題「黒猫」第3話
剣八が猫の姿になって、落ち付いたらしいので現世に帰ると言うと物凄い勢いで止められた。
その場にいた弓親も驚いていた。一角が慌てて、
「頼むから!元に戻るまでここに居てくれ!」
「なんでだよ?あいつ落ち着いてんじゃん、大丈夫だって!」
「分かってねえなあ、お前それ隊長の前で言って来いよ。人払いはしてやるから・・・」
「何言ってんだか・・・」
俺は縁側で昼寝している剣八の横に座り、頭を撫でてやりながら、
「剣八、お前も落ち着いたみたいだから、俺現世に帰るわ。あんま我が儘言って皆を困らすなよ」
と言うと目を開け、ガバッと身を起こした。
「お、起きたな?寝てる時に帰るの気が引けてたから丁度良かった」
「ぐるるるる」
「ん?どうした?」
首輪をさすりながら顔を覗き込んだ。ふいっと顔を逸らし、また寝た。ほら見ろ、大丈夫じゃねえか。
「さてと、用意すっか」
俺は立ち上がり自分の部屋に戻った。障子を開けて目に入ったのは蒲団だった・・・。確か片付けたはずだ。
「あいつら・・・!」
腹が立って振り向くと、いつの間にか剣八が部屋の中に居た。
「何だ、いつの間に?いやそれより、あいつらだ!」
障子に手を掛けるが、開かない。さっきは簡単に開いたのに・・。結界だと思い到った時、後ろから殺気がした。
振り向くと剣八がこちらを睨んでいる。俺なんか怒らせる事したっけか?思っているとじりじり近づいてきた。
思わず後ずさる。背中が障子に当たってこれ以上後が無くなった時、剣八が後ろ脚で立ち上がり俺の肩に前脚を乗せてきた。
「ぐっ、重!何すん・・!」
べろりと口を舐められた。文句を言おうとして口を開けると、中に舌を入れて離れなくなった。
「む、ん、んん」
長い舌が喉奥深くまで入ってきて、息苦しくて立ってられなくなり、座り込んだ。漸く離れるとまた舐めてくる。
「な、んなんだ、お前・・・いきなり」
口を拭うと、押し倒された。耳元で、
「うるるるる」
と鳴いてきた。うるるる?いつもはぐるるる、なのに?剣八を見ると、
いつもより目が潤んでる気がする。頻りに顔や、身体を擦り付けてくる。どうしたんだ?
「なあ、どうしたんだよ?どっかおかしいのか?苦しいのか?」
心配になって問いかけるが、より一層の力を込めて擦りついてきた。
「うわっ、ちょっ!こら!心配してんのに」
いきなり剣八が一護の首に噛みついた。
「うあっ!」
もちろん歯は立てていない。そのまま蒲団に縫いつけ、着物の袷を肌蹴る。爪が当たって血が滲んだ。
「あっ!まさか、お前・・・!ふざけんな!昨日・・、やっただろうが!」
真っ赤になって怒鳴る。それでも退こうとせず、耳元で、
「うるるる、うるるる」
と繰り返し鳴いてくる。こいつまさか、発情期か?まじまじと顔を見てみる。切羽詰まってる様に見えた。
その隙をつかれ、上の着物を完全に肌蹴られた。
「痛っ!」
脇腹を爪が引っ掻いた。わざとではないだろう、ペロペロ舐めて治そうとしている。
「ん、良いから、ど、退け」
震えてしまう声に舌うちしたい。ザリッといきなり乳首を舐めてきた。
「ああっ!てめ!やめろつってんだろ・・・」
下から上目遣いにチラと見ると、乳首から首筋まで舐め上げてきた。
「はああっ!や、やめろって」
震える腕で押し退けようとするが、力が入らない。
「く、そ、あいつら、覚えてやがれ」
抵抗するのを諦めた。どうせもう、昨日交わっているのだ。今更嫌がったとて、こいつを欲したのは自分自身だ。
一護は剣八の顔を両手で包むと口付けし、自分から脱いでいった。
「好きにしろよ、あんま噛むなよ」
剣八は座った状態の一護に覆いかぶさった。一護は剣八の首に手を回した。
ザリッザリッと胸の飾りに舌を這わす。
「う、くうっ、は!」
仰け反る胸の飾りに歯を立てる。
「あっ!ああ、け、剣八・・・」
びくっびくっと身体が跳ねる。歯の痛みと毛皮のくすぐりで、変になりそうだった。もう片方の乳首に吸い付いた。
チュッチュッちゅくちゅくと吸い付き、やはり毛皮がくすぐたかった。
「あ、あ、や、へ、変な感じ・・・、お、おかしくなる、よぉ」
ずくりと下半身に重い快感が走った。見てみると一護自身が上を向いていた。剣八が体重を掛けて一護を
蒲団に寝かせた。胸から顔を離すと下に行こうとした剣八を一護が呼んだ。
「剣八・・・、こっち来て・・・」
剣八が顔を近づけると、ぐいっと引き寄せて口付けし、舐めた。
「ん、やっぱ、好き・・・、もっとして・・・」
うっとりとした笑顔で、告げた。剣八が尻尾を一護の口に持っていった。
「ん、あむ、ふう」
口に含んで舐めまわす一護。いつになく淫らだ。しとどに濡れた頃に引き抜かれた。
「ん、あ・・・」
尻尾で内腿を撫でる。そのうち蕾の方へと進んでいった。
「あ・・・、剣八」
周りを撫でていたが、くっと力を入れて中に入れようとする。ぬくっと先が入る。
「あっ」
―ぬく。
―ぬく。
奥に進んでいく。
「あ、ああ」
中に入ると、くねくねと動かす。
「い、やああん、変、変、う、ううん」
決定的なポイントを突かれないもどかしさに腰が揺れ動く。
「あ、剣八ぃ、もう来て・・・、お願い、お、奥が変、け、剣八の入れて・・・」
きゅうきゅう締め付けて強請る一護に剣八は、尻尾をずるりと抜くと一護を反転させた。一護は自分で腰を上げた。
剣八は一護に覆いかぶさると、首の後ろを甘く噛みながら、ひくつくソコに自身を宛がい腰を進めた。
「ああぁん!熱い、お、奥まできてる・・・、剣八ぃ・・・」
甘く鳴く声に剣八は力任せに奥まで突いてきた。
「はっ!ああっ!ああんッ!あっ、あっ、あっ、いっ、イクッ!ああっ!」
奥に熱いモノを感じて一護もイッた。
「あっ、はああ、はあ、はあ、あっ!ああっ!け、剣八!もう?」
すぐに動き出す剣八。イッたばかりなのに、まだ硬さを維持しているのは何時もの事だが、一護も達して敏感になっている。
「ああんっ!ああっ!やああ!また、イクよう・・・」
すぐに果ててしまった。中の剣八を締め付けてしまい、剣八も中に出した。
「あんん、熱い・・・」
腕に力が入らなくなり、蒲団に突っ伏す。何故、今のこいつと交わるといつも以上に乱れるんだろう?すごく興奮する・・・。
俺・・・、やらしいんだ・・・。剣八の荒い息が耳にかかるだけでも感じてしまう。
「ん、ん、あ」
剣八が耳朶を舐めてきた。ザリリと音が鼓膜を震わせる。それだけで締め付けてしまう。
「ああん、剣八ぃ、俺、変?い、いつもより感じる、やらしいよ・・・、淫乱、なのかな・・・?」
剣八が一護の顔の横に自分の顔を近付けた。
「ん?・・・あ・・・」
横を向くと鋭い目があった。またベロリと唇を舐められた。
「んん・・・、は、剣八、俺も・・・」
舌を差し出して、剣八の舌を舐める。
「ん、はあ、ん」
互いに絡め合い、どちらのものとも分からない唾液が滴(したた)り落ちる。チュッと剣八の舌を吸った。
目を潤ませた一護を見て、剣八が腰を動かす。先程より優しかったが何かを探しているようだった。
「ん、剣八、ああ、ああ、あっ!ひっ!ああっ!そっ、そこダメッ!ダメッ!ああっあっ!あっーー!」
剣八が前立腺を見つけた。執拗にそこを攻め一護をイカせた。
「あ・・、はあぁぁあ・・・」
びくびくと身体を震わせ、剣八を締め付け、剣八も奥に出した。
「んあ、お、奥に・・・」
足にも力が入らなくなったのかガクガク震えていた。剣八が自身を抜くと一護は横向きに寝た。
「あ、はあ、はあ、ん」
切なそうに眉根を寄せ、ひくひくとヒクつくソコから白濁が溢れる一護の様に欲情を煽られた剣八は、横向きのままの
一護に覆いかぶさった。
「あ、やっ、もう無理・・・」
一護は首を振るが剣八は腰を擦り付けてきた。
「あ、あ、や、ん、剣八・・・、やだぁ・・・」
軟らかくなったソコに入るのは容易だったが剣八は、入口辺りで抜き差しを繰り返した。
我慢出来なくなった一護が、
「あ、あ、け、剣八ぃ、もう、入れてぇ、い、意地悪しな、いで・・・」
強請るが、フンッと鼻を鳴らして一護の首筋辺りをフンフン匂いを嗅ぎながら、くすぐった。
「あ、あ、お願い・・、ひん、やあぁ・・・」
敷布を握り締め、しわを作った。剣八はペロペロ耳を舐めながら一気に奥まで貫いた。
「あっーー!!あっ!あっ!剣八!剣八!んっ!んっ!いいっ!いいっ!気、気持ちいいっ!」
一護は、初めての体位の未知の快感に頭を振りながら喘いだ。その度に涙がぽろぽろ零れた。
「ああっ!変っ!変っ!何!?何!?あっ!ああっ!怖いよっ、剣八!剣八!」
縋るように名前を呼んだ。応えるように顔を擦り寄せる剣八。
「んあっ!ああっ!あっーー!!」
一護が剣八の肩を抱きながら果て気絶した。剣八もイッたが、まだ足らない。
 一護の中に入ったまま身体の向きを変えた。正常位の格好になり、一護の涙の跡を舐める。
力無く自分の下で眠る一護の身体が自分と一護自身の精で汚れている様にも欲情した。ベロリと腹を舐めた。
「ん・・・、剣八・・・?」
掠れた声で呼んでみる。
「うるるるる」
と鳴いて見下ろしてくる。はっ、はっ、と息が荒いのに気付き一護は、逃げようとしたが身体が動かなかった。
「あ、あ、あ・・・も・・、むり、ゆるして、おねがい・・」
ずず、ず、ずず、ず、とやけにゆっくり動いては、確実に一護を追い詰めていった。
「ああ、あ、やだ、やだ、む、り」
剣八がさっき見つけた前立腺を突きあげた。
「あっ!ああっ!いやっ!ダメッ!イ、イクッ・・」
締め付けた時、狙いを外し、イケなくして自分は一護の締め付けで中に吐き出した。
「んんああ、あつい・・、ず、ずるいよぉ・・・」
すすり泣く一護。その涙も舐めとり、腰を揺らす剣八。一護は剣八を抱きしめ足も絡めて、
「あ、あ、イ、イカせてぇ、おねがい・・・っ」
その言葉に満足したのか、激しくなる動きに一護があっけなく果てたが、剣八の動きは止まらない。
「あっ!あっ!やっ、もう、でないよぉ・・・!」
それでもポイントを突かれれば感じてしまい、薄い精液を吐き出した。
「ああっ!んんっんーー!!」
その締め付けで剣八も最後に一番奥に注ぎ込んだ。
「んああ・・・、あつい・・・」
しばらく抱き合って動かなかった。
「ん、剣八、重いよ?」
退かそうと揺らしてみるが反応が無い。不審の思い、顔を覗き込んで見ると目を閉じ眠っていた。
「信じらんねぇ・・・、こいつが?俺より先に寝るなんて・・・」
すう、すうと規則正しい寝息が耳をくすぐった。
「んっ、よっと」
一護は身体を起こして剣八を起こす。
「おい、起きろよ剣八。早く起きないと浮気すんぞ?」
耳元で囁くと目を覚ました。最後の言葉に怒ったのか、
「ぐるうるるる」
と鳴いた。
「早く退けよ、風呂に入りたい。俺もお前もぐちゃぐちゃだ。ったく無茶しやがって」
ぶつぶつ文句を言う。なんとか腰は立つようだが、痛い。

 風呂場に着いて、お湯を被って身体を流した。中の処理をした時、一護は驚いた。
今までで一番多いんじゃないのかと言いたくなる量で、赤くなってしまった。
発情期って怖えなぁ、などと考えていた一護。
ただ単にいつも剣八が抑えているだけなのだけれど。
自分の身体を洗い終えて、剣八の身体を洗ってやる。ふと、浮かんでしまった考えに赤くなり、笑いが零れた。
ああ、俺も末期だなぁ。くすくす笑い湯船に浸かる、後から浸かった剣八が睨んでくる。
「怖え顔すんなよ、浮気とか考えてねえから」
風呂から上がり、着替えて、剣八の身体を乾かしている間もくすくす笑っていた。
部屋に戻って、新しく変わってる蒲団に倒れ込んだ。
腰がだるい、眠い、まっ昼間から盛りやがって、大体周りも周りだ。ちくしょう。ぶつぶつ言いながら潜り込む。
剣八が問い詰めるように、見つめてくる。
「な、なんだよ。さっきから・・・」
「ぐるるる」
「・・・もしかして、さっきの気にしてんのか?お前」
目も逸らさない。一護は少し赤くなって、
「つまんねえ事だぜ?別に聞かなくてもさ・・」
「ぐるる」
「分かったよ、ただ・・・、俺はお前が初めてだけどお前はそうじゃねえだろ?でもその姿のお前とは、その、まだ誰も・・、じゃあ俺が初めてなんだなって思っただけだ!」
最後の方はキレ気味に言うと蒲団を頭から被って真っ赤になった顔を隠した。
言われた剣八は、眼をパチパチさせてから蒲団に潜り込んだ。
「わあっ!びっくりした。俺は寝るからな!」
剣八は一護の横で喉をゴロゴロ鳴らしながら同じ様に眠った。

 翌日の朝、薬が出来たから取りに来いと、十二番隊から連絡がきた。弓親が部屋に来て、教えてくれた。
「一護君も一緒に行くかい?」
と聞いてきたので、
「行ける身体に見えるか?俺はまだ寝るよ」
寝巻き姿の俺は皮肉交じりに言って、剣八を頼んだ。
「そ、そう?じゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
二人が出て行ってしばらくして、隣りの隊から轟音が響いた。なんとなく原因はアイツだろうなとか考えてた。
うとうとしてたら、どすどす五月蠅い足音と誰かが喋る声が、遠くに聞こえた。
『隊長!早くその首輪、外して下さい!』
くびわ?たいちょう?まだ夢現の俺の部屋の前で止まった足音。スパン!と障子が開いた。
「ん・・・?」
「よお、久し振りだな。一護」
「・・・眩しい、閉めろ」
「ふん。いい若いもんが、昼間から何寝てやがる」
「誰のせいだと思って・・・、覚えてないのか?」
「あ?なにを」
「いや、別に良い・・・」
蒲団の上に起き上がった一護は、
「久し振り・・・、剣八」
と返して目を細めた。ふん?と鼻を鳴らした剣八がしゃがみ込み、一護の耳元で、
「随分な態度じゃねえか?俺の初めての人はよ?」
低音美声にゾクゾクしながら言われた内容に、
「テメッ!覚えて・・・!」
「当たり前だろうがよ。全部覚えてんぜ?」
「嘘だろ・・・」
真っ赤になって顔を隠す。一昨日のも、昨日のも?
「一護・・・」
一護の手を取り、首輪に這わす。
「俺は、お前のもんだ。こんなもん必要ねえ」
「あ・・・、ごめ、ん」
「怒ってねえよ、てめえの独占欲垣間見れたんだ、安いもんだ。コレを外せんのはお前だけだ」
一護が首輪を外す。震える指先が可愛くて、口付けた。
「剣八、キスして」
触れるだけのキス。
「剣八、抱きしめて」
きつく抱いた。
「もっと強く・・・!もっと!」
骨の軋む音が聞こえた。
「おい、一護・・・」
「い、いいから、もう少しこのままで居て・・・」
「・・・ああ」
もう良いよというまで抱いてくれた。
「腰、大丈夫か?」
「聞かなくても分かんだろ」
「まあな、あんまり可愛い事聞くからよ、歯止め利かなくなっちまった。発情期も重なってよ・・・、ワリィ」
珍しく歯切れが悪い。
「可愛い事?」
「自分が淫乱だってよ」
「だっ!だって!お前だって分かってても猫だぞ、外見。そう思うだろ・・・!」
くっくっと笑い、
「まだ寝るんだろ?俺も寝る」
「一緒に?」
「一緒に」
くすくす笑う一護の横に寝転ぶ剣八。
一護の髪を梳く剣八。
剣八の髪に触る一護。
その胸に身をよせ安心した様に眠りに就いた。剣八はしばらく髪を梳いていたが、やがて眠りに落ちた。

次に目が覚めても剣八はちゃんと人の姿のままだった。







08/09/30作 第23作目です。ようやく元の姿に戻りました。猫シリーズは、意外と人気ですね。
次はどうしよう?皆さん、どっちの猫が好きですか?



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