
「ん〜、み〜、み!みゅう」
ぴこぴこ!と耳を揺らして指差したのはチョコレートパフェだった。
「コレか?よしよし」
それと自分に練り切りを注文するとお茶を啜って待った。
運ばれた品をきらきらした目で見つめる一護をより一層目を細めて見る重國だった。
ただ、一護には少しパフェが大きかったようで重國が食べさせてやった。
「ほれ一護、あ〜ん」
「あ〜」
ぱく!と食べて顔を綻ばす一護。
「美味いか?」
「みい!」
「そうかそうか、良かったのう」
一護がパフェを食べ終わると自分の練りきりに手を伸ばす重國。
「ふむ、ん?コレも食べたいか?一護」
「み?」
「遠慮するでないぞ?ほれ、あ〜ん」
「あ〜」
冷たいパフェの後に食べた和菓子はより甘く感じられた。
「んみゅう〜」
両のほっぺを押えて笑う一護。その頭を撫でてやる重国だった。

その後も剣八が任務で居ない時などには一護を甘味処に連れ出す総隊長の姿が見受けられた。
「一護君、朝だよ。ご飯出来てるよ〜」
と弓親が起こしに来た時、身体を丸めて少し震えている一護が居た。
「? どうしたの?一護君」
「み、みぃい・・・」
顔を上げると右頬が少し腫れていた。
「一護君、もしかして虫歯?」
「み!?」
「お口開けて?」
「あ〜・・・」
「・・・あ〜、虫歯だね、お菓子食べた後ちゃんと歯磨きしたかい?」
「う・・・」
「朝ご飯はおかゆにしてあげるから、四番隊に行こうね?」
「み・・・」

しょんぼりして居間に来た一護を見て剣八が、
「なんだ、どうした時化たツラしてよ」
「一護君、虫歯になっちゃったんですよ」
「はぁん?」
「最近総隊長が甘やかして良く甘味処に連れっててるようですしね」
出されたおかゆをふう、ふう、と冷ましながら食べる一護。
食べ終わり、歯を磨くと水が虫歯にしみて、その度に、
「ぴ!みい!」
と尻尾を膨らまして泣く一護が居た。
歯を磨き終わると剣八が一護を小脇に抱えて一番隊に乗り込んだ。
「テメェじじい!一護に虫歯出来てんじゃねえか!」
と怒鳴りこまれた一番隊。
「んにゅう〜」
確かにホッペが腫れあがった一護が居た。
「どんだけ甘いもんくわせたんだ!こら!」
「ぺい!小さいうちは甘い物が脳には要るんじゃからええんじゃ!虫歯は卯ノ花に治してもらえ!、治療費は儂が出す!」
「そういう問題か!限度ってもんがあんだろうが!」
「そうですわ・・・、総隊長」
いつの間にか剣八の後ろに居た卯ノ花隊長。
「綾瀬川五席に呼ばれまして・・・。まぁ可愛い一護君の顔がこんなことに。更木隊長、一護君をこちらに、ああ総隊長は暫く一護君に近づかないように・・・!」
有無を言わせない卯ノ花隊長の迫力に気押される一同。
四番隊に連れて行かれた一護。
治療室からはドリルの音と悲痛な一護の声が響いていた。
キュイィイイン!
「みゃあぁああ!」

ぐずぐずと涙目のまま隊舎で不貞寝する一護に、
「ちゃんと歯ぁ磨かねえからだ」
とデコピンする剣八。

後日、任務から帰るとまたもや一護が居なかった。
「おい、一護が居ねえぞ」
「多分、甘味処でしょうね」
と半ば諦めたように告げると着替えた剣八は久里屋に顔を出すと、やっぱりと言うか一護を膝に乗せた重國が居た。
「ほれ一護や〜、白玉ぜんざいじゃぞ〜」
「じじい!学習しやがれ!」
と剣八が怒鳴るも一護は、
「あ〜ん」
とぜんざいを食べていた。
「お前も喰うな!」
「みゅう・・・」
耳をぺたんと倒す一護。
ぎゃあぎゃあ、と言い争う二人の所へ卯ノ花隊長が訪れこう言った。
「総隊長、暫く一護君に近づかないように言った筈ですが?」
「一護が遊びに来てくれたんじゃ、持て成して何が悪い」
「そうですか、ですが一護君の虫歯はまだ完治しておりませんの。治るまでは甘い物は禁止です!」
凄みのある笑顔で言い切られてしまった。
「さ、一護君、もう少しで治りますからね」
と四番隊に連れて行かれた。
卯ノ花隊長に抱かれて連れて行かれる一護。それを見ていた者はなぜか頭の中でドナドナが流れたという・・・。

「いつまでむくれてんだ、一護」
「ぷん!」
尻尾で縁側の床をパタンパタンと叩いてる一護。
「そんなに怖かったのかよ?」
「みぃ・・・」
「しょうがねえな」
剣八は横になると懐に一護を納めた。
「昼寝でもしとけ、寝て起きたら別の日にならぁ」
「みぁ」
すりすりと顔を擦りつけて眠った一護だった。







09/11/21作 129作目です。怖い卯ノ花ママにちょっとしたトラウマ状態の一護ちゃん。
甘い物を食べた後は歯を磨きましょう。なお話でした。






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