題「子供が見る世界」
 一護の子供達は、最近外で遊ぶのに夢中でお昼御飯を食べた後は遊びに行って夕暮れまで帰って来ない。
服は泥んこにして帰ってくるのでやちるのお下がりの死覇装だ。流魂街には出れないので一護は安心して遊ばせているが、困った事もある。
まだ物事の善悪が分からない子供達は知らずに迷惑を掛けてしまうのだ。皆、子供だからと気を害する者はいないが一護は申し訳ない。それでも行き過ぎの時は総隊長直々の雷が待っているが・・・。

あたし、十六夜っていうの。狐のかか様と一番強い死神のとと様の間に生まれた双子の兄妹。
狐の耳と尻尾がある以外はヒトと変わんないと思うんだけど、いっつもいじられるの。やンなっちゃう。
朔兄も嫌がっていつも泣いちゃうのに、皆笑って触ってくる。かか様に言ったら、
「みんなお前たちが可愛いんだよ」
って言うの。嫌なものは嫌なのに、なんで伝わんないのかしら?最近は見つかんない内に二人で遊びに行ってるけど朔兄は、怖がってる。何かしようとすると、
「やめようよ〜、いっちゃん」
って止めるの。
「大丈夫よ!少しぐらい危ない方が楽しいじゃない」
って言って今日も探検するの。今日はどこに行こうかな?

 なんだか大きなお屋敷の前に来た二人。十六夜の尻尾が好奇心で膨らんでいる。
「いっちゃん?もしかして・・・」
「なぁに?朔兄も同じこと考えてたの?」
きらきらと目を輝かせてこちらを見てくる。ちぎれんばかりに尻尾を振って、どうやって中に忍び込もうかと周りを見ていると、
「あっ!朔兄、こっち来て!」
「どうしたの?いっちゃん」
「ほらここ!穴があるわ!ここからは入れるんじゃないかしら?」
「どうかなぁ?頭が通ったらいけるかも・・・、ってわぁ!いっちゃん!」
その言葉を聞いて早速穴を潜ろうとする十六夜。
「ん〜!ちょっと狭いけど・・・出た!次は朔兄の番だよ、早く早く!」
「ちょっ、いっちゃん!痛いよ」
尻尾をぷんぷん振って漸く潜れた朔。
「ねっ!大丈夫だったでしょ?」
「もう、僕、尻尾取れちゃうんじゃないかと思ったよ」
さすさすとさすっている。
「ゴメンゴメン、わぁ、綺麗なお庭!」
「ほんとだね、あ、誰かいるよ」
「え、どこ?ほんとだ」
藪に隠れる二人。
「どうしよう見つかったら怒られるよ?」
「あの人、どっかで見たことなぁい?あの頭に付けてんのって」
「えっと、けんせーかん、っていう貴族の証だってかか様言ってたよ?」
「へえ〜、だからこんなにお庭綺麗なのね。もっと近くで見ようっと」
ガサガサと近付く二人。
「ねえ、いっちゃん、あの人が着てるのってとと様と同じ羽織じゃないかなぁ」
「ほんとだ、六って書いてあるから、六番隊の隊長さんね、きっと」
ひそひそと喋っているが白哉にはちゃんと聞こえていた。
「でも、とと様が一番強いでしょ?隊長さんも色々なのね」
「そうだね、でも弓親がとと様鬼道?使えないって言ってたから、それが得意なのかもだよ」
「鬼道ねぇ、朔兄はそっちが良いんじゃない?まだ怖いんでしょ?剣」
「う、うん。だって誰かが痛いって嫌だもん」
「しょうがないわね、あ、お池がある何が居るのかしら?」
「大きなお魚いるかな?」
「みたいなぁ」
それを聞いた白哉は、微かに笑うと屋敷に戻って清家を呼んだ。
「何か御用で?」
「更木の子らが忍びこんで遊んでおる、菓子の用意をしておけ」
「畏まりました」

 二人の姿が消えると暫く待って、
「行った?」
「うん、もう大丈夫だと思う・・・」
こそこそと藪から出てくると、池の中を覗き込んだ。
「わあ!大きなおさかな!」
「綺麗だねぇ、コレってなんて言うお魚かなぁ?」
二人して尻尾をふっさふっさと左右に振って喜んで見ている。後ろの白哉にまるで気付かないようだ。
「それは鯉という魚だ・・・」
「わあ!」
「きゃあ!」
と二人同時に声を上げた。あまりの驚き様に白哉も内心驚いた。
「そち達はどこからここに参った?人の家に勝手に入るのは感心出来る事ではないぞ」
「う、ごめんなさい・・・」
「壁に穴が開いてたのよ。ききかんり出来てないほうも悪いわ」
「ほう、意味が分かって言っておるのか?」
「駄目だよ、いっちゃん!謝んなきゃ」
「だって!あんな古い穴今まで放ってるのに!」
「何故、古いと分かる」
「割れてる所がくすんでるし、苔も生えてたわ、後、誰かがいじった後だってあったもの」
「ほほう・・・、良く見ているな。確かにあれは古い、昔の穴だ。なかなかの観察眼だ、母譲りだな」
「かか様に似てるなんて初めて言われたわ」
「何故だ、良く似ておるではないか」
「みんなはとと様に似てるって言うわ、それはそれで嬉しいけど・・・」
「そうか、ときにもう八つ時だが腹は減ってはおらんか、菓子があるぞ」
「でも・・・、怒ってるんでしょ?」
「反省はしておるだろう?」
「う、うん」
「ならばもうせぬだろう、ならば良い」
「いっちゃん?」
「遠慮はするな、お前たちの義姉に当たる草鹿も良く訪れるが何度言っても玄関から来ぬは家の中を走り回るわで騒がしい」
「ふふっ!やち姉らしい」
きゅるるる〜。
「あっ」
「さあ、茶も淹れてある、子供が遠慮する事はない」
「うん!」「はい!」
縁側で、白哉を挟んで一緒におやつを食べる二人。
「ねえ、隊長さん、お名前なんて言うの?」
「朽木白哉だ、そち達は、朔に十六夜であろう」
「知ってるの?!」
「うむ、お前たちが生まれてすぐの時に一護に抱かせてもらったのだ。大きくなったな」
なでなでと優しく二人の頭を撫でる白哉。
「ふうん、ねえ白哉、聞きたい事あるんだけどいいかしら?」
「うん?なんだ」(呼び捨て?)
「みんな、なんであたしたちの耳や尻尾をいじってくるの?嫌だって言ってるのよ?朔兄だって泣いちゃうのに・・・。そんなにおかしいの?コレはおかしいモノなの?それとも皆で馬鹿にしてるの?」
真剣な、涙の滲んだ眼で見つめられ白哉は言葉を慎重に選んでいた。
「ふむ、おかしくはない。お前達は何もおかしくはないのだ。皆は可愛がっているだけなのだ。ただそれがお前たちには耐えがたい事に感じるのだろう、お前たちは愛されているのを忘れるな?両親にも周りにも愛されておる」
「でも、嫌だって言ったら余計に触ってくる人もいるわ・・・、ホントは噛みつきたいぐらい嫌なのよ?でもそうしたらかか様が悪く言われるんですもの・・・。だから最近は見つかる前に二人でこうやって遊んでるの。さっきはごめんなさい・・・」
ぽつ、と溢れた涙が十六夜の頬を伝い、手の甲に落ちた。
「そうか、子供にも悩みがあるのだな、そんな風に泣きながら食べるとしょっぱくなるぞ?」
「う、うん、ありがとう白哉、優しいのね。コレなんて言うお菓子?」
「もみじ饅頭だ、母に持って帰るか?」
「良いの?かか様喜ぶかな?ねえ、朔兄?」
「うん、喜ぶんじゃないかな。朽木隊長は甘い物はお好きなんですか?」
「いいや、苦手だ。なのに贈ってくるのでな、正直困っておる」
「あたしたちと似てるね」
こくこくとお茶を飲んで十六夜が言った。

 お腹がいっぱいになった二人は眠くなったのか船を漕いでいる。時折、耳をぴくくっと振るわせていた。
そのうち、両側から白哉に寄りかかって眠ってしまった。
「やれやれ、可愛いものだな、子供というのも良いものだな・・・」
「白哉様、お風邪を召しますよ?」
「うむ、起こすか・・・」
少し、名残惜しそうに二人を起こした。
「風邪をひくぞ。起きよ、朔、十六夜」
「ん〜、分かったぁ・・・」
「はぁ〜い・・・」
目をこしこし擦りながら起きる二人に白哉が、
「今度からは、門から参れ。私が居る時は話相手にはなれよう?」
「うん!ありがとう!白哉大好き!」
「大好きです!朽木隊長!」
と二人に抱きつかれた。目を見開いて驚く白哉。
「さ、土産の饅頭を忘れるな?ではな」
「うん、また来るね!」
「ね!」
お辞儀して手を繋いで二人が帰っていった。
「可愛らしゅうお子でございましたな」
「うむ・・・、私にも子があればあのように・・・、過ぎた事であるな・・・」
「ですが、今はあの子達に頼りにされております・・・、白哉様」
「うむ・・・」

「かか様ー!ただいま、かか様」
「かか様、ただいま帰りましたー!」
「お帰り、朔、十六夜、おやつの時間にも帰らないから心配したぞ?」
「ごめんなさい、白哉の所で遊んでたの!それでこれ貰ったの!」
「白哉の所で?なんだそれ」
「えっと、もみじ饅頭だそうです、これはかか様の分です」
「ありがとう、何か悪い事はしてないか?」
「えっと、勝手にお屋敷に入って怒られた。その後、お話してくれたの」
「そうです、ちゃんと答えてくれて嬉しかったです!」
「「ねー!」」
また一つ、何が悪い事か学んだ双子。
「まだ遊びに行くのか?」
「うん!夕飯までには帰るからー!」
「行ってきまーす、かか様」
「行ってらっしゃい!」







09/03/10作 第73作目です。
どうでしょうか?子供の目線て難しいです。とと様出てねえ!
きつねのおうちへ戻る