題「家族でお花見」 | |
まだ、一護も白も妊娠中のお話。 「ねぇねぇ、かか様!今度のとと様のお休みの日どっかにお出掛けしよう?」 「うん?お出掛け・・・、そうだなぁ、おにぎり持ってお花見にでも行こうか?」 「お花見?なぁにそれ?」 「お弁当持って、桜の下で食べるんだよ。今、満開だから綺麗だと思うな」 「じゃあ、あたしとと様に言ってくる!」 「うん、頼むな」 「はあい!」 隊首室。 「あん?花見?」 「うん!今度のお休みの日に!」 「ああ、いいけどよ」 「やったぁ!朔にぃ!役割分担決めよ!」 「役割分担?」 「うん。だってかか様のお腹もう大きいでしょ?あんまり重い物持って欲しくないの」 「え〜と、要る物は、ござでしょ?お重に、水筒に、お菓子?とと様、お酒は要りますか?」 「ああ、そうだな一本入れといてくれ」 「分かりました、こんなもんだね。あ、座布団要るかなぁ?」 「座布団?」 「かか様のお腹冷えるといけないでしょ?」 「あ、そっかぁ、じゃあ要るね」 「ん〜と、ござとお重は僕が持つから、水筒とお菓子はいっちゃんがお願いね。かか様とお酒はとと様が持てば良いよね?」 「そうね!ねっ!とと様」 「ああ、それでいいと思うぜ」 「「決まり!」」 ポンッと手を合わせる子供達。 「かか様ぁー!決まったよー」 「明後日だそうです」 「そうかぁ、腕によりをかけておいしいお弁当作るからな」 「「はーい!」」 当日の朝。 早朝から一護は台所に立っていた。子供達のリクエスト通りにおにぎりを作ってやった。 「えっと、鮭に、昆布に、おかかに、明太子に、梅干し!っと、おかずは・・・」 子供達の好きな卵焼き、ウインナー、唐揚げに、小さいハンバーグを5つ作って一つだけ置いておく。 後は、海老の天麩羅に、野菜の煮物に、甘い味付けの高野豆腐に焼き鮭も入れる。おにぎりの中にも入ってるけど、きっと剣八はお酒を飲むだろうから、塩からいの欲しがるよね。骨を取るのが省ける背の部分だ。 「うん!これで良いかな?それと・・・」 別のお弁当箱にも、おにぎりを詰め、取り置いていたハンバーグを詰め、卵焼き、ウインナー、唐揚げ、天麩羅、焼き鮭を詰めた。 「よし!やちるの分も完成!喜んでくれるかな?」 ついで、朝ごはんも作る。鯵の開きと、筍とわかめのお味噌汁。 匂いに釣られてみんなが起きてきた。 「おはよー、かか様、早いねー・・・」 目をこしこしと擦りながら十六夜が、 「おはようございます、かか様・・・」 寝グセを付けた朔も起きてきた。 「おはよう!今日は早起きさんだな?お花見はお昼からだぞ?」 「だって、美味しそうな匂いがしてるんだもん」 「ねー」 「おう、なんだ?今日はやけに早起きだな?おい」 「ふふ、嬉しいんだよ、きっと」 「そんなもんかね、ほれ一護、味噌汁運ぶぞ」 「ありがと剣八」 「じゃあ、あたし達はお茶椀運ぶー!」 「僕はお櫃を運びます!」 「あはは、ありがと、じゃあ俺はお茶でも持っていくよ」 皆が自分の身体を気遣ってくれているのが嬉しくて笑顔がこぼれてくる一護。 「おっはよー!いっちー!」 「おはよー、やちる。遅かったね、今日は」 「そう?いつもと一緒だよ?」 「え?あ、ほんとだ。ご飯の用意出来てるよ、食べよ?」 「うん!」 「いただきます」 「「「いっただっきまーす!」」」 自分の作ったご飯を美味しそうに食べてくれる家族を見ながら一護も食べ始める。 「あ、そうだ。やちる、俺達今日お花見行くんだけど・・・」 「うん、知ってるよ。あたしは行かないよ?」 「うん、前に聞いた。でね、やちるの分のお弁当も作ったんだけど・・・、良かったら食べてくれる?」 「え!ホントに?やったぁ!嬉しいな!嬉しいな!ありがと!いっちー!」 「ううん、そんなに喜んでもらえて俺も嬉しい!」 えへへ、とおでこをぐりぐりと合わせて、二人で甘えた。 後片付けを終えると、桃色の風呂敷に包まれたお弁当箱をやちるに渡す。 「これが、やちるのお弁当だよ。中身は俺達と一緒だからね」 「うわぁ・・・、嬉しいなぁ。手作りのお弁当だ。えへへ、びゃっくんと食べよっと!」 「あんまり暴れちゃ駄目だよ?」 「はーい!」 お昼の時間になって出掛ける一行。 剣八は鶯色の着流しで、髪を後ろに束ねていた。一護は若草色の着物を着ていた。子供達は動きやすいからと、お下がりの死覇装だった。 「じゃあね、やちる、一角、弓親、行ってきまーす!」 「「行ってきまーす!」」 「おう、気をつけてな!」 「行ってらっしゃい!」 朔はござと座布団にお重。十六夜は水筒にお菓子を持って、剣八は一護を姫抱きにして酒と一緒に持った。 「ちょっと!降ろして?自分で歩くよ!」 「そんなでけぇ腹してんだ、危なっかしくて見てらんねぇよ」 「でも、歩くのくらいは、身体の為だって卯ノ花さん言ってた、よ・・・?」 「・・・行きは歩いても良い。帰りは駄目だ」 「分かったよ・・・」 頬を染め、頷く一護。 「早く行こうよ!場所はとと様しか知らないんでしょ?」 「そうなの?」 「ああ、じゃあ行くか。朔、重箱貸せ」 「え、あ、はい」 重かったのだろう、手が赤くなっていた。 「詰め過ぎたかな・・・」 「気にすんな、すぐ無くならぁ」 「うん」 ゆっくりと歩いて、目的の場所に着いた一行。 「わあー!すっごいおっきな桜!」 「綺麗です・・・」 「すごい・・・、きれい・・・」 息を呑む3人。 「ほれ、ござ寄こせ」 「はい!」 二人でござを引くと一番綺麗に桜が見える所に一護の座布団が置かれた。 「ありがとう」 そう言って座ると、十六夜が隣りに座った。 「綺麗ね、かか様・・・」 「うん、俺、こんな綺麗な桜見たことないよ・・・」 二人が見惚れている間に、お弁当も広げられていた。 「おい、食うぞ、呆けてると食いっぱぐれるぞ」 「あ、ひどい!」 ドカっと一護の隣りに腰を下ろす剣八。 「どうだ?良い場所だろ?」 「うん、すごいね。俺山でもこんな立派な桜見たこと無いよ・・・」 「そうかよ、俺はこんな弁当が初めてだがな・・・」 「口に合うと良いんだけど・・・」 「合うさ・・・、お前の作るモンはみんな美味ぇよ」 「早く食べようよ!」 「ああ、ごめんごめん、じゃ、いただきます」 「「いっただっきまーす!」」 子供達はお強請りした、おにぎりから食べた。 「ん!美味しい!かか様のおにぎり美味しい!」 「はい!美味しいです!あ、明太子だ!」 「あたし、鮭ー!」 「ふふふ、梅干しもあるからな?」 「わ、気を付けよーッと!」 「ふふ、剣八、何食べる?」 「ああ、鮭と卵焼きと天麩羅」 「はい、あーんして?」 「くく、ガキが見てんぞ?」 「良いよ、俺達の子じゃん」 「それもそうだ・・・」 あ、と口を開けて卵焼きを食べる剣八。 「美味しい・・・?」 ごくん、と飲み込むと、 「美味い、次天麩羅な」 「ん・・・」 海老の天麩羅を口許へ持っていく。尻尾ごと食べる剣八に、 「とと様、すごーい!」 「とと様、尻尾食べられるんだ!」 と何やら感動している子供達。 「おう、俺は何でも食うぞ」 「あれ?納豆は?」 「あれは喰えねえんじゃなくて糸が切れないだけだ」 「なぁにそれ」 ふふふと一護が笑った。 「ほれ、お前も喰えよ、三人目が中にいんだろうが」 「うん、十六夜、朔、美味しいか?」 「うん!卵焼きもウインナーも美味しい!」 「はい!ハンバーグ、すごく美味しいです!」 「良かった」 一護もおにぎりを食べた。中身は梅干しで、 「んー!酸っぱい!」 「あはは!かか様ったらハズレ引いたー!」 「ハズレって言うな」 「ほら、一護」 剣八が、卵焼きを口許に持ってきた。 「ありがと」 パクリと食べる一護。剣八はそんな風景を肴に花見酒を飲んでいた。 お弁当箱がカラになると、十六夜が持ってきたお菓子の時間だ。 「何、持って来たんだ?」 「えっとね、三色団子とー、桜餅!」 「わあ!美味しそう!」 「ほんとだ、剣八は?」 「俺はいい、お前ら食え」 「うん、あ剣八、ほっぺにお弁当ついてる」 ついっ、とご飯粒を取り食べる一護。 「あんがとよ」 「うん」 その頃、護廷では・・・。 「びゃーっくーん!あーそーぼ!」 「隊長・・・、草鹿副隊長ですけど・・・」 「うむ、何用だ?」 「さあ・・・?」 「何用だ?草鹿」 「あ!びゃっくん、お昼まだ?一緒に食べよー。剣ちゃん達お花見に行っていないんだぁ」 「ほほう、気を使ったか?」 「ちょっとね、ねー?お弁当持ってきたからさ、一緒に食べよ?いっちーが作ってくれたんだよ!」 「ほう!一護がか。成長したものだな・・・」 「隊長?」 「今日だけだぞ。珍しく菓子もあった・・・」 「やったあ!ありがと、びゃっくん!」 隊舎の縁側でのお昼になった。 「これね、いっちーがね、作ったの」 と赤いウインナーで出来た、タコやカニ、ウサギなどを自慢げに見せて、 「びゃっくん、どれか一個あげるよ」 「うん?ほう、器用だな、ではカニを貰おう。草鹿は何か欲しいものはないか?」 と自分のお重の中身を見せる。 「う〜ん、じゃあねー、これとこれ!だから卵焼きもあげるね!」 とおかずの交換で盛り上がっていた。 「美味しいでしょ?」 「うむ、お主らはいつもこういうものを食べておるのだな・・・」 「そうだよ」 「ふふ、少し羨ましいな・・・」 「びゃっくん?」 「何でもない」 「うん。あっ、梅干しぃー」 「恋次、茶を・・・」 「あ、はい!」 「ありがと!れんれん!」 「どうも・・・」 「何故に、おにぎりを強請ったのだ?」 「んーとね、こないだいっちーを探しに山に入ったでしょ?その時ゆみち―に作ってもらったのが初めてなんだって。いっちーのおにぎりは食べた事無いからお願いしたんだって言ってたよ」 「そうか・・・」 その時の騒ぎを思い出した白哉。連れ戻された子供達は疲れきって眠っていたが、爪先や膝に怪我をしていたのを覚えている。 「あ、明太子だ、びゃっくん、食べる?」 先に割って中を調べていたやちるの声に我に帰ると、 「そうだな、いただこう」 と、そのおにぎりを貰った。 「ふむ。美味いな・・・」 「でっしょー!」 にこにこと笑いながら食べ終えたやちる。 「ご馳走さまでした!」 「ほう、最近は食後の挨拶もする様になったのだな」 「だぁって、やらないといっちー怒るんだもん。怒ったいっちー怖い」 「あの子がか?」 「びゃっくん、知らないから。剣ちゃんも怒らせないんだよ」 「あの更木がな・・・」 菓子を勧めながら、食後のお茶を飲む白哉。 (あの子が来てから賑やかになったものだ・・・、誰かとの食事も悪くはないものだな・・・) と、微かな笑みを浮かべて、そう思った白哉。 「かか様ぁ・・・、お腹いっぱいで眠くなってきちゃったー・・・」 「僕、も・・・」 「ふふ、少しお昼寝しようか」 「うん、きもちいい・・・」 「おやすみなさい・・・」 すう、すう、と可愛い寝息を立てて眠る子供達を見つめる一護。 「剣八、はい・・・」 と酒を注いでいく。 「おう・・・」 風が吹く度に、花びらが舞い、その中で笑いながら自分を見ている一護に見惚れた剣八。 「あ、花弁が入ったよ、綺麗ね・・・」 覗きこむ一護を抱きよせ、口付けた。 「ん・・・、どうしたの、剣八?」 「いや、このまま押し倒してやろうかと思ってな」 「馬鹿ぁ・・・」 「冗談だ・・・。一護・・・」 「なぁに?」 髪に付いた花弁を取ってやりながら、間近に迫って耳元で低く掠れた声で、 「綺麗だ・・・」 と囁いた。 「あ・・・、剣八・・・」 一護を膝に乗せると、剣八の肩口に顔を預けて甘えてくる一護が居た。 「少し、寒くなってきたな、そろそろ帰るか。うちによ」 「うん・・・」 子供達を起こすと片付けを始めた。 ござと座布団を朔が、カラになった水筒とお重を十六夜が持ち、カラになった酒瓶と一護を剣八が持った。 「ね、やっぱりこうなの?」 「当たり前だ、もう暗いんだ。自覚しろ」 「はい・・・」 夕闇の透明な空を舞う、桜吹雪が美しいと剣八に教えると、 「夕焼け色の髪をしたお前にゃ負けるだろうよ」 と返されて、耳まで赤く染まってしまった一護。 子供達は、 「「かか様、真っ赤ー!」」 と声を揃えてはしゃいだ。 「う〜、剣八のばか・・・」 「啼くなら蒲団でな・・・」 と止めを刺されて、何も言えなくなった一護でした。 因みに、この日白は、京楽に現世にデートに行こうと連れ出されていました。 お互い、楽しい一日でしたとさ。 終 09/05/12作 第86作目です。 もっと早くに書きたかったんだけど、今日になりました。 |
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