題「子猫、子供になる」猫耳ver
一護君が子供になった。大体5歳ぐらいだそうだ。とても可愛いが隊長が猫のままなのですごく心配だ。

そんな事を考えてたら、翌日卯ノ花隊長が隊舎に訪れた。
「おはようございます、更木隊長はいらっしゃいますか?」
「はい、少々お待ちを」
僕は隊長を呼びに寝室に行った。そこでは一護君と丸まって眠る隊長が居た。
「あの隊長、卯ノ花隊長がお見えです。起きて下さい」
「・・・」
「隊長!」
「んみゅう?」
先に一護君が起きてしまった。ユサユサと隊長を起こし始めた。
「みい、みい!」
「・・・ぐるるる・・・」
「そんな不機嫌な声出されても困ります。卯ノ花隊長がお待ちですよ」
のそのそと起き出して漸く卯ノ花隊長の前に顔を出した。

「おはようございます、更木隊長。今朝はお薬をお持ちしましたの」
「薬、ですか?」
僕が聞くと、
「ええ、一護君がああなってしまっては、更木隊長が猫のままだと危なっかしいでしょう?」
「それは、まあ・・・」
「まだ未完成ではありますが、人型に戻せる薬をお持ちしたので飲んで頂きたいのです」
「ありがとうございます、あ、一護君」
「ぐる?」
「みぃ・・・」
一人が心細かったのか、弱々しく鳴いて隊長の尻尾を握っている。
「隊長?飲んだ方がいいと思いますよ」
と言うと、フンッと鼻を鳴らして卯ノ花隊長を見ると、差し出された丸薬を飲み込んだ。
「ぐっ!ぐうう!ぐるるる・・・」
「みい?みああ、みああ!」
「大丈夫ですよ、ほら・・・」
卯ノ花隊長が優しく言うとそこには人型になった隊長がいた。全裸だったけど・・・。耳と尻尾は健在だ、もしかして・・・。
「ぐるる・・・」
やっぱり!猫のままだ!
「卯ノ花隊長?あの・・・」
「ですから、未完だと言ったでしょう?少なくとも猫のままよりは安全です」
それでは。と言って帰っていった。何か楽しんでない?みんなして・・・。

「みゅう?みあぁ・・・」
「ぐるる」
立ち上がって歩く隊長に慌てて着物を着せる。すごく嫌そうな顔。一護君が心配そうな顔をして見上げている。
「ああ、もう大丈夫だよ?」
漸くホッとした顔で笑った。隊長が尻尾で一護君の頭を撫でていた。
「朝ご飯にしますか?」
「みいっ!」
嬉しそうに返事してくれる。隊長の手を引っ張って居間の方へ行く一護君。
ご飯は隊長が食べさせてあげる。隊長は一人でも食べられるので助かる。
食事の後は恒例の昼寝タイム。二人して縁側で眠る。
「何だ?隊長寝てんのか?」
一角が聞いてきた。
「そっ、一護君と一緒だから邪魔すると痛い目見るよ」
「分かってんよ。なぁ、一護っていつ元に戻んだ?」
「さあ?効き目が切れるのが先か、解毒剤が先かって話じゃないかな」
「ふーん、でもよ、隊長も一護も満更でもないって感じだよな」
「そうだねぇ・・・」
僕達は縁側の二人を見た。隊長のお腹辺りで丸くなって寝ている一護君。一護君が落ちないように尻尾で背中を押さえてる隊長。

「んん、ふわあぁあ・・・」
んー、と伸びをして一護君が起きた。隊長はまだ寝てる。
「ふん?」
よじよじと隊長の身体をよじ登って、ころんと背中側に落ちた。泣くかな?と思ってみてるとぴょこっと顔を出してまた挑戦してる。可愛いったらない。肩によじ登ったトコで隊長が起きてお終い。手で掴まれて胡坐の中に納められる。
「んみゅ〜、みぃ、みあぁ」
頭をガシガシ掻きながら、尻尾で遊んであげる隊長。嬉しそうに尻尾に飛びつく一護君。
ゆうらゆうらと、尻尾を動かして挑発する。一護君が尻尾を振りながら飛びかかる。でも寸でのところで引っ込められたりして、中々捕まえられない。時折、わざと捕まって好きな様にさせてる。そんな時の一護君の顔はすごく嬉しそうで見てるこっちの顔まで綻んでしまう。
夢中で隊長の尻尾にじゃれて、仰向けでじゃれたり、ちょっと放してまた捕まえたりいていた。隊長もそんな様子を見ていたのに油断したのか、興奮した一護君が思い切り尻尾を噛んだ。
「ぐっ!!ううう・・・」
かなり痛かったらしい。物凄い顔で痛みに耐えてる隊長がいた・・・。

ぶわわ、と尻尾が膨らんで、やっと尻尾を放した一護君。隊長が噛まれた所を舐めて落ち着こうとしていた。
「んみゅ?」
舐めるのに集中している隊長が遊んでくれないので周りを見ると、黒い蝶が飛んできた。
ひらひら・・・、と誘うように飛ぶその姿に捕まえようと手を伸ばすが、ひらり、と逃げられてしまう。
口を開けて、夢中で手を伸ばす一護君。

やっと落ち着いた隊長が横を見ると一護君が居ない。見回すと地獄蝶を捕まえようとしている一護君が居た。
上ばかり見て、危ないなぁと思っていたら縁側から落ちそうになった。
「一護君!」
僕が叫ぶより先に隊長が尻尾で捕まえて引き寄せていた。
「みぃ?」
「うるる」
尻尾から出されると今度は隊長に登っていった。よじよじと、本物の子猫みたいに肩の辺りでちょっと休憩。
「み」
隊長の長い髪が顔に当たってくすぐったかったのか、頭を掴むと肩車の状態で落ち着いた。
「ふみゅう〜・・・」
「・・・」
まるで一仕事終えたような顔で高さが変わった景色を堪能していた。
「うるる・・・」
「みっ!」
降りろって言われたのかな?ギュッとしがみ付いて離れない一護君。
ふうっと息を吐くとそのままごろりと横になった隊長。
「みっ!みゃぁ・・・」
目を閉じてまた寝てしまった隊長。ぺちぺち顔を叩いても起きてくれないので、僕の所に来た。
「み〜・・・」
「お散歩でも行ってくるかい?巾着にお菓子入れてあげるから」
「みィッ!」
僕は巾着にどら焼きを三つほど入れてあげた。
「暗くなる前に帰ってくるんだよ」
「みゃあ!」

一人ぽてぽて歩く一護。
そう言えば前におじいちゃんがお茶でも飲もうって言ってたなあと思いだし、一番隊に向かう一護。

「んみゃーう」
「うん?黒崎かの?」
「そのようです」
「入れてやれ」
「は・・・」

「みぃ!」
「おお、おお、元気そうじゃな」
「みゃあ」
「して何用じゃ?何かあったのかの?」
しわしわの手で頭を撫でてくれた。
「ん〜ん、みゃあ」
一護は巾着の中のどら焼きを見せて分かってもらおうとする。
「・・・ふむ、もしかして儂と茶でも飲みに来たのかの?」
「みい!」
こっくり頷くとにこにこ笑った。
「そうかそうか、今用意するからの、待っておれ」
「?みい」
「総隊長、もしかして抹茶を点てるんですか?」
「無論」
「それはちょっと・・・」
「なんじゃ?」
「いえ、先の黒崎殿と違って今は五歳の子供ですから無理ではないかと・・・」
「ぺいっ!客を持て成すのに子も大人もないわ、飲めなんだら、それでも良い」
言い合う大人二人を見上げる一護。
「みー・・・」
「おお、待たせたの一護。儂が茶を点ててやろう」
「んみ」
泣かなきゃいいけど・・・。心の中で副官は祈る。

茶室の中で一護は、重國の手元をじーっと興味深げに見ていた。
「面白いか?一護」
「みい」
「そうかそうか」
相好を崩して笑う総隊長。
「一護は子供じゃからの、作法などは気にするでないぞ?苦くて飲めなんだら残しても良いからの」
「ふーん?」
「さ、入ったぞ」
「み!」
一護は自分の巾着からどら焼きを二つ取り出して、重國と自分の前に置いた。
「おお、ありがたく頂くとするかの」
重國がお茶を口にすると一護もマネて口にした。
「ふみゃ!」
慌ててどら焼きを食べる一護に、
「苦かったかの?その苦味を消すためにお菓子が用意されるんじゃよ」
「ふうん・・・」
ぺー、と舌を出している一護に簡単な説明をした。
試しに一護は、先にどら焼きを齧ってからお茶を飲んでみた。
「ふみ」
先程よりは苦くなかったので、笑った。
「ほほ、可愛らしいの」
茶を飲み終わった一護がニジニジと寄って来た。何をするつもりかと見ていると足の上によじ登って、長い髭で遊び始めた。
「こりゃ、一護。ひっぱるでない、痛いではないか」
「んみー、ん?」
ちょこん、と座ると口許を見つめている。
「ん?なんじゃ?」
おもむろに自分の袖口で重國の口元の髭を拭った。
「ん、おお、抹茶が付いておったか?拭いてくれたんじゃな、ありがとう」
「みぃ」
なでなで、撫でて貰うと嬉しそうに笑う一護。
「まるで孫のようじゃの・・・」

「入るよー?山じい」
「お邪魔します、先生」
ん?と一護が振り向くと京楽と浮竹が居た。
「なにやってんのさ?山じい」
「一護がの、儂と茶を飲みたいと訪ねて来てくれての」
「ホントなの〜?」
「当たり前じゃ!大体お前よりきちんとしておったわ!のう?一護や」
「みい!」
膝の上で胸を張る一護。
「へえ、そうかい。偉いねえ、一護君」
浮竹が飴玉を与える。
「ふみい?」
首を傾げる一護。
「良い子にはご褒美をあげなきゃね」
と頭を撫でられた。
「ふうん・・・」
一つ口に入れる一護。にっこり笑って後ろを振り返ると重國に飴を差し出している。
「みぃ」
「儂にくれるのか」
口に放り込まれる飴。今度は前に居る浮竹に、
「みぃ」
「え、俺にもかい」
「みー」
今度は京楽に、
「ありがと、一護君」
「みっ!」
「これから大人のお話があるんだ。悪いんだけど・・・ね?」
「みい」
「ゴメンねぇ」
「んーん」
にじり口の所で、ぺこり!とお辞儀して帰ってゆく一護。
「悪いね、山じい」
「ふん、致し方あるまい。例の件であろう」
「うん、まあね。でもこんなに美味しい飴食べたの久し振りだね。ねえ?浮竹」
「そうだな」
「うむ」

隊舎に戻った一護は、やちるに飴玉を見せた。
「あー!良いなー!いっちー」
「みゃあ」
そこに居た、弓親、一角と一緒に四等分した一護君。
「わあ!ありがと、いっちー!」
「ありがとう、一護君」
「あんがとよ」
にっこりと満面の笑みで返す一護は剣八の所へ行った。

「み〜ぃ」
「ん」
飴玉を差し出されても食べようとしない剣八。
「む〜?みぃ」
「ぐるる」
美味しいのに。と思いながら一つ口に入れると名案が浮かんだ一護。
寝転んでいる剣八の口までにじり寄ると、ちゅ、と口移しで飴を食べさせた。
驚いて目を見張る剣八。

「みい?」

にこにこと笑う一護に勝てない剣八。







09/04/16作 第82作目です。





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