題「母に看病される子」
瀞霊廷から戻り、ウルキオラの寝顔を見ながら一護は、グリムジョーが倒れた時の事を思い出していた。


子供が熱を出して倒れた。学校から帰って来てすぐ部屋に行くから気付けなかった。
俺が悪い。
「どうしよう、剣八・・・」
「慌ててもしょうがねえだろうが、お前んち病院だったな」
「あ!今すぐ電話する!」

夕飯の時、キッチンに現れたグリの顔が赤かったのに気付いた時には遅く、目の前で倒れた。
「わあ!大丈夫か!グリ!」
抱き上げると物凄い熱だった。
「さむい・・・」
「すぐベッドに連れてってやるからな!剣八!」
「おお」
剣八に担がれて部屋に連れて行かれる。一護が手早く着替えさせていく。
熱を測ると40度あった。氷水で絞ったタオルで冷やしていくが、すぐぬるくなる。
「グリ、グリ、大丈夫か?」
はっ、はっ、と息も荒く苦しそうだ。汗も止まらない。
「俺のせいだ、ちゃんと気付いてやってたらこんなに酷くなって無かったのに!」
「喚くな、そんな暇あったら水分でも取らせろ」
「うん、グリ、スポーツドリンクだ、飲め・・・」
ストローから少しずつ飲んでいった。

一護が実家に電話する。
「はい、黒崎医院です」
「あ、遊子か!親父出してくれ!」
「お兄ちゃん?!分かった待ってて!」
たった数秒が長く感じる・・・。
「お〜、待たせたな、どうした?一護」
「子供が!子供が!熱出して倒れたんだ!どうしよう、往診頼めるか?」
「どんな具合なんだ?」
「熱が40度あって、意識がないんだ」
「すぐ行くから、待ってろ」
「うん、うん、悪い、親父・・・」
「いいから、子供の傍にいてやれ」
「うん」
電話を切るとグリの部屋に行きタオルを替える。
「グリ、グリ、もうすぐ医者が来るからな。もう大丈夫だから」
「お、ふくろ?」
汗で貼り付いた髪を梳いてやった。
「一護、水の替え持って来たぞ」
「ああ、ありがとう剣八。夕飯ごめんな」
「気にすんな、どうだ様子は?」
「さっき少し喋ったから大丈夫だ」
「そうか、お前も少しは落ち着けよ」
「うん」

ピンポーンと呼び鈴が鳴った。
「あ、親父かな?」
立ち上がり、出ようとすると服の袖を掴まれた。見るとグリが掴んでいた。
「俺が出る、お前はここに居ろ」
「ワリィ・・・」
グリの頭を撫でながら待った。

「入るぞ、一護」
「おう・・・」
「なんつー顔してんだ、みっともねえ。親だろうが」
「うん」
「お兄ちゃん、元気出して?」
「大丈夫だよ、一にい、あれでも医者なんだし」
「遊子、夏梨、ありがとな」
「ほれほれ、診察の邪魔だから出た出た」
「じゃあ、後頼むな・・・」
そう言って出て行こうとした一護の腕を掴み離そうとしないグリ。
「グリ、大丈夫だよ、診察が終わるまでだから、すぐだから・・・」
顔を横に振って、行かせまいとした。その内涙が溜まって来たのが一護にも分かった。
「グリ・・・」
「ふっ、うう、う、うえっ、う」
「しょうがねえな、親父ここに居ても良いだろ?」
「そうだな、甘えただな、お前の息子」
「泣いたの初めてだよ。分かってないと思うけど」
顔や頭を撫で、落ち着かせる。
「ひっ、ひっ、う」
「いい子だな、グリ。もう落ち着いたな?お医者さんに診てもらおうな。剣八は出ててくれ」
「わーったよ」
ぱたんと扉が閉じられた。
喉を調子を見られたり、聴診器で胸の音を聞いたりして診察は終わった。
「風邪だな。インフルでなくて良かったな、一護」
「ああ、良かった」
「注射していくから、起きて飯食えるんだったら薬飲ませろ。後水は多めにな」
「分かった。サンキュー、親父。助かったよ」
「いいよ、治療費は貰うんだしな」
グリに注射しながら言った。
「じゃあ、帰るわ、終わったし」
「御苦労さん、遊子も夏梨もあんがと」
「ううん、じゃあねお兄ちゃん」
「ばいばい、一にい」
薬が効いてきたのかウトウトしているグリ。
「早く良くなれよ、グリ」
まだ顔に残る涙を拭ってやった。

「一護、どうだ様子は?」
「うん、薬効いてるみたいでもうすぐ寝そうだ」
「そうかよ、あぁ、金払っといたぞ」
「ありがと」
「ほれ、お前も寝ろ」
「今日はここに居るよ」
「ったく、しょうがねえな、メシ喰って来い見ててやるから」
「うん、ありがと剣八」
ちゅっと可愛い音を立ててその頬にキスをした一護。
「早くしろよ」

食事を終え、やちるやウルに説明してグリの部屋に行く。いつもの如くウルは、
「もう注射もしたのでしょう?放っておいて大丈夫です」
と辛辣な事を言った。心細いだろ?と言い頭を撫でてやった。
「剣八、どうだ?様子は」
「寝てる」
「そうか、タオル替えるよ」
冷たい氷水でタオルを絞り替えてやる。はふ、と気持ち良さそうな顔をしたグリ。首筋の汗を拭ってやる。
「やる事大してねえな」
「後は、水分と着替えだな」
「剣八、朝早いんだろ?部屋で寝ろよ」
「そうだな・・・」
促され部屋に戻る剣八、風呂に入った。

風呂上り、グリの部屋を覗けば一護がこっくりこっくり船を漕いでいた。
あほか・・・。お前の身体が悪くなる。剣八は部屋に入ると起こさないようの一護を自分の膝に寝かせた。
毛布を掛けてやり、風邪を引かない様にしてやった。

翌朝、一護は自分が何故、剣八の膝で寝ているのか分からなかったが嬉しかった。
「剣八・・・、剣八・・・、起きろよ、朝だぜ」
「ん?おおもう朝か」
「ありがとな、痺れてねえか?」
「平気だ。それよりガキ見てやれよ」
立ち上がると部屋を出て行く剣八。
「グリ?大丈夫か?起きれるか?」
「う、お袋?水・・・喉いてぇ・・・」
「ほら、ストロー要るか?」
頷いたので入れるとコクコクと飲み干していった。
「熱は?」
おでことおでこをくっつけて測る。もう下がっている。
「ああ、良かった。一時はどうなるかと思った」
ギュウッと抱き締める一護。グリがガラガラ声で、
「苦しい、よ」
ともがいた。
「あ、ごめん。飯は?喰えそうか?ならお粥作るけど」
「食べる」
「よし、ちょっと待ってろよ」
キッチンへ行くと剣八が粥を作り終えた所だった。
「で、ガキは喰えそうなのか?」
「ああ、食べるって、ありがと剣八」
「早く持ってけ」
「おう」
一人用の土鍋に入った粥を持ってグリの部屋に戻る一護。
「ったく、ガキが寝込んだら抱けねえんじゃな」
一人ごちる剣八。
「入るぞ、グリ」
「早いな・・・」
「うん、座れるか?」
出来たての粥をフーフーと冷ましながら、
「あーん」
「あー」
と食べるグリに一護が、
「どうだ、喰えそうか?」
「ん、もっと・・」
「良かった」
フーフー冷ましては食わせてやるを繰り返し、グリは粥を完食した。
「後、薬も飲めよ」
「ん、粉?」
「いや、カプセル、喉が腫れてるって言ってな」
薬と水を渡してやる。薬を飲み終わると一護が、
「グリ、パジャマ脱げ、下着も新しいのに替えて、汗拭いてやる」
「いいよ、自分でやるから!」
「背中どうすんだ!脱げ!」
パジャマの上を脱がすと背骨を中心に拭いてやった。
「後は自分でやれよ、俺は鍋浸けに行くから戻るまでに終わらせろ」
「おう・・・」
一護が出て行ってすぐ汗を拭いて、下着を替え新しいパジャマに着替えた。
「入るぞ。早いな、ちゃんと脇の下とかも拭いたか?」
「やったよ」
「よしよし、ほら首にタオル巻いとけ、汗掻くからな」
優しく後頭部を持ち上げ手早くタオルを巻いてやった。
「すげえ寝汗だな、水ちゃんと飲めよ」
「分かった、お袋・・・」
「ん?なんだ、グリ?」
傍に行き、髪を梳いてやる一護。
「あの、あのよ・・・」
「ん?」
「あんがと・・・な」
「ばーか、子供が気ぃ使ってんじゃねえよ」
そういうも一護の唇は笑っていた。

「う・・・?」
「あ、起こしたか?おはようウル」
「おはようございます、お母さん」
「今日は身体の調子はどうだ?」
「・・・、まあまあです」
「どれ?」
おでこをくっつけて熱を測ってみた。熱は無い。
「お、お母さん?」
「良かった、ウルも大丈夫だった、でも油断すんなよ?」
ギュウッと抱き締める一護。
「は、はい。お母さん!」
「うん、朝ご飯どうする?」
「いただきます」
「じゃあ、キッチンに行こう」
「ハイ」
その背中にふわっとカーティガンが乗せられた。
「さっ、行こ!」
手を差し伸べる一護。

母の手を取る子供。








09/02/04作 第64作目です。9000番を踏んだ柚木さんからのリクエスト。
「ウルが倒れた時話題にのぼったグリが倒れた時の話、一護がどっか行っちゃって泣いちゃうお嬢」でした。
どうでしょうか?可愛く書けてますか?グリ



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