題「かごめ、かごめ」その後2 | |
子供が生まれて一週間。剣八は子供の名前を考えていた。 「どんなのが良い?」 「剣八が考えてくれたらそれで・・・、二人目は俺が考えるからさ」 「そうか・・・」 隊首会に出れば、名前はまだか、まだかとじじいがうるせえしな・・・。 「ふ、ん・・・、じゃあよ、俺達二人を結び付けた子って意味で『結』(ゆい)ってどうだ」 「あ、いいね。字画も綺麗だ・・・。更木 結だね」 「そうなるな」 翌朝、じじいに名前を教えると昼過ぎにでけぇ紙に「命名・結」と書かれた紙と祝いの品らしい包みを渡された。 一護は、女だと知られてもほとんど女物の着物を着なかった。 剣八は乱菊に、 「おい、女の着物ってなぁどんなのが良いんだ?」 と聞くと、 「一護に贈るんですか?協力しますよ!あの子ってば男物か地味なのばっかなんですよ!」 「まぁ、よろしく頼まぁ・・・。後ガキの分もな」 「はいはい」 仕事が終わって乱菊が良く行くという呉服屋へと案内してもらった。 「此処ですよ」 「ふうん・・・」 「あの子って結構何でも似合うと思うんですけどねぇ。あ!これなんかどうです?」 毬と蝶の絵が描かれた薄紫の着物だった。 「これだと、更木隊長の羽織の裏地に近い色だから良いんじゃないですか?」 「そうだな・・・」 それより純粋に似合いそうだと思った。 「ん?」 ふと目に留めたのは髪飾りだった。水晶で出来たそれは一護の髪の色を映して綺麗だろうと思ったのでそれも買った。 「結ちゃんの着物はどうします?まだ赤ちゃんでしょう?」 「産着で良いか?」 「そうですね、涎が良く出る頃になると替えがたくさん必要ですからね」 「へえ・・・」 何着か買って一護の家に帰る。 「帰ったぞ」 「お帰り剣八。って何それ?」 「土産だ・・・」 グイッと渡して、 「飯は?」 「あ、うん出来てるよ。食べよ」 「今日は何かあったか?」 「んー、冬獅朗がやっと結を抱いてくれたよ。何か首が取れそうで怖かったんだって、雛森さんも来てくれたんだ。なんかメガネクッキー置いてったけど・・・。やちるが割って食べるんだって教えてくれた」 「そうか・・・」 食事が済むと、結が泣き出した。 「ああ、お乳かな?」 抱き上げておむつを確かめて、お乳だと分かると片側を肌蹴て乳を含ませた。 「んっ、んっ、ちゅっちゅ!」 「良く飲むな・・・」 「うん、すごいよ・・・」 お腹一杯になったのか、おっぱいから離れると、 「むちゃ、むちゃ・・・」 と眠そうにしていた。 「はい、その前にゲップな」 と、げっぷを促す。けっぷ!と出すと眠ってしまった結。 「で、これ何?」 「お前の着物だ」 「え、そんなに気を使わなくても良かったのに」 「使ってねえ。買いたかっただけだ」 「わあ!綺麗!ありがとう剣八!ってこの髪飾り水晶じゃない!」 「ああ、似合いそうだったんでな。気に入らねえか?」 「そうじゃないけど、こんな高価なもの・・・」 「いいじゃねえか。お前は少し着飾れ、勿体ねえ」 「ん・・・、これは?」 「結の産着だ。要るだろ」 「うん、ありがとう」 数ヶ月後。ちょっとでも目を離した隙に居なくなる娘にてんてこ舞いの一護が吐き気を覚えた。 「うえ・・・、ん?まさかなー」 と思いつつ、月のモノも来ていないしと、検査薬で診てみるとこれまた陽性。 「二人目かぁ。次はどっちかなあ」 と暢気に考えていた。 「帰ったぞ」 「お帰り!剣八!剣八!あのね、ニュースがあるの!」 「なんだ?結が立ったのか?」 「ううん、あのね、二人目出来たの!」 「早ぇな・・・、まぁあんだけ毎日やってりゃあな」 「もう!そんな風に言わないでよ!・・・嬉しくない・・・?」 「なんでだよ?次は男か?女か?どっちでもいいけどな」 と、一護の腹に手を重ねた。 「うん、結みたいに元気に産まれてくれたら、育ってくれたらそれで良い・・・」 「そうだな・・・、俺としちゃぁ強くしてえがな」 「もう!ご飯食べよ」 「ああ」 どんどん膨らむ一護のお腹に訪ねてくる客は、 「なんか、お腹が膨らむ度にあんたって嬉しそうね」 と言っては笑った。 「だって、ちゃんと動くんだもん、最近よく蹴るよ」 とお腹を撫でた一護。 「えー、赤ちゃんってお腹の中で蹴るのー?」 とやちる。 「うん、くるくる動いて運動もするんだって」 「へえー!すっごーい!」 やちるが一護のお腹に耳を当てて、 「あたしね、やちるっていうの。お姉ちゃんだよ」 と語りかけると、 ぽこん! と蹴り返された。 「ほんとだ!お返事してくれたよ!いっちー!」 「良かったな、やちる。お姉ちゃんだって分かったんだよ」 「えへへー。嬉しいな」 一頻り騒いでみんな帰っていった。 「ふふ、もうすぐお前もここに生まれてくるんだな・・・」 「帰ったぞ」 「お帰り!剣八!」 「おう、走るな走るな。危ねえな」 「ごめん、お疲れ様。ごはん・・・!」 お腹を押さえてうずくまる一護。 「おい、どうした一護!」 「あ!多分・・!陣痛・・・!」 「って、おい!結は!」 「へや・・・」 剣八は、結を懐に入れて、一護を抱きかかえ、四番隊に走った。 「まあ!どうされたのです!更木隊長!」 「陣痛らしい、診てやってくれ」 「はい、一護君をこちらに」 「けんぱち・・・」 「ここに居る!」 「立ち会いはどうされますか?」 「結はどうすんだ?」 「こちらでお預かりいたします」 「なら立ち会う」 「あ、りがと・・・!は、う!」 「間隔が短くなってきましたね。すぐ分娩室へ!」 「剣ちゃん!」 「隊長!」 「隊長!一護君は?」 「分娩室だ、俺は立ち会う。お前らは結を頼むぞ・・・!」 「はい!」 「分かった!頑張って剣ちゃん!」 「ううー!!」 「一護・・・」 「は!は!は!けん!ぱち!はあ!」 ぎゅうっと手を握る一護。骨が砕けるかと思うほどの力だった。 「お前の細腕の何処にこんな力があんだ?」 「ふ!ふ!だって、赤ちゃん、産まなきゃ・・・!」 「そうだな・・・。お前は強いな」 一護の髪を撫でてやった。 「剣八ぃ・・・、痛いよぅ・・・」 「大丈夫ですよ、もうすぐです。頑張ってください・・・!」 「はい・・・!」 「一護、一護・・・」 「そん、な、顔、しないで・・・!俺は、しあわせ・・!なん、だから・・・!」 「一護・・・!」 数時間後。 扉の向こうまで聞こえる元気な赤ん坊の声が響き渡った。 「生まれた?」 「生まれたよね?!」 「やったあ!いっちー!剣ちゃん!おめでとう!」 「元気な女の子ですよ、一護君」 「あ、はあ、はあ、はい・・・」 産湯に浸かり、一護に抱かれる赤ん坊。 「今度はお前が名前を付けるんだったな・・・」 「うん・・・」 二人で微笑み合う。 「外でお待ちの皆さんが騒いでいますが・・・」 「病室でお待ち願いなさい・・・」 「あの、やちるは入れてあげてください」 「いっちー!産まれた?産まれたよね!」 「うん・・・!女の子だって」 「妹だあ!」 ぷにぷにと生まれたての妹のほっぺを突きながら嬉しそうに笑ったやちる。 「さ、もうやちるちゃんも病室でお待ち下さい」 「はーい!」 「剣八、ありがとう」 「俺の方こそな・・・」 「更木隊長、一護君の身体を清めますので、どうぞ」 「ああ、後でな一護」 「うん・・・」 子どもと一緒に病室に入ると皆が迎えてくれた。 「おめでとう!一護!」 「元気な女の子だってね」 「母子ともに元気で良かった」 皆、口々に祝ってくれた。その顔は笑顔に満ちていて一護はそれが嬉しかった。 「あ、ありがとう」 「やだもう!泣かないでよ!」 「う!嬉しくて!」 「早く名前付けなさいよ」 「はい」 一護が休めないと皆が追い出されると剣八だけとなった。 「名前は決まってんのか?」 「うん・・・、今日のみんなの顔を見て思いついたよ」 「なんて?」 「リサってどうかな?スペイン語で『笑顔』って意味なんだ」 「リサ、か。良いじゃねえか、字はどうする?」 「瑠璃の璃に紗で璃紗ってどう?」 「結に璃紗か・・・。いい女になりそうだな・・・」 「うん・・・、俺以上にいい女になって剣八みたいな良い人見つけてくれると良いな」 「くく、いつになるか分かんねえけどな・・・」 「きっとすぐさ・・・」 「そうだな・・・」 どちらともなく口付ける二人。 「剣八・・・」 「ん・・・?」 「俺を幸せにしてくれて、ありがとう」 「・・・こっちのセリフだ」 翌日、じじいからまたもやでっかい紙に書かれた娘の名前と祝いの品を貰った。 『命名・璃紗』 「リサちゃんか、いい名前ねー」 「うん、スペイン語で笑顔って意味なんだ。あの時のみんなの笑顔が嬉しくって」 「そう」 「結の時も璃紗の時も、みんな喜んでくれて嬉しいよ」 「幸せそうね、一護」 「うん、すごく幸せだよ、乱菊さん」 リサを抱きながら、やちるが結と遊んでいるのを見ている一護。 「帰ったぞ」 「あら、旦那様のお帰りね。あたしは失礼するわね」 「あ、はい。何のお構いも出来なくて」 「気にすんじゃないの、じゃね!」 「今度、遊びに行きますね」 「みんなが喜ぶわ」 乱菊が帰っていった。 「なんだ、帰ったのか?」 「うん、お帰り剣八」 「おう」 「お帰り!剣ちゃん!あのね、あのね!今日ね!結が立ったんだよ!」 「ほお、つかまり立ちか」 「うん!ねー!いっちー!」 「うん、どんどん歩きまわるね」 「元気な証拠だ。おら来い、結」 「あうー!」 ハイハイで剣八の所まで行く結。 「リサは剣ちゃんに似たね」 「そうか?」 「そうだよ、ちょっと釣り目のトコとかそっくりだよ」 「そうだねぇ」 嬉しそうな一護に剣八も満更でもない様子。 「うぶぅ!」 「んー?どうした?リサ」 じたじたと一護の腕の中で暴れる次女。 「お前もお父さんの所に行きたいのか?」 「んぷー」 「ふふ!ほらお姉ちゃんと一緒に・・・?」 グッと腕を掴まれて、剣八の膝の上に座らされた。 「え?重いでしょ、剣八」 「いいから、お前もここに居ろ、女房とガキ二人くらいどってことねえ」 「んふふー、剣ちゃんといっちーラッブラブだー」 嬉しそうに笑うやちるが、 「あたしも帰るね〜、邪魔しちゃ悪いもん」 「やちる、また来てね」 「うん!また明日ね!」 剣八の膝の上から手を振る一護。 父親の広い胸の中でじゃれ合う姉妹。 「ふふ、可愛いね・・・」 「お前もな・・・」 抱き締められる一護。 「剣八、大好き・・・」 「俺もだ・・・」 お互いの気持ちを確認し合う二人。その後の口付けを見たのは二人の愛娘だけ・・・。 終 09/06/18作 その後の続きでした。お名前頂いたので書いてみました。白雪さん、どうぞ。 |
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