題「月食」7
 剣八と京楽に耳と尻尾が生えてから一週間が経っていた。
今日も剣八は尻尾で子供達と遊んでいた。
「きゃあ!捕ま〜えた!っとアレェ?」
「まだまだだな、十六夜」
「む〜、まだだもん!朔にぃ!幾望!」
「よ〜し!」
「うきゃあ!」
3人がかりで剣八の尻尾を捕まえようと必死である。
そんな様子を縁側から微笑ましく見ている一護とやちるはお茶を飲んでいる。
「剣ちゃんもみんなも楽しそうだねぇ」
「そうだなぁ、もうそろそろおやつの時間なのにね」
と幾望が剣八の尻尾を捕まえた。
「やったぁ!つかまえた!」
「うをっと!」
次の瞬間、その尻尾が・・・、抜けた・・・。

「あ・・・」
するん、とした感じ。幾望の手の中でぽふん!と音をたてて崩れ、さらさらと風に乗って無くなった。
「あ、あう・・・」
「何泣きそうなツラしてやがんでェ」
グイッと幾望を抱き上げる剣八。
「でも・・・、とと様の尻尾・・・」
「元々いつ無くなるか分からななかったんだ、気にすんじゃねえよ」
ポンポンと頭を撫でてやる。
「おやつだよ〜!」
と一護から声が掛けられた。
「は〜い!」×3
家の中に入り、手を洗いに行く子供たち。

「剣八の尻尾無くなったね、残念・・・」
と顔を見ると耳も元に戻っていた。
「なんだ?物足りねえか?ん?」
「ん〜、ちょっとだけ。でもいつもの剣八もカッコイイから・・・」
「そうかよ・・・」
と一護の肩を抱き寄せた。

 京楽の場合。
「今日もいいお天気だねぇ」
縁側で白とお茶を飲んでいると朝月が、
「お昼寝したい・・・」
と二人の間に入ってきて船を漕いでいた。
「ふふ、可愛いねぇ、僕らもお昼寝しよっか?」
「そうだな〜、寒くもねえしな」
京楽は白のお腹の下に座布団を二枚敷いて、朝月を間に川の字で並んで寝ころんだ。
白は自分の尻尾を朝月に巻いてやった、京楽は白をくるんでやった。
「・・・ありがと」
「ふふふ・・・」
やがて二人の可愛らしい寝息が聞こえてきた。
無防備な寝顔の白もあどけない朝月の寝顔もどちらも可愛かった。
やがて朝月が目を覚ました。
「おや、おはよう」
「ん〜、十六夜のとこで遊んでくる!」
「は〜い、いってらっしゃい。気を付けるんだよ」
「は〜い!」
と元気に返事して出掛けていった。
「ん、んん・・・」
ともぞもぞと身じろぎ、クンクンと鼻を鳴らしながら白が京楽の胸に擦り付いていった。
「まいったね・・・」
さらさらと髪を梳いてやると気持ち良さそうに微笑った。
少し寒くなってきたので名残惜しくも白を起こす。
「白、寒くなってきたから起きなさい」
「ん、ん〜。・・・朝月は?」
「十六夜ちゃんの所に行ったよ」
「そうかよ・・・」
ふわあぁ〜と欠伸をした。
「迎えに行くついでに今日のご飯は外で食べよっか?」
「あ、いいな。どこ連れってくれんだ?今度は」
「どこがいいかな?お鍋の美味しいお店があるからそこに行こうか」
「ン、そこでいい」
二人で朝月を迎えに十一番隊まで行った。

「おーい、朝月帰るぞー」
「かか様!とと様!はーい!またね!十六夜!朔!幾望!」
「またねー!」
「バイバーイ!」
「ばいばい」
走って京楽に抱きつく朝月が尻尾にも抱きついた。
スポン!と尻尾が抜けた。
「あ!」
「あらら」
「おお。抜けたか」
白は予想していたのか落ち着いたものだった。
やはりそれもさらさらと風に乗って散っていった。
「やあ、もう少しあのままでも良かったのにねぇ」
「ごめんなさい、とと様・・・」
「気にしてないよ」
「でも・・・」
「良いんだよ、どうせ時間の問題だったんだからな。それより朝月、今日は外で飯食うんだってよ」
「ホント!かか様!」
「ああ、とと様が連れってってくれるぞ」
「わあい!とと様だあい好き!」
その日は行きつけのお店で水炊きを食べた京楽一家でした。

 さて一護の所は?
「剣八、今日何食べたい?」
「あ〜、鍋はこないだ喰ったからな、おでんか」
「分かった〜、餅巾着も入れよっと」
「好きにしろ」

どっちもあったかいご飯でしたとさ。








09/12/02作  寒い日はお鍋が食べたいな、と思いつつ面倒なので彼らに食べてもらいました(笑)




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