題「黒猫、一護の看病する」 | |
「はっ、はっくしゃんっ!くしゃんっ!くしょん!」 立て続けのくしゃみ、鼻水に発熱、誰がどう見ても風邪だ・・・。 「う〜、鼻が痛い、頭もがんがんする〜」 「大丈夫?いっちー?」 「あ”ー、平気平気、だからうつんない内に帰れよ?やちる」 「大丈夫だよ!ちゃんと手洗い、うがいするから!」 「そうか、見舞いあんがとな」 「うん!またね、いっちー!」 「おー」 そう言ってごそごそと蒲団に潜った。過労のせいか、風邪をひいた剣八の看病のせいか、一護は熱を出して倒れていた。 薬も貰って、安静にしているのでこの程度なのだそうだ。 「これで、ねえ・・・」 ぽつりと呟き、眠りに落ちていった。 暫くしてから喉が渇いて目が覚めた。目の端に黒いモノが映った。 「ん・・・?」 顔を向けると、香箱を組んだ剣八がこちらを見ていた。 「うわあっ、、びっくりした。何やってんだお前?」 掠れて、ガラガラになった声で訊いてみるも、答えも鳴き声も返って来なかった。 「まあ、いいや、みず・・・」 震える手で水を注いで飲んだ。ふと、 「お前、まさか責任感じてるとか?まさかな」 横向きに寝て、剣八に手を伸ばした。その指先をペロペロ舐める剣八。 「図星かよ・・・、気にすんなバーカ。病気だったんだ、しょうがねえよ」 顎の下を撫でてやった。ゴロゴロと喉を鳴らす剣八。すぐぱたりと落ちる一護の手。 「ワリィ、寝るわ限界・・・」 すう、すう、と寝息を立て始める一護。その傍を片時も離れない剣八。 (入り難いんだけど・・・) お粥を持った弓親がどうしようか悩んでいた。もう薬の時間だし、しょうがない! 「入りますよ、隊長」 枕元で寝そべっている剣八がこちらを振り向いた。 「一護君のお薬の時間です、起こしますよ?」 ゆさゆさと軽く揺さぶって起こす。 「ん?何、弓親・・・」 「お薬の時間だから、お粥持って来たよ。食べれるだけで良いからね」 「サンキュ・・・」 震える手で粥を口に運ぶが少し零れた。 「あ・・・、ワリ・・・」 「いいよ、僕が食べさせてあげようか?」 「いい、よ、自分で食べるから・・・」 茶碗一杯はどうにか食べた。薬も飲んで、着替えも済ませた。何故か剣八が唸ってたけど・・・。 「は・・、あ・・、熱い、けど寒い・・・」 肩まで蒲団を被ってガタガタ震えだした一護。のそっと起き出した剣八が蒲団の中に入ってきた。 「うるるる・・・」 「は・・・、あったけえー、あんがとな剣八」 はっ、はっと荒い息に汗の匂いに欲情しかけたが、何とか抑え込んだ。獣の本能でここで手を出したら一生近づけて貰えないだろうと思ったからだ。その代わり、額や首筋の汗を舐め取った。ペロペロ舐めると、 「くすぐったいよ、剣八」 ふふふ、と笑って頭を撫でて来た。 「看病してくれるのは嬉しいけどな、気ぃ遣うなよ・・・」 それでも舐めるのを止めない剣八。こめかみから、髪の生え際をぺろぺろとまるで子猫を舐める親猫の様に舐め続けた。 「・・・きもちいいな・・・、お前の毛皮は絹みたいだし、言う事ナシだ・・・」 すう、すう、と眠ってしまった。 「隊長、まだ居るんですか?」 弓親が入ってきた。 「ぐるる・・・」 「邪魔、したくないですけどね。隊長もご飯食べないと一護君、気を遣いますよ」 ハイ、と剣八用のご飯を差し出した。渋々ながらも平らげた。 「後、新しい水です。では、明日の朝までよろしくお願いしますね」 そう言って出て行った。すりすりと顔をすり寄せた。 「ん、んん・・・?けんぱち・・・」 と呟く一護。 もそもそと潜ると剣八も一緒に眠った。 朝起きて、隣りに居る剣八に驚いたが安心感の方が大きかったのは、秘密にしておこうと一護は思った。 終 09/01/10作 第55作目です。これもラブラブですよね。 子猫も、黒猫も、お互いが心配です。だいたいそんな感じ。 |
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