題「黒猫の発情期」

今日は週末、定期報告の為に瀞霊廷に来ていた一護。報告を終え、十一番隊に行こうとした時、呼び止められた。
「黒崎殿、総隊長殿がお呼びです。ご一緒に来て頂けますか」
「はあ。分かりました」
怒られる様な事はしていないので素直に付いて行った。付いて行くとそこは、隊首会が行われる部屋だった。
「こちらです。しばしお待ちを」
隊士が扉をノックして、
「黒崎殿をお連れしました」
「うむ。入ってもらってくれ」
「どうぞ」
「あ、はい・・・」
一護は促されて、中に入り、椅子を勧められそれに座った。中には他の隊長格が揃っていた。
「あのー、俺なんかしました?」
恐る恐る訊いてみた。
「いや、お主は何もしておらんよ。お主は」
含みのある言い回しをされた。一護はそこで違和感を覚えた。他の隊長は居るのに剣八が居なかった。
皆心なしか疲れている様な顔だ。

「お主を此処に呼んだのは他でもない。頼み事があってな・・・」
「頼み事?俺にですか?」
「うむ、恐らくお主にしか無理じゃろうて」

なんかイヤな予感がして来た。

「何ですか?」
「うむ、連れて参れ」
元柳斎が呼びかけると扉が開き、巨大な黒猫が運び込まれた。

あー、なんだろ。この既視感は・・・。

「何やってんだ・・・、剣八・・・」
耳と尻尾をピクッと動かしたがそれ以上は動かなかった。
「お主、更木が分かるのか?」
狛村隊長が少し驚いている。
「分かるも何もまんまじゃないですか」
「まんまってどう視えてるんだい?一護君」
京楽隊長が訊いて来たので、
「でっかい黒猫ですけど?」
見たままを伝えた。
「それなのに分かったんだ。すごいねぇ」
と感心された。
「あの、そんな事より何でこいつ動かないんですか?」
「ああ、ちょっとね・・・、縛道を掛けてるんだよ」
言い難そうに教えてくれた。
「何でですか?」
「結構暴れてね。それで仕方なく・・・」
学習しねえ奴だ、そう思いながら頭を撫でる。
「それで俺に頼みって何ですか?」
何となく見えて来たが敢えて聞いてみた。
「うむ。こ奴を暫らく預かってほしいのじゃが・・・。頼めるかの?聞けばお主には懐いておったそうじゃからの」
「取り敢えず、縛道解くとかしてもらえますか?それで俺に懐いてきたら預かりますよ」

その後どうなるか身をもって知っているが・・・。

「ふむ。そうじゃな」
縛道が解かれた。俺は椅子から降りて床に座る。飛び掛られたら、コケるからな。
剣八がゆっくり起き上がる。伸びをする骨がポキポキ鳴っている。
くるりとこちらを見る。のっそりと近付いてくる。首筋に顔を埋めて匂いを嗅いできた。フンフン息がかかってくすぐったい。
「くすぐってえよ。コラもうやめろって」
くすくす笑う一護に甘える様に身体を擦り付ける剣八。
「少し痩せたか?お前またメシ食ってねえんだろ?」
剣八の背中を撫でて骨の浮き具合で判断する。
「何日ぐらい食べてないんだ?」
「三日だよ。あげても食べないんだよ。十一番隊の人でも駄目でね」
京楽が説明する。
「三日・・・、もしかして三日間縛道掛けてたんですか?。」
「しょうがなかったんだよ。後は麻酔ぐらいしかない状態だったからねぇ・・・」
やけに遠い目をした京楽隊長。
「そうですか。じゃあ、取り敢えずメシだな、弓親に何か作ってもらうか。歩けるか?」
「ぐるる」
返事を返し、十一番隊に行く。

 十一番隊に着くと弓親を呼んだ。
「弓親ー、悪いけどよ、お粥作って貰えるか?剣八に食わせたいんだけど」
「ああ、うん良いよ・・・」
疲れた顔で言うので、
「どうしたんだよ?俺がやろうか。顔色悪いぞ」
「ごめん、そうしてくれる?ちょっと無理みたい・・・」
弓親が申し訳なさそうに言ってきた。
「剣八の事で何か言われたか?」
「まあ、そんなとこかな・・・」
「お前らも大変だなぁ」
「そう言ってくれるの君だけだよ」
俺は台所を借りて、お粥を作った。薄めの方が良いらしいから塩は、少なめにしてとき卵を入れて、卵粥にした。
「おーい、剣八、粥出来たぞっと。どこ行った?」
「隊長なら自室の方行ったぞ・・・」
これまた疲れた顔の一角が教えてくれた。
「サンキュー、ああそうだ。粥まだあるから食えたら食ってもいいぞ。味薄いけど」
「ワリィな。遠慮無くもらう」
「おお」
剣八の部屋に入ると丸くなって寝ている剣八の姿が目に入った。
「可愛いけどよ、粥持ってきたから先に食え。それから寝ろ」
耳がピクっと動いて顔を上げる。
「ちょっと熱いからな、気をつけろよ」
ふー、ふーっと冷まして口元に持っていく。ペロリと一口食べる。
「いけるか?無理すんなよ?」
「ぐるる」
強請る様に鳴くので、少し安心した一護。剣八は一鍋平らげた。一護は口の周りに付いた粥を指で拭うと舐め取った。
「良かった、少しでも食えりゃマシだからな。後で風呂に入れてやるよ」
頭を撫でてやる。
「疲れただろ?三日も固まってりゃあな。寝てろよ、風呂の時に起こしてやるから」
ぽんぽん背中を叩いてやり寝かしつける。一護は縁側で本を読んでいた。ふと眼の端に黒い物が映ったので目をやると剣八だった。
「どうした?喉でも渇いたか?」
剣八は一護の膝に頭を乗せてきた。
「しょうがねぇな」
片手で本をめくりながら、もう一方の手で剣八を撫でる。パタンパタンと尻尾を揺らす剣八。機嫌は良いらしい。
「風呂入るか?」
「ぐるる」
一護は着替えを用意して風呂場に剣八を連れていった。ついでだから一護も一緒に入る。先に剣八の身体を洗ってやってから、自分の身体を洗って、湯船に浸かる。剣八も入って来た。



「溺れんなよ」
笑いながら、背中や肩の辺りを揉んでやる。かなり凝っている。
「お前も大変だろうけどさ、あんま暴れんなよ?」
ぐるると返事なのか、文句なのか分からない鳴き声を一つ上げた。
「何かお前今日、変に甘い匂いがするけど、何だ?」
くんくんと首の辺りに鼻を近づけ、匂いを嗅ぐ。ペロリと項を舐められた。
「ひあっ!」
一護は自分で出した声に驚いた。剣八は目を細めてこちらを見ている。
「うるあああ」
その鳴き声に一護は気付く。こいつ発情期だ。やべぇ・・・。
「もう、出るか?のぼせるしな」
はははと乾いた笑いと共に立ち上がった。目の前の獲物を逃がすほど剣八は甘くなかった。腰骨辺りをべろりと舐め上げた。
「ひゃああ」
ふるふる震えて座りこむ一護。
「て、てめえ・・・、んあっ!やめっ!」
尻尾で中心を撫で上げた。それだけで天を向く一護自身。
「な、なんだ?今日はおかしいぞ、ってやめろっ!」
湯船の中でするすると尻尾で一護の双丘の割れ目を撫でさする。
「んっ、んっ、あっ、やっ、やだ!」
ぴたっと動きを止めた剣八。安堵したのも束の間、一護は自分の身に渦巻く熱に悶える事になった。
「あ・・、あ・・、はあ、はあ、くっ!」
それでも気丈に湯船から出る。少しのぼせたのか、くてっとしている。剣八も湯船から出て一護に近づく。
「く、こっち来んな!馬鹿猫!」
身体を丸めて身を守ろうとするが力が入らない。
「うるるああ、うるあああ」
耳元で鳴かれて一護の身体はぷるぷる震えた。
「あ、あ、や、くすぐった・・・」
一護が油断した隙に中心を口に含んだ。
「あぁっ!ばっ!やめ!あっ!ああっ!あああっ!」
ごくりと嚥下する音が聞こえて、
「あ、も、馬鹿ぁ・・・」
涙目で睨んでくる一護にさらに欲情する剣八。その場で圧し掛かろうとして来たので、諦めた一護が、
「ちゃんと部屋でなきゃ、やらせない。人間に戻ってもやらせない」
と言えば、すぐに脱衣所の方に足を向けた。

・・・現金な奴・・・。

一護は身体を拭いて着替え、剣八の毛皮を乾かした。乾かしている間も首筋や胸元に悪戯を仕掛けては怒られていた。剣八の自室に着くと蒲団は敷かれてあった。早いなと思っていると後ろから押し倒された。
「うわっ!この野郎」

振り返る前に剣八が身体を擦りつけてきた。一護の顔や背中に擦り寄っては、
「うるあああ、うああああ」
と鳴いていた。甘い匂いも強くなった気がした。一護が仰向けになると、カリカリと浴衣を脱がしに掛かっている。必死な姿が可愛いと思ってしまった自分は、重症だ、重病だ。一人くすくす笑う一護に、
「うるるるる」
と鳴いて袷から胸の傷跡を舐め上げた。
「やっ!ああん!ぬ、脱げばいいんだろ」
帯を解くと下に何も付けて無い一護はすぐさま裸になる。全部脱ぐと剣八が覆いかぶさって来た。
ふわふわの毛並みが敏感な所をくすぐって変な声が出る。
「あ、ああ、ひぁっ!なんで?今日、変・・・、あぁっん!」
剣八が胸の飾りを舐めた。それだけなのに、中心はとろりとした蜜を溢れさせていた。
カリッと歯を立てられた。
「んああっ!いやっ!いやっ!変だよぉ、剣八ぃ・・・」
ザリッっと舐めては、歯を立てる。歯の痛みと毛皮のくすぐり、おかしくなりそうだった。もう片方の飾りも歯を立てられた。
「ああっ!いやあぁあんっ!」
堪らず一護は吐精した。はあ、はあ、と息も荒い。
剣八の腹が濡れそぼっている。ぺろぺろと舐め取る剣八を見て真似をするように、一緒に舐める。
「ん・・・、にが・・・」
自然と四つん這いになる。いつの間にか後ろから剣八が覆いかぶさり、腰を擦り付けている。
「あ、ああ、剣八・・、来て・・・」
トロンとした眼で誘う一護。ゆっくりと殊更にゆっくりと一護の中に納めていった。
「熱い・・・」
ハッ、ハッ、と息を荒くした一護が呟いた。全部納まると剣八は、動かずに一護の背中を舐めたり、耳を軽く噛んだりした。
「んあ!あっ、あっ、やっ、剣八、奥まで来て?意地悪しないで・・・」
甘い声で強請る。淫らに腰を振っては誘う。
「ぐるる」
ぐんっ!と力強く穿たれた。
「んあっ!ああ!ああっ!剣八!あっ、もうっ、イクッ!」
ビクビクと震えながら吐精した。余韻に浸る間も無く、奥を突かれる。
「いあっ!ああっ!ああっ!あうっ!」
一護の項を噛んできた。
「い、痛、うああ、ああっ!あぁんっ!は、早いよぉ」
剣八の動きが早くなり、一護の中に熱の塊を放出した。
「んあっ!あついよ・・・、お、奥が、ぁ・・・」
ガクガク震えて一護もまた達した。手足に力が入らなくなって蒲団に突っ伏した。ヒクつく一護の中で硬さを取り戻す剣八。
「あ、ああ、剣八、ま、まだ・・・?」
当然とばかりに背骨に沿って舐め上げ肩甲骨を甘く噛む。
「はあん、あぁっ、あぁ、あ?」
その内、背中の肩甲骨の下、真ん中辺りを舐め続けているのに気付いた。
「な、にやってんだ、お前?」
一護が聞くと、今度は尻尾で胸の刀傷を擦り始めた。
「ひっ!やっ、やめっ!やだ!やだぁ!」
尻尾を掴んで止めると、奥まで突かれた。
「ひいんっ!あっ、あっ・・・」
先程から舐めている所が傷跡の裏に当たると気が付いた一護。
「や、やだ、やめて・・・、剣八お願いだから・・・」
一護の懇願に、舐めるのをやめた剣八。ほっとしたのも束の間今度は尻尾の先で胸の飾りをくすぐり出した。
「ひ、やぁああん、ばかぁ・・、あ、あ、もう・・」
ひくひくと中の剣八を締め付ける。剣八も漸く動き出す。いつもの様に抜けるギリギリまで抜いて奥を突いた。
「ああんっ!剣八!熱い、熱いよぅ・・・」
何度も繰り返し一護の中に注ぎ込む。
「んあっ!あんん・・・剣、剣八ぃ・・・」
敷布を握り締め身悶える一護。その背に圧し掛かる剣八。息が荒い。腰を引こうとしたので一護が、
「やだぁ・・、剣八もっと・・・、もっときて・・・」
珍しい一護からのお強請りに剣八の熱はより昂った。
「ぐるるる・・・」
顔を一護の背中に擦り付けると反り返る一護の背・・・。
「はあん、早くぅ、奥が、疼くのぉ・・・」
腰を揺らめかせ淫らに誘う一護。甘い匂いはより強くなる。べろりと耳を舐めるときゅううと締め付けては、腰を押し付けてくる。
「どう、したの?もうおしまい?」
不安げに振り返る一護を喰らい尽くしたい衝動に駆られてしまった。肩にゴリゴリと音をさせ噛み付いて、抽挿を再開させた。
「あぁっ!剣八、痛い、よ。ひんっ!ああっ!ああっ!んああっ!」
首を仰け反らせ果てた一護。肩から腕を伝って血が流れては蒲団を赤く染めた。ギシリと強く噛んで剣八も一護の中に熱を注ぐ。
「いあっ!奥、熱い・・・」
剣八が口を離すとドサリと倒れこむ一護の肩を舐めて癒そうとした。
「ん・・・、剣八気持ちいい・・・」
剣八は一護の身体を反転させたくてかりかり引っ掻く。一護が仰向けになると、覆いかぶさり血を舐め取った。
「ん、もういいから、キスして剣八・・」
唇を舐めて、差し出された舌を絡ませる。甘い匂いと血の味がした。
「ん・・、あ、んくん、剣、八・・・」
混ざり合った互いの唾液を飲み干して、もっとと強請る。首に回した腕で引きよせ、耳元で、
「もっと、もっとだよ・・、奥まで来て、奥まで満たして、たくさん出して・・・」
と囁いた。
ぞくりとしたのか、剣八の耳が震えた。剣八の腰に足を絡めて抱き付いた。
「ね・・・、早くきて?お願い・・・」
首を傾げて誘う。剣八は一護の喉に噛み付く。
「んああ、剣八、食べる、つもりなら、欠片も、残すなよ・・・」
首に回した腕はそのままに、噛み付かれたまま囁いた。その言葉に剣八は身震いした。
誰が残すものかと、噛み付きながら、奥を穿つ。
「うっ!うあっ!けん、ぱち、うぁっあっ!あっー!」
喉を仰け反らせ、背に爪を立て果てた一護。みしみしと音が伝わる。
「んん、剣八・・、あ・・かはっ」
その咳で我に返った剣八が口を離して、ぺろぺろ舐めてきた。
「けほっ、けほっ、剣八・・・、まだ満足してないでしょ・・・?もっと出して良いよ」
掠れた声で、抱きよせながら囁いた。剣八が喉をチュッと吸うと、
「んっ!ああ・・・」
と吐息を漏らした。力の入らない一護の身体を器用にも、膝裏に前脚を入れ、持ち上げる。
「んああ、あっあっ、ふっ、ふかい、よお・・」
「うるるる・・・」
肩や首を舐めては、最奥を穿っていく。
「ああっ!ああっん!剣八!剣八!もっと、もっと来て!俺の中全部お前で満たしてっ!ああっ!あっ!あっーー!」
一護が果てると同時に、剣八も一護の中に全て出し切った。
「んんあ、俺の中、剣八でいっぱい・・・」
満足気な呟きが聞こえた。剣八も満足した。一護の髪をペロペロ舐めては、顔を摺り寄せた。
「うるるる・・・」
一護の上から退くと暫らくは隣で寝顔を見ていたが、一護がくしゃみをしたので、風呂に急かした。
「ん、分かったよ、行くから・・・」
立ち上がろうとして、腰に力が入らない事に気付いた。
「あ・・・、腰抜けてる・・・」
顔が赤くなるのが分かった。調子に乗りすぎた・・・。恥ずかしい。剣八が横に来て、頬を舐めてきた。
「良いよ。座ってりゃ、大丈夫だろ」

浴衣を着て寝転がる。その横に剣八が来る。
起き上がり座る一護。
「どうした?いつもとちがうな。疲れたか?」
「ぐるる・・・」
「俺はいつもと一緒だよ?」
そう言った一護の頬を剣八が舐めた。
「あ・・・?」
知らず知らず涙が溢れていた。音も無く滑り落ちる涙に一護が、
「ほ、本当はっ、す、すげぇ怖くて、お前っ、元に戻らなかったら、どうしようかと、思ったんだ・・・。俺は何も出来ないし・・・、お前の傍に居ても良いのか分からなくなって・・・」



「元に戻るよな?大丈夫だよな?最悪戻らなくなったら、俺も猫にして貰おうかな」
と呟いた。
「ぐるああっ!」
怒ったように吠える剣八に一護が驚いた。
「あ・・、ごめん・・・な」

「風呂、入ろ?もう立てるから」
「うるる」
二人で風呂に入って、お互いの身体を洗って湯船に浸かった。
「ふう、なぁ、さっき言ったこと忘れろよ?」
近付いて身体を摺り寄せ、尻尾を横に振った。
「てめえ、そりゃ忘れないって意味か?あ?」
ふんっと耳元で聞こえた。
まあ、いいか、本心ではあったしな。あー照れくさい。
風呂から上がって部屋に戻る。いつもの様に蒲団は新しい。
「寝るかあ」
欠伸をしながら剣八に言う。
「がる」
もそもそ一緒に蒲団に入って眠る二人はいつもと変り無かった。




08/11/04作 第29作目です。いつも素敵なイラストを下さるみすずさんに捧げます。お受け取り下さい。


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