題「お昼の情景」
それぞれのお昼の情景。
ウルとグリの場合。
がやがやと昼休み特有の落ち着かない雰囲気の中、ウルキオラは弁当を持って屋上へと向かった。
食事をするには自分には騒がしすぎる教室を後にして屋上に着いた。青天の元、日陰に移り弁当の蓋を開ける。
母が作ってくれたサンドウィッチ。ハムとレタスと胡瓜。スモークサーモンとポテトサラダ。卵焼きとケチャップだけのサンドウィッチ。
水筒の中には紅茶。知らずに微かに口が弛む。静かに咀嚼していると、がやがやと騒がしい面々が現れた。
グリムジョーだ・・・。せっかくのいい気分が台無しだ・・・。さっさと食べ終えて教室に帰るか・・・。知らんふりをしながら、サンドウィッチを口へと運ぶ。紅茶のいい香りが鼻腔に広がる。食べ終えて片付けていると目敏く見つけられた。
「何だ、ウルキオラ、暗い奴が影で物食ってっとさらに陰気だな」
無視をして通り過ぎる。相手にするのも馬鹿らしい。朝の仕返しのつもりか?朝、起こしに行った時こいつは、ぽーっとして頬を押さえていた。苛立ったので脳天に手刀をお見舞いしてやった。
イールフォルトやディ・ロイもいる。何故一人で食えないんだ?分からない。じーっと見ていると、
「何だ、言いたい事でもあんのかよ?」
「別に・・・、母様の作って下さった物を残すなよ。お前が野菜を残す度に、寂しそうになされる」
「う、うっせえな!お前に関係ねぇだろ!大体お前なんで家と外でお袋の呼び方違うんだよ」
「あの方がそう望まれたからだ。お前もいただろうが。クズが・・!」
一護とこの兄弟は血は繋がっていない。勿論この二人も。引き取られて初めて「母様」と呼んだ時、一護は驚いた顔をしてから、少し寂しそうな顔をして、
「そんなに畏まって呼ばなくていいよ。お母さんで良い」
と言って笑った。その時の笑顔が泣きたくなるぐらい綺麗だったのを鮮明に覚えているウルキオラ。それから一護の前では、お母さんと呼び、いない所では母様と呼ぶ癖が付いた。グリムジョーは、最初からお袋と呼んで懐いていた。父とは初めから敵対心を持っていたようだが・・・。それが何故か腹立たしかった。それから仲が悪い。
「大体、同い年の母親ってのがおかしいだろうが!なんであいつ等俺らを引き取ったんだよ・・・?」
「さあな、俺には幸運だったが、お前は違うようだな・・・」
それだけ言うとウルキオラは屋上から消えた。
「ちっ!鬱陶しい奴だ!」
言いながら弁当は残さず食べ、さらにコンビニのパンに齧りついた。
「・・・不味い・・・、おいロイ、これやる」
「へ?なんで俺?」
「いらねえなら捨てろ」
紅茶を飲みながら言い捨てる。イールが、
「いい香りだな。なんの紅茶だ?」
「あ?知らねえよ」
「一杯くれ」
渋々ながら注いでやる。飲み終えたイールが、
「ほお、美味いな。これはお前の母親が淹れたのか」
「ああ、毎朝コーヒーも淹れてるぞ」
「羨ましいな・・・」
「そんなに美味いのか?」
「ああ、俺はこの辺りの喫茶店はほとんど入ったが、これ以上に美味いのはまだ飲んだ事がないな」
「ふ〜〜ん・・・」
悪い気はしない。
「今度家に寄ってもいいか?ケーキぐらいは持って行くぞ」
「ああ、良いんじゃね?甘いもん好きみたいだしな」
「あー、俺も、俺も!」
「うるさい、カス!俺はお茶の淹れ方を教わりたいんだ、邪魔するな!」
「しないよ。なぁ〜」
「うるせえ、来ればいいだろ。ったく」

剣八とやちるの場合。
「剣ちゃん、お昼だよ!早くお弁当。お〜な〜か〜す〜い〜た〜!」
「うるせえな。今弓親が茶ぁ持ってくんだろうが」
「ぶう!」
「お待たせしましたぁ」
「遅いよー、ゆみちー。あたしお腹空いたんだから」
「ほれ、さっさと食うぞ」
「良いですね。隊長、愛妻弁当」
「ふん、やんねえぞ」
「分かってますよ、隊長だけじゃなく、副隊長まで敵に回したくないですからね」
「へっ!分かってんじゃねえか」
「いったっだっきま〜す」
おむすびに手を伸ばし、頬張るやちる。幸せそうだ。剣八も食べながら、おかずに手を伸ばす。昨日の残り物に、少し新しいおかずが、入っている。そう言えば後で来るつってたな。今日は鍋だからな、明日の弁当は勘弁してやるか?などと考えていると、やちるが見透かした様に、
「ねえ、剣ちゃん明日は食堂にしようか?」
「ああ、悪かねえな」
言いつつ二人で重箱を空にした。

おやつ時、一護が護廷にやってきた。
「おーい、やちる〜。約束のサンドウィッチ持って来てやったぞ」
「わ〜い!いっちーだ!待ってたんだよ」
「はは、大袈裟。ほら食おうぜ」
縁側で広げると剣八が現れた。
「おい、俺のは?」
「へ?喰うの?」
「当たりめぇだ。まさか作ってねえなんて言わねえだろうな?」
「ちゃんと作ってるよ、心配症」
緑茶で食べる3人。
「どうだ?やちる」
「おいしいよ、卵のがすごい美味しい!」
「そっか!良かった」
剣八の方を見る。
「美味えよ」
くしゃくしゃと頭を撫でられ、照れた様に笑う一護が可愛かった。
「じゃあ、俺もう帰るわ。晩飯の用意しなきゃいけねえからさ」
「そうかおい。一護」
「ん?」
振りかえった所で抱き締められて、また口付けられた。
「ん、んう、ふあ、ぁっ」
「無理して起きてなくていいからよ。ちゃんと寝ろよ」
「あ、無理なんか・・・」
言おうとする口をチュッと塞いで、
「いいな」
「ん・・・、分かったから、もっかい」
背伸びしてキスを強請った。今度はもっと深いのをされた。

 帰り道、一護はウルキオラとばったり会った。
「お母さん、どうしたんですか?こんな所で?」
「うん、やちるにサンドウィッチ渡した帰りだ、そんでついでに晩飯の買い物」
「そうですか。では俺も手伝います、荷物くらいは持てますので」
「んー、そうだな。久し振りだしな。一緒に行くか、何入れたい?」
「そうですね・・・野菜を多めにしたいです」
「お前それグリへの嫌がらせだよ」
くすくす笑ってくれたので俺も嬉しかった。二人でスーパーに行って、鍋の具材を買いそろえる。
鶏肉、白菜、椎茸、えのき、白ネギ、鶏の挽き肉。
「人参も入れるか?豆腐はどうすっかなあ・・・」
一人でぶつぶつ言いながらも買い物を済ませて
二人で帰る。さり気にウルが重い方を持ってくれた。家に着いて鍋の用意をする。手を洗って具材を切っておく。後は炊くだけ。
ご飯が炊ける頃、やちるが帰ってきた。剣八は遅くなるからグリが帰るか、時間になったら食べよう。
午後6時に帰ってきたグリ。弁当箱を受け取る。中身は綺麗に空だった。俺はにんまり笑ってしまった。グリは驚いた顔をして出て行った。びっくりさせたかな?まあいいや。洗い物をしながら鍋を見る。出来あがったので居間に持って行く。
3人とも待っていた。茶碗や他の食器も揃っていた。
「ありがとう、手伝ってくれたんだな助かったよ。さっ、食べよう!」
4人での食事。やちるが今日の出来事を、楽しそうに話してくれた。グリが、
「ああそうだ、あのよ、お袋、今度うちに連れが来たいって言ってんだけどよ。良いか?イールってんだけど、お茶の淹れ方を教わりたいって言ってた」
「ん?ああ、いつでも良いけど俺で良いのか?上手くないだろ」
「や、なんかえらく気に入ってた」
「ふうん、まあいいや。良いよって言っといてくれ」
「んー」
ウルキオラが睨んできた。
「何だよ」
「お母さん、手伝います」
「良いよ。座ってろ」
「いえ、やらせて下さい」
一護は肩をすくませ、
「じゃあ、洗い物持って来てくれ。俺は鍋を持ってくから」
「はい・・!」
洗い物も終わって、子供らを歯磨きにやかましくせっつき、後は剣八が帰るのを待つだけ。
「いっちー・・・、まだ寝ないの・・・?」
目をしょぼしょぼさせたやちるが、甘えてきた。
「うん?寝れないのか?やちる」
「んー・・・」
「寝れるまで添い寝してやるよ」
抱っこして蒲団まで運んだ。ぽん・・、ぽん・・、と背中を叩きながら寝かしつける。暫くするとくう、くう、と寝息が聞こえてきた。
がららら、と玄関が開く音がして剣八が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「寝てろって言っただろ」
「眠くないんだよ」
「ったく」
「お疲れ様、先に風呂にするか?」
「ああ、お前入ったのか?」
「いや、まだだけど」
「一緒に入っちまえよ」
「む〜、まだ子供等起きてる・・し」
「なんにもしねえよ」(・・・風呂じゃな)
「そんじゃあ、時間の節約にもなるかな?」
「なるなる、入れ、先に入ってっぞ」
「うん」
剣八と自分の着替えを取ってきて、一緒に入った。出た後、晩酌と飯を食べた。

一日の終わり?






08/11/18作 第34作目です。次は愛の営み(笑)ですかね?




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