題「溺れる」 | |
はぁ、はぁとお互いの忙しない息遣いとピチャピチャ、くちゅくちゅという淫らな水音。 何度も絶頂を極めた身体は敏感でどんな感覚も逃がさない。 「あ、ああ、剣八、剣八・・・」 他に縋るものが無くて俺は繰り返し名前を呼ぶ。俺を快楽の海に突き落とす張本人を・・・。 「何だ…、一護」 取りすました様に問い返す。 「んん、あ、やぁ」 限界も近付く。 「なぁ、今俺を呼んだろ?何だ一護?」 言いながら急所を突く。 「んあぁん!」 それだけでイッてしまった。羞恥で耳まで赤くなる。 「これからだってのに、可愛いな一護・・・」 後ろから耳元で囁かれる。顔が見えないのが厭で、振り返って、 「剣八、顔見えないのヤダ・・・。この格好イヤ・・・」 と訴えた。目には生理的な涙が浮かんでいた。 剣八は俺と繋がったまま、体位を変える。胡坐をかいた足の中に納められる俺。より深く繋がって声が出た。 「はぁあん、奥まで・・っ、きてる・・」 剣八の首に手を回して縋りつく。これから始まる行為で確実に俺は海に突き落とされる。 髪を梳きながら剣八は動かない。奥まで埋まっているのに・・・。疼きだす身体。 「んあぁ、剣八ぃ・・・、動いて?奥まで突いて・・、お願い・・・」 剣八が漸く動き出す、ズルルとギリギリまで抜くと奥まで突いてくる。何度も繰り返され、 理性という小舟で揺蕩(たゆた)う俺は快楽の波に簡単に海原に放り出される。 理性が剥がれ落ちて漸く本音が口を突く。剣八の背中に縋り付いては声を上げ続ける。 「あぁん!イイ!気持ち良いよぉ!剣八ぃ・・・、もっと、もっと来て」 自ら腰を擦り付ける。剣八は口の端だけで笑う。ああ、この顔も好きだ・・・。 快楽の海に投げ出され、溺れて行く理性。最後が近付く。 「んあぁっ!イクッ、イクッ、剣八!イッちゃうよぅ!出ちゃう!」 「イケよ・・・、一護・・・」 耳元で低く囁かれ、ビクビク身体を震わせながら達した一護。一拍遅れて最奥に剣八が精を注ぎ込む。 「んあぁ、熱い・・、剣八ぃ、大好きぃ・・・」 その呟きを最後に眠りに就く一護。あぁ、俺は快感じゃなく剣八に溺れている。 水底に堕ちて行くように・・・。ゆっくりと堕ちて行く、どこまでも・・・。
終
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