題「子猫、子供になる」お散歩ver
一護が5歳の子供になって一週間が過ぎた。隊長は人間に戻った。それでも変わらず一護君に登られてるけど・・・。
最近の一護君は散歩が楽しいみたいで、お昼寝の後はどこかしらに遊びに行っている。
夕飯前にはちゃんと帰ってくから良いんだけど何やってんだろう?
後、縁側で一人の時に何か言ってるんだけどなんだろう?あれ。
「う、あう、むう〜、にゃん・・・んん?」

「んみゃう!」
「あ、一護君。お散歩かい?」
「み!」
副隊長のお下がりの死覇装に身を包んで草履を履くとどこかへ行ってしまう一護君。
「毎日どこ行ってんだろうねぇ?」
「さあな、また朽木隊長んとこで魚でもみてんじゃねえの?」
と一角と話す。

その頃の一護は十番隊に居た。
ギイ・・・、と隊首室の扉を開けて中に入る。尻尾が挟まれないように気を付ける。
「なんだ、また来たのか?松本なら今居ねえぞ」
「ふみゅうん」
てとてと、と近付いてくる。書類を片付けている冬獅朗は気付かない。
わしっ!と袴を握られて漸く気付いた。
「なんだ?」
一護はよじよじと、よじ登り膝の上に鎮座した。
「おい、降りろ」
「いにゃ」
はぁ・・、と溜め息をついて書類に筆を走らせる。
筆の先から文字が生まれるのが不思議でじっと見入る一護。
そこへ乱菊が戻ってきた。
「あら、可愛い組み合わせですね?隊長」
「うるせえ、勝手によじ登ってきたんだよ」
「あら、そうなんですか。一護、何か面白いものでもあるの?紙をじーっと見ちゃって?」
「ふみ?」
やっと乱菊の存在に気付いた一護の目の前に乱菊の胸があった。
「ふみゃっ!」
驚いて尻尾が膨らんだ。確かに驚くだろうな。と思った冬獅朗。
「ん?」
乱菊が動かないので一護がそぅ、と手を伸ばし乳房に触った。
ふわ。
とした感触。何度も触ってみる。ふわ、ふわ。
「一護?どうしたの?」
「あう」
と両手を伸ばし抱っこを強請る。尻尾は先の方がゆらゆら動いている。
「しょうがないわね、おいでなさい」
と抱きあげる。
「みゅう・・・」
抱かれると、ぱふっと胸に顔を埋める一護。
「可愛いわね、一護」
と髪を撫でる。
きゅう、と抱きついて離れない一護。
その内、その豊満な乳房を吸い出した一護。
「きゃ、どうしたの?一護」
「ん、ん、ちゅ、ちゅ、みゅう、みゅう・・・」
「お腹でも空いたのかしら・・・?」
小さな両手で大きな胸を揉みながら白い肌に吸い付いて離れない。
ちゅっ、ちゅっ、と目を瞑りながら吸っている。
「一護?あぁん!可愛い!あたしにも子供出来たみたいだわ〜」
「阿呆か、早く起こしてお前の仕事しろ」
「隊長ってば!こんなに可愛いんですよ?もう!」
「むちゅ。みぃあ?」
「あらあら、起こしちゃった?ごめんなさいね?怖いおにいちゃんで」
「みー」
「おい・・・」
もぞもぞと動いて下りたがる一護。
「あら、どっか行くの?」
「うみゃ」
「ああん、さみしいわ。またね一護」
「みい」
十番隊を後にした一護。乱菊の胸には赤い跡がくっきり付いていた。
「すごい力・・・」

ポテポテ歩いている一護が次に行ったのは六番隊。くぁ、と欠伸をして隊首室に向かう。
ギイ、と扉を開ける。
「誰だ・・・」
「みぃ」
「黒崎か、何用だ?」
恋次も、
「どうした?遊び時間はまだだぞ」
と声をかけるが、真っすぐ白哉の所に行く一護。
また、よじよじと登っていく。白哉の膝に座ると欠伸をした。
「くぁ・・・」
こしこしと目をこすると、白哉に向かい合って座ると首に巻いてある襟巻を引っ張ると顔を埋めた。
何をするのかと見ていると座りの良い位置で寝始めた。
「おい、一護・・・」
「良い・・・」
自分の膝の上で丸くなって眠る小さい子供を起こさぬように仕事をする白哉。
時折、寝がえりを打つ一護。
「んん、むにゅ、みぃ・・・」
安心しきって眠る一護に自然と綻んでしまう白哉の口元。その内、ちゅくちゅくという音が聞こえ始めた。
「何の音だ・・・?」
「まさか!」
一護は、それ一枚で瀞霊廷に屋敷が十軒は建つと言われている織物に吸い付いて涎まみれにしていた。
「あ〜あ、これもう使いもんになんねえんじゃ・・・」
「子供のしたことであろう?構わん・・・」
「そりゃ、そうですけどね・・・」
内心複雑な恋次。
「み・・・?」
「起きたのか?まだ寝ていても良いぞ」
「ふみゅ〜・・・。んー・・・!」
と伸びをする一護。まだ握っている織物を気に入ったのか放そうとしない。
「気に入ったのか?やっても良いが・・?」
「みい?!」
嬉しそうに首元に抱きつくとすりすりとすり付いた。みぃ、みぃ、と耳元で鳴く子猫が可愛くて仕方がない。
ぴょんっと、飛び降りると織物を持って帰ろうとする一護。
「帰るのか?また来るが良い。次は菓子でも出す」
「みゃあ!」
嬉しそうに返事を返す一護。扉付近で引きずっていた織物を踏んでこけてしまった。
「みゃう!あぅ〜」
顔を押さえて耳を寝かせていた。
「怪我でもしたのか?」
ぶんぶんと顔を横に振る一護。
「みい!」
と元気に鳴いて出て行った。
「更木は毎日あの黒崎と居る訳だな・・・」
「そうっすけど・・・、なにか?」
「いや・・・」

お気に入りになった織物を頭から被って歩いていると、
「い〜ち〜ごっ!何してんのよ?」
「ふみ?」
後ろを振り返ると乱菊と女性死神協会のメンバーが居た。
「また可愛い格好してるわねぇ。ってこれって朽木隊長の首の・・・」
「ですよね・・・」
「?」
端を咥えて、こてんと首を傾げる一護。
「「か、可愛い〜!!」」
「何ですか!めちゃくちゃ可愛いじゃないですかぁ!」
「ほんと!可愛い!」
「でしょでしょ!砕蜂、どう?可愛いでしょ?」
「あ、ああ。夜一様には敵わんがな」
「比べる次元が違うと思うけど・・・。まあ良いわ、抱っこしてあげなさいよ」
「何故私が・・・」
「ほ〜ら、一護?あのお姉ちゃんが抱っこしてくれるんですって」
「みぃ?」
とことこ近付いて、期待に満ちた目で見上げてくる。
「くっ・・・、仕方なくだぞ」
と恐る恐る抱き上げる。
「ううん!」
抱き方が悪かったのかぐずる一護。
「な、なんだ!」
「こうするのよ」
と乱菊が教えると落ちついた。
「みぃあ?」
と鳴いてその胸に埋もれた。
「なっ!何を!」
いきなり手を放したので落ちそうになった一護。
「み!みああ!」
「何やってんのよ!砕蜂!」
「そ奴が私の胸に顔を埋めてきたのだ!」
「まだ子供なんだから仕方がないでしょ?怖かったわね、一護」
「み、みあ・・・」
耳が完全に寝てしまった。尻尾も足の間に挟んで震えている。
変わるがわるみんなが抱っこして慰める。そこへ、卯ノ花隊長がやってきた。
「皆さん、そんな所で集まって何をなさっているんです?」
「あ、卯ノ花隊長。いえ、一護とちょっと・・・」
「一護君と?その後どうです?彼の様子は?」
「はあ、まあこの通りですけど・・・」
勇音に抱っこされている一護。
「そうだ、卯ノ花隊長も抱っこされます?可愛いですよ」
「そうですね、まだ抱いたことがありませんでしたわ」
「ふみゅ?」
と卯ノ花を見上げる一護が両手を伸ばし鳴き始めた。
「みぃ、みぃ!」
「どうしました?一護君?」
抱き上げ胸に納めるとそこに顔を埋めて、くぐもった声で鳴き続けた。
「みぃ、みぃ、みぁ、みぁ・・・」
ぽんぽんと背中を撫でて落ち着かせる卯ノ花隊長。
漸く顔をあげるとじーっと卯ノ花隊長の顔を見て、胸をふにふに揉んで自分の胸を見て首を傾げる。
「ふみぃ?」
「ふふ、一護君は男の子ですからね。おっぱいは無いんですよ?更木隊長にも無いでしょう?」
「ふみゅうん?」
ぱふっと顔を埋めて寝始めた一護。
「あらあら、寝てしまいましたわ。どうしましょう」
「可愛い!」
「でも、すごい懐きようですね。お母さんと子供みたい・・・」
「ほんとね・・・」
とみんなで一護のほっぺたを突っつくので眠れない一護がぐずり出した。
「んん〜!なぁう〜、うぅん!」
とさらに胸に顔を埋めて鳴く。薄く眼を開けて周りを見て、もぞもぞと卯ノ花隊長の首の髪を除け、死覇装の袷に顔を突っ込んで肌に吸い付いた。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅくちゅく、と吸いながら胸を揉んでいた。
「ん、ん、みぃ、みぃ、んちゅ、みぁ、みぁ・・・」
「こんな状態では仕事ができませんわね・・・」
なでなでと一護を撫でながら言う卯ノ花隊長。
「可愛い〜!」
そこに居た全員の顔が綻んだ。
「もう、仕方ないわね。今日は卯ノ花隊長に譲るわ。また明日ね、一護」
と言って乱菊達は去っていった。
「隊長、どうなさるんですか?」
「どうしましょう?離してくださいませんわ」
と笑っている。
一護はまだちゅう、ちゅう、と吸っている。薄っすらと涙が滲んでいた。
「その内、更木隊長が迎えに来ますよ。それまで一緒に居ましょう」
慈しむ様に抱き直し、四番隊隊舎へと帰っていった。

「子供が産まれるとこういう気持ちになるのかしらねぇ・・・」
と一人呟いた卯ノ花隊長。腕の中の一護はもう吸い付いていなかったが、すやすやと眠っていた。
お気に入りの織物を握り締め、時折卯ノ花隊長にすり寄っては笑顔になった。
「可愛らしいこと・・・」
「むちゅ・・・」
ぴくく、と耳が動いて目を覚ました。
「みゃあ」
「おはようございます、一護君。よく眠れましたか?」
「みぃ・・・」
すりすりとすり寄ってきた。

コンコンとドアがノックされた。
「何ですか?」
「はい、更木隊長がお見えです・・・」
「そうですか、今行きます」
「み?」
「一護君、お迎えが来ましたよ。帰りましょうね?」
「みぃ?」
きょとんとした顔の一護を抱き上げて剣八の所へと連れて行く。

門の所に剣八が立っていた。
「おう、うちのガキが邪魔したな・・・」
「いいえ、貴重な体験でしたわ。またいらっしゃい一護君」
剣八に渡すと、
「みぃ?みい!みあ!みあ!みああ!」
卯ノ花隊長の袖を離そうとしない一護。
「どうしました?」
「こいつの母親に似てんだとよ。思い出したんだろ・・・」
「そう、ですか」
「みいぃ・・・」
「また、明日遊びましょう?」
「みい・・・」
「いい子ですね、一護君は・・・」
グズグズと鼻を出しながら泣いていた。
「しょうがねえな、ホレ。来い」
ぐいっと着物の前を開けるともそもそと入っていった一護。
きゅっと丸くなった。
「邪魔したな」
「いいえ」

「お帰りなさい、隊長。一護君何処に居ました?」
「卯ノ花んとこに居た」
懐の一護に気付いた弓親が、
「そうですか」
と言ったきり何も言わなくなったので、寝室の前の縁側に寝転んだ。
「みぃ・・・」
「起きたかよ・・・」
「みぁ」
ごろんと仰向けに寝転ぶと、よじよじと登って来て心臓の上辺りで丸くなった。
「さっきから何持ってんだお前?」
「ふみ?みぃ」
と見せると、
「んだこりゃ?朽木の襟巻じゃねえか。しかも涎でドロドロだな、明日弓親にでも洗ってもらえ」
「み。あ、う〜、にゃ、う」
「なんだ?こないだから変な鳴き方だな?」
「にゃ、けん、にゃん・・・!」
「・・・もう一回言ってみろ・・・」
「けんにゃん」
「お前、それの練習してたのか?」
「みゃあ」
「可愛いもんだな」

翌日、隊首会が終わる時間に迎えに行った一護が開口一番、
「剣にゃん!」
と言うと皆が驚いて見てきた。
「一護や、喋れるようになったのか?」
「んみ?」
「昨日からだ。前から練習してたみてえだがな」
「ほう、偉いのぅ、こちらへおいで」
とててて、と走っていく一護。なに?なに?と見上げてくる。
「可愛いのぅ、何ぞ飴でもなかったかの?」
「あ、ハイ!」
すぐに出された飴に満面の笑みで返す一護。
「にゃ、う、う」
「ん?なんじゃ?」
「みゃあう、じーにゃ」
「ありがとう、だそうです」
「おお、おお」
初孫を可愛がるじじいか?
「おい、一護帰んぞ」
「みい」
卯ノ花隊長と白哉に手を振り剣八の所へ行く。また襟巻を踏んでこけた。ビタンッ!と景気の良い音をさせていた。
これは泣くかな?と皆が心配していると、
「おら、さっさと起きやがれ」
と声を掛ける剣八。むくっと起き上がるとこしこしと顔をこするとたたた、と剣八の所へ走って行った。
じーっと見上げてくる一護に、
「何だよ?」
「みい?」
と手を差し出した。
「ガキ・・・」
「みーにゃ」
手を繋いで帰る一護と剣八。
「親子みたいだねぇ・・・」
「もう少しあのままでも良いんじゃないかと思ってしまうよ」
「確かにね」

そんな会話で盛り上がっていた隊長達。

今日も散歩の始まり。






09/04/27作 第85作目です。15,000打記念のフリーですので、お気に召した方、どうぞお持ち帰り下さい。



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