題「馴れ初め」5
 翌朝、白が目を覚ますと京楽が笑いながら自分を見ていた。
「何笑ってんだよ・・・」
「ん〜?可愛い寝顔だなぁって思ってね」
「可愛い?一護じゃあるまいし・・・」
「一護君と君は違うよ?」
そう言いながら白の髪を梳く京楽。
「ふん・・・」
白が後ろを向こうとした時、足に何か当たった。
「っ」
「ん?あんたか、わりぃ、痛かったか?」
手を伸ばすと、そこには硬いモノがあった。
「なんだ?これ」
もそもそと蒲団の中に潜って確かめる白。
「あ、やめなさい白君!」
「立ってる・・・、なんでだ?」
「なんでって・・・、男は毎朝こうなるよ?」
「俺はなった事無いぞ、なんでだ?」
「ん〜、難しいこと聞くねぇ。男だから、大人だからとしか言いようがないねぇ」
「む、まるで俺がガキみてぇじゃねえか」
「言われても、白君、発情期は迎えたの?」
「ああ?こないだの満月ん時だろ、ガキ出来てんだから」
「じゃあ、大人じゃないか」
「ちっ!もったいねえからコレ貰うぞ」
言うや、パクリと口に咥えた白。
「あ!また!くっ!」
「んっ!ふう、はっ、我慢すんなよ?出してくれた方が俺は助かるんだぜ?ガキもな」
「そう、だったね、っ!」
「くっ!んんっ!」
こくこく、と飲み下していく白に興奮を覚える京楽。
「・・・足んねぇな、なあ、もっと出せよ」
きゅっと掴むと、ぺろぺろ舐め出した。
「ああ、駄目だよ、白君。最後までしちゃいそうだ」
「俺は構わないぜ・・・?だんなさま?」
その言葉に白を押し倒す京楽。くくっと笑うと京楽の腰に足を絡める白。
「さあ、来いよ?絞りつくしてやるよ・・・」
耳元で囁き、その通り京楽がふらふらになるまで貪った白。

「じゃ、行ってくるね・・・」
「おー、昼になー」
柱にぶつかりながら出ていった。

 隊首会にて。
顔色の冴えない京楽に、珍しく出席していた浮竹が心配そうに、
「どうした京楽?身体の調子でも悪いのか?」
と聞かれた。苦笑しながらも、
「そうじゃないんだけどねぇ・・・」
と、卯ノ花隊長に目をやった。

 会が終わると卯ノ花が寄ってきて、
「京楽隊長、少し四番隊まで来て下さいますか?」
「うん、分かった」
連れて行かれると、四番隊特製滋養強壮スープが出された。
「これで、幾分楽になりますわ」
「ありがとう、卯ノ花隊長」
スープを飲みながら、
「ねえ、あの子大丈夫なのかな?」
「そうですね、食欲はどうですか?」
「ん、あるよ。ちゃんと三食食べてるし、吐く事もないよ」
「そうですか、夜の方は?どうです?痛がったり、血が出たりだとかは?」
「ぶっ!ゲホッ!う、卯ノ花隊長?」
「どうですか?」
真剣な眼差しだった。
「ないよ、むしろ貪欲なくらいだ」
「なら、良い傾向ですね」
「そう!良かった!」
「後は、貴方の体力の問題ですね、昼夜問わず求めるようになってはキツイのでは?」
「正直ね、嬉しいけどさ」
「そうですね、何か考えておきましょう。今日はこのスープと丸薬で乗り切って下さいな」
「ありがと」
礼を言って四番隊を後にした。

 八番隊隊舎。
仕事を定時で終わらせる為にサボらず仕事をする京楽が居た。昼食の時間が近付いたので、
「もうお昼だから、休憩にしよう」
と言い自分は頼んでおいた弁当と土産の菓子を持って屋敷に戻った。

「ただいま、白君。起きてるかい?」
「ああ、今日は早かったな」
「愛しい君が待ってるんだもの。ハイお弁当とお菓子!」
「おかし?」
「あれ、食べたことない?もしかして」
「なんだ、食いもんか?」
興味津々で見つめてくる。
「とっても甘いものだよ、ご飯の後でね」
「ふうん、今日のメシなんだよ」
「もうそろそろ、お花見の季節だからね、それにちなんだお弁当みたい」
蓋を開けると目にも鮮やかな内容だった。
卵焼きや高野豆腐、野菜の煮物、焼き魚に天麩羅に刺身など所狭しと詰まっていた。吸い物も付いていた。
「わあ・・・!」
思わず声をあげた白。
「気に入って貰えたかい?」
「う、まあまあな・・・」
そっぽ向いて答える白が可愛くて、
「ありがと、さあ食べよう」
と一緒に食べた。

「なあ、この白いのなんだ?」
「イカの刺身、赤いのはマグロ」
「ふうん?これは?」
「海老の天麩羅だよ。そう言う魚は初めて?」
「川魚ぐらいしか喰ったことねぇ、後、秋ぐらいに鮭とか」
「へえ、じゃあこれからはたくさんの知らない魚が食べれるよ」
「美味いのかよ」
「それは君次第じゃないかな?美味しく感じるかどうかは」
「ふうん」
もう食べ終わった白が、お茶を欲しがった。
「早いね、足りないかい?」
「・・・ん〜、わかんね・・・」
彼がこういう言い方の時は気を使っているらしいのに最近気付いた京楽が、
「夕飯は多い目に買ってくるね。さ、お菓子お食べ」
「ん・・・、何だこれ?」
「桜餅とよもぎ大福だよ」
「・・・まんじゅう?」
「違うよ、ほら。桜の葉で包んであるだろう?食べてごらん?」
はむっと一口食べてみる。
「あ、美味い」
桜の葉の塩気と香り、よもぎの香りに鼻腔をくすぐられながらも舌鼓を打った。
「良かった、はいお茶」
「あ、ありがと・・・」
初めて食べる甘さにうっとりする白。
「一護にも・・・」
「ん?なんだい?」
「一護にも、その、食わせたい・・・」
その言葉に京楽が満面の笑みで、
「そうだね、お腹が目立ってない今のうちに届けてあげるかい?」
「えっ?良いのか?でも・・・・。いいや、あんたから届けてやってくれるか?あんたからって」
「良いのかい?自分で行った方が・・・」
「だって、また、倒れたらヤダから・・・」
「そっか、もうすぐ安定期だからね」
そう言って白のお腹を撫でた。
「じゃあ、仕事に戻るからね、夜にね」
「ああ」
と見送る白。

「美味かったな、あれ・・・」
先程の菓子に心奪われつつある白。
「一護は食ったことあんのかな?まあ、あんだろうな俺より長く居るんだし・・・」

じゃあ、馬鹿な事言ったかな・・・?俺らしくねえな・・・。

「会いてぇけど、きっと匂いでバレるな。やっぱ産まれるまでは無理だな・・・」
そう結論付けて眠った白。

「最近おかしいですね、隊長・・・」
「ん〜、何が?七緒ちゃん」
書類に目を通しながら相槌を打つ。
「そうやって、サボらずに仕事をなさる所が、です」
顔をあげると、困った顔で笑いながら、
「ひどいなぁ、僕ってそんなにサボり魔?」
「以前でしたら」
「事情があるのさ・・・」
「それは副官である私にも言えないことですか?」
「私情だからね、ごめんよ」
目で、何も聞かないでくれ。と訴えた。
「分かりました。私も隊長の私生活に首は突っ込みませんが、くれぐれも体調管理はなさってくださいね」
「分かったよ、ありがとね七緒ちゃん」
彼女なりに心配してくれているのだ。心から礼を言った。

 帰宅する。
夕飯はお重に詰められたお弁当だった。卯ノ花が栄養面も考えた方が良いと作ってくれた。
「ただーいま!」
「遅い」
「ごめんごめん、お腹空いたろ?ご飯にしよ?」
「ん」
白は二人分をぺろりと食べ、京楽は一人分と丸薬を飲んだ。

「風呂は?」
「ん、入ろうか」
風呂に入れている間、京楽は風呂場で襲わないように気を付けている。それほど、湯上りの白は色っぽいのだ。
なのに、一人では嫌だ、お前が入れろ、と甘えてくるので密かに安定期に入ったら逆襲しようと画策しているのだった。

「はい、お蒲団に入っておいで」
「ん〜」
ぺろり、と白が舌舐めずりしたのが見えた。
(まいったねぇ・・・、やる気満々だよ・・・)
苦笑しながら、自分の身体を拭いた。


第6話へ続く



09/04/14作 今回はほのぼのです。次は、どうでしょう?(笑)

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