題「子猫、子供になる」温泉ver
 一護君が子供になって一週間経つけど、元に戻る気配がない。
実害は今の所ないから良いけど、最近一護君がお風呂好きだって知れ渡っちゃってから何故か各隊の隊長が一護君をお風呂に誘う様になった。
総隊長の時は、危うくのぼせて倒れる所だったのでそれからは僕が一緒に付いていってる。
総隊長は熱いお風呂が好きだから、我慢して一緒に入ってたって雀部さんが教えてくれた。
目を瞑りながら、耳を寝かせて真っ赤になりながらも30秒は我慢したそうだ。いい子なんだけどなぁ・・・。

この間は、狛村隊長と入って、何やら興奮してたけど、(後で聞いたら、大きな尻尾が気に入ったらしい)
無事だった。こうやって一緒に入れる相手だと良いんだけど、女性や今日の相手の朽木隊長だと入れない。
女性は当たり前だけど、朽木隊長の場合は向こうが嫌がるんだ・・・。
ま、大丈夫だと思うけど、隊長も良いって言ってるしね。今日も隊首会の終わりにお風呂セットを抱えて一番隊に行く一護君。
「何があんなに楽しいんだ?あいつ・・・」
と一角が聞いてきた。
「さあ?色んなお風呂が見れて楽しいんじゃないの」
と答えた。
「そんなもんかねぇ」
と言ってこの会話は終わり。

隊首会が終わり、扉が開いた。
「剣にゃん!」
と剣八に飛びつく一護。
「っと、なんだ?また風呂か?お前はホントに風呂好きだな」
「みゃー」
「で、今日は誰と入るんだ?」
「みー・・・、みゃくあ!」
「あ?朽木か?」
「みぃ!」
「ふうん、ま、のぼせて溺れんなよ」
「みゃあ!」
と鳴いて、剣八の腕から下りると白哉の所へと向かった。
「みゃくあ、みぃー」
「む・・・、分かった。袴を引っ張るでない・・・」
「み。まあ!みゃ!」
と卯ノ花隊長に挨拶をして、白哉と手をつなぎ屋敷の方へと帰っていった。

朽木邸。
「爺、湯の用意は?」
「整っております、若」
「うむ、一護、こちらだ・・・」
「みゃー」
ばいばいと清家に手を振り、一緒に湯殿に行く一護。
ぽいぽいと着物を脱いで、白哉を待つ一護。
「む、早いな」
と言いながらも脱ぎ終えた白哉は一護を抱いて、風呂場へと入った。
「むぁー」
湯気に少しむせながら、尻尾はぴんと立ってご機嫌だった。
後から侍女たちが現れ、一護と白哉の髪や体を洗ってくれた。
シャンプーが顔に付いて気持ち悪いのか、しきりに顔を擦っている。
髪を洗い終えた一護は耳をぴるぴるっと振って、水気を飛ばす。
「ぷうー!」
「終わったか・・・」
「みい!」
「では、湯に入るぞ・・・」
「みゃあ!」
いそいそと白哉の傍まで行く一護。
「そうであった、コレを兄にやろう・・・」
「ふみゅ?」
「現世の子供のおもちゃだそうだ」
「みぃー?」
それはアヒルを模した黄色いおもちゃだった。
「この糸を引っ張って遊ぶのだと恋次が言っていたが・・・」
とアヒルのお尻の紐を引っ張ると足が動いた。お湯に浮かべるとぱちゃぱちゃと泳いでいった。
「みい!みああ!」
満面の笑みを白哉に向ける一護。
「気に入ったか?」
「みいっ!」
遠くへ行ったアヒルを捕まえると同じ様に遊ぶ一護。その内侍女が、
「白哉様、のぼせてしまわれます」
「そうだな、一護、あがるぞ・・・」
「みー・・・」
「また、明日にでも遊べばよい。それはもう兄の物だ・・・」
「み!」
「湯あたりでも起こせば、卯ノ花や更木がうるさいぞ?」
「みゅう・・・」
「さ、もう出ましょう?」
「みゃあー」
大人しく、上がる一護。侍女たちに拭かれて、新しい着物を着せられる一護。
「みぁー?」
「うむ、良く似合っておるぞ、一護」
「みい」
特注で作らせたのだろう、子供の着物。可愛らしい猫の模様だった。
「喉が渇いたであろう?何を飲む?」
「み〜・・・、みっ!」
と指を差したそれは、瓶に入った牛乳だった。
「ふむ、では私も同じものを飲んでみるか・・・」
渡された瓶を器用に開けて、んくんくと飲んでいる一護。
「んぷっ!はあー」
あまりの飲みっぷりに見惚れていた白哉に、
「みあー?」
と声を掛ける一護。
「あ、うむ、飲もう」
ごくごくと飲んでいく白哉。
「ふむ、悪くはないな」
「みい」
耳をぴこぴこ動かして嬉しそうな顔をする一護の頭を撫でてやる。
「みゅうー」
ぱたぱたと尻尾を揺らして喜んだ。その内うとうとしだして、白哉の膝で寝てしまった一護。
「おや、寝てしまいましたか?」
「うむ、無防備な顔だ・・・」
「若、お仕事はどうされますか?」
「致し方がない、このまま抱いて連れて行こう」
むにゅむにゅ、言いながら眠る一護を抱いて十一番隊へと送り届けた白哉。
「すいません、ありがとうございました」
「いや、楽しかった・・・」
「そうですか、それは良かった」
すう、すう、と眠る一護君の顔をひと撫ですると帰っていった。
「どうした」
「あ、隊長、一護君が朽木隊長のトコで寝ちゃったみたいで、送って下さったんですよ」
「あいつがか?」
「ええ、びっくりしましたよ」
いまだ眠る一護を剣八が抱いて隊首室へと戻っていった。

「ふみ?」
「起きたか?」
「剣にゃん・・・、ふみぃ?」
「昼頃に朽木の野郎が送ってくれたんだと」
「ふうん」
んー、と伸びをすると剣八の膝からぴょんと下りた。お風呂セットの中からアヒルを取り出して剣八に見せた。
「なんだそりゃ?おもちゃか?」
「みぃ」
「朽木に貰ったのか?」
「みい!」
にこにこと笑いながら、お尻の紐を引っ張って、遊ぶ。
カカカカカッと動く足が面白いのか、何度も遊んでいる。
「おい、壊れんぞ」
「みー」
その日は一日ご機嫌だった一護。

翌日は、卯ノ花隊長と女性メンバーで露天風呂に誘われた一護君。
「良いんじゃねえか?卯ノ花が居るなら泣かねえだろ」
と隊長が言ったのでお風呂セットを持って、四番隊へ行く一護君。あのアヒルのおもちゃはちゃんと持っていった。
「みい!」
「いらっしゃい、一護君。少し待って下さいね」
「みゃあ!」
お風呂セットを持ってちょこんと座って待つ一護は注目の的だったが、本人は一切関知していなかった。
「お待たせしました。皆さんはもう向こうでお待ちだそうですよ」
「みい」
手を繋ぎ、親子よろしく歩いていく二人。
「あー、卯ノ花隊長、一護、遅いですよー」
「申し訳ありません、では急ぎましょう」
「みあー」
ぞろぞろと露天へと向かう一行。
七緒や雛森は一護と一緒にお風呂に入るのは初めてで、目を離した隙に何があるか分からないと不安がっていたが、当の本人である一護は卯ノ花隊長から離れなかった。髪も身体も洗って貰い、お返しに背中を洗っていた。
「可愛いですね」
「本当、大きな一護君じゃ想像できないね」
「ありがとうございます、さ、風邪をひく前にお湯に浸かりましょうか」
「みい!」
と鳴いて、アヒルのおもちゃを手に湯船まで来ると、尻尾でお湯の温度を確かめてから、ゆっくりお尻から入った。
「かーわーいーいー!」
と全員が黄色い声をあげたので一護が驚いて、卯ノ花隊長の胸に埋まって出て来なくなった。
「ああ、ごめんなさいね、怖くないのよ?」
「みい・・・?」
「さ、そのアヒルちゃんで遊びましょ?誰にもらったの?」
「みゃくあ!」
と元気に答えた。
「えーと、朽木隊長の事かしら?」
「みい!」
「へー、珍しい・・・」
一護は卯ノ花隊長の膝の上で、アヒルのお尻の紐を引っ張ってお湯に浮かべた。
ぱちゃちゃちゃちゃ、と泳ぐアヒルに喜ぶ一護。
きゃっきゃっと笑いながら遊んでいる。
「そうだ、一護、ここまで泳いでごらんなさい。アヒルちゃんはここよ?」
「う〜、みい!」
と泳いで乱菊の所まで行った。
「はーい、お利口さんね、はい、アヒルちゃんよ」
「みゅう」
今度は乱菊の胸に嵌まって動けない一護。
「んみ〜」
むにゅむにゅと押し返すも、溺れそうで怖かった。
「乱菊さん、ずるいですよ!あたし達も一護君と遊びたいのに」
「あら、一護?あのお姉ちゃん達が遊んでくれるって言ってるわ」
「みあ?」
「こっちに来なさいよ」
「はーい!」
清音が近付いて一護を抱くが嫌がってぐずる。
「あれぇ?なんで?」
「抱き慣れてないからよ」
七緒や雛森も同じような反応を返された。砕蜂に至っては落とされかけた記憶も新しいので近付かなかった。
結局、卯ノ花隊長の所に落ち着く一護。
「みぃ〜、みゅう、みゅう、まあ、まあ」
甘えて、ちゅ、ちゅ、と乳房に吸い付く一護。
「一護君、何も出ませんよ?」
「みゅう・・・」
ペロペロ舐めて、顔を埋める一護を撫でる卯ノ花隊長。
「もう出ましょうか?一護君が熱くなってますわ」
「あらやだ、のぼせてませんか?」
「まだ大丈夫のようです」
しっかりとアヒルのおもちゃは握り締めていた一護。もうウトウトしだしていた。
「あらあら、おねむですか?一護君?」
「みぃ・・・」
こしこしと目をこする一護を抱いて脱衣所へ向かう卯ノ花と一護。
「じゃ、あたしらも出ましょうか?」
「賛成」
全員が脱衣所に出ると、一護が甚平を着せられていた。
「わっ!可愛い!良く似合ってるわよ、一護」
「みゃう!」
ふりふりと尻尾を振る一護。
「うー!更木隊長が羨ましい!こんなに可愛い生き物と暮らしてるなんて!」
「ホントよね〜。毎日見てんですものね」
卯ノ花隊長に髪を乾かしてもらっている一護を見ながら、そんな事を言うメンバー達。
「さ、何か飲みますか?一護君」
「みい!」
「何がよろしいですか?」
「み〜、んん〜?」
ミルクは昨日飲んだしなぁ、と目に着いたものは、フルーツ牛乳。
「みっ!」
「これですか?はい、どうぞ」
「みぃ!」
一緒に椅子に座ってフルーツ牛乳を飲む一護。
んっく、んっく、と目を閉じながら一生懸命飲んでいた。その髪を撫でながら見ている卯ノ花隊長と他のメンバー。
「んっぷぅ!みい」
「はい、もう少し涼んでから帰りましょうか」
「みぃ」
うちわで優しく扇いでやるとすぐにうとうとしだして、寝息が聞こえ始めた。
「可愛いですねぇ」
「本当に・・・」
卯ノ花隊長の胸に身体を預けて寝てしまっている一護。時折、耳や尻尾がぴくん!と動いた。
「んん?」
「目が覚めましたか?一護君」
「みゃあー・・・」
と欠伸をして、またポテッと埋もれた。
「まーう、まあ?」
「何ですか?」
「みぃあ・・・」
すりすりと顔を擦り付けた。
「さ、更木隊長がお待ちですよ?帰りましょう?」
「み」

十一番隊隊舎まで全員で送り届けた。
「おう、悪いな、うちのガキが世話んなってよ」
「構いませんよ、大人より素直な良い子ですもの」
と一護を渡した。
「ちっ、一言多いぜ」
「みー、まあ!」
「何ですか?一護君」
顔を近づけるとほっぺに、ちゅう、とキスをしてくれた。
「まぁ、ありがとう一護君」
「あー、ずるいですよ?卯ノ花隊長」
と言う乱菊に今度は、
「あー、う、ら、らんにゃう!うーうー!」
と手をばたつかせて呼んだ。
「なぁに?一護?」
「ちゅ」
とキスして、
「みいみい」
と手を振ってきた。
「バイバイ、また明日ね。一護」
「みゃあ!」
みんなにも手を振って隊舎の中へ入っていった。
「おら、もう寝るぞ。風邪引いちまう」
「みい」
もそもそと剣八の隣りで眠る一護。
安心しきって剣八の腹で丸くなる一護を見ながら、息がしやすいように上まで移動させて寝る剣八だった。







09/05/12作 第87作目です。乳選び放題でも、剣八の所へ戻ってきます。



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