題「黒猫、風邪をひく」
「ぶしっ!」
間抜けな声が響く。何なんだコイツは・・・。

「で?俺に何しろって?」
不機嫌も露わに一護が聞いてきた。
「何って、その、隊長のお世話?」
「はあ?なんだ?俺はあいつ専属の執事か何かか?え?」
剣八が猫になって現世に漸く戻れたのも束の間、3日も経たないうちに呼び戻された。原因は剣八。しかも風邪を引いたとの事。
なんじゃそりゃあ?自分たちで何とか出来んだろうがと言ってみたら、声をそろえて「無理!」と返って来た。
おいおい、自分らの隊長だろうがよ?それは無いんじゃねえの?と思いつつ様子を見に行ってみる。

なんだこの地獄絵図は・・・。部屋はしっちゃかめっちゃか。怪我人が其処ら中に居る。
「何があったんだよ」
「例によって隊長が暴れてね。この有様だよ・・・」
御自慢の髪型もボロボロでも気にならないくらい疲れきっている弓親。
「なんで風邪ひいたんだよ、アイツが。一番引きそうにないぞ」
「ああ、それはね、この真冬に池にはまちゃったんだよ・・・」
「なんで?」
「どこかの隊の誰かのせいで」
「ああ・・・」
「で、風邪ひいたんだけど、薬を飲んでくれないんだよ・・・、ご飯も食べてくれないし・・・」
はあ〜、と深いため息をついた。気の毒に・・・。
「なんで、俺が呼ばれる訳?それで」
「分かるでしょ?ああなった隊長に近づけるの君しかいないんだよ・・・、ね?お願いだよ」
「・・・分かったよ、俺に出来る事はやる!それ以上は無理だからな!」
「ありがとう!助かるよ!ああ、やっと眠れる・・・」
そう言うと気絶するように寝てしまった弓親。
「お、おい!大丈夫か?」
すー、すー、という寝息が帰ってきた。まずこいつ等から片付けるか・・・。
「おーい、誰か、元気な奴いるか?」
「おう」
一角と2、3人の隊士が残っていた。
「よう、大変だな、また」
「ああ・・・」
弓親を渡して、他の隊士らを四番隊に引き受てもらう。怪我人が居なくなってすっきりしたとこで、部屋の片づけだ。
元が何か判別出来ないほど、ひどかった。恐らく剣八が払いのけたであろう粥や、紙類がぐちゃぐちゃでどうにもならないので、全部捨てた。床を磨いて掃除完了!後はあいつの、部屋だ。
「入んぞ、剣八!」
からりと障子を開けると部屋の隅で丸くなっている剣八が目に入った。この部屋は片付いてる。
とすとす近付いて、頭を撫でる。耳がすごく熱くてびっくりした。よく見ると震えていた。
「〜〜!この馬鹿!我が儘もいい加減にしろ!」
毛布を掛ける。水分を取らせなきゃ・・・。
「おい、水、飲めるか?」
水を差し出すが、がたがた震えて上手く飲めない。しょうがないので、口移しだ。
「ん、んん(ほれ)」
こくこくと漸く飲めた、こんなじゃ間に合わない、点滴の方が早い。まだ震えているので、しばらく隣で添い寝してやった。
甘えるように擦り寄って来て、俺は肩のあたりまで毛布を掛けてやった。落ち着くようにと背中を撫でてやった。
いつの間にか俺も眠ってたみたいで、胸のあたりがくすぐったくて目が覚めた。
「んん・・・」
見てみると、剣八が胸の袷目の所を吸っていた。無意識のようで前脚でふにふに押しては必死にちゅっちゅっと吸っていた。
(哺乳瓶がいるかなぁ・・・、可愛いな)
俺は起きて身体を離す。見てみると赤くなっていた。剣八も起きてこちらを見ていた。
「蒲団敷くから、そこで寝ろ。大分マシだろ」
そう言って、蒲団を敷く。そこに剣八を連れて行き、今まで被っていた毛布を被せ、掛け布団を前脚のあたりまで掛ける。
「じゃあちょっと出かけてくる。すぐ戻るからな大人しく待ってろよ?お粥も持ってくるから」
「うるる・・・」
掠れた声で鳴いた。さあ、早いとこ買いもん済ませなきゃ。剣八の頭を撫でて、出掛ける。
「一角、俺ちょっと現世に戻って買いもんして来るわ」
「えっ!何だよそれ、隊長大丈夫なのか?」
「一応断ってきた。すぐ戻るよ」
そう言って、すぐに現世に戻った。買ったのはスポーツドリンク1・5L数本と大型獣用の哺乳瓶。
「流石に怒るかな?」
でもしょうが無い。自分以外は寄せ付けないのが悪いと言い聞かせ、瀞霊廷に戻る。
「ただいまー」
どさりと荷物を剣八の部屋に置く。哺乳瓶は紙袋に入れて手に持っている。
「大人しくしてたか?」
眼を開けて見てくるが、もう声も出ないようだ。
「すぐ粥、作るから待ってろよ、剣八」
「うう」
と吐息が返された。急いでお粥を作る。水分が多めの白粥。洗った哺乳瓶にスポーツドリンクを入れて部屋に戻る。
「剣八、粥と薬だ。少しでも食べて、薬飲め」
すぐ食べれるようにと冷ましてきた粥を食べさせる。俺の胸に頭を預けて、ゆっくり食べる。茶碗一杯を何とか食べてくれた。
「剣八、水分も取れ。脱水症状になったら大変だ」
哺乳瓶を取り出すと、プイッと顔を背けた。やっぱり、嫌だよなあ・・・。
「なあ・・・、剣八頼むよ、いい子だから」
耳がピクッと動く。がこちらを向いてくれない。仕方ない。俺は自分の指を舐めて剣八の口の中に入れた。
少し驚いてたけど、すぐ目を細めてちゅっちゅっと吸いだした。頭を撫でながら、
「いい子だな、剣八」
と囁いた。俺は哺乳瓶の口の部分を咥えて温め、隙を見て指と入れ替えた。
気付いているのか、いないのか、ずっと吸い続ける剣八。無意識に前脚は俺の胸を押し揉んでいた。
500mlあった中身はすぐ空になった。まだ吸っている剣八に、
「もう空だよ、ほら離せ・・・」
名残惜しそうに口を離した。
「まだ飲むか?薬も飲まなきゃいけないし。どうする?」
「うるる」
と先程よりはマシになった声で答えた。
「んじゃあ、用意するから待ってろ」
そこにあるペットボトルから中身を注いで、薬を用意する。
「あのな、これも水薬だけど、これは一口分で良いから口移しでやる。その後コッチな」
と哺乳瓶を横に置く。くいっと薬を口に含み、口移しで与える一護。ごくんと大人しく飲んだ剣八。
次は、スポーツドリンクだ。ちゅっちゅっと一心不乱に吸いながら、一護の胸を揉む。
わざとか?と訝しがってもおかしくないほど揉みながら吸っていた。でも耳は少し寝た状態で、目を細めて吸い付いている様子はかなり可愛かった。
「いい子だな、剣八。いい子だ」
頭を撫でながら何度も囁いた。中身が無くなったので、
「剣八、空だよ。もう離せ」
大人しく離す剣八。よほど喉が渇いていたらしい。剣八を蒲団に寝かしつけ、片付けを始める。哺乳瓶を食器と一緒に持って行って洗おうと立つと、顔を上げてこちらを見て来た。
「食器を洗うだけだよ、すぐ戻るよ」
そう言うとパタンと寝転んだ。
さっさと洗いものをする。熱湯で哺乳瓶を消毒する。水差しに水を入れて一緒に部屋に持っていく。
「入るぞ」
中に入ると剣八は眠っていた。
一護は、ふ、と小さく笑って哺乳瓶半分に水を入れて枕元に置いた。
呼吸音はだいぶ落ち着いてきて、すー、すー、と規則正しく聞こえていた。毛布を肩口辺りに、蒲団を前脚の下辺りまで掛けてやった。
「さて、俺はどこで寝ようかな?」
と言いつつ風呂に入る用意をして風呂場に行く。思った以上に疲れてた。ゆっくり湯に浸かり疲れを癒す。
風呂から上がり、剣八の部屋に行くと中から、
「うるるぁ?うああぁ?」
と声が聞こえた。
「何だ起きたのか?」
ガシガシと髪を乾かしながら、蒲団の横に行く。大きな耳を触ってみる、最初の時に比べて熱も下がっている。
「水くれな」
枕元にある水差しの水を一杯飲んだ。
「ふうっ、お前も飲むか?」
「うあ」
コップと哺乳瓶をかざす。哺乳瓶に鼻を向けたのでそれで飲ませた。
ちゅっちゅっと吸う度に、んっく、んっく、と喉を鳴らして飲んでいる。んぷっと離すと一護の膝に頭を乗せた。
「おい、重い・・・」
パタンと揺れるだけの尻尾、退く気配はない。
「俺はもう自分の部屋に帰るから、ほら、お前はちゃんと蒲団で寝る!」
蒲団に寝かされた剣八は尻尾で一護を掴まえて離さなかった。
「おい・・・、お前まさか、心細いのか・・・?」
ピクッと揺れる耳と尻尾。急に尻尾が離れた。ふうっと息を吐くと、
「しょうがねえな、ここで寝るよ」
向こうは寒いしな。と嘯きながら剣八の横に寝る一護。
「おやすみ、剣八。風邪には「寝薬」つー言葉もあるからな、たくさん寝ろよ」
一護は剣八が眠るまで撫で続けてやった。

どれ位時間が経ったんだろう。身体に違和感を感じて目が覚めた。
「ん、あ?」
胸が熱くてくすぐったい。見てみると剣八が俺の乳首を吸っていた。
「おい!何やってんだ、そんなトコ吸っても何にも出ねえよ!」
頭を引き離そうとすると今度は、俺を下に組み敷いて全体重を掛けて来た。
「う・・・、重い、どけ、よ!んあ!」
歯を立てられた。じんじんするソコをまだ吸ってくる。ふにふに揉みながら、ちゅくちゅくと音を立てては吸ってくる。
まるで子猫になったようだ。

いつもより身体が熱い・・・。剣八の舌が燃えてるみたいだ・・・。
「ああ、あ、熱い・・・、剣八、やめろ、身体・・・、壊すから・・・!」
ちゅっと口を離すと、ペロペロ顔を舐めて来た。
「うるるあぁ」
すりすりと顔や身体を擦り付けてくる。ふうっと小さく溜め息を吐くと、
「しょうがねえなぁ もう・・・」
頭や耳を撫でてやった。またちゅくちゅく吸い出すと、今度はザリザリと舐め始めた。
「ああっ!こら!やっ、やめっ!」
一護の制止も聞かず舐め続け、とうとう下肢まで到達した。
「ああ・・・、止めろ、いい子、だから!」
もはや一護の寝巻きは帯だけで辛うじて纏っているだけだ。内腿をベロリと舐めあげる。
「ひっ!や、やだぁ・・・、だめ・・・!」
剣八は一護の下履きを引き剥がし、半勃ちの中心を口に含んで吸い付いた。
「んんあ!やっ、熱い!剣八、剣八!」
チュクチュク吸われる度にシーツを握り締め、快感に耐えていた。その内剣八が一護の下腹をフニフニ揉みだした。
「やあぁ!もう、だめぇ!」
ビクッビクッと剣八の口中に吐き出した。
「あ、あうう、ばかぁ・・・」
口の周りを舐めると、脱力している一護の寝巻きを脱がしたいのか、帯を噛んでいた。一護が覚悟を決めて帯を解き自分で脱いだ。その身体を反転させると、蕾に舌を這わせた。
「ひぃっ!ああっ!やだぁん!熱いよぅ!」
ふるふる震えて身悶える。ヒクヒクとヒクついてきた頃を見計らって剣八が圧し掛かってきた。
唾液で濡れた蕾に、先走りでぬるつく自身を宛がった。
「あ、あ、あ」
もう既に剣八の形など身体が覚えている。グッと腰を進められると、グチュっと難なく奥まで入った。
「んああッ!あ、あ、熱いッ!剣八!熱いよ!とっ、溶けちゃうよう!」
耳元で聞こえる獣じみた呼吸に若干の恐怖を感じながらも、一護も溺れていった。
「ああっ!ああッ!良いっ!剣八、気持ちいいよう!あ!ああ!イク!イク!んあっあーー!」
ビクッビクッと痙攣しながら果てた一護の中に剣八も惜しみなく注ぎ込んだ。
「ひああん!あ、あつぅいよぅ」
剣八が一護の耳を舐めて来た。
「やっ、ダメェ・・・、やンン・・・」
その度に後ろがきゅうきゅう締めつけられた。項に軽く噛みつき、自分のモノだと跡を付ける。
繋がったまま、前を向かせる。ゆうら、ゆうらと尻尾が揺れる。
「あ、あ、剣八、剣八、もっと、抱き締めたいよ」
剣八の肩に腕を絡ませ、引きよせて、大きな耳に舌を這わせ、軽く噛んだ。
「ぐぅるるる・・・」
そんな一護に堪らなく欲情した剣八は、力任せに奥を穿った。
「ひぃっ!ああっ!剣八ぃっ!ああっ!好きっ!好きっ!あっ、愛してるよう!」
ぎゅうぅと抱き締め、背を撓らせ果てた一護。ヒクつく中に剣八も熱い熱い欲望を解き放った。
「うっ!ああ、熱いのが溢れる・・・」
それだけ呟くと気絶した一護、剣八も今日は、力付きたようだ。暫く二人でうたた寝した後で一護が目を覚ました。
「あっ!寝ちまった、風呂入んなきゃ。剣八は、どうしようかな・・・」
「ん、うるる」
「一緒に入んのか?」
すりっと身体を擦り寄せて来た。
「しょうがねえな、ちゃんと温まって、すぐ寝るぞ?」
「るあぁ」
やけに素直だな。そう思いながら、着替えを用意した。念の為、哺乳瓶は隠しておいた。
腰が痛いがいつもよりはマシかもと思いながら、風呂に入る。
まず自分の身体を処理してから、身体を洗った。次に剣八を洗って湯に浸かる。身体を芯まで温まるまで入っていた。
「しかし、お前熱があっても、性欲が落ちるって無いんだなぁ、安心なような、心配なような複雑だな」
「うるぁ」
すり寄って、甘える剣八。
「ちゃんと治してくれよ?心配なんだから、風呂から出たら、粥食って薬飲めよ」
ぱちゃんと尻尾で湯を叩いて返事する。
「温まったか?なら出ようぜ」
先に一護が出て、素早く身体を拭いて着替える。次に剣八が身体を水気を飛ばして出てくる。身体をドライヤーで完全に乾かして、ブラシで毛並みを整える。
「よし!じゃあ部屋で待ってろ、粥持ってくるから」
「うるる」

粥を乗せた盆を持って部屋に入る。パタン、パタンと尻尾を揺らしながら待っていた。
「ちゃんと蒲団で待ってたな、いい子だ」
程よく冷めた粥を食べさせる。さっきみたいに俺の胸に頭を預けて食べた。小さい土鍋の中身全部残さず食べた。
薬を飲ませ、水分はどうしようか?
「剣八、スポーツドリンクはどうする?飲むか?」
「うあ」
また、コップと哺乳瓶を選ばせる。今度も哺乳瓶を選んだ。気に入ったのか?
んっく、んっく、と飲む姿が愛おしくて思わず、
「誰にも見せたくねえな・・・」
と呟いてしまった。んぷっと飲み終えると、すりすり甘えて来た。珍しいな、こんな剣八。
「じゃあ、洗いもんして来るから、先に寝てろ、いいな?」
パタンと尻尾の返事。土鍋を洗って、哺乳瓶の消毒を終え、部屋に戻る。
薬が効いてるのか、先に眠っていた。すう、すう、と大人しい寝息。先程の行為が嘘の様だ。
「可愛いな、ちゃんと治せよ」
言いながら剣八の隣りで眠る一護。
翌日には、熱が下がった剣八だったが、一護の傍から離れようとせず、いつになく甘えて来た。
他の隊士には分からないようだが、やちるなどはすぐに気付いたようで、邪魔が入らない様に予防線を張ってくれた。
一護も風邪なのだからと存分に甘えさせた。

そして、何故か完全に風邪が治るまで、剣八は哺乳瓶に執着していた。







09/01/08作 第52作目です。一護に剣八に対して、「いい子」と言わせたかったんです!
後、猫剣に哺乳瓶を使わせたかった。可愛いですかね。私は可愛いと思うんですが・・・。



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