題「拘束する」
 剣八と恋人の関係になって一つ慣れない事がある。

それは俺が起きると隣に剣八が居ないこと・・・。

しょうがない、隊首会だ、討伐だと忙しいのだからと言い聞かせる。何度も何度も・・・。

でも、やっぱり一人で起きるのは淋しいし、ちょっと辛い・・・。2,3回泣いてしまった事もある。
つまんない事だけど、おはようも、いってらっしゃいも言えないのは悲しいし、あいつはそんなもの欲しくないかもしれない。困らせたくないから言わないけれど、どうせなら終わった後、自分に宛がわれた部屋で寝た方が楽かも知れない。

隣の冷たい蒲団を触ってそう思った。

その日も気を失うまで抱かれて、寝ている間に風呂にも入れて貰ったみたいだ。夜中にふと、目が覚めて隣にいる剣八を見る。穏やかな寝息と寝顔・・・。こんな顔してたんだ・・・。顔のキズを指でなぞって、髪に触れる。
抱き締めたい衝動に駆られた。抱き締めて、ずっと隣に縛りつけたい。手も足も切り落として、動けなくして俺だけのモノにしたい。

だけどそんなの無理だから抑えた。そんな事したらこいつは、戦えなくて死んでしまう。

俺が居なくても大丈夫だろうけど、戦えないときっと駄目だろう・・・。

起こしちゃ駄目だ・・・。俺はそぅっと蒲団から出て、宛がわれた部屋に向った。

蒲団は敷かれて無かったから自分で敷いて寝転がる。ひやりとした感じが心地よくて、やっぱり少し淋しかった。うとうとし出した時、ガラっと障子が開けられた。誰だと思って目を開けると剣八だった。

「てめえ・・・、何黙って部屋変えてやがる・・・?」

怒っているのかいつもよりも低い声だ。

「ああ・・、悪い。一言言っときゃ良かったな」

「そう言う事じゃねえ、何で部屋出てったか聞いてんだ」

俺は少し気まずくて、目を逸らしながら、

「別に・・、深い意味は・・・」

「嘘つけ!」

「何怒ってんだ?お前はいつも居なくなるのに・・・、俺は駄目なのか?」

「一護・・・?」

「俺は淋しいって感じないと思ったか?辛くないって?いつも一人きりで起きて泣いた事もあったよ?」

「一護」

「こんな事言ったって困らせるから言わなかっただけだ」

抑えようとしたけど感情が止まらなかった。

「おはようも!行ってらっしゃいも言えない!お前は要らないかも知れないけど!迷惑でしかないから、言わなかっただけだ!今すぐおまえの手足ぶった切って、隣に縛りつけたい・・!
そんな事したらお前・・・、戦えなくて死んじまうだろ・・?俺が居なくても平気だろうけど戦えないと死んじまうんだろう・・・?だから何も言わなかったのに、言わせやがって・・・。
どうせ一人で起きるなら、始めから一人の部屋の方が楽かと思ったからこっちに来たんだ。理由は分かっただろ?帰れよ」

「やだね」

「なんで?まだなんか聞きたいのかよ?」

「そうさな、あんな熱烈な愛の告白聞いたんじゃこっちが抑えらんねぇよ」

「あっ、愛の告白って!何馬鹿言って・・・っ!」

どさっと覆いかぶさって来た剣八が耳元で、

「そうだろがよ?手足ぶった切って縛り付けるなんざ、中々出て来ねえぜ?愛されたもんだな俺もよ?今度からは、ちゃんと隣に居て起こしてやるからよ。安心しろよ。

だからよ、お前抱かせろ」

ぐっと腰を押し付けてきた。そこにはすでに熱く欲望のままに形作られていた。

「あ・・・、馬鹿、さっきシタとこじゃ・・・」

「関係ねぇよ、お前が相手ならな・・・」

チュッと触れるだけのキスで一護を煽る。

「んっ、ばかやろ・・・、明日は、ちゃんと隣に居ろよ・・・」

首に腕を回して抱き付いて口付けを深め合う。

翌日の朝は、剣八が隣で寝息を立て一護が起こして、こう言った。

「おはよう、剣八。今日も行ってらっしゃい」

お題に挑戦、第2弾です。Hシーンがほとんど無いって珍しいな・・・。



08/11/11に同盟にてアップしました。「拘束する」です。44作目です。お題配布元:剣一同盟



文章倉庫へ戻る